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カヤバ株式会社(7242)
開催日:2024年3月23日(土)
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:取締役専務執行役員  齋藤 考 氏

 

1.会社概要および事業概要
・ 当社は油圧製品の製造・販売を行う会社で、社名は創業者・萱場資郎の名前に由来します。1919年に萱場資郎は萱場発明研究所を設立し、それを母体に株式会社萱場製作所を1935年に創立しました。萱場資郎は独創性を非常に大切にした人で、その精神は今も当社の経営理念に謳われています。
・ 当社の国内拠点として、岐阜地区に大きな工場が3つあります。その他に相模、長野、三重、熊谷に工場があります。また、子会社として油圧機器の株式会社タカコ、二輪車用油圧緩衝器のカヤバモーターサイクルサスペンション株式会社などがあります。
・ 海外には24の生産拠点と21の販売拠点があります。アメリカ、ドイツ、中国の3拠点にそれぞれの地域をコントロールする統括会社を置き、ガバナンスを強化しています。
・ 当社のコア技術は、大きく分けて振動制御とパワー制御の2つです。振動制御は、油圧機構によって減衰力という抵抗力を発生させ、振動を適切に吸収する技術です。「吸収」は英語で「アブソーブ(absorb)」と言いますが、この技術を使ったショックアブソーバという製品を作っています。自動車や二輪車、鉄道などのダンパーで振動を抑制します。
・ パワー制御は、ポンプ、バルブという油圧機構によって力を伝達し、モータによる回転動作、あるいはシリンダによる往復動作に力を変換して出力します。この力を利用した油圧システムを必要とする建設機械メーカーに製品を提供しています。
・ 振動制御の例を紹介します。自動車は路面の凹凸からくる衝撃を受けると、スプリングが縮まることでショックを吸収します。しかし、スプリングだけでは一旦収縮したスプリングが元に戻ろうとしてまた伸び縮みします。このスプリングの揺れが収まらないと車体が上下に揺れ、乗り心地が悪い車になってしまいます。ショックアブソーバを使うと、車体を安定させ快適な乗り心地が実現できます。さらに、設置安定性が高まるため、ブレーキの利きが良くなり、コーナリングがスムーズになります。このように、足回り全般、乗り心地の良し悪しにショックアブソーバの技術は役立っています。
・ パワー制御は、パワーショベルなどに使われる技術です。人間の体にたとえると、心臓にあたるポンプで作動油を送り出し、それが脳にあたるバルブに行くと、作動油をさまざまな方向に配分するコントロールタワーになります。バルブから流れた油が足腰であるモータに行けば、回転動作に力を変換してパワーを出し、腕であるシリンダに行くと往復動作に力を変換してパワーショベルを動かします。
・ 当社のコア技術を使った製品を紹介します。振動制御に関する製品として、自動車関連にはショックアブソーバとCVT用ベーンポンプ(無段変速機)を提供しています。二輪車には、前輪に使うフロントフォーク、後輪に使うリアクッションユニットを提供しています。鉄道関係では、振動を抑える当社のアクティブサスペンションシステムが搭載され、揺れを小さくしています。最近の新幹線にも当社の技術が生かされています。
・ パワー制御に関する製品は主に建設機械に使われています。コントロールバルブ、走行モータ、ピストンポンプ、油圧シリンダなどを各メーカーに提供しています。フォークリフト等の産業車両にはギヤポンプ、コントロールバルブ、シリンダを提供しています。
・ 特装車両として、当社製品のコンクリートミキサ車があります。国内のコンクリートミキサ車の実に85%が当社製品です。当社は部品提供が多いため、「カヤバ」という名前が一般の皆様の目に入ることはなかなかありませんが、唯一この特装車両のミキサ車には「KYB」のイニシャルが書かれています。
・ 主要なお客様、納入先について紹介します。AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業では、自動車向けとしてトヨタ自動車、日産自動車など、国内のほとんどの完成車メーカーに製品を納入しています。海外では主にフランス系の自動車メーカーに納入し、ステランティス、ルノーとは古くからの取引があります。最近ではフォルクスワーゲンなど、ドイツ系の自動車メーカーとの取引が増加しつつあります。二輪車向けでは、ヤマハ発動機を中心とした国内主要メーカーに加え、インドのHERO(Hero MotoCorp)にも納入しています。油圧機器のHC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業では、日立建機をはじめとした国内主要メーカーに当社の部品を提供しています。
・ 当社全体の売上構成は、AC事業が64.6%。HC事業が32%。特装車両事業を含むその他が3.4%です。
