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株式会社大気社(1979)

開催日:2024年2月27日(火)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:取締役専務執行役員  中川 正徳 氏

 

1. 当社事業の紹介

・ 当社は一般消費者向けの商品やサービスを提供していません。大気社という社名を初めて聞いた、古めかしい名前だな、と思った方も多いと思います。ぜひこの機会に当社についてご理解いただければと思います。

今期上期は最高収益だと紹介されましたし、日経平均株価は3万9,000円とスゴイところに達しています。当社の株価は2月19日で4,895円。5,000円ちょっと手前まで届きました。いろいろとラッキーな要素も多く、高値を付けていますが、株価なので上下があります。ぜひとも下がったいいタイミングで購入し、10年くらいじっくりと持っていただくと、配当収入がチャリンチャリンと毎年入ってくるようになると思います。

・ 当社は創業110年目。大正生まれの老舗企業です。東証プライム市場に上場しており、業種としては建設業に属しています。事業内容は、ビル空調設備、産業空調設備、自動車塗装システムの設計・施工を行っています。いわゆるエンジニアリングの世界です。

建物の中でも見えない場所に設置されている「設備」を手掛けています。なかなかイメージが湧かないかと思いますが、人間の体に例えれば、「皮膚」や「骨格」に相当するのが建物、「内臓」や「血管」に相当するのが「設備」です。いくら見た目が立派な建物でも、「設備」が健全でなければ建物として充分に機能しません。当社の事業は、皆様の日常生活では目に触れる機会がないかもしれませんが、重要な役割を担っているとご理解ください。

・ 当社の上場以来の業績推移ついて。当社は受注産業であり、市場環境の影響を一定程度受ける傾向にあります。バブル期に業績を大きく伸ばしたものの、バブル崩壊からは業績の横ばいが続きました。しかし、リーマンショックを最後に、それ以降は海外の設備投資が回復し、利益水準は上昇。さらに、国内では2013年に東京五輪開催が決定したことによる建設ラッシュ、また同時期にスマートフォンの普及による半導体関連企業の設備投資拡大などにより利益水準は上昇基調を保っています。

・ 当社の事業の全体像について。当社は、「エネルギー・空気・水のエンジニア」として、 「最適な環境づくり」というキーワードをもとに事業を拡大してきました。それが現在でも当社のコアになっています。ビル空調、産業空調、塗装システムは、110年の歴史の中で技術の探求を通じてコアビジネスとして確立。そのコアビジネスから、新たな事業をさらに拡大しています。

また、当社は早くからグローバルに挑戦を続けており、当社のビジネスフィールドはさまざまな分野や国・地域にまたがっています。

 

【事業分野@ ビル空調設備】

・ ビル空調は、オフィスビルなどの施設で、人が快適に過ごすための空調設備が対象です。お客様は主にゼネコンや不動産会社など。競合他社は、大小さまざまな空調設備会社や、一部の電気設備会社も競合するケースがあります。当社の業界内の立ち位置は、建築を担うゼネコンの下に入るケースが一般的です。当社は空調設備の設計・施工管理を行い、選定した機器などはメーカーから調達。配管、ダクト、機器の据付などは工事業者に依頼しています。市場環境は、都心の再開発計画など、建設需要は底堅く推移しています。

【事業分野A 産業空調設備】

・ 産業空調は、電子部品や医薬品等の工場におけるクリーンルームなど、“モノづくり”のための空調設備が対象です。お客様は主に電子部品メーカーや製薬メーカーなど。競合他社は、求められる技術水準が高いことで当社と同じ規模の空調設備会社に限られます。小規模な空調設備会社や電気設備会社では、技術的なハードルから参入が難しい場合があることが、ビル空調との大きな違いです。当社の業界内の立ち位置は、メーカーから直接仕事を引き受けるケースが多く、その点でもビル空調と大きく違います。市場環境は、半導体関連メーカーや製薬メーカーにおいて、積極的な設備投資が継続。また近年EV電池メーカーの投資も増加しています。

