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株式会社リンクアンドモチベーション(2170)

開催日:2026年5月16日(土)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:代表取締役会長  小笹 芳央 氏

 

1. 会社概要

・ 私は、リンクアンドモチベーションの創業者であり、現在、代表取締役会長を務めている小笹芳央(おざさ よしひさ)と申します。どうぞよろしくお願いします。

・ 1961年、大阪生まれです。大学から東京に出てきて、早稲田大学政治経済学部卒業後にリクルート社に入社しました。

あの当時のリクルートは、まだリクルート事件が起こる前の時代です。全国的な知名度が乏しく、成長途上のちょっと怪しいベンチャー企業のような状態でした。大阪の実家の両親には相談もなく、リクルートへの入社を決めました。お母ちゃんに電話して「リクルートに入社するよ」と言ったら、お母ちゃんは「なんであんたはヤクルト行くの?!」と言います。これ、ちょっと笑うとこです。ヤクルトは小さい時から飲まされていたので、お母ちゃんもヤクルトは知っている。でもリクルートは「何それ?大丈夫か」という、そんな状態のリクルートに入社し、14年間お世話になりました。

14年間のキャリアは大きく2つに分かれます。前半の7年間は人事部人事課採用担当。当時の創業者の江副氏は、人材採用には強いこだわりを持っておられた。優秀な人材をまだ知名度の乏しいリクルートに引き入れる仕事をひたすら7年間やりました。

後半の7年間は、自分のノウハウを生かし、リクルート初のコンサルティングでフィーをもらう組織人事コンサルティング室を立ち上げました。そして、その責任者として過ごしました。この2つのキャリアが現在にも大きく影響しています。

著作も、「モチベーション・マネジメント」や「モチベーション〇〇」など、「モチベーション」という言葉を世に知らしめたいがために、これまで28冊、出版する機会に恵まれました。また、独自性の強い珍しい会社ということで、テレビでも「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」で取り上げられました。

・ 当社のミッションは、「私たちは、モチベーションエンジニアリングによって、組織と個人に変革の機会を提供し、意味のあふれる社会を実現する」。

モチベーションエンジニアリングは、当社の基幹技術です。対象とするのは組織と個人。組織に対しては、企業組織向けのビジネスで、いわゆるB to Bのビジネスです。さらに創業から10年経った時に、ミッションに個人も付け加え、一般消費者向けのB to Cビジネスにも取り組んでいます。

・ 事業の展開図について。モチベーションエンジニアリングという基幹技術を下敷きに、3つのDivision(ディビジョン)があります。

まず、祖業である「組織開発Division」。これは、これからは働く個人から選ばれる組織、選ばれる会社にならないといけない。そのために人のモチベーションを高められるモチベーションカンパニーを目指す取り組みで、事業としては「コンサル・クラウド事業」と「IR支援事業」を行っています。

2つ目が「個人開発Division」。個人もまた、これからはいろんな組織から選ばれる存在になる必要がある。どんどん主体的にキャリアを磨くことを「アイカンパニー」というキーワードを使い表しています。こちらは「キャリアスクール事業」と小中高校生を対象にした「学習塾事業」を行っています。

最後が「マッチングDivision」。ここには2つの事業があります。1つが「ALT配置事業」。ALTとは、Assistant Language Teacher(アシスタント ランゲージ ティーチャー)の略で、英語の補助講師です。英語ネイティブの方々を国内外から採用し、全国の小中高校に配置する事業です。もう1つが人材紹介事業です。

 

【基幹技術 モチベーションエンジニアリング】

・ モチベーションエンジニアリングの下敷きとなる2つの考え方について。

1つは人間観です。人間は完全合理的な「経済人」ではなく、限定合理的な「感情人」だと言うこと。常に合理的にお金のことばかり考えている存在ではなく、ある程度、合理的に考えるものの、最終的には「誰かに認められたい」、「成長したい」、「誰かの役に立ちたい」などの感情で物事を判断したり行動するということです。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンが、彼が提唱する行動経済学を日本で広めるために本を出しました。その本の帯についていたのが「人は“勘定”ではなく、“感情”で判断する」というフレーズでした。

