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京阪神ビルディング株式会社(8818)

開催日:2023年12月17日(日)

場 所:TKPエルガーラホール 8階 『大ホール』(福岡県福岡市中央区)

説明者:代表取締役社長  若林 常夫 氏

 

1.事業紹介

  •  オフィスビル事業は、1962年、大阪のメインストリートである御堂筋沿いに瓦町ビルを開発したことに始まり、以来御堂筋ビル、淀屋橋ビル、首都圏では虎ノ門ビルなど駅近で好立地のビルを保有しています。設備面では計画的な設備更新、メンテナンスを行い、データセンタービルで培ったBCP機能を強みとして、安心・安全な事業空間の継続的な提供に努めています。
  • またお客さまとの親密なコミュニケーションを通じてニーズを素早く察知し、高品質なビルを提供することで、お客さま満足度と物件の稼働率の向上に努めています。
  • データセンタービル事業は、1988年に竣工した新町第1ビルから始まりました。IT技術の急速な普及によりデータセンタービルの需要は高まる傾向にあり、現在では、クラウドサービスなどを提供するためのIT機器が設置されたサーバー室として活用されています。自然災害などの非常事態においても大切な情報やシステムを守り、社会インフラを支えることができる機能を兼ね備えた建物となっています。セキュリティ面では、集中監視センターでの24時間有人監視による高い安全性を備えています。
  • ウインズビル事業は、当社の創立時から続く歴史ある事業です。当社は戦後阪神競馬場を復活すべく京阪神競馬株式会社として創立した経緯から、関西5カ所のウインズビルを70年以上にわたり、JRA(日本中央競馬会)に賃貸しています。
  • 商業施設・物流倉庫等事業は、ターミナル駅に近い店舗用の商業施設や機能的な物流倉庫などを提供している事業です。商業施設には、広域に店舗展開している事業者さまにご入居いただいており、地元の皆さまの豊かな暮らしをバックアップしています。さらに住宅やヘルスケア施設などを投資対象に含め、よりバランスの取れたポートフォリオの実現とアセットの拡充を目指しています。
  •  京阪神ビルディングは、時代のニーズに合わせた価値ある事業空間を提供し、お客さまと共に発展することにより、社会に貢献し続けていきます。

 

2.会社概要

  • 当社の本社は、大阪市中央区瓦町のメインストリートである御堂筋に面したビルにあります。
  • 会社の創立は1948年12月で、本年で創立75周年を迎えます。資本金は現在およそ98億円、従業員は本年9月末で57名、少人数での事業運営が当社の特徴です。
  • 創立の翌年1949年に大阪証券取引所に上場し、2003年3月からは東証一部にも上場、2022年4月からは東証のプライム市場に移行しています。
  • 証券コードは8818、最低売買単位が100株で、直近の株価で14万円前後になります。
  • 売上高の推移をみると、当社は創立以来成長を積み重ね、時代のニーズに合わせて事業ポートフォリオを変化させてきました。
  • 部門別の売上高ではデータセンタービル事業が52.5%を占め、現在では主力事業となっています。

 

3.京阪神ビルディングの強み

  • 当社の強みとして、「多様なアセットタイプ」、「健全な財務バランス」、「きめ細かいビル管理」、そして「高効率の不動産賃貸事業」の4つを挙げています。これらが価値ある事業空間の提供を実現する事業の柱です。

多様なアセットタイプ

  • 当社の物件数の約半分を占めるデータセンタービルやウインズビルがオフィスビル市況に左右されにくいこともあり、当社ビル全体の空室率は東京・大阪のビジネス地区の空室率を大きく下回っています。2023年9月末の当社保有ビル全体の空室率は1.8%と、低い水準を維持しています。引き続き高い稼働率を維持すべく注力していきます。

健全な財務バランス

  • Net有利子負債/EBITDA倍率は、正味の有利子負債が年間の現金収入の何倍に当たるかということを示したものです。新規投資に伴う資金調達によって一時的に上昇した場合でも、10倍程度までに抑える方針です。
  • 今後も財務バランスに留意しつつ、事業の拡大を通じて企業価値の向上に取り組みます。
  • 長年にわたり企業価値を着実に向上させてきた安定した経営方針が評価され、27年連続で格付け機関のR&IからシングルA−の評価を頂いています。良好な格付けと信用力を生かし現在450億円の社債を発行しています。年間の平均調達率は前期末で0.76%と低く抑えており、有利子負債の平均返済期間の長期化にも取り組んでいます。
  • 今後もこの信用力を生かし、直接金融と間接金融のバランス、返済期日の長期分散化等に留意し、低い調達コストの維持に努めていきます。

