Daiwa Investor Relations

企業を探す

企業コード / 会社名
業 種

この条件で検索する

東京海上ホールディングス株式会社(8766)

開催日:2024年2月29日(木)

場 所:名古屋マリオットアソシアホテル 16階 『アイリス』(愛知県名古屋市中村区)

説明者:取締役社長グループ CEO 小宮 暁 氏

 

はじめに

  • 本年1月1日に発生した能登半島地震によって被害に遭われた皆さまに、心からお見舞い申し上げます。東京海上グループは、被害に遭われたお客さまへ早期に保険金を支払うために、地震発生直後の1月1日に対策本部を立ち上げ、現在、約1,900名の応援社員を全国から投入しています。1月末には、被害が大きく、立ち入りが難しかった奥能登エリアの損害確認も進められるようになりました。
  • 足元では、多くのお客さまへの保険金の支払いを既に完了していますけれども、最後の1件まで、グループ一体となって、お客さまに寄り添った対応をさせていただければと考えています。
  • 当社ならびに損害保険業界において、ビッグモーター社による保険金の不正請求の問題や、保険料の調整行為など、皆さまをはじめとして、ステークホルダーの皆さまにご心配をお掛けしていますことを、深くお詫び申し上げます。信頼回復に向けての道のりは決して簡単ではないと思っています。重く受け止めていますが、このような時だからこそ、グループの一人一人が、「私たちは何のためにビジネスをしているのか」、「何のために仕事をしているのか」という目的、私どものビジネスのパーパスに立ち返り、関係する全ての皆さまにご安心いただけるように、徹底的にお客さまの目線で、改善、変革、実行していきます。会社を創りかえるという決意で取り組んでいます。また、私自身、東京海上グループのCEOとして、グループレベルで成長とガバナンスを両立させ、質の高い経営を、ビジネスを、必ず実現する所存です。

 

1.東京海上グループのパーパスと現状

  • 当社は、今年8月で創立145周年を迎えます。その間、変わらずに「お客さまや地域社会の“いざ”をお守りすること」を私どものパーパスとして、保険本業を通じて、時代ごとに変化をするさまざまな社会課題の解決に貢献することで、持続的、長期的な成長を実現してきました。
  • 例えば、自動車保険です。今から100年以上前、日本にまだ車が1,000台ほどしか走っていなかった時代に、当社は日本で初めて自動車保険の販売を開始し、日本のモータリゼーションの後押しをしてきました。その後も、賠償責任に関する保険や人身傷害保険など、今では広く普及している保険商品も、当社が先頭に立って、広く世の中に提供してきました。
  • 現在は、「気候変動対策の推進」や「災害レジリエンスの向上」、「健やかで心豊かな生活の支援」といった、今の社会の大きな課題を、当社が特に取り組むべき重点領域と定め、掲げています。事業活動と社会課題の解決を循環させながら、重ね合わせながら、サステナブルな社会の実現に向けて、少しでも貢献させていただきたいと思っています。その結果として、当社の社会的価値と経済的価値を同時に高めていきたいと考えています。
  • 保険本業を通じた、社会課題解決に向けた取り組みを紹介します。
  • 能登半島地震について。今回の大地震に対して、既に多くのお客さまに保険金の支払いを完了しています。少しでも被災者の皆さまのお役に立ちたいという熱い思いを持って、全国各地から結集した社員の力と、衛星データやウェブの活用、完全ペーパーレスによる全国各地での保険金支払い決裁などのテクノロジーや仕組みを掛け合わせることによって、迅速な保険金の支払いができるよう努めています。
  • 能登半島地震の被害は大変甚大であり、復旧・復興にも時間を要するのではないかと思います。復旧・復興の過程の中で、何かお役に立てることがあるのではないか、それをどう実現していくのか。これらにしっかりと向き合って、引き続き、社会課題の解決に向けた取り組みを加速していきたいと考えています。
  • 現在、日本だけでなく、世界の各国・各地域の社会課題解決に繋がる取り組みが加速しています。これまで社会課題解決に貢献することで、結果として、国内外で利益を大きく伸ばしてきました。現在、利益の構成は、ほぼ国内と海外で半々です。日本発のグローバル保険グループへと成長しつつあると思います。
  • 3月末に決算する2023年度の業績見通しでは、お客さまからの支持のバロメーターともいえる収入保険料、いわゆる売上は、対前年で+7%となる5.9兆円。自然災害やコロナなど一過性の影響を除いた利益も、対前年で+11%の6,840億円程度となります。ここ数年、最高利益、最高益を更新しており、当社の実力は確実に引き上がりつつあるのではないかと考えています。

