株式会社kubell(4448)
開催日:2025年12月17日(水)
説明者:代表取締役 兼 社長 上級執行役員CEO 山本 正喜 氏
1.会社概要
・ 私の自己紹介について。1980年生まれで、現在45歳。出身は大阪の寝屋川で、大学から東京に出て、電気通信大学で情報工学やコンピューターサイエンスを学びました。今から25年ほど前の大学在学中の2000年は、日本にインターネットがやってきたタイミングでした。インターネットの登場に感動し、居ても立ってもいられず、兄弟で学生起業したのがkubell(クベル)のスタートです。
元々私が社長ではなく、兄が社長(CEO)で、弟の私はCTO。チーフテクノロジーオフィサーで、エンジニアを務めていました。私は、プログラムをたくさん書き、インターネットの様々なサービスを開発する形で事業に関わってきました。
2011年3月に、今の主力ビジネスチャットサービスの「Chatwork(チャットワーク)」という製品を私が企画。プログラミングのコードも0からすべて開発し、新規事業責任者の形で事業成長も牽引してきました。「Chatwork」がどんどん大きくなるに従い、兄から「もうお前が社長をやった方がいいのではないか」という形でバトンタッチされ、2018年にCEOに就任しました。社長就任1年後の2019年9月に東証マザーズ、現在の東証グロース市場に上場を果たしています。
・ 会社概要について。2025年9月末時点の従業員数が674名。所在地は東京、大阪。元々大阪が創業の地ですが、東京のスタッフが多くなり、乃木坂にオフィスがあります。
・ コーポレートミッションは、「働くをもっと楽しく、創造的に」。人生の大半を過ごすことになる、働くという時間。20代から60〜70代まで週5日。人生の大半を占めるその時間は、生活の糧を得ることも大切ですが、それだけでなく、1人でも多くの人がより楽しく自由で、創造性を存分に発揮できる豊かな社会を作りたいと考えています。
・ コーポレートビジョンは「すべての人に、一歩先の働き方を」。一部の先進的な人だけがどんどん先に行くのではなく、世界中で働くあらゆる人が、自分自身の働き方を常に自分なりの一歩先に進められるプラットフォームを提供したいと思っています。
・ そんなミッションとビジョンを実現するために、現在、2つの事業を展開しています。
1つがビジネスチャットの「Chatwork」。これは国内最大級のビジネスチャットのプラットフォームです。2011年にリリースした時にはビジネスチャットという言葉もない状況で、おそらく世界初ぐらいのタイミングだったのではないかと思います。業界のパイオニアとして市場を切り拓き、現在、日本国内のアクティブユーザー数(国内利用者数)はNo.1。導入社数は95.3万社を突破し、主に中小企業のユーザーを中心に、大きなプラットフォームになっています。
その圧倒的な顧客基盤のあるプラットフォームを背景に、新しい事業としてチャレンジしているのがもう1つの事業の「BPaaS(ビーパース)」です。こちらは、Chatworkのチャット経由で、経理や労務などの業務を請け負い、SaaS(サーズ)の運用代行のようなことをして、DXを推進するサービスです。サービスのブランドとしては「タクシタ」という名前で展開しています。
・ 2つの主力事業以外にも様々な事業を行っています。多くはM&Aなどでグループインした会社が提供しているサービスです。例えば「Chatwork勤怠管理」は従業員の出勤を管理しています。他にもクラウドストレージサービスや、DXの相談に乗るDX相談窓口サービスなどを展開しています。
・ これまでの歩みについて。創業から完全に自己資金だけで運営してきましたが、2011年にビジネスチャット「Chatwork」をリリースし、2015年にベンチャーキャピタルから計18億円ほど資金調達をいただきました。そこからはスタートアップという形で上場を目指すことに転換。2019年に東証マザーズに上場しました。
そして2年ほど前の2023年から、新しい柱として「BPaaS」を展開。ビジネスチャットの上にBPaaSのような様々な事業を作り、プラットフォームビジネスをどんどん発展させるフェーズにあるのが今の我々の会社です。
【社会情勢について】