きめ細かいビル管理

  • 大手ゼネコンでの現場経験豊富な技術スタッフにより、高品質なビル造りや、建物や設備の管理運営面で気配りの行き届いたビルマネジメントが実現できています。
  • 営業スタッフもテナントさまとの親密なコミュニケーションを心がけており、技術スタッフとの連携によりお客さまのご要望にきめ細かく応えられる体制を敷いています。その結果テナントさまから高い評価と信用を頂いています。

高効率の不動産賃貸事業

  • 2023年3月末時点の従業員1人あたりの営業利益は約1億円で、東証プライム市場に上場する同業他社8社と比較して当社は大幅に上回っています。
  • 当社は60名ほどの従業員による少数経営が特徴ですが、各種資格を持った専門性を有する人材を活用することで高効率の事業運営を実現しています。今後も高度な専門性を持つ人材の採用と、各種制度を通じた従業員の育成に取り組んでいきます。

 

4.データセンタービル事業

  • データセンタービルとは、インターネット用のサーバーやデータ通信のための装置を設置することに特化した建物のことです。データセンタービルは大切な情報やシステムを守るため、通常のビルに比べ、立地や防災対策、電力供給、通信設備、セキュリティ対策などが重要視されます。
  • データセンタービルは通信インフラが密集した都心部に所在しています。このため、当社の従業員による行き届いたメンテナンスが可能となり、緊急時にすぐ駆け付けられる体制を敷いています。
  • データセンタービルをスケルトン状態で賃貸しているので、テナントさまのニーズにあった内装や機器設置ができます。
  • およそ30年にわたり培ってきたビルの企画・運営ノウハウとパートナー企業さまとの良好な関係が最大の特徴であり、それが強みとなっています。
  • 今後はAIやIoTの発展、5G通信などに伴うデータ通信量の増大によりデータセンタービルの市場規模は拡大することが見込まれています。
  • 当社は引き続き時代のニーズに合わせた高品質なデータセンタービルを提供していきます。

 

5.今期の業績予想

  • 2024年3月期の業績は当初計画通りに進捗しています。新規物件の通期寄与やデータセンタービルの稼働向上を主な要因として、売上高は200億円と前期比11億2,000万円、5.9%の増収を見込んでいます。
  • 売上原価については、前期に発生した不動産取得税の戻し入れ益の剥落に加えて、人材投資・修繕工事等による増加を見込み、営業利益は45億円と前期比8億7,500万円、16.3%の減益、経常利益は42億円と前期比8億4,000万円、16.7%の減益を見込んでいます。
  • 当期純利益は32億円と前期比9億8,600万円、23.6%の減益を見込んでいます。これは投資有価証券の売却による特別利益が前期より減少したためで、事業は順調に推移しています。
  • 売上高営業利益率は22.5%の水準を維持しています。
  • 新たな経営計画において重要な経営指標として掲げている償却前事業利益は、83億円と前期比8億9,400万円、9.7%の減益を見込んでいます。
  • 償却前事業利益とは、営業利益に持分法投資利益、つまり投資先の非連結子会社や関連会社からの得られる収益を合算し、それに減価償却費を足し戻したもので、長期経営計画に基づく事業から生ずるキャッシュフローの合計を指します。

 

6.長期経営計画

  • 長期経営計画の対象期間は、2024年3月期から2033年3月期までの10カ年としています。
  • 基本方針としては、サステナブル経営を実現し、持続的な企業価値向上を図ること、そして投資環境の変化を見極め、ポートフォリオの拡充による企業規模の拡大と新たな収益モデルの創出を目指すことを掲げています。
  • 10年後にありたい姿として、社員一人一人が創意工夫と挑戦を通じて成長し、時代のニーズに応える価値ある事業空間を提供することにより、サステナブルな社会に貢献し続ける会社を目指します。

数値目標

  • 計画の最終年度である2033年3月期の数値目標は、事業利益140億円、償却前事業利益180億円、自己資本比率30%以上、Net有利子負債/EBITDA倍率10倍程度、ROA5.0%以上、ROE8.0%以上です。