・ もう1つは組織観です。「組織は要素還元できない『協働システム』である」ということです。例えばA君、B君、Cさん、Dさん、E君という5人のチームの場合。まず、「A+B+C+D+Eで5人いる」という数え方ができます。

一方、職場なので、それぞれの関係性が生じます。A君は他の4人と連携する。B君、Cさん…もそれぞれ同じです。そうすると、5×4÷2で10本の関係性が生まれる。これを「協働システム」と捉えます。

例えば、ここに仕事が増え、5人、人数が増えたとします。個々の考え方では、5+5=10。5人のチームが10人となり、2倍になったと数えます。一方、「協働システム」の考え方では、10×9÷2で45本の関係性が生まれます。個々の人数でみれば2倍ですが、関係性としては4.5倍、合意形成に時間がかかることになります。つまり、それだけ複雑性が高まる組織に変貌したということです。

そんな中から私たちは、顧客に向けて「組織の問題は人間の『人』ではなく『間』に生じる」という視点から組織をサポートしています。

一般的に多いのは、営業部門と技術部門の間の問題。店舗展開している会社であれば、本店と各支店の間。階層でみると、トップとミドルの間やミドルと現場の間。どこかとどこかの「間」に、コミュニケーション上の滞りがあり、問題が起こる。こういう見方がモチベーションエンジニアリングの基本的な考え方です。

 

【組織開発Division

・ コンサル・クラウド事業は、企業向けに人的資本経営の実践を支援しています。主力サービスは「モチベーションクラウド エンゲージメント」。これはエンゲージメントマーケットで9年連続シェアNo.1を誇ります。このエンゲージメントとは、会社とそこで働く従業員の相思相愛度合いを測定することです。

そして、モチベーションクラウド エンゲージメントでエンゲージメント状態が点数化・見える化されると、それをさらに高めるために、人材採用・育成、評価や報酬の制度づくり、風土変革などのコンサルティングを実施。その実績は年間約900社になります。

IR支援事業では、昨年、IR支援企業2社をM&Aで完全子会社化しました。各種IRレポートの制作や決算発表等の動画配信などを行っています。上場企業約4,000社中の4分の1、1,000社の口座があり、こちらも圧倒的なシェアNo.1を誇る事業です。

 

【個人開発Division

・ キャリアスクール事業では、主に社会人向けに、パソコンスクールや語学スクール、資格スクールを展開。校舎数は全国で約110校。年間平均受講者数は1.2万人に及びます。

学習塾事業は、まだ規模の小さい事業です。モチベーションエンジニアリングの考え方は、B to Cの領域でも主に教育分野なら適用できるだろうと見て、自前で始めました。校舎数は全国で13校ですが、事業開始から約10年経ち、1,000人の受講者数を誇る状態になりました。

 

【マッチングDivision

・ ALT配置事業は、外国籍の英語ネイティブの人材を国内外から採用しています。現在のALT配置人数は年間3,400人。民間企業では圧倒的なNo.1のシェアを誇っています。お客様は教育委員会で、そういう意味では、公教育に資する事業を行っています。

もう1つが人材紹介事業。こちらはグロース市場上場の子会社・Openwork(オープンワーク)が運営しています。Openworkは、国内最大級の企業に関するクチコミプラットフォーム。クチコミの評価スコア数は2,120万件で、国内において圧倒的なNo.1です。クチコミサイトというと食べログがありますが、その企業版だとお考えください。

 

・ 3つのDivisionに加えて、インキュベーションにも取り組んでいます。コンサルティングだけでなく、出資も伴う形で上場まで支援しています。

これまで28社に出資し、既に12社のイグジット(上場またはバイアウト)に成功し、イグジット率は42.9%に達しています。

 