・ 我々が事業を取り組む上で前提となる社会背景について。日本社会は少子高齢化が急速に進んでいます。人口減少で問題となるのは、その内訳です。人口減少を上回る急激なペースで65歳以上の高齢者が増えており、世界でも最高の高齢化率となっています。そのため働いている少ない人の数で、たくさんの高齢者の方や社会福祉を支えなければなりません。それには働いている方の生産性を上げることが、日本にとって何より重要な社会課題だと考えています。
一方、日本の労働生産性は世界的にみてもあまり高くないと言われています。その中でも全労働人口の68.8%を占めるのが中小企業です。日本は中小企業で回っているような国ですが、中小企業の1人当たりの労働生産性は、大企業に比べて半分以下になっています。それが20〜30年の長期で労働生産性が伸び悩んでいる原因です。
中小企業の労働生産性の向上には、IT投資、いわゆるDXが重要です。しかし色んな問題があってなかなか進まないのが今の日本の状況です。
・ 中小企業においてDXが進まないのは、お金がないなど幾つかの理由がありますが、最も大きいのがIT人材の不足です。たとえITを導入しても、それを使いこなせる人がいないから、入れても仕方がない。それではDXがなかなか進みません。
また、1社1社の規模が小さいのが中小企業マーケットの特徴です。そのためITやSaaSプロダクトのベンダーも、中小企業に営業しても割に合わない。そのためベンダー各社はエンタープライズな大企業を狙う企業がほとんどです。中小企業をメインターゲットとしたプロダクトを作るITベンダー/SaaSベンダーは非常に少ない。ITが進まないと、それに適したプロダクトも生まれない。エンタープライズの多機能で高価格なものも多いのも、中小企業のDXが進まない理由の一つだと思います。
結果、DXに取り組めていない中小企業が今のタイミングでも92%もいる。このようにDXは中小企業ではなかなか進んでいない現状があります。
【Chatworkについて】
・ その中で我々のChatworkは、有料契約のユーザーのうち96.8%が300名以下の中小企業です。我々は中小企業のユーザーにめちゃくちゃ広まっているプラットフォームで、中小企業向けのクラウドのITツールとしては圧倒的なポジションにいます。Chatworkほど中小規模で使われているSaaSは他にはないと思います。
また、ビジネスチャットはコミュニケーションツールなので、業界や職種を問わず全業種・全職種で日常的にずっと使い続けていただいています。例えば経理の方が特定の業務のために使うのではなく、全従業員に使っていただく。他のSaaSと比較しても、非常に強いユーザー接点を持っているのがビジネスチャットの特徴です。
この高いプラットフォーム性を活かし、チャットを経由して業務を巻き取るのが、BPaaSを軸とした周辺サービスの展開です。非常に急速なペースでグッと伸びているので、これからの我々の成長の柱になると考えています。
・ ビジネスチャット「Chatwork」の強みについて。ビジネスチャットを使われている方は、増えていますが、ただ、日本国内全体の普及率はまだあまり高くない。我々の調査だと23.7%で、残りの70%強〜80%弱の方はビジネスチャットを使っていないということになります。これは裏を返すと、成長余地がまだまだある。非常に大きなポテンシャルがあるマーケットだと考えています。
そして、我々が中小企業のマーケットで大きく広がった要因でもありますが、非常に簡単で使いやすいユーザーインターフェースがあり、かつ社外と繋がりやすい特徴があります。そのため紹介経由で普及してきました。紹介されて使い始めたユーザーが、また次のユーザーを紹介する。これが複利構造になり、どんどんユーザーが増えました。
2011年のサービスインからの登録ID数の推移をみると、ただの直線ではなく、2次曲線的にグッと伸びています。これが複利で伸びていることの証明です。
複利の構造で伸びる非常に強いユーザーの拡大に加え、我々も継続的に開発し、Chatworkの機能を増やしてきました。また、ユーザーが増えることでプロダクトの価値が上がるので、適正なタイミングでプライシングを見直し、価格改定を実施。1ユーザーあたりの単価で(ARPU)も上昇しています。