 

2.事業環境認識と“めざす姿”

  • グローバルに事業を展開する当社にとって、今や世界のどこで何が起こっても、他人ごとではありません。ここ数年間を振り返っても、自然災害やデジタル化の進展によるサイバーリスクの出現、ウクライナ戦争の長期化、昨年10月に勃発したガザ・イスラエルの衝突は、世界の分断をさらに進行させています。足元では、世界中でインフレが進み、今や数か月先、数週間先でさえ、世界がどうなるのかを見通すことが難しくなってきました。当社を取り巻く事業環境も加速度的に変化しています。
  • 拡大するお客さまや社会の課題、リスクに対して、最適な保険商品を提供して、お客さまや社会の“いざ”を支えたい。それだけではなく、事故の未然の防止や、万が一事故に遭われた際にも早期に復旧する、再発を防止するといった、保険の「事前・事後」や、人々が心身ともに健やかで、生きがいや幸せを感じられる「ウェルビーイング」にも貢献します。保険にとどまらないソリューションを提供することで、お客さまや社会の“いざ”を支えるためにも、“いつも”を支える会社になりたいと考えています。
  • こうした価値を提供する保険会社は、世界にも類がありません。実現した暁には、当社独自のユニークなビジネスモデルになります。その実現に向けて、向こう3年間の新しい中期経営計画では、グループの基本戦略で、当社の強みともいえるグローバルなリスク分散と、グループ一体経営を引き続き実行していきます。また、「成長」と「規律」を柱としたグループの重点戦略に取り組みます。

 