2. 注力事業

・ 3つのDivisionの中で、組織開発Divisionのコンサル・クラウド事業が、当面成長可能性が高いと考え、ここの部分に投資しています。

 

【企業と個人を取り巻く環境変化】

・ その理由。企業が直面している市場には、大きく商品市場と労働市場があります。また、上場していれば資本市場もあります。

商品市場では、企業の競争優位性が箱物のハードからソフトに変わってきています。ソフトとは、例えばアイデアやホスピタリティ、クリエイティビティと言ったものです。また、商品のライフサイクルもどんどん短期化しています。

一方、労働市場では、企業と個人の関係が変化し、転職するのも当たり前という時代に変わっています。また、労働力人口がどんどん減少していくことも明らかな事実です。

そうなると、企業の商品市場への適用に加え、労働市場への適用も非常に重要な局面を迎えています。

・ ところが、商品市場への適用状態や成績表としては、財務情報やP/L、B/Sなどがありますが、労働市場の物差しはありません。物差しがないと動きようがない。

・ 労働市場の物差しとなるのが、エンゲージメントスコアです。私たちが各企業に啓発活動を続けてきた結果、非財務情報としてのエンゲージメントスコアについて、当社には膨大なデータベースがあります。それと比較して、「御社のエンゲージメント状態は偏差値で言うと55です」、あるいは「御社は40しかありません」という形でしっかり示すことができます。

 

・ また、エンゲージメントスコアは、なんと業績との連動が証明されています。営業利益率とかROICなどの指標と正の相関が見られます。

人的資本では、女性管理職比率や男性の育休取得率などを開示する義務があります。しかし、女性の管理職比率や男性の育休取得率と業績との連動は全くありません。唯一あるのはエンゲージメントスコアなのです。

エンゲージメントスコアが業績との相関があることを知った私の正直な気持ちは、「本当に金鉱を掘り当てた!」という思いです。創業当初からずっとエンゲージメントと言い続けてきたことが実を結んだ。これは非常に重要な指標だとお考えください。

 

【モチベーションクラウド エンゲージメント】

・ コンサル・クラウド事業の具体的な提供サービスについて。まず、企業の組織状態をモチベーションクラウド エンゲージメントというプロダクトで診断します。

診断した結果から改善や変革の必要がありますが、人材の採用・開発・育成、評価や報酬制度、企業風土やカルチャーの変革に対し、総合的にワンストップで対応できるのも、他社に例を見ない当社の独自性です。

・ モチベーションクラウド エンゲージメントの導入企業は、8年ほど前からかなり大手企業への導入が進んでいます。そしてエンゲージマーケットでも、9年連続圧倒的なシェアNo.1のポジションを確立しています。

リリース当初、お客様は中小ベンチャー企業が多かった。しかし、時間がかかっても大手企業への導入促進に取り組み、7〜8年ほど前から力を入れ、今、売上の相当割合が大手企業からのものになっています。

・ 一方、今後は国内の中堅企業にも展開し、業界を深耕していきます。例えば、製造業、建設、エネルギー、運輸など、業界別に組織を編成し、その業界のトップ企業から導入を促進。そして、その業界の中堅企業までタテに掘っていきます。

本年第1クォーターの受注状況は、製造業で15件、建設で4件であり、一部の業界ではかなり導入が加速しています。

・ 今後は海外にも展開します。昨年は、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピンの4ヵ所に現地法人を設立。本年1月からはインドネシアでも展開しています。

近い将来としては、北米やヨーロッパ、オセアニアにも進出し、名実ともにグローバルなHR(ヒューマンリソース)コンサルティングファームのポジションを確立させます。

 

・ 業績の推移では、昨年12月期の売上収益で過去最高の415億円を記録しました。売上は順調に成長しています。

・ 本年12月期の連結業績予想では、売上も営業利益も前年比で大幅増を予定しています。

・ 2030年の計画では、営業利益は今の3.5倍の150億円。まずマイルストーンとして2028年の100億円を目指します。

ARR(年次経常収益)は月会費×12ヵ月による数字ですが、2030年で240億円を設定しています。月間売上では20億円ぐらいになります。こちらもマイルストーンとして、2028年に150億円を目指す。かなりストック売上に注力した取り組みです。