投資計画

  • 不動産賃貸事業に加え、新たな不動産の事業分野に取り組みます。収益物件の取得に1,800億円、エクイティ投資や海外投資などに700億円と10年間で2,500億円の投資をする予定です。なお収益物件の売却により800億円の回収を考えていますので、ネットでは1,700億円の投資ということになります。
  • 当社は償却前事業利益の拡大によりキャッシュフローを成長させ企業価値の向上を目指します。

不動産賃貸事業

  • 当社の主力事業である不動産賃貸事業については、引き続き中核事業と位置づけ、立地と収益性を重視した方針に基づきさらなる資産の拡充に努めていきます。
  • 地域ポートフォリオは現在関西圏の割合が約85%になっています。首都圏をメインターゲットにした立地の分散化により、関西圏以外の比率を現行の15%から30%程度に引き上げることを計画しています。自然災害などの地域集中リスクを低減し、バランスの取れたアセットポートフォリオの実現を目指します。

資産回転型事業

  • 不動産のキャピタルゲインの獲得を目的とした資産回転型事業に新たに取り組んでいきます。資産の売却による獲得資金を成長分野へ再投資をすることによって収益の最大化を図り、資本効率の向上を目指します。テナントの入れ替えや改修工事等により取得物件をバリューアップして売却することを軸に考えています。収益物件の売却により10年間で800億円を回収する計画です。

エクイティ投資

  • エクイティ投資とは、不動産そのものではなく不動産を保有する会社の持分を取得するものです。他社との連携による物件の取得など、投資手法の多様化を進めることで、10年間で累計160億円の投資を目標としています。

海外不動産投資

  • 日系企業とのアライアンスによる出資を足がかりに、10年間で累計250億円の海外投資を目標としています。

新規投資の実績

  • 2022年11月に、東京都港区南青山に将来の開発用地として新たに土地を取得しました。本件は東京メトロ銀座線の外苑前駅から徒歩2分と交通の便の良い立地です。隣接する外苑前エリアは再開発によるポテンシャルの向上が見込め、国内外から多くの人が集う街としてさらなるにぎわいが期待できるエリアです。
  • 2023年1月に、大阪市内に社員寮を取得しました。本物件はオペレーターに一括で賃貸する形を採っています。管理効率の観点から、このような形態の物件であれば、引き続き積極的に投資対象として検討していきます。
  • 2023年6月、東京都台東区浅草に商業ビルを取得しました。浅草は人通りも多く、国内外の観光客によるさらなるにぎわいが期待されるエリアです。この物件は資産回転型事業や不動産賃貸事業のどちらの戦略も検討可能な物件として位置付けています。
  • 2023年10月にアメリカの不動産ファンドへ出資しました。海外事業の投資先は、今後も経済成長が見込まれ、不動産マーケットでの法的な透明性が確保されている米国のファンドを最初の投資先に選定することとしました。ファンドへの投資を通じて現地の情報やノウハウを吸収し、海外事業の立ち上げに向け着実にステップを踏んでいきます。

財務戦略

  • 財務基盤については、直接金融と間接金融のバランスに留意し、安定的かつ低金利での資金調達に取り組みます。今後も財務の健全性は維持すべく、自己資本比率やNet有利子負債/EBITDA倍率などの財務規律を堅持していきます。
  • 資産回転型事業への取り組みなどによるROAの向上を目指し、その結果としてROEの改善・向上の実現を目指します。

株主還元

  • 1株あたりの利益を重視した安定的な配当・増配を継続します。配当性向目標は、前経営計画の35〜40%を45%程度に引き上げています。経済情勢および自己の株価を総合的に勘案して、自己株取得等の資本効率を意識した株主還元についても検討をしていきます。
  • 今期は創立75周年を迎えるにあたり、株主の皆さまへの感謝の意味も込め、期末配当では1株につき1円の記念配当を実施します。期末配当予想は、1円を増配した19円とし、年間配当は37円とする予定です。

サステナビリティ戦略

  • 長期経営計画では、基本方針として、サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値の向上を図ることを掲げています。
  • 環境投資については、気候変動への対策を通じて事業のレジリエンスを強化することと、グリーンビル認証の取得を推進して、環境性能が高い不動産への需要の高まりを収益機会につなげることを重点施策として掲げています。
  • 人材投資については、外部人材の登用と内部人材の育成をバランスよく組み合わせることで、少人数による事業の効率性を維持しつつ不足するリソースを補完し、今後の持続的な成長の実現に向けて企業風土の根幹をなす人材の育成に注力していきます。