3.次期中期経営計画におけるグループの「基本戦略」と「重点戦略」

  • これまでさまざまな困難を乗り越えて、実力を高めることができたのは、グローバルなリスク分散とグループ一体経営があったからこそだと考えています。
  • グローバルなリスク分散は、「卵は一つのカゴに盛るな」という相場格言をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。当社の本業は、リスクを引き受けることです。グローバルに何かが起こることを前提にして物事を考えて、リスクを管理することで、健全性を確保して、どのような状況であってもお客さまとの約束を必ず守る。そうした経営を行っていく必要があります。これらを高度に実現していくためには、グローバルにリスク分散することが大変重要です。
  • リスクによる損失が同時に発生するものなのかどうかによって、保険会社として想定して、備えておかなければならない最大の損失額、リスク量が異なります。例えば、地理的に独立している日本の自然災害リスクと海外の自然災害リスク、あるいはリスクの性質自体が異なる損害保険の火災リスクと生命保険の疾病のリスク。損失が同時に発生する確率が低いリスクを引き受けることで、分散効果を得ることができます。同じ備えで、より多くの危険を安定的に引き受けることが可能になります。
  • 当社の安定した経営と成長を支えていくグローバルなリスク分散は、一朝一夕で構築できたものではありません。これまで15年以上の歳月をかけて、内部成長や政策株式の売却、ポートフォリオの見直しなどを通じて創出した資金を、M&Aに振り向けて、国内の保険事業とはリスクの相関が低い、海外の事業を拡大し、リスクの拡大を抑えながら、利益の成長を実現してきました。リスク量を適切にコントロールし、売上や利益を伸ばしてきました。
  • 大きな自然災害やコロナの影響が生じた年でも、会社の業績、利益へのインパクトを3割以下に抑えることができています。しかし、まだまだリスク分散の余地があると考えています。今後もさらなる取り組みを進めていきます。
  • これまで、M&Aを通じて、グローバルなリスク分散と持続可能な利益成長を実現してきました。その成功の秘訣は、当社とカルチャーがフィットして、今も成長をし続ける良い会社を買収してきたからだと考えています。例えば、大型のM&Aで獲得した北米4社は、買収した以降もマーケットの成長を上回る成長を実現しています。東京海上グループの中で個社としても価値を確実に高めています。
  • 各社の成長に加えて、グループ一体経営を通じた、グループシナジー(相乗効果)を実現しています。例えば2021年の東京オリンピック・パラリンピックです。この大型のイベントのリスクについて、高度な知見とノウハウを持っている米国のTokio Marine HCCと東京海上日動が連携して、オリンピック・パラリンピックに関わる保険を引け受け、大会の運営を裏方として支えました。
  • 日本のお客さまに、欧米のグループ会社の専門性を生かした保険商品を提供したり、資産運用に強みを有する米国のDelphiに、グループ全体の運用資産の一部を委託することで高い運用収益を獲得したりして、グループシナジーの実額は今、840億円まで拡大しており、当社独自の価値を高めています。
  • グループシナジーは定量的な効果だけにとどまりません。買収を通じて、グローバルなリスク分散と利益成長という成果を得たこと以上に、最大の成果は、高い専門性と知見を持った人材を仲間としてグループに迎え入れることができたことです。気候変動やサイバーなどの社会課題、リスクが世界中で拡大して、複雑化する中で、正しく課題を捉えて、その解決策を生み出して、引き受けたリスクを管理し、成長とガバナンスを高いレベルで両立させる力が必要になります。新たに獲得した高い専門性を持った多様な人材を、適材適所に配置し、グループ全体での事業や課題解決に、最もふさわしい人材を充てていきます。グループでグローバルに叡智を結集して、経営の重要事項を決定、実行することで、経営判断の質やスピードを高めています。
  • グループ一体経営は今年で8年目になりましたが、海外の人材を役員として多く登用したり、グループの総括補佐のポジションへ登用したり、今もなお進化を続けています。それが東京海上グループの独自の価値になりつつあります。この仕組みは、「第一世代」で途絶えることはなく、次の時代の経営人材たちを育てて、その人材たちにバトンをつないでいくことが、非常に重要なことだと考えています。
  • 昨年4月にTLI(Tokio Marine Group Leadership Institute)を創設し、私が初代の校長に就任しています。TLIをグローバルな経営リーダーを育成するための中心地と位置付けました。歴史を重ねて、経営リーダー育成をするための聖地と呼ばれるようになることを期待しています。この中で、当社独自のプログラムを構築していきます。
  • 4月から始まる中期経営計画における基本戦略と重点戦略について。社会課題が拡大して、複雑化していく中で、当社が引き続き、お客さまや地域社会の“いざ”の時はもちろん、“いつも”を支えて、さらなる成長を実現するためには、当社自身のアップグレードが必要であることは言うまでもありません。そのために、新しいリスクの引き受けや保険付帯サービスの提供などの保険事業の進化、従来の保険にとどまらないソリューション事業の成長に、今、挑戦しています。
  • 保険事業の進化の事例を紹介します。サイバー保険は、世界中で増加傾向にあるサイバーリスクからお客さまを守る保険です。当社は業界で初めて24時間365日、サイバートラブルに遭われたお客さまを支援する体制を構築しています。
  • サイバー保険のような、新たなリスクに対応した保険は、これまでの伝統的な自動車保険や火災保険に対して、「新種保険」と呼んでいます。新種保険の売上にあたる収入保険料を見ても、新しい分野での成果に着実につながりつつあることがお分かりいただけると思います。今後も社会課題の解決に向けて、保険事業を進化させていきます。