 

3. 配当と株主優待制度

・ 当社が特徴的なのは、四半期ごとに配当を実施していることです。機動的な株主還元として年に1回や半年に1回ではなく、3ヵ月ごとの四半期配当です。

当社自身が創業当初から「3ヵ月を1年と数えよう。それぐらいのスピードで経営しないと事業成長はままならない」と捉えていました。そのため、社内カレンダーも3ヵ月が1年で、3ヵ月ごとに年末年始休暇がある。また、評価もボーナスも3ヵ月ごとです。

この方針のもと、配当も四半期配当。本年12月期の年間配当は16.4円を予定しています。

年間配当の推移をみると、コロナ禍前後にちょっと足踏みしました。コロナ禍の影響で、リアルな人材研修などがかなりキャンセルになり、影響を受けた時期もありました。その時の配当は少し横ばいでしたが、それ以降は順調に増配を繰り返しています。

・ 株主優待制度は、保有株数と期間に応じて増額する仕組みで、たくさん、長く持っていただくことを考えたマトリックスになっています。

増配後の配当利回りが2.9%+優待の利回りで総合利回りは6.5%。プライム市場平均の2.36%を大きく上回る株主還元策です。多く、長く保有していただくことを願います。

・ 優待の中身は、現物の場合はQUOカード。それ以外にも電子マネーやポイントなど様々な受け取り方が可能なので、ぜひ選択いただければと思います。

・ 現在実施中の過去最大の自己株式取得について。本年2月13日から8月31日まで、過去最大規模の60億円の自己株取得を決めています。

4月末時点での取得進捗状況は、取得金額でだいたい25億円ほどで全体の41.67%。残りは35億円ほど。取得株式数は36.65%で順調に自己株式の取得が進んでいます。

人的資本経営が叫ばれる中で、私たちの事業は大変な追い風を受けています。この追い風をしっかり捉え、飛躍的な成長を目指したい。今後もぜひご注目ください。

 

4. 質疑応答

Q1. 優秀な人材確保や育成に向けてどのような取り組みをされていますか。具体例をご紹介ください。

A1. 私自身がリクルート出身なので、人材の採用について大変情熱を持って取り組んでいます。とにかく採用が大事です。

例えば、メジャーリーグではドジャースが大谷翔平を獲得した。それにより大きな経済的な利益を得ています。これは、いかに優秀な人材を採用するかを示しています。

そのため、採用に関してはかなりの投資、具体的には数億円単位で行っています。毎年、新卒採用も含め、1人当たりの採用費は約500万円。それほどかけて人材を採用するのは、私の前職のリクルートの江副氏の考え方を引き継いでいるからだと思います。

次に採用した人材の育成について。当社は色々な企業に対し人材育成のプログラムを提供しており、当社自身が多くのコンテンツを持っています。自分たちの商品を使って人材を育む。そこにもかなりのパワーと投資を行っているとお考えください。

 

Q2. いわゆる「SaaSの死」問題は、御社の業務や経営にどのような影響があるのか、またはないのか、具体的に教えてください。

A2. 最近、「SaaS is dead」と言われていますが、私の実感としてはあまりピンと来ていません。おそらくAIの進化にも関係してくると思います。単に手離れのいいSaaSモデルは、これからはちょっと難しくなると思います。一方、当社のように顧客にしっかりと寄り添い、並走・伴走するサービスを提供するには、ちょっと手間暇がかかります。また、一見SaaSのように見えますが、かなり人力でやっているところがあります。

そういう顧客との粘着性の高いSaaSモデルは、「SaaSの死」問題でも大きな影響を受けることはありません。実際、当社も逆張りでこれからストック売上を上げるべく注力しています。影響はないと言って間違いないと思います。