 

7.まとめ

  • 当社は不動産会社として安定した収益・健全な財務体質をベースに、新たな資産を積み上げるとともに新規事業へ取り組むことで、資本効率の向上と事業の成長拡大に努めていきます。
  • これをもとに、今後も安定性・継続性を重視した配当方針を堅持した上で、株主の皆さまへの一層の利益還元を経営の重要課題として位置付け、さらなる企業価値の向上に努めていきます。

 

8.質疑応答

Q1. 長期経営計画を出された背景とお考えを詳しく教えてください。

A1. 2023年の5月に新たな長期経営計画を発表しました。発表以前は2019年から7年間の中期経営計画を遂行しており、2023年で4年目を迎えていました。東京ではオフィスビルの虎ノ門ビルが、大阪ではデータセンタービルのOBPビルが竣工し、計画は順調に進んでいました。一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大や国際情勢の不安定化に伴い、原材料費の高騰や金利上昇に見舞われ、2019年当初に想定した状況とは大きく異なる環境になりました。

       その中で当社の安定的・継続的な成長のためには、事業環境の変化を踏まえて新たな経営方針を決めていく必要性を認識し、新たに長期計画を策定しました。当社の中核事業である不動産賃貸事業に加えて新規事業へ取り組むことで、企業価値の向上とサステナブルな経営を目指していきます。

 

Q2. 海外戦略について、現時点では不動産ファンドに投資をしていますが、いずれは自社で物件の購入や開発を行う予定はありますでしょうか。また、今後の海外事業の投資計画について、どのような分野への投資をお考えでしょうか。海外投資のノウハウはあるのでしょうか。

A2. 新規事業の1つとして、海外への投資も視野に入れています。日本国内は、今後人口減少に伴うマーケットの縮小は避けられない状況です。国内市場だけに特化しても次の成長につなげていくことは難しいという判断により、今まで不動産賃貸事業で培ってきたノウハウを生かして海外事業にもチャレンジしていきます。

       一方で、当社は海外エリアへの投資は未経験で、ノウハウがありません。今後ノウハウを持った人材を採用しつつ、内部人材の育成を図りながら海外事業の体制を構築したいと考えています。なお、長期経営計画の前半の5年間で体制を整え、後半の5年間で現実的な投資をするという計画を立てています。

       投資先については、経済成長が期待できる東南アジアも考えられますが、最初は、経済成長が見込めるだけでなく法的リスクの透明性が確保されている米国を対象とすることにしました。

また、計画当初は単独で新規事業を進めるのは難しいので、SPCなどへのマイナー出資等でアライアンスパートナーの獲得や情報収集に取り組んでノウハウを培い、将来的には海外駐在所の設立なども検討していきます。

対象物件としては、現在アメリカの不動産マーケットはオフィスビルや商業施設の需要が振るわないため、住居系や倉庫等への投資を考えています。また、エリアも絞る予定です。

 

Q3. 新規物件の仕入れ価格は高騰していますか。高騰への手当はできていますか。また、物件の情報はどちらから取得されるのでしょうか。

A3. 現在、金利の上昇とインフレが進み、建築費・労務費・修繕費のいずれも高騰しています。コスト上昇分を賃料に反映することが難しい状況です。

       物件の入手方法には、競争入札などのオープンな購入方法がありますが、情報が広まった時点では競争が激しく、物件取得は非常に困難です。しかしそのような状況でもこの1年間で約3件の物件取得ができました。

       情報は金融機関など様々な企業から頂くこともありますが、できるだけ世間に公開される前の情報収集に努めています。

       当社の企業価値の向上を目指し、情報収集や物件取得に知恵を絞りながら取り組んでいます。

 

Q4. M&Aについてはどのようにお考えでしょうか。M&Aをしたい企業はどのような企業ですか。

A4. 当社は少人数の効率的な経営を特徴としています。M&Aによっていたずらに組織を拡大することは考えていません。一方で、物件数を増やすために、不動産保有会社のM&Aは視野に入れています。

       また、新たに資産回転型事業を行うにあたり、将来ファンドを組成するためにはAM(アセットマネジメント)事業を立ち上げる必要があると考えています。特殊なスキルやノウハウを持った人材を採用して会社を立ち上げるのも一つの方法ですが、既にあるAM会社を買収することも選択肢として考えています。

 

以上

 

 

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