【事業分野B 塗装システム】

・ 塗装システムは、国内外の自動車メーカーをはじめとするさまざまな塗装工場が対象。当社は、塗装システムにおいて国内第1位、世界第2位と、高いシェアがあります。

空調の会社が、なぜ自動車塗装をやっているのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。自動車の美しい塗装の仕上がりには、ブース内の空気に、ほこりや塵がないクリーンな状態であることが必要不可欠です。そこに、当社の伝統的な空調技術が活かされています。

競合他社は、業界内で世界1位のドイツのエンジニアリング会社(デュール社)、その他、中国など各国現地の会社です。ドイツのエンジニアリング会社は欧州メーカーに強みがありますが、当社は日系メーカーに対して高いシェアを誇ります。当社の業界内の立ち位置は、さまざまなパターンがありますが、建築を含めて塗装工場を一括で請け負える点が、空調設備との大きな違いです。市場環境は、自動車メーカーではさまざまな地域で投資が活発化しており、我が社はどこでもついていきます。

 

2. 当社の特長

・ 1つ目の当社が塗装事業で高いシェアを獲得している要因について。まずは自動車生産工場の全体像について簡単に説明すると、自動車生産工場は、製造工程ごとに建屋が分かれています。この工程は各メーカーほぼ同じです。

鉄板を加工するプレス工場、クルマのボディをつなぎ合わせる溶接工場、クルマの色を塗る塗装工場、エンジンやタイヤを取り付ける組立工場、これらを経て、すべての検査に合格したクルマがお客様の手に届きます。

当社はその中の塗装工場の設計・施工を担当。塗装工場内では、まずボディ表面の汚れを落とし、塗料の密着性を上げる前処理を行います。次に錆を防ぐための防錆(ぼうさび)塗装を行うため、電流を流したプールで均一に塗装する電着塗装工程があります。次に、色がより美しく見えるための中塗り、最後に実際の色を付ける上塗りといった工程を経て、塗装の美しい仕上がりを実現します。各工程では塗料を乾かすことで塗膜にする乾燥工程もあり、塗装工場一つとっても多くの工程があります。

工場の建設では、塗装を行う塗装ブースのほかに、その中に設置されるコンベア、塗装ロボットなどが含まれており、当社はそれら全てを一括して請け負うことができます。このように、当社はトータルエンジニアリング会社としての優位性により、国内第1位、世界第2位のシェアを誇っております。

・ 2つ目の高度な技術力による競争優位性について。前期の受注工事高における事業分野ごとの内訳をみると、ビル空調に比べ、産業空調と塗装システムの割合が高くなっています。産業空調と塗装システムは、高度な技術力が求められるため参入障壁が高く、比較的収益性が高い特徴があります。

当社は各メーカーの求める技術力で、他社に対して競争優位性を持っています。一例では、医薬品メーカーの工場では機器の洗浄、薬品の充填、検査など各工程で清浄度が規定されており、規程への適合が求められます。各工程間で清浄度の低い部屋から清浄度の高い部屋に空気が流れないように、繊細な室圧のコントロール技術が必要です。このような顧客ごとに異なるニーズに応え続けることで、両事業分野において高い受注比率を確保しています。

・ 3つ目の強力なグローバルネットワークについて。当社の海外進出は、1971年にタイで初の海外子会社を設立したことから始まり、現在では18か国に28の海外連結子会社を有しています。また、海外受注高比率は、前期実績においては47.1%となりましたが、概ね5割を維持。海外拠点数とともに建設業の中でも極めて高いことが特徴です。

また、拠点ごとに現地スタッフを採用。多くのナショナルスタッフが活躍できる拠点運営を進めています。今、連結従業員数は5,000名強ですが、3割くらいの1,500名程度が日本人で、7割が外国人が占めている会社です。

このように、現地に拠点を有することによる充実した顧客サポート体制と、現地化の推進によるコスト競争力が当社の強みです。

・ 市場環境の変化に対する高い柔軟性について。当社の事業は、受注や売上が景気の影響を受けやすいという特徴があります。しかし、3つの事業分野を持つことと、国内外に事業展開していることで、市場環境の変化に対するリスク分散が効いています。