 

Q3. モチベーションクラウド エンゲージメントの分かりやすい成功事例がありましたら、ご紹介ください。より具体的に御社の事業活動を理解したいと考えております。

A3. まず、モチベーションクラウド エンゲージメントの特徴をお話しする必要があると思います。エンゲージメントとは、会社と個人の相思相愛度合いを図ることです。具体的には、給与や待遇は大事ですよね。それから仕事の醍醐味も大事ですし、会社の掲げる理念やビジョンへの共感も大事な要素です。さらには、上司との関係も相思相愛にはすごく影響すると思います。

人が組織に帰属する要因を16領域抽出し、それに対して社員の方に無記名で尋ねます。各項目について、どの程度期待するか、5段階で聞きます。また、各項目についてどの程度満足しているかも同様に聞きます。そうすると期待度×満足度というマトリックスの中に16領域がマッピングされます。

その中から、期待度が高いにもかかわらず、満足度が低い項目を発見します。社員が期待しているのに、満足度の低い項目です。そして、その項目の満足度を上げるために様々な取り組みをします。

最近は企業だけでなく、地方自治体にも導入され、今25自治体で取り組んでいます。すると、多くの自治体で2回目のモチベーションクラウド エンゲージメント測定後、スコアが上がる結果が出ています。

この期待度と満足度によるマトリックスは、私たちの特許事項です。一方、一般の調査会社は満足度だけしか聞かない。期待度は調べていません。

期待度×満足度というマトリックスの中で、期待度が高くて満足度も高いものはその組織を束ねている軸になります。一方、期待度が高いにもかかわらず満足度が低い項目は、改善すべき項目と言えます。それが給与や待遇なのか、それとも上司の関わり方なのか、あるいは仕事の魅力付けなのか。それは各社によって違う形で出てきます。

一社ごとに違う形で出てきた診断結果に対し、我々はそのままにしません。お医者さんも診察して終わりということはありません。検査や診察をして何か問題があれば治療します。あるいは薬を投与したり、大手術をすることもあります。同じようにそこまでセットでやれるのが当社の強みです。多くの企業で受け入れられている背景だとお考えいただければと思います。

 

Q4. 人と人の関係を測るのは難しいと思います。人事異動等をコンピュータで決めている時代、その中で人間関係を見てモチベーションを高めるのでしょうか。人と人との関係を円滑にすればモチベーションは上がるものと考えているのですが、いかがですか。

A4. 私もそう思います。モチベーションクラウド エンゲージメントで測定した場合、全社的なスコアを出したら、次は部署ごとや拠点ごとに分析していきます。そうすると、「この部署は、ちょっと上司とメンバーの関係性や相互理解、相思相愛度合いが低くて、エンゲージメントスコア低い」ということが分かってきます。そこで、上司が異動したり、別の人を登用するなど、細かい打ち手に取り組みます。

多くの働く人たちの悩みというのは、詰まるところ人間関係です。モチベーションクラウド エンゲージメントの分析を細かくすることにより、職場ごとの人間関係まで見え、打ち手が明確になるので、便利に使っていただいています。

 

Q5. 目に見えないエンゲージメントという考え方や指標をどうやって見つけたのですか。今やどの会社もエンゲージメントを重視し、人材を活用しているなど、IR報告書や統合報告書に書かれており、とても興味があります。

A5. 実は、リクルートから分離独立してスタートする時、私を含めて7人のチームで起業しました。リクルートのコンサルティング室の時は、自分たちのフリーハンドで何かプロダクトを持つ必要はありませんでした。しかし、独立してリンクアンドモチベーションとしてやるからには、「何か明確なプロダクトを持とう」という約束をしました。

それは、仲間内でコンサルティング会社を立ち上げても、みんな属人的な仕事をしていたのでは、絶対に企業の発展はないからです。それで、「まずは診断だ」ということになりました。