  • 現在、保険に留まらない複数の領域で、ソリューション事業の事業化を進めています。防災・減災事業とモビリティ事業の2つの領域での取組みをご紹介します。
  • まず防災・減災事業です。お客さまにとっては、事故や災害は起こらないほうがいいものです。万が一それが起きても、被害はできるだけ小さいほうがいいですし、復旧は早いほうがいいですし、できれば再発しないほうがいいものだと思います。その中で、2021年に「防災コンソーシアムCORE」を立ち上げました。現在、111社が集まる、日本を代表するコンソーシアムとなっています。昨年11月には、グループの防災・減災ビジネスを加速すべく、新しく「東京海上レジリエンス株式会社」を設立しました。防災コンソーシアムCOREに集まっていただいた、志を同じくする企業の皆さんが持っている、多種多様な技術やノウハウと、東京海上グループが持っている膨大な事故データなどを掛け合わせることで、一気通貫の防災・減災総合ソリューション事業の実現を目指しています。
  • 防災・減災ソリューション事業の例として「レジリエント情報配信サービス」「サプライチェーンリスク可視化サービス」があります。どちらも自然災害による危険が迫った場合に、お客さまへアラートを発信して、早期の避難、逃げ遅れゼロ、被害の最小化につなげるサービスです。このようなサービスを企業の皆さまや、自治体の皆さまに提供することで、日本各地の防災・減災対策の向上に貢献していきたいと考えています。
  • モビリティ事業は、人やモノの移動に関わるリスクに対するサービスを提供します。モビリティに関する社会課題は、事故の防止や安全運転にとどまりません。今般の法改正により、トラックドライバーの時間外労働が制限され、物流の停滞が懸念される「2024年問題」や、他にも、ドライバーの健康管理、今後の自動運転への対応など、課題が多様化しています。これらの課題に立ち向かい、モビリティ事業に関わるお客さまを支えるべく、新しく「東京海上スマートモビリティ株式会社」を昨年11月に立ち上げました。
  • 防災・減災やモビリティの他にも、ヘルスケア事業や、脱炭素事業などでも、新しい事業展開の計画をし、準備会社を既に立ち上げています。
  • ヘルスケア領域、モビリティ領域、防災・減災領域のそれぞれの市場規模は大きく、1〜2兆円となっています。その中で、保険の関連事業でこれまで蓄積してきた豊富なリアルデータやリスクマネジメントのノウハウ、専門人材などの人的資本を活用しながら、これまでにない新しいソリューションを次々と生み出しつつあります。
  • 事業領域の拡大にあたる社員の時間を創出するために、従来の社内事務の徹底削減にも取り組んでいます。当社では400億円のデジタル投資を行い、2023年度には事務量の15%削減を計画しています。オンペースで進捗(しんちょく)しています。さらなる事務量の削減に向けて、生成AIの活用にも取り組んでいます。生成AIは、情報漏えいなど回避すべきリスクも多いですが、それらを防止する仕組みをしっかりと構築した上で、当社独自のChatGPTや、保険に特化した対話型のAIを開発しています。現在、東京海上日動では、全社員が当社独自のChatGPTを使える環境にあり、これらを最大限に活用して、生産性の向上はもとより、例えばコールセンターのオペレーター全員が、より一層品質の高いお客さまに寄り添った対応ができるよう、品質の向上にも努めていきます。
  • グループの中核会社である東京海上日動における一連の事案について、皆さまにご心配、ご迷惑をお掛けしていることを、深くお詫び申し上げます。
  • ビッグモーター社による保険金の不正請求の事案とは、代理店および指定修理工場であったビッグモーター社が、組織的に保険金の水増し請求を行っていたというものです。東京海上日動では当初より一貫して厳正に対処してきましたが、ビッグモーター社による不正を見抜けなかったことを、大いに反省しています。ビッグモーター社に車を預けて、安全性に不安を感じているお客さまには、安全点検をしていただいた費用を当社が負担させていただくなど、現在、被害に遭われたお客さまの被害の回復を最優先事項として、対応を進めています。併せて、今後は不正請求防止のため、テクノロジーの活用を含めた、あらゆる再発防止策を講じていきます。
  • 東京海上日動の指定修理工場の制度の運営にも改善の余地があると認識しています。指定修理工場制度は、元来は優れた修理工場をお客さまに紹介することで、事故に遭われたお客さまに対して、安心を提供するという目的で作り、運営してきました。今後は、お客さまご自身のニーズにマッチした工場に、安心して修理をお任せすることができるように、修理工場の情報をインターネットで見える化して、その中からお客さまに選んでいただく仕組みに変えることで、利便性の維持と、透明性の向上を図ります。
  • 保険料調整行為の事案とは、企業向けの保険の一部で、他の損害保険会社との保険料の調整行為が発覚したものです。当然あってはならないことで、発覚して以降、外部の弁護士を複数名起用した特別調査委員会を直ちに設置し、徹底的な調査と真因の分析を行い、再発防止策の策定、実行を行っています。昨年12月には、金融庁から業務改善命令を受け、本日、業務改善計画を提出する予定です。提出後、計画の概要を公表する予定ですが、既に実行中の競合他社との接触制限や、法令ルールの理解・浸透に向けた研修などの再発防止策を徹底していくことは当然のことです。会社を創りかえ、もう2度と起こらないと、皆さまにご安心いただけるまで、取り組みを実行していきます。グループレベルでもガバナンスの強化を徹底的に実行します。先日リリースした、グループ監査委員会の新設は、そのための一つです。社外からの視点も活用して、体制強化を図り、その上で、グループ一体経営をもう一段進化させることで、持続的な利益成長をより確かなものにしていきたいと思っています。成長とガバナンスを高いレベルで両立させる、真の意味でのHigh Quality経営を必ず実行しますし、実現していかなければならないと考えています。