そして、ビジネスチャットは会話が蓄積されるものです。しかし、違うツールに切り替えると過去の会話ログが全部なくなってしまう。それはユーザーにとって不便なことなので、定着してしまえば、殆ど止めることはありません。解約率も他のSaaS企業と比べて非常に低い水準になっています。
・ 「Chatwork」の特徴は大きく3つあります。1つは「誰もが簡単に使える」。競合のツールは海外製のものが多い中で、国産で、日本人のコミュニケーションに非常に合ったユーザーインターフェースになっています。
2つ目の「オープンプラットフォーム」が我々の最大の特徴です。同じ1つのアカウントで、社内外のコミュニケーションがシームレスにできるのは、ほぼChatworkだけの特徴です。お客様やパートナー企業と使うなど、社外と繋がりやすい、非常に優位なプロダクトがChatworkです。そのため口コミで広がりやすいという特徴もあります。
3つ目は「フリーミアム」。まず無料で使っていただき、使う量が増えると有料になります。無料ユーザーが9割ぐらい、有料ユーザーが1割のビジネスモデルです。無料から使えるので、紹介しやすい構造になっています。
・ 中小企業のビジネスチャットの普及率をみると、全体では23.7%ですが、当社がターゲットとする300名以下では23.3%とさらに低い水準です。中小企業でも300名以上の企業の普及率は50%近くありますが、人数が少ない企業では、まだまだビジネスチャットの普及が進まず、我々がマーケットを取る余地が大きくあると考えています。
・ 業界におけるポジショニングとして、我々の競合は2社あります。
1つは、ITエンジニアやスタートアップの先進的な企業でよく使われているビジネスチャットで、ITスキルが高い方を中心に広まっているプロダクトです。もう1つは、エンタープライズな大企業でよく使われているチャットツールです。
それらと比較し、我々は企業規模が300名以下と小さく、かつエンジニアではなく、ITスキルがあまり高くない方でも非常に使いやすいところをポジショニングしています。
競合他社との棲み分けについて。我々の登録ID数の推移と、競合各社の参入時期を組み合わせてみると、各社が参入した時期に対して、我々のユーザー数の伸びは全然変化がありません。これは、まだまだビジネスチャットの普及率が低いので、競合を食い合うよりも、それぞれのポジションでユーザーを開拓している。どちらかというと、競合になるのはメールや電話などの旧来のコミュニケーションで、それぞれのポジションでビジネスチャットを開拓している状況だと考えられます。
【BPaaSについて】
・ BPaaS(ビーパース)はBusiness Process as a Serviceの略で、いわゆるクラウドサービスの1つです。クラウドというと、IaaS、PaaS、SaaSという3レイヤーが有名です。BPaaSはその1つ上で、SaaSのようにソフトウェアをクラウドで提供するのではなく、業務プロセスそのものを提供するクラウドサービスです。
簡単に言うと、クラウド経由で業務アウトソーシング(BPO)ができる、オンラインBPOのようなサービスです。ソフトウェアを導入して自分たちで使うのではなく、ソフトウェアを使いこなす人材ごとサービス提供するイメージです。
・ 我々は、BPaaSが中小企業のマジョリティ層のDXの本命になるのではないかと思います。というのは、SaaSサービスの普及状況を見てみると、SaaSは非常に広まっており、SaaSを使う上場企業も多くあります。ITに詳しい先進層では幾つものSaaSを入れて使いこなしています。
一方、中小企業でのSaaSの普及は、なかなか難しい。人口の3分の2以上を占めるマジョリティ層と言われる一般層では、現場仕事が忙しかったり、ITに詳しい人材が社内にいないこともあり、使い勝手が異なるSaaSを5個も6個も使い分けるのは、現実問題として難しいことが分かってきています。
そこで我々は、SaaSを使いこなしていただくよりも、業務ごと巻き取って、我々がSaaSの選定から導入、運用代行までやってしまえばいいという発想に至りました。