ただ、従業員のモチベーション状態を診断するのは無理です。一方、エンゲージメント。つまり相互理解や相思相愛度合いなら、期待度と満足度という形で聞いていけば、測定できる。そういう形で生まれたのが2001年。創業から1年後で、当時まだクラウドではなく紙ベースでしたが、このようにして生まれたのが、今のモチベーションクラウド エンゲージメントです。

その後、徐々に上場企業の中でエンゲージメントスコアを開示する企業が増えてきました。もちろん私たちは、色んな企業に「開示しましょう」、「スコアを出しましょう」。あるいは、スコアだとちょっとでも下がったらイヤなので、「トリプルAからダブルDまでのレイティングで出しましょう」と言ってきました。

そして今はどうでしょう。1,000社以上がエンゲージメントについて触れています。

結論から言えば、女性の管理職比率や男性の育休取得率は業績と連関ありません。ところが、エンゲージメントと業績は相関があることが広まりました。すると企業は、自分たちの組織のエンゲージメントを高めることに投資をする。そして、大きなリターンがビジネス上に生まれる。そういう形で認知が広がったことが背景にあると思います。

 

Q6. エンゲージメントの向上を業績に結びつける有効な手段について教えてください。

A6. これまでのデータを分析すると、期待度が高く満足度も高い項目が給料というケースはあまりありません。期待度が高く満足度も高い項目は、会社の経営理念への共感や組織の風土や文化との親和性なんです。そして、期待度と満足度の両方高いところにこれらの項目が上がる会社は、全体のスコアが高いという結果が出ています。

この結果でみると、給料に期待度と満足度の高さが反映するのは、シンプルでいいのかもしれませんが、意外と人はそれでは満足しないということですね。

モチベーションエンジニアリングの人間観「完全合理的な『経済人』ではなく、限定合理的な『感情人』である」ということで言うと、人はやはり「認められたい」とか「誰かの役に立ちたい」、「成長したい」、「良き人間関係の中で働きたい」という部分が非常に重要になります。そのため最終的には、会社の理念への共感や会社の風土との親和性が期待度と満足度の両方高いところに出てきている会社ほど、全体のエンゲージメントが高いという状況になっています。

 

Q7. 御社のエンゲージメント偏差値はどのくらいですか。

A7. 半年ごとに開示していますが、ほぼトリプルAです。

M&Aをこれまで20社以上やってきました。M&Aで新しくグループインした会社にモチベーションクラウド エンゲージメントを入れると、「え?! 偏差値18しかない」と、だいぶ痛んでいる会社が多いのです。それを一生懸命テコ入れしながら、言行一致の経営をする。自分たち自身でエンゲージメントスコアを分析し、場合によっては人の入れ替えなどの対策を講じると、100人規模の会社なら2〜3年でダブルAぐらいになります。
現状、当社は非常に高いエンゲージメント状態にあるということは正直に申し上げてもいいかと思います。

 

Q8. 「人は“勘定”ではなく、“感情”で動く」は、一倉定先生の経営理念による経営計画書に通ずるものと感じました。また、協働システムは、組織は足し算ではなく掛け算であると感じました。これらのコンサルティングのノウハウのもととなったモデルは、どのようなバックボーンから開発されたのかお聞きしたいです。

A8. 私は色々なところから学んでおり、一倉定先生の理念もその一つです。それからリクルート時代にコンサルティング室を立ち上げる時、私にマッキンゼーの方が家庭教師に付きました。ですから、マッキンゼーもあれば、一倉定先生もある。非常に幅の広い中から、色々なものを自分で吸収しながら、今の自分たちの技術体系や経営のあり方を作り上げてきた。色々な実践の中では、時には壁にぶつかり、修正することもありました。一倉定先生については、若い頃からずっと勉強していました。

 

Q9. 御社は現在、保有株数と保有期間に応じて増額される株主優待制度を導入されており、5年超保有すればかなり高額な年間進呈額になると思います。そこで心配なのが、この優待制度は今後も継続が可能なのかということです。