その他、固定費負担の少なさや、事業分野を超えて人員をフレキシブルに組み換えできる点も当社の大きな特徴です。土地や工場を持ち、固定資産が貼り付くようなビジネスモデルではありません。身軽でROAが高いビジネスモデルです。

1974年に東証に上場して以降、当社がこれまで一度も経常赤字に陥ることがなかったのは、この事業の柔軟性によるものと言えます。

 

3. 成長戦略・環境貢献・投資計画

【事業領域の拡大@ 完全人工光型植物工場】

・ 成長戦略として、環境システム事業では、産業空調で培った空調技術を生かし、完全人工光型植物工場事業に取り組んでいます。栽培エリア内の温度ムラを解消することで、均一な品質の野菜栽培を実現。そして、植物工場では空調された密閉空間で栽培を行うため、天候の影響を受けず安定した収穫が可能です。

また、虫がいないため農薬を使用しないので、安全・安心です。

さらに水耕栽培で土を使わないため、衛生的で生菌数が少なく露地物に比べ消費期限が長いことから、食品ロスの削減にも効果的です。

このように、当社の植物工場は外食産業やコンビニ向けなどの業務用ニーズにマッチしています。今後導入が加速すると見込んでいます。

【事業領域の拡大A 自動車以外の自動システム】

・ 塗装システム事業では、航空機・鉄道車両など、自動車以外の塗装や、塗装を剥がす研磨工程に取り組んでいます。

市場ニーズとして、まず、航空機や鉄道車両はともに、数年ごとに塗装を剥がし整備を行い再塗装する必要があります。そして、その作業は人による手作業で行われています。

そのような中、熟練技術者の減少や労働安全衛生の改善、生産性の向上などへの対応策として、塗装及び研磨作業の自動化へのニーズが高まっています。さらに、航空機の運航機数の増加や、インドの鉄道車両では鉄道運営距離の延伸に伴う車両数の増加などが見込まれており、当社のビジネスチャンスは拡大すると考えています。

また、航空機、鉄道車両に限らず、建築材料や工業製品など塗装・研磨が必要な分野は多岐に渡っており、自動車以外の分野の領域拡大を目指しています。

 

・ 環境貢献について。前期より始まった中期経営計画では、スコープ1・2のCO2排出量の削減目標に加えて、昨年の4月25日にTCFD提言に基づく気候関連情報の開示を行いました。TCFDとは、各企業の気候変動への取り組みを具体的に開示することを推奨する、国際的な組織のことを言います。事業部ごとに2050年と2030年のCO2排出量の目標を設定しています。

【事業を通じた社会・環境貢献@】

・ 環境システム事業のCO₂削減に向けた具体例について。当社が請け負うクリーンルームの空調設備などにおいて、必要な部分だけを局所的にクリーン化・環境制御する技術をはじめ、さまざまな技術を通じカーボンニュートラル達成を目指しています。

【事業を通じた社会・環境貢献A】

・ 塗装システム事業では、カーボンニュートラル社会の実現に向け、さまざまに取り組んでいます。特に高い環境目標を設定する自動車業界のニーズに応えるべく、自動車の塗装工場の塗料散布を極力抑える塗着効率の高いシステムの開発や、従来のスプレー塗装に変わり、車体ボディをフィルムで加飾することにより、“塗る”ことからの脱却を目指した技術革新にも同時に取り組んでいます。自動車メーカーからは多くの関心を寄せられており、現在、急ピッチで開発を進めています。

 

・ 事業領域拡大や環境貢献の取り組みに加えて、その他の投資計画について。中期経営計画では、3年間で200億円の成長に向けた投資を計画しています。

主な投資テーマは、「事業関連投資」「設備・人材投資」「技術開発投資」の三つです。

2023年3月期は、事業関連投資として、2020年に子会社化したインドのクリーンパネル製造会社であるNicomac Taikisha Clean Roomsへの追加出資を行い、100%子会社化しました。今後、同社が持つ大手製薬メーカーへの高いブランド力と、日本で医薬品向けの豊富な工場実績を持つ当社の知見を組み合わせ、今後成長が期待されるインドにおいて、付加価値が高いクリーンルーム建設市場における事業拡大戦略をいっそう推進していきます。