 

4.株主還元

  • 私どもの強みを最大限に活用して、さらなる成長に向けた戦略を着実に実行していく結果として、一過性の影響を除いた2023年度の修正純利益は6,840億円程度を見込んでいます。簡単ではありませんけれども、当社の実力は確実に高まりつつあると考えています。私たちは、まだ利益成長の旅の途中にあります。今後も、少しでも世の中の役に立つことで、世界トップクラスの利益成長を実現します。
  • 当社は、事業を通じた利益の成長と、株主の皆さまへの還元は整合的であるべきだと考えています。2023年度の普通配当は、高い利益成長に加えて、配当性向を2023年度から50%に引き上げることで、対前年で+21円増配となる121円としています。これは12年連続の増配となります。
  • 配当に株価の上昇を含めた、トータル・シェアホルダー・リターンの推移を見ると、持株会社を設立した2002年に投資していただいていれば、現在ではその約10倍の価値を、過去5年、過去10年で見ても、3〜5倍の価値となっていることが見てとれると思います。
  • 個人投資家の皆さまからいただいた要望を踏まえ、2022年10月に株式分割を実行しました。より多くの個人投資家の皆さまに、当社の株式を購入いただくことを期待しています。当社は皆さまに株式の購入を検討いただく価値のある会社であり続けたいと考えています。

 

5.おわりに

  • 当社が事業を行うことができるのは、株主、投資家の皆さまをはじめ、ステークホルダーの皆さまに支えていただいているおかげだと、心から感謝を申し上げます。当社は、次の一歩を踏み出そうとする全てのお客さまの力となり、少しでも社会の役に立ち続けることで、持続的に成長し、企業価値を引き上げていく。そのために、今後もグローバルなリスク分散と、グループ一体経営の実力を着実に高めて、成長とガバナンスの両方を高めていき、当社のビジネスのパーパスと戦略、その結果としての利益、そしてステークホルダーの皆さまへの貢献が一直線につながる経営を実行していきます。もっともっと仕事をさせていただきたいと思いますし、皆さまの期待に応えられる会社をつくっていく所存です。引き続きのご支援をよろしくお願いします。

 

 

6.質疑応答

Q1. 御社の強みは、M&Aで買収した海外企業に新種保険を作る能力のある人材が多く、それにより業績を伸ばしていったという認識で合っていますか。

A1. ご認識のとおりだと考えています。海外に進出したのは、日本が自然災害大国であるためです。日本の国土の面積は世界の0.25%、経済規模は世界の6%ほどですが、世界で起こるマグニチュード6以上の地震の20%が日本で起こります。「お客さまとの約束は何があっても必ず守る」ことが一番大事であり、そのためにもリスク分散をすることが必要で、海外に進出してきました。新しい会社をグループの仲間に入れることで、世界中のさまざまなマーケットで最も専門性が高い人たちを仲間に入れることができました。彼らの専門性や判断力、そして経験を、東京海上グループの核となる施策に織り込んできました。 日本は自動車保険や火災保険が損害保険の中心ですが、この他にも中小企業の皆さまに提供しなければいけない保険が多くあります。それらの保険のヒントやアイデアを、最先端のノウハウと技術をもつ仲間と話し合い、一緒に作っていくことが、当社の最大の強みではないかと思っています。

 

Q2. 自動車保険や火災保険などの個人向け保険商品はどの会社も同じだと感じています。御社の強みでもある、中小企業等に提供している新種保険のようなものが、個人向けにもあるといいと感じます。 例えば、購入したマンションのエアコンや床暖房が壊れると高額な修理費が発生しますが、そういうものを補償する、何か目に見えるような形の保険があったらいいなと個人的な要望として思っています。