BPaaSは、チャットを経由したSaaSの運用代行みたいなイメージです。チャットさえしていれば、色んなクラウドのDXができている状態になるサービスで、非常にご評価いただいています。我々は、「やはりこれだな」と確信を持って展開しています。
・ 当社のビジネス構造の優位性について。我々がメインターゲットとするのは中小企業のマーケット。ここは非常に規模が大きいものの、1社ごとの規模は小さい。そのため営業効率が悪く、参入するベンダーが限られ、ニーズに合ったサービスが不足しています。
また、中小企業にはITに不慣れな人が多いので、AIやSaaSなどのテクノロジーを自社で使いこなすのは難しい。そうなるとポテンシャルは非常にあるものの、効率が悪くて参入できません。これを「ブラックオーシャン市場」というそうです。光が届かない深海のように、アプローチは難しいものの、たくさんの資源がある市場です。
我々はそういうマーケットにあって、口コミで広がるビジネスチャットというプロダクトにより営業しなくても広まっていく。そんなプロダクトを持つ稀有なポジションのベンダーだと思っています。
ビジネスチャットを接点としながら、チャット経由で業務を請け負い、DXする。中小企業のニーズに合ったDXサービスを展開することで、中小企業に対する生産性を上げられるようになっています。
また、ビジネスチャットもBPaaSも共に中小企業にフォーカスしている。ターゲットが一貫しているので、非常に効率のいいマーケティングができます。そのため1顧客あたりの採算性が高いビジネスができるのが我々の特徴です。
・ そして避けて通れない話題がAIです。ChatGPTやGeminiなどを日常的に使われる方も増えていると思います。我々は、AIの急激な進化と我々の事業のポテンシャルは、非常に相性がいいと思っています。
ChatGPTに代表されるLLMベースの革新的な技術進化が2年ほど前にありました。AIを使った高度な文書理解や多様なタスク実行が1つの汎用的なモデルでできるようになったのが大きな進化です。
ChatGPTには「チャット」という言葉が付いています。こういった生成AIを使う時のインターフェースは大体チャットになっています。つまり、チャットの価値が大幅に向上している時代だと見ることができます。
我々からすると、ビジネスチャットには過去からの膨大なメッセージデータがあります。これをAIに学習させることにより、チャットを使う人や会社において、適切な文面を生成したり、要約したり、これからの予測や戦略を立てられるポテンシャルがあると思います。そして、AIと対話する機能も、我々がBoTの形で提供できます。
さらに、我々が展開するBPaaSでは、今はお客様との対話についてオペレーターをたくさん雇い、オペレーターがチャット経由でお客様とやり取りしていますが、ここをAIにすることで、お客様からすると、会話の相手が人なのかAIなのか、わからなくなります。そうなると非常に生産性が高い運営ができるようになります。
これは、いわゆる車の自動運転に近い世界観だと言えます。今アメリカでは、運転の自動化がどんどん進んでいます。同じように人とAIがハイブリッドで伴走しながら、いずれ特定の業務は完全にAIが実行するようになる。BPO(Business process outsourcing)は労働集約型ビジネスでなかなか利益率が低いと思われる方もおられるかもしれませんが、我々はAIにより利益率が高いビジネスに化ける世界だと思っています。
これからBPO革命が間違いなく起きると思っており、マッキンゼーでも生成AIによって大きく変わる市場の1つがBPOだとレポートしています。
・ ビジネスチャットを含むBPaaSの潜在市場(TAM:Total Addressable Market)について。BPOを含むビジネスチャットのマーケットは、中小企業に限定しても現在42兆円。すでに顕在化しているユーザーに絞っても2,983億円と、3,000億円に近い非常に大きなマーケットがあります。我々はこちらを狙いたいと考えています。
・ ミッション・ビジョンと事業の繋がりについて、我々の思いを紹介します。
我々のミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」です。これを事業に落とし込み、ビジネスチャットの接点を足掛かりにBPaaS事業を展開。いわゆるバックオフィス業務を巻き取ることで、働く人がやりたいことに集中できる社会を作りたいと思います。