設備・人材投資としては、現場DX関連の取り組みをスタートさせ、またグローバルな基幹業務システムの構築を進めています。

現在、環境システム事業において、神奈川県愛川町に新技術開発センターを建設中で、今年5月に完成予定です。昨年4月に開設した新宿本社のR&Dサテライトとの連携による技術体験を通じた顧客とのコミュニケーションの拡大と、顧客視点の技術開発を推進していきます。

また、塗装システム事業では、スプレー塗装に代わるドライ加飾技術の開発のため、神奈川県座間市にあるテクニカルセンターに実証ラインを設置する予定です。。

今後の投資計画については、説明可能となったものから順次、取り組みをお伝えします。

投資予算200億円の進捗について、1年目はやや少なめでしたが、その後、追加投資を行い、残り1年で200億円の投資になるのではないかと思います。

 

4. 業績

・ 業績の推移について。過去13年間の受注・売上・経常利益の実績と、前期から始まった中期経営計画の3か年の推移をみると、足元ではコロナによる影響で落ち込んだ業績が回復傾向にあります。前期の受注工事高は2,886億円と過去最高となりました。その背景として、環境システム事業では、半導体関連メーカーの設備投資や、首都圏を中心とした再開発案件需要の増加。塗装システム事業では、先進国側では自動車工場の建て替え更新の需要、インドなどの新興国側では増産投資などの増加、また塗装工場のカーボンニュートラル対応の設備投資などがありました。今期以降も旺盛な設備投資を見込んでおります。

・ 第3四半期までの足元の業績について。まず、当社グループの市場環境では、国内、海外ともに堅調さを維持。市場環境は良好でしたが、今期第3四半期の受注工事高は前年同期に大型案件の受注があったことから、反動減となりました。来年度からは残業時間の上限が月45時間に変わるので、受注を抑え気味にせざるを得ない点もあります。しかし業績面では、前期からの繰越工事の順調な進捗により、完成工事高と利益において3Q累計の実績で過去最高を達成しました。

・ 2024年3月期の通期業績予想について。第3四半期の決算発表の際に、3Q累計の実績および直近の事業環境等を踏まえ、通期業績予想を全項目で上方修正しています。受注工事高では、前回予想の2,255億円から2,560億円と300億円の上方修正。完成工事高は2,945億円で、100億円近い上方修正。経常利益は155億円から181億円で、26億円の上方修正。当期純利益は105億円から133億円の上方修正です。

・ 事業別の受注工事高の前期実績および今期予想について。今期の予想は、前期の大型受注の反動減や2024年4月から実施される建設業における残業規制への対応により、環境システム事業の受注が減少。前期比326億円減の2,560億円となる見通しです。その一方、足元の市場環境では、国内外で電子部品や医薬品などのメーカーによる投資が好調であること、また、首都圏におけるオフィスビルの建設需要や自動車メーカーによる投資も堅調に推移しており、上期に発表した修正予想をさらに上方修正しています。

・ 事業別の完成工事高および経常利益を、前期実績および今期予想で見てみると、完成工事高は、環境システム事業、塗装システム事業ともに増加し、全社では前期比797億円の増加で2,945億円となる見通しです。

経常利益は、売上高増により環境システム事業、塗装システム事業ともに増加し、全社では前期比50億円の増加で181億円となる見通しです。

環境システム事業の利益について、前期に比べて採算性の低い大型案件の比率が高まり、利益率は低下しますが、利益額は増加する見通しです。

なお、それらの採算性の低い物件は、当社のさらなる技術力獲得のために戦略的に受注した案件であり、今後の当社の成長に資するものと考えております。

塗装システム事業の前期比については、前期は国内、海外ともに半導体供給不足等の影響で、出来高の後ろ倒しなどがありました。今期はその傾向が解消されることで完成工事高が増加し、それに伴い経常損失から経常利益に転換する見通しです。

 

5. 株主還元

・ 過去の配当方針は、配当性向による目標を掲げており、2011年から2020年まで利益を伸ばしてきたことで、10期連続増配となりました。2021年は新型コロナの影響で一時的に減配となりましたが、2011年3月期の年間配当30円から100円まで増配基調を継続してきました。