A2. マンションやご家庭の建物・家財に関する個別のご要望については、明記物件にて引き受ける方法もないわけではないのですが、もう少しお客さまに分かるような形で、特にオリジナルなニーズに対応できるような保険の提供ができないかとのご要望と承りました。商品開発の部署にもご意見を頂いたことを伝え、宿題として持ち帰りたいと思います。

 

Q3. 御社はこれまで大型M&Aに成功されていますが、買収する際に大切にされていることはありますか。現在または今後、ターゲットとしている地域や分野があれば教えてください。

A3. M&Aには絶対に守る3原則があります。1つ目は、買収する先が「良い会社」であること。良い会社とは、現在の業績が良く、想定されている今後の見通しが良いこと。2つ目は、他社が簡単に模倣できないビジネスモデルを持っているなど、業績が良い理由が明確にあること。3つ目が一番大事で、何のために経営するのかという経営の価値観、カルチャーがフィットすることです。この3点は絶対に外さないようにしています。 今、世界中でM&Aの価格が高くなっています。私どもが、株主の皆さまからの資本を使って、M&Aをするため、絶対に高値つかみをしないようにしています。常に候補先を選定しながら、先方の経営陣と膝を突き合わせてしっかり議論して、何のためにビジネスをする会社かを調べて、その上で、リスクリターンがしっかり見合うかどうかの判断でM&Aを行っています。 今後については、様々な候補先がありますが、現在、ビジネス全体の半分が海外で、うち8割は欧米ですが、アジアや、ブラジルなどの新興国にも候補先があります。当社の目的はM&Aではなく、リスクを分散することなので、良い会社を買収して新しい成長を取り込むことが重要です。米国では、数多くの様々な種目の保険があります。マーケットは大きく、成長もしていますし、厚みもあります。したがって、欧米、アジア、ブラジル、中東であっても、3原則を満たす会社でチャンスがあれば積極的にM&Aしていきたいと考えています。現在は欧米が大きいですが、アジア、中南米などの新興国の成長を取り込み、ビジネスチャンスにつなげたいと考えています。

 

Q4. 日本は災害リスクが大きいため、海外に展開する必要があるとのことでした。資料21ページに、グループシナジーが840億円とあります。資産運用はDelphiがされているとのことですが、その割合と、資産運用の詳細について教えていただけますでしょうか。

A4. 今、いろいろな形でグループの相乗効果が出てきています。それぞれが同じぐらいの割合ですが、一番大きいのは資産運用の収益のシナジーです。東京海上グループのDelphiには、ポートフォリオマネジャーが20人ほどしかおりませんが、それとは別に、1人につき50人程度の、世界でも有数のプロジェクトマネジャーを擁しています。米国を中心に企業の社債に投資している割合が大きくなっています。投資先には、格付けの高い会社もありますし、BBBぐらいの会社でも実態よりも低く評価をされていると判断すれば、そういうところにも投資をしており、このようなことを含めたクレジット運用をやっています。社債や地方債など、債券が中心の運用となっています。 長い期間で調達できる保険の資金を使って、短い期間の資産に投入することで、相場が激しく動いても慌てて売買することなく、素晴らしいと判断した会社に投資をし、しっかりと持ちきる運用を行っています。Delphiグループは、アメリカで資産運用をする会社の利回りよりも、2%以上高い利回りで運用しています。2008年の金融危機にも収益を上げ、以来ずっとベンチマーク先を上回る利益を上げています。

 