A9. 正直に言って、絶対継続します。過去に一度、株主平等の原則に反するということで優待を取り止めることがありました。その時にえらい目に遭いました。

優待を取り止め、優待で使ったお金の2倍、配当を増やしました。これは褒められるだろうと思いました。ストップ高ちゃうかと思ったら、翌日ストップ安になりました。

機関投資家から「優待制度なんて全然株主平等の原則に反する」と言われ、私も「確かにな」と思い、取り止めたら、思わぬ展開で…。もう二度と止めませんから大丈夫です。

 

Q10. エンゲージメントスコアの作成にAIを活用していますか。

A10. もちろんです。AIの搭載が大前提です。

 

Q11. 2025年は増収減益でしたが、2026年は増収増益となる見通しです。利益率が改善する理由と今後の見通しを教えてください。

A11. 昨年は、パソコンスクールや語学スクールなどのキャリアスクール事業ののれんを全額減損しました。構造改革に向けて、一度綺麗にしておこうと減損したことで、増収減益になりました。今はのれんを抱えている中で、減損リスクのあるものはありません。順調に増収増益の予定です。

 

Q12. 小笹会長の座右の銘はなんですか。

A12. 若い時はイキっていましたから、「有言実行!」と言っていました。とにかく事前に宣言して、それを実行達成する。でも段々年齢を重ねてくる中では、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」です。

謙虚に、色んなお客様、色んな株主様、色んな社員など、色んな方に支えられている中で今があるということを、段々年齢を重ねるごとにわかるようになりました。昔みたいに「有言実行!」と偉そうに言い放つことはなく、常に腰を低くし、頭を垂れながら過ごしたいと思っています。

 

Q13. 会長ご自身の立場から見て、御社が今後5年から10年で絶対に手放していけない強みは何だとお考えですか。

A13. 明確に一点、人材の採用力です。これは非常に強いです。新卒採用でも、また今は海外進出していますが、海外での採用でも、非常に素晴らしい人材が来てくれています。この人材力を下げること、あるいはその投資を控えることは絶対にしてはいけません。

採用は、3年〜5年後、新卒採用なら10年後の会社を作るぐらいの先行投資になります。これについては引き続き積極投資を続けていこうと考えています。

 

Q14. 御社のモチベーションクラウドとは何か。改めて私たちにもわかるような言葉で教えてください。どのようなサービスを提供しているのか。どんな点が御社の顧客に支持されているのか。顧客が御社を選択する理由を教えてください。

A14. お客様から支持されているのは、エンゲージメントという領域で、モチベーションクラウドがファーストランナー、トップランナーだからです。そういう意味では、先行者利得。我々には大量のデータベースが集まっているので、顧客企業が自分たちの手作りでサーベイを作っても、他社との比較ができません。業界平均との分析もできません。つまり、お客様から選ばれているのは、圧倒的なNo.1であるからです。

そして、期待度×満足度というマトリックスもオンリーワンの技術です。これが選ばれている理由です。

モチベーションクラウドの中身について。会社と個人の相思相愛度合いを決める16領域を、期待度と満足度で二重聞きして、各社の課題がどこにあるのかを明らかにする。そしてそれを改善するコンサルティングで顧客と伴走するサービスです。

顧客から受け入れられているのは、やはりデータベースの圧倒的な先行者利得だと思います。これは他社が後発で始めてもなかなかキャッチアップはできないでしょう。そこにあぐらをかくつもりはありませんが、選ばれているのはそういうデータベースの膨大かつ圧倒的な量だと考えています。

 

Q15. 将来的にはどのような会社でありたいとお考えですか。会長が抱いている会社の理想像や大事にしていることなどをお聞かせください。

A15. 目指す方向性としては、グローバルなHRコンサルティングファームです。今、実際に超大手企業と仕事をしていると、グローバル展開しているエンタープライズ企業は、海外の調査会社のサーベイを使っています。具体的にはアメリカのクアルトリクス社。ここはもうライバルが明確になってきました。