・ 前期から始まった中期経営計画で、従来の配当性向を基準とした目標から、連結自己資本配当率、いわゆるDOE基準を導入しました。

DOEとは、「企業が自己資本に対して、どの程度の配当を支払っているか」を示す指標のことで、配当額は連結自己資本にDOE(当社の場合3.2%)を乗じて算出します。

DOEは当社の事業特性と親和性があります。当社は、財務の健全性を示す代表的な指標である自己資本比率において、2023年3月期の実績で53.1%と高い水準を維持しています。それに加え、上場以来、経常赤字に陥ったことがありません。また、足元では利益成長が見込まれていることから、利益成長とともに自己資本が積み上がっていく特性があります。

また、当社は景気の影響を受けやすく、市場環境の変化を一定程度受ける傾向にあります。そのため単年度の「利益」に連動した配当性向よりも、「自己資本」をベースとしたDOE基準の方が安定した配当が期待できます。

これにより、前期の年間配当金は21円増配の121円よりスタートし、今期127円、来期133円とさらに増配を予定しています。以前の90〜100円配当に比べ、3割程度アップするものと思います。

・ 自己株式の取得について。中計1年目の前期は30億円の自己株式取得を実施し、2年目の今期は20億円を実施しました。3年目も同水準の20億円を目途に実施する予定です。全体で70億円の自己株式を取得する予定です。配当と自己株式の取得を合わせて、より高い水準の株主還元を目指しており、総還元性向は65%前後の水準を期待できるものと思います。

・ 本日の説明のまとめです。

事業の安定性・成長性に関して、当社は歴史ある会社であり、安定した成長を継続。幅広い事業分野とグローバルネットワークによりリスク分散が効いており、上場以来、経常赤字がないこと、自己資本比率が前期実績53.1%と健全な財務体質です。国内では借入はほとんどなく、銀行に頼っていません。海外では需要に応じて、時々借入をしています。

株主還元では、DOE導入と、安定成長・健全な財務体質が掛け合わされることで、高い水準かつ安定した増配が期待できること、さらには自己株取得を進めることで株価の上昇期待があること。これらをぜひ、覚えておいていただければと思います。

株価のアップダウンはあります。個人投資家の皆様はうまい買い方をされていることと思いますが、当社の場合は、売りが早くて後悔されている方もおられるかも知れません。しっかり貯めたお金は狙いどころを定めて買っていただき、その後10年くらい持ち続けていただけると、キャピタルゲインもインカムゲインも一定の水準で見込めるではないかと思います。

 

6. 質疑応答

Q1. 御社の高度な技術力による競争優位性について、もう少し詳しく教えてください。稼ぎ頭の産業空調事業の引き合いの強い分野や技術的な強み、今後の見通しについても教えてください。割合の大きい塗装事業についても、日系・非日系の比率、ガソリン車・二輪車・EVで引き合いの強い分野、技術的な強みや、今後の見通しを教えてください。

A1. お客様からどう見られているかのポイントについて説明します。

当社のライバル会社としてビル空調に強い会社は多いです。どちらかというと当社は、ビル空調にはあまり強くなく、産業空調に強い。インダストリーの分野です。日本の戦後復興と共に、日本のメーカーがグローバルで活躍する際、一緒について行き、成長してきました。産業空調のいいお客様に恵まれています。特に、電気・電子部品関連の半導体成長の流れに乗っています。それから製薬関係。クリーンルームの比率が高いです。

これらの分野のお客様からの評価について。電気・電子部品関連の半導体関係では、ハイレベルな清浄度を確保したり、超精密な温度の自動制御技術を有しています。最先端の製造環境が必要な場合でも、そのニーズにお応えできます。これが強みです。また、長年のお客様との共同作業の中から蓄積してきたノウハウがあります。

製薬関係でも、細菌を除去するなど、高い清浄度が求められます。製薬工場には多くの製造室があり、各部屋ごとに湿度や温度を精密にコントロールする自動制御技術が必要です。当社はこれまでも世界的な製薬メーカーと仕事をし、豊富なノウハウと現場経験があります。