Q5. 資料37ページの株式の分割について伺います。分割の効果で株主数がどのぐらい増えたのか、また既存の株主にはどれぐらいメリットがあったのでしょうか。

A5. 2022年10月に株式分割を行ったのは、企業の株主さま、個人の株主さま、機関投資家などさまざまな方で株主が構成されている中で、個人投資家の皆さまに当社の株式を購入していただいて、できるだけ長期に保有をしていただけるようなビジネスをしながら、さらに良い仕事をやっていきたいという思いからでした。分割後に、個人の株主さまの割合が増えました。一方で、株式数については、分割後、株主の皆さまへの配当とともに自己株式買いも行っていますので、増えていますが、大きく変わっているわけではありません。つまり、株主構成が少し変わり、個人の株主さまが増えてきています。 投資家にはいくつか種類があります。バリューの投資家は、既存の価値よりも株価が低すぎるのではないかと判断した会社に投資をして、一定の株価になったら、売却します。一方、この企業はきっと成長するだろうと、成長期待で買っていただけるグロース投資家がいます。足元では、バリュー投資家からグロース投資家へ株主構成が変わってきているといった変化もあります。 株主の皆さまへのメリットは、当社の利益成長を通じて、23年度の普通配当は、前年比2割増しとなっています。12年連続の増配をやってきました。その上で、利益成長に応じて、5年間の利益の平均に50%の配当性向を掛けたものを配当することを原則にしています。ここ数年間は、実質的に最高益が続いており、5年平均がだんだんと高くなってきています。それと、配当性向を50%に高めたことにより、その効果で配当が増えています。さらに、株価が、株式分割をした時は7,000円ほどでしたが、今は1万3,000円相当に(3分割したため、現在の株価4,300円に3を掛けた)上昇しています。皆さまの資産価値が1年半で70〜80%上昇したことが、メリットとしてあります。

 

Q6. 持ち合い株の解消のニュースが出ており、これまで政策保有されていた株を、保険の大手4社が全て売却するという内容でした。御社はこれまでどんな会社の株をどのくらい、どういった目的で持っておられたか。また、売却した資金をどうされるのか、ご回答いただけますでしょうか。

A6. この政策保有株は、発行体の企業さまとの関係をより強化するために、昭和時代からずっと、持ち合い株として保有してきました。当社の資産30兆円程度のうち、3兆円強が政策株式の資産となっています。 当社は2001年頃から、政策株式の売却を続けています。その理由は大きく2つあります。1つは、資産や資本を何に使うのかと考えた時に、ビジネスのパーパスである、「お客さまや地域社会の“いざ”を守る」「“いつも”を支える」ために、新しい事業への投資や、成長投資、新しい商品やサービスを作ることに使いたいと考えたからです。20年前に私たちの持っていた政策株式の簿価を100とすると、今は28〜29となり、7割以上を既に売却しています。その上で、現在、3兆円強の政策株式を保有しています。 私が2019年にCEOに着任してから、政策株式の売却を加速させています。その時は、発行体の企業の方と、マネジメントがしっかりと入って、丁寧に発行体の皆さまと対話をして、必ず同意をした上で、お客さまとの計画に沿った形で、売却してきました。2〜3年前から、売却スピードは5割増しになっています。 もう1つ近年の変化として、お客さまや株主の方からいただいた資本でどう利益を出すのかという、資本の収益性・効率性を高めていかなければいけなくなっているからです。株よりも、本業で収益をしっかり上げていくことが、大きな流れになっています。 お客さまとの本業の取引の中で一番大事なことは、お客さまが持っているリスクやニーズに対して、保険を適正な保険料で提供することです。その一番大事なところが、政策株式を持っていること・持っていないことで違いを生んでいたり、本業協力の影響を受けたりしているのではないかということだと私は理解しています。こうした観点を金融庁からも指導、要請を受けているのも事実です。政策株式は、お客さまと丁寧な対話をしながら、同意いただいた上で、基本的にはなくなるまで売却し続ける。これまでも言ってきたことなので、引き続き売却を進め、可能であればさらに加速して売却をしていきたいと考えています。 3兆円の政策株式は、簿価でいうと5,000億円ぐらいなので売却すると利益が生まれます。この資金を、防災・減災や、ヘルスケア、脱炭素、モビリティ、サイバーなど、新しい商品、保険に充てたいと考えていますし、事故・災害は来ないほうがいいですが、もし来ても早く保険金を支払い、お客さまに安心・安全を提供できるような事業に使わせていただきたいです。他にも、これまで話したようなリスクを分散するために、私たちと価値観が合う良い会社があれば、新たな成長基盤に取り込むことにも使わせていただきたいですし、しばらくこの資金を使うことがなければ積み上げることはせず、株主の皆さまに自己株式購入などで還元し、成長と規律を重んじて進めていきたいと考えています。

 