・ AC事業の製品は、自動車の緩衝器、二輪車の緩衝器、自動車のパワーステアリング関係、その他の緩衝器などです。自動車のショックアブソーバが全体の売上の73%を占めます。二輪車は16%、ステアリング関係が8%、その他3%となっています。
・ ショックアブソーバの売上のなかで、国内自動車メーカーに部品提供する分の61%がOEM(新車用)です。残りの39%がアフターマーケットの交換用ショックアブソーバです。その他緩衝器のATV用とは四輪バギーのことです。
・ AC事業の主要納入先の売上比率は、トヨタ自動車が1位で売上の15%を占めます。2番目がヤマハ発動機で約9%の売上です。それから日産自動車、ステランティス、日産系のジャトコ、スズキと続きます。
・ 顧客別の当社シェアですが、トヨタ自動車では当社のショックアブソーバが半分以上の車に使われています。ヤマハ発動機は8割近くに使われています。プジョーシトロエン時代は5割以上でしたが、統合してフィアットとクライスラーが加わったステランティスは2割程度のシェアです。ルノーは5割強のシェアがあります。
・ AC事業のマーケットシェアを紹介します。ショックアブソーバのOEMは、国内では約38%、グローバル(海外展開)では13%のマーケットシェアがあります。また、ショックアブソーバの市販品はグローバルで17%のシェアがあります。海外ではOEMのシェアよりも市販品の売上のほうが大きくなっています。日本では、ショックアブソーバは頻繁には交換されませんが、欧米では一定期間を過ぎると頻繁に交換します。特に冬季は道路凍結対策で塩をまくため、さびが発生します。過酷な環境下でアブソーバが劣化しやすい地域は、市販品のマーケットが非常に大きくなります。二輪車はグローバルで10%のシェアがあります。
・ HC事業の製品売上では、油圧シリンダが34%と高い比率です。油圧シリンダはショベルの腕にあたる部分です。また、走行モータが21%、旋回モータが3%、コントロールバルブが26%の売上比率です。
・ HC事業の主要納入先の売上比率は、日立建機が1位で22%、2位がクボタの10%、3位がキャタピラーの9.4%です。
・ 顧客別シェアでは、日立建機のシリンダのほぼ9割、バルブの6割が当社製品です。クボタのシリンダは6割以上、キャタピラーの走行モータの5割強に当社製品が使われています。
・ HC事業のマーケットシェアを紹介します。シリンダでは小型のミニショベルが40%、20トンクラスの中型ショベルは22%、フォークリフトは50%のマーケットシェアがあります。走行モータではミニショベルが22%、中型ショベルが23%を占めます。コントロールバルブはミニショベルが40%、中型ショベルが18%のシェアです。
・ 地域別の売上構成比は日本が40.4%、海外が59.6%です。海外で一番売上が多いのが欧州の15.4%、それから米州11.1%、中国8.5%と続きます。ただ、これは2022年度の実績であり、最近の中国はEV化の進展で日系メーカーのシェアが落ちています。その影響を考えると、直近では1〜2%海外比率が下がっているのではないかと思います。
・ 事業ポートフォリオのなかで、航空機の緩衝器は当社創業時からのものです。これは着陸するときのショックをやわらげるもので、戦時期に海軍航空隊へ提供してきました。航空事業は歴史のある事業ですが、残念ながら採算を取るのが難しいという判断をし、撤退方針を表明しています。ただ、お客様との契約は非常に長い取引が多くありますので、2028年〜2029年ぐらいを目途に、徐々に生産を縮小していく計画をしています。したがって、当社の事業の柱はAC事業、HC事業部、特装車両事業となり、この3つに経営資源を適正配分していきます。
・ 今後のニーズと成長戦略について説明します。AC事業では、EV化がますます進展しています。ただ、EV化が進んでも、人間が車に乗る以上、振動制御は必要とされます。したがって、より乗り心地や静粛性の機能を高めていく必要があります。当社は電子制御によるショックアブソーバのコントロールニーズが今後高まると考えており、この分野でのトップランナーを目指していきたいと考えています。
・ HC事業のニーズと成長戦略ですが、今後はより高度な操作性、車と同じような静粛性が求められると考えています。当社は油圧機構の中のポンプ、バルブ、シリンダ、モータといった全部品を提供できる、非常に稀な部品メーカーです。その強みを生かして自動運転や遠隔操作といったセンサによる機能の強化、あるいはセンサによる故障予知・状態のモニタリングといった機能を、今後は追求したいと考えています。
・ 特装車両事業では、ミキサ車を使った環境対応として、間伐材を砕いてミキサで混合処理して土壌改良剤やバイオ燃料を作り出すといった事業を考えています。また、キャンピングカー事業化に向け、乗り心地と空間拡張性に優れた製品を、当社の技術を結集して作っています。試作品はすでに「JAPAN MOBILITY SHOW」などでお披露目済みですが、今後この事業化を進めていく計画です。