このような差別化された技術があるので、お客様の多種多様な要望に応えることが期待されています。当社は一歩先を読んで、気の利いた提案を行い、担当者間の信頼関係も構築。単に技術があるだけではなく、お客様との関係づくりにも尽力しています。

今後の見通しとしては、半導体関連メーカーや製薬メーカーは日系メーカーに限らず、グローバルに絶好調です。これらのメーカーと共に成長していきます。また、最近ではEVの電池関連投資も増加しており、いいお客様になっています。

塗装事業の日系・非日系の比率は多少変化しますが、今現在では非日系が3割くらい。日系が7割です。ドイツの自動車メーカーにもアプローチしたいと思いますが、ハードルが高い。これらのメーカーは、ドイツのトップシェア企業が牛耳っています。そのため当社は、欧州以外の地域ではアメリカで非日系へのアプローチを頑張っています。

EV車の普及により、クルマの塗装はどうなるのか。EV車でもガソリン車でも、ボディの組立から塗装、研磨する製造工程は基本的には大きく変わりません。そのためEV車の普及による塗装技術への影響は限定的だと考えます。近年ではアメリカのEVメーカーからも受注しており、EVメーカーからの受注金額が拡大。アメリカを中心にビジネスチャンスと捉えています。

当社は日本ではNo.1ですが、世界ではNo.2。世界のNo.1との差は相当あり、ドイツのトップ企業の背中が見えないくらいに引き離されています。何とか欧州戦略を見直しながら推進したいと考えています。

 

Q2. 株主還元について、DOEの導入や自己株取得の取り組みを今中計期間に行うことはよくわかりましたが、改めて株主還元の御社の考え方やROE向上や今後の株主還元の予定、株価向上施策を含めて教えてください。

A2. 2023年3月期から安定的な利益配当金で、株主の皆様に対する利益還元を充実させるために、それまでの配当性向から連結自己資本配当率(DOE)を3.2%と定め、導入しました。3.2%は、バランスシートの純資産が拡大すれば増えるので、バランスシートの拡大は必ずしも悪いことではありません。3.2という中途半端な数字については、伊藤レポートで提唱しているROEが8%。その一方で、配当性向は30%から、35%、40%に上げてきました。8%×40%=3.2%で、3.2という数字を定めました。

一年後には次の中計が始まります。今現在では何とも申し上げられませんが、ROEや配当性向の目標を何にするのかで、掛け合わせたものがDOEの数値となります。配当水準を下げるつもりはありませんが、どんどん上げるものでもないので、これは現在検討中です。

DOEをベンチマークとした意味合いは、新型コロナウイルス感染症の影響など、利益が一時的に悪化しても、株主還元には影響がない。配当性向の場合は、当期純利益が減ると配当も連動する。一方、株式の政策保有株を売って、当期純利益が一時的に増えると配当も増える。配当性向の場合はアップダウンが大きかった。個人投資家から見ると、「何か自分たちのよくわからないところで、特別損失などで配当が変わるのはイヤだな」という声も聞きました。これがDOEなら安定配当となります。

さらに総還元性向という考え方を採っているので、自社株買いを併せると、総還元性向は60%以上で推移しています。ROEが8%に達しなくても、その分、配当性向を上げ、無理くりに3.2%を維持します。ROEが7%なら、配当性向を50%に上げるなど、自動的に行います。自社株買いも次期中計でどうするか、未定ですが、総還元性向を65%程度を目処にすることは期待していただいて構わないのではないかと思います。

最近、M&Aなどで成長投資への期待感はありますが、個人的には株価が非常に高い。加えて円が安くなっています。今、キャッシュはリッチですが、手元の円をドルに換え、慌てて買いに行くと、相当高値つかみすることになります。積極的にM&Aを行う方針ですが、個別の案件ごとにマクロ経済環境を見て、高値つかみしない形で、注意深く案件を狙っていきたいと思います。将来的な成長に期待していただいて構いませんが、目先の数字を作るために慌てて何かやることは避けたいと考えています。

以上

 

 

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