例えば飲食業なら、美味しいものを作り、良いレシピを考え、腕を磨く。製造業なら、いいものを作るために、いい設計図を書いたり、いい設備を導入する。そういうことになるべく多くの時間とお金を使っていただきたい。それにより、働くことそのものが楽しくなります。また、良い商品が生まれることで、売上や利益が上がり、生産性も上がる。そういった安くていいものが増えて、社会が豊かになればいいと思いますし、働く人そのものも、働くことが楽しくなればいいと思います。
コーポレートビジョンの「すべての人に、一歩先の働き方を」については、労働人口の約70%を占めるのに、DXが進まず、歩みが止まっているのが中小企業です。そこに我々のBPaaSを展開。ITツールを学ばなくてもDXできる世界を作りたいと思います。
私たちが目指すのは中小企業全体の本社機能です。大企業の生産性が高いのは、本社機能があり、全てのバックオフィス業務が集約しているからです。我々はチャットで中小企業をネットワーク化し、中小企業全体の本社を担うことで、生産性を劇的に引き上げ、少子高齢化に伴う社会福祉を支えます。それと共に、社会全体が一歩先へと歩み続ける、明るい希望が持てる社会にしていきたいと思います。
日本は閉塞感に包まれて希望を持てる人が少ないと言われています。それは、昨日より今日、今日より明日という未来が良くなる実感を持てない人が多いからではないでしょうか。一歩ずつでもどんどん良くなることを実感する人が増えれば、日本は明るい希望を持てる社会にできるのではないかと思います。
2.中期経営計画
・ 中期経営方針は、中小企業No.1のBPaaSカンパニーになること。長期的には、ビジネス版スーパーアプリとして、全てのビジネスのプラットフォームを目指します。
・ 現在の中期経営計画は2024年から2026年の3ヵ年計画です。現在は真ん中の年で、売上高はCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)で30%とし、最終年度の2026年で売上高150億円を目指します。
利益目標はEBITDAで15〜22.5億円。EBITDAマージンで10〜15%を目指す計画です。
・ 中長期の財務ターゲットとして、どのような利益率のビジネスに仕上げるのか。2024〜2025年の限界利益率は80%。非常に高い粗利が出せるビジネスです。また、EBITDAマージンは10〜12%。営業利益率は1〜3%です。
中長期のターゲットとしては、限界利益率はBPaaSの領域が少し増えることで、若干下がります。ただ、コストであるS&M(Sales & Marketing比率)やG&A(General & Administrative比率)を下げることで、EBITDAマージンは25〜40%となり、営業利益率で15〜30%を出せるビジネスモデルに仕上げたいと考えています。
・ そういった中期経営計画を達成するために、3つの戦略を掲げています。1つ目が「コミュニケーションプラットフォーム戦略」。ビジネスチャットを単なるチャットツールではなく、様々なビジネスのプラットフォームになるような、価値を高めていきます。
2つ目が「BPaaS戦略」。チャット経由でいろんな業務を巻き取り、DXを進めるBPaaSをプラットフォームの上に乗せていきます。
3つ目は「インキュベーション戦略」。BPaaS以外の様々な新規事業を作ります。
・ 3つの戦略の関係性について。中小企業という市場としては大きいものの、1社1社が小さくて、営業するにも割りが合わず、生産性がずっと低いまま残っている市場に対し、我々は口コミの紹介経由でビジネスチャットを広げてきました。そしてチャットの接点を足がかりに、経理や労務などのバックオフィスの業務を巻き取り、DXを進め、生産性を上げていきたいと思っています。
ビジネスチャットを起点としたBPaaSを活かし、お客様との関係において、様々なサービスをたくさん作っていく。例えば、ファイナンスで資金繰りを支援したり、教育や人材提供、人材紹介のビジネス、福利厚生やデータソリューションのビジネスなど、様々な領域の事業があると思います。それらを新規事業として取り組み、中小企業全体の生産性を上げる非常に価値が高いプラットフォームになりたいと考えています。