 

2.2023年度第3四半期決算概要
・ 第3四半期までの累計の売上高は前年同期比で119億円増収となり、3,287億円です。増収の大部分、約100億円は為替の円安効果です。一方、セグメント利益や営業利益などの利益項目では前年同期比減益となっています。セグメント利益は47億円減の122億円、営業利益は50億円減益の154億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は40億円減益の110億円です。
・ 事業別の連結決算実績です。AC事業の売上は、約100億円が円安要因で持ち上がり、残りの19億円程度が数量増になります。日本国内、北米ではOEMが前年同期比で非常に増えましたが、一方で中国での日系メーカーのシェアが低下する要因があり、打ち消し合って伸びは限定的になっています。
二輪車は、コロナ禍が明けた頃は自動車より二輪車へ需要が強まった時期があり、前年度は非常に好調でしたが、今年度は若干減っています。セグメント利益は91億円で、前年同期比では29億円減少しています。大きな要因は、アメリカ、メキシコを中心とした海外での生産性が悪化したためのコスト増で、これが大きく影響しています。また、2022年度までは当社はロシアに拠点がありましたが、ロシアのウクライナ侵攻以降、休眠状況になっており、2023年度は市販製品の売上がほとんど立ちません。2022年度に売上があったため、その差が出てしまい減益となっています。
・ HC事業でも、売上高はやはり中国向けの需要が下がっており、全体で14億円、前年より減収になっています。セグメント利益もやはり中国の売上減少の影響を大きく受け、17億円の減益となっています。
・ 航空機器事業は、在庫の評価の切り下げを行った関係で、セグメント利益が前年同期比3億円減益となっています。売上は増えましたが、残念ながら利益は厳しい状況です。
・ 2023年度、3月末までの連結決算通期の見通しです。第2四半期の段階までは期初の見通しを維持していましたが、第3四半期の結果、また今年1〜3月の第4四半期の見通しが当初立てた見通しを下回る見込みとなったため、通年の業績見込みを下方修正しています。売上高は期初よりも70億円下方修正して4,430億円、セグメント利益は80億円下方修正して200億円、営業利益は78億円下方修正して220億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は60億円下方修正して140億円としました。しかし、配当は1株当たり年間200円の配当予想を維持しています。
・ 事業別売上高の連結決算見通しです。AC事業は、中国での日系メーカーのシェアが下がったため厳しい状況です。また、市販製品の製造販売見通しが計画を下回る見込みになっていますので、全体で31億円の下方修正をして売上高は2,917億円の見通しです。HC事業ではしばらく中国の需要が低迷していますが、欧州市場の受注も減少することが、この第3四半期、第4四半期でわかってきました。この影響を受け、30億円下方修正して売上高は1,359億円の見通しです。航空機器事業は撤退を既に発表しているため、撤退に伴う販売先を見込み、在庫の販売見通しが下振れしており、この要因で12億円下方修正して44億円の売上見込みとなっています。
・ 事業別セグメント利益の連結決算見通しです。AC事業は54億円下方修正して144億円の着地となる見込みです。これには3つの要因があります。1つ目の要因はアメリカにおける生産性の悪化です。第2四半期のときにおきたメキシコの生産混乱は、ほぼ解消できました。ただ、同時期に生産性が落ちたアメリカ・インディアナ工場の生産性悪化はまだ続いています。これが第4四半期にかけても継続する見込みで、足を引っ張っている状況です。2つ目の要因はOEMの売上減少です。国内、北米は非常に注文がありますが、やはり中国の売上見通しが依然厳しいことに加え、二輪車向けが前年同期比で落ち込んでいます。3つ目の要因は市販製品の売上低迷です。当社は中東のサウジアラビア、エジプト等に、ショックアブソーバを大量に買っていただくお客様を抱えていますが、このエリアの売上が計画を下回る結果となっています。少し廉価な中国製のアブソーバがマーケットに出回りつつあり、当社のシェアが奪われているところです。
・ HC事業は、中国に加えて欧州も需要が減少する影響を受け、20億円下方修正してセグメント利益は61億円となる見込みです。
・ 自己資本と配当の推移を説明します。2018年に発覚した免震・制振用ダンパーの不適切事案があり、当社の自己資本は一時的に毀損され、一時2割を割り込む水準となりました。しかし、その後回復し、2023年12月時点では42%まで自己資本比率を回復させています。配当実績は、2018年度・2019年度は不適切事案が発生したため赤字となり、残念ながら無配になりました。2020年以降は復配し、その後増配を続けています。2022年度は200円、2023年度も今のところ200円の配当を予想しています。また、2023年度は自己株式を約50万株購入しており、こちらは2024年2月末に消却しています。