Q7. 今回の能登半島地震や、以前の熊本地震や東日本大震災が起きた時に、御社の利益への影響はありましたか。

A7. 大きな影響がありました。今は地震など自然災害が多くなっています。日本の地震保険には再保険制度という、一定の額になると国の財政で支える仕組みがあります。それでも、例えば東日本大震災の時には、数千億円の保険金の支払いとなりました。今年が最高益で7,000億円弱の利益を見込んでおりますが、大きな規模の地震が起こると何千億円という大きな影響を与えます。それを世界中の再保険を活用することや、全体の利益を高めていくことで、保険会社としてリスク転嫁を進めています。 ここ数年は地震だけではなく、台風や水災が多くあり、甚大化しています。そういうことも含め、海外のビジネスを大きくしたり、自然災害のウエイトを小さくしたり、これまでの実績や経験を元に世界中の再保険会社との関係性を強固なものにしたり、他にも、異常危険準備金という、大きな災害などの巨額な支払いに備えて積み立てているものがありますが、こうした備え、対応によって、災害があっても、利益に対してのインパクトを3割弱に抑えることが可能となっています。しかし、この3割は決して小さくありません。当社としては、再保険も含めてプロテクションを高める、優良なビジネスのポートフォリオでさらなる分散を図るといったことを続けていきます。

Q8. 日本の大きな問題である少子高齢化、人口減少について、昨年の御社の経営戦略でも少し触れられていましたが、国内事業が減少するのは明らかで、国内と海外の事業比率は今後、変わるのではないかと予想されます。この辺の考えをお伺いできればと思います。

A8. 例えば米国と日本では、ベースの経済成長率が違います。米国は人口が増え、経済も強く成長を続けています。日本の場合はGDPの成長率が2%ほどですが、米国は数%伸びます。東京海上日動と米国の会社が同じように業績を伸ばしても、利益や売上に成長の差が出てきます。このまま保険本業だけでやっていくと、海外のウエイトがどんどん高くなります。機会があればM&Aを行うと言いましたが、国内には候補の会社がそう多くありません。つまりは伝統的な保険となると、海外比重が高くなってくることが予想されます。 保険だけではなくて、事前と事後の安全・安心を提供するビジネスを広げていきたいとお伝えしましたが、日本は課題先進国だと思っています。自然災害が多い、少子高齢化もあり、さまざまな社会福祉の問題もあります。これは「この次は米国が、次にアジアが……」と、追い掛けて出てくる問題です。保険以外の事前・事後の事業を、国内だけでなく海外でも新しい事業を立てる。5年10年かかっても、絶対に立てるとみんなに言って、取り組んでいます。できれば課題先進国である日本から、安心と安全をチームで価値提供できるビジネスが出てくるといいと思い、応援をしています。 このビジネスの余地は、日本ではものすごく大きいと思っています。事前・事後の事業と、保険事業をトータルで考えた時に、私はまだまだ日本は成長するマーケットではないかと思っています。ぜひ日本から新しい事業を作り、それが東京海上のアジア事業に輸出して、それを米国の事業に展開する。そういう一つの繋がりができればと思っています。 人口問題については、日本の人口が8,000万人以下にならないよう、今から長期の戦略も含めて対応しなければいけないと私も認識しています。本業の伝統的な保険は海外にもWEBにもあります。しかし、新しいリスクは多くあり、新しい保険や新しい事業は、日本のマーケットでまだまだ成長すると考えています。いろいろな事業を全部足すと、東京海上グループのビジネスは、国内と海外で半々になるとバランスが良いのではないかと、期待を込めて考えています。

 

最後のあいさつ

  • 本日は多くの個人投資家の皆さまにお越しいただき、改めて当社が多くの方に支えられていることをありがたく思いました。当社はこれからも、創業以来のパーパスである「お客さまや地域社会の“いざ”をお守りする」ために、投資家の皆さまとこうした対話を通じながら、グループ一丸となってビジネスを進化させていきます。引き続き、皆さまのご支援を賜りますよう、よろしくお願いします。

以上

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

大和インベスター・リレーションズ(以下、「当社」といいます。)はこの資料の正確性、完全性を保証するものではありません。

ここに記載された意見等は当社が開催する個人投資家向け会社説明会の開催時点における当該会社側の判断を示すに過ぎず、今後予告なく変更されることがあります。

当社は、ここに記載された意見等に関して、お客様の銘柄の選択・投資に対して何らの責任を負うものではありません。

この資料は投資勧誘を意図するものではありません。

当社の承諾なくこの資料の複製または転載を行わないようお願いいたします。