日本発で世界に広がったものには、自動車産業を含めたものづくりがあります。それから、ゲームやアニメ、カラオケなどのサブカルチャーです。一方、組織やマネジメントといった上流の概念は、日本はずっと海外から輸入してきました。古くは中国から、戦後はアメリカから。それらを日本版にカスタマイズすることが、これまでの流れでした。

自分の野望としては、日本発の組織作りや組織強化、経営マネジメントを世界に広げたい。今、アジア5ヵ国で展開してみると、十分に国を越えて通用する手応えを得ています。あとは時間の問題で、いかに北米やヨーロッパ、オセアニアに展開していけるか。

私が何歳まで元気でやれるかも別問題としてありますが、創業者がいなくなってもきちんと成長を続けられる基盤をグローバルに作ろうと一生懸命頑張っています。

 

Q16. もし今後事業環境が大きく悪化した場合でも、ここだけは守り抜くと決めている経営上の一線があれば教えてください。

A16. 色んなことがあると思います。これまでも、リーマンショックや2020年のコロナ禍は会社の事業に大きなインパクトを与えました。でも、どんなことがあっても大事にしてきたのは、お客様に伝えていることと同じです。

自分たちのエンゲージメントを持ち、これだけはしっかり高めておきたいというエンゲージメントが高い集団の方が強い。そういう意味では、エンゲージメントを高めるための投資は譲れない部分だと思います。

リーマンショックの時も、コロナ禍の時も同じでした。エンゲージメントを高めるためにしっかり投資しておけば、会社が苦しい時に、みんなが歯を食いしばり、現場が頑張ってくれる。そんな経験をしてきました。私はこういったエンゲージメントを大事にしたいと思っています。

 

Q17. 今後の海外展開についてお考えをお聞かせください。どの地域でどの事業を伸ばすことをお考えですか。

A17. 現在、アジアエリアのシンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアで展開しています。アジアもまだまだ、台湾やマレーシアに進出するかもしれません。将来的にはインドもあるかもしれません。

ただ、グローバルなHRコンサルティングファームと認められるために、ニューヨークとロサンゼルスには、この2年以内に進出を果たしたいと思っています。その後はヨーロッパ、そしてオセアニアです。

競合とは言いませんが、クアルトリクス社という海外の調査会社のグローバルな拠点が明確になっているので、そこに当てていく感じです。海外展開は先行投資にはなりますが、スピードを緩めることなく進めていこうと考えています。

 

Q18. 御社のモチベーションクラウドの競合先はどのような会社のサービスですか。また、競合先に対する御社のサービスの差別化はどういったものですか。

A18. 競合は、前述の外資系企業です。彼らとの違いや当社の強みでみると、彼らは診断だけする。だから変革ができない。一方、我々はエンゲージメントという切り口で、膨大なデータベースを基に診断できるのが強みの1点目です。

また、我々は診断だけでなく、診断結果に応じた改善コンサルティングをやる。これも当社の優位性です。例えば、人材採用を手伝ったり、人材の研修・開発、評価や報酬制度作り、運用のお手伝い、あるいはカルチャー変革。これらをワンストップでできるのも当社しかない。

診断と変革の両方ができることと変革の部分でもワンストップでできるのが強みです。

いわゆる人材系企業は、だいたい人材紹介会社か求人広告会社、人材派遣会社です。組織の中身については誰も面倒で、手をつけません。しかし我々は創業直後からそこにしっかり取り組み、ワンストップ対応であることが強みです。競合との差別化は、もっともっと大きな声で発信していきたいと思っています。

 

Q19. 今後、御社は個人投資家向けIRを強化していく予定ですか。

A19. 株主数は以前の1.5倍ぐらい、1万4,000人ぐらいまで来ています。これは優待制度を導入した効果もあるかもしれません。今後も引き続き個人投資家向けのIRに力を入れていくことをIR担当者から聞いています。

以上

 

 

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