 

3.中期経営計画
・ 中期経営計画(2023年〜2025年)のキースローガンは、「品質経営を極める」です。中期経営計画では5つの項目を掲げています。まず「成長戦略」として、電動化対応製品開発・投入を加速化させます。また、日系メーカーだけではなく、新しい顧客の開拓、新しい市場への参入、新しいビジネスへの参入を考えています。2番目が「革新的モノづくり」です。AIやIoTを活用することでモノづくりの現場の情報の見える化を進め、できるだけ人の手を介さず自動的に製造できるようなラインを作っていきたいと考えています。それにより、3つ目の「絶え間ない原価低減活動」を大きく推進していきます。従来は地産地消でお客様のそばで生産していましたが、当社を取り巻く環境が変化しているため、最適な生産地を今後いろいろな条件を加味しながら検討していきたいと思っています。4番目の「環境対応への取り組み」では、SDGs等のサスティナビリティに関する活動を引き続き強化していきます。5番目の「資本効率向上、財務体質強化」では、ROEの改善、株主様への還元策強化を引き続き取り組んでいきたいと考えています。
・ 中期経営計画のエリア別成長戦略を説明します。地域別に何を目玉に行っていくかということです。インドには二輪車の工場はありますが、当社は自動車の工場を保有していません。自動車のショックアブソーバの工場をインドにつくり、進出を検討しています。中国は民族系の自動車メーカーに当社の製品を使ってもらおうと、今取り組んでいます。米州は、電子制御のショックアブソーバの生産・販売、また機能も強化してより高価なプレミアムの市販市場に参入したいと考えています。欧州は、フォルクスワーゲン等、新しいお客様に対してIDC(インテリジェント・ダンピング・コントロール)という電子制御のサスペンションをテコに生産を拡大していきたいと考えます。ASEANは二輪車生産拠点として生産性向上に努めていきたいと考えています。

 

4.質疑応答
Q1. 株価はPBR1倍割れです。株価を上昇させるために解決すべき課題と対策を教えてください。
A1. ご存知の通り、PBR0.7ぐらいで1を割り込んでいます。下期下方修正をご報告しましたが、当社を取り巻く事業環境は大きく変わりつつあることを実感しており、収益構造を圧迫しているのが現状です。一番大きな要因は、中国市場です。全体的な需要もそうですが、EV化のなかで当社が多く提供している日系メーカーの売上が下がっていることに加えて、いろいろな国がインフレの時代に入っているなか、中国だけはデフレが進行しています。具体的には鋼材、鉄の材料を仕入れることも、日本で調達するのと中国で調達するのでは値段が違います。もちろん、それは中国が国策として行っている部分もありますので、なかなか競争原理が働かない面もあります。そうした環境では、どうしても中国の競合社のシェアが優位になってしまうという壁にぶつかっているのが現状です。それから、アメリカでも生産性が落ちている状況です。賃金が上昇し、熟練工が流出した後の補充をしても定着しないため、モノづくりのノウハウが少し落ちています。こうした地盤が緩んでいる分、本社から大勢が米国に行き、立て直しに一生懸命取り組んでいます。生産性の低下も事業環境で大きく足を引っ張っている部分です。これら大きな要因が今、立ちふさがっていますので、当初2023年度に3年間の中期経営計画を立てましたが、周りの環境の変化を前提に修正することを検討しています。特に中国の要因は、価格競争力が極めて差が出る形になりますので、原価低減を今一度、徹底的に見直すことを検討しています。今後、できるだけROEが低下しないように、あるいは回復できるように取り組んでいきたいと考えています。

 

Q2. 大幅配当は魅力です。株価も高水準なので、株式分割を期待しています。実施する予定はありますか。
A2. 株式につきましては、一時かなり低迷していましたが、今は5,000円近辺まで上昇し、推移しています。やはり、個人投資家の皆様に、より購入していただきやすい状況を作らなければいけないという思いがありますので、今の株価以上に状況が安定して定着できれば、株式分割も視野に入れて検討したいです。もちろん、だいぶ前から検討はしていますが、まだ機関決定はされていない状況です。今後、しっかりマーケットの状況をみながら検討していきたいと思います。

 

以上

 

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