3.2025年12月期第3四半期業績
・ 4つのハイライトがあります。1点目は、業績予想の修正。売上は残念ながら想定レンジを下回る水準でしたが、利益は上振れに合わせた修正をすることができました。
2点目は、連結売上高の堅調な推移。我々のビジネスはストックビジネスです。毎月の月額課金のビジネスが非常に堅調に推移しています。そしてEBITDAは昨年度に比べ大きな増益を達成しています。
3点目は、Chatworkのユーザー基盤拡大とサービス強化に向けた複数施策の進捗。我々の色んなプロダクトの体制が進み、マーケティングの効率が上がってきています。決算説明資料でトピックとして紹介しているので、ぜひご覧ください。
4点目は、BPaaSの領域での新サービス「タクシタ採用」の提供開始。現在は経理や労務が主力の領域ですが、採用代行(RPO)サービスを新たに開始しています。
・ 業績予想の修正について。前回の業績予想は売上高が95億7,100万円〜98億2,600万円というレンジの形で開示していたのですが、残念ながらこの予想の下限を少し下回る結果となり、今回、予想値を94億8,500万円としました。これが予想の修正です。これは前年比+12%の成長となります。
売上総利益は、前回の業績予想のレンジの範囲に収まる数字になっています。
そして、EBITDAから営業利益、当期純利益に至る各段階利益は、前回の業績予想のレンジを上回る水準となる項目もあります。
売上高は前回予想を下回りますが、利益に関しては想定以上にうまくいっています。非常に生産性が上がっていることを今回の業績予想でもお示しできています。
・ 売上高修正の要因について。計画と大きく差分ができてしまったのが、BPaaSドメインの労務の領域です。給与計算を行っていますが、オペレーターの体制が不足し、新たな案件を受けられない状況になりました。案件を受けるとサービス品質を維持できなくなる可能性があったので、無理に受注せず、一時的に新規受注を停止する判断をしました。それが業績にも影響しています。
ITサービスとは異なり、BPaaSのサービスは、オペレーターを多く雇用し、その方々に一定のスキルを実装していただき、業務に当たるビジネスです。そのため、人材を急激かつ安定的に増やすことが難しい。我々も学びながら対応しています。
今回は新規受注の停止という事態になりましたが、それをカバーするために外部の会社とも協力体制を組みました。利益率は若干下がりますが、新規受注を止めず、内部で足りない時は外のリソースを使う体制を構築できました。今後の安定的な対応のための学びになったと考えています。
・ KPIハイライトについて。全社はビジネスチャットとBPaaSを合算した数字で、ARR(年間経常収益)は91.2億円。前年比で+11%です。導入社数は95.4万社です。
SaaSドメインは、ほぼビジネスチャットのサービスですが、勤怠管理やクラウドストレージのSaaSも含まれています。こちらのARRは79.3億円。非常に重要なKPIであるChatworkの登録ID数は792.7万IDで、800万IDに迫る水準です。そして、Chatworkの課金ID数、つまり有料でChatworkを使っていただいている方は、登録ID数の10%強の83.4万ID。また、ChatworkのARPU(1ユーザーあたりの単価)は725.3円です。
BPaaSドメインは新規事業という形で、今大きく立ち上がっている段階です。ARRは11.9億円で大きく成長しています。売上高が3億900万円です。
・ 四半期の業績サマリーについて。売上高は前年同期比+10.4%と堅調に推移。我々はChatwork以前からウイルス対策ソフトを販売するセキュリティ事業をしていました。しかし昨年末でそちらを廃止したため、影響を除いた実質的な成長率は+12%です。
・ 連結売上高は、積み上げ型のビジネスなので、右肩上がりの堅調な推移を示しています。
売上高は、ストックとフローで示せます。ストックビジネスは、サブスクリプションの月額課金で積み上がるものです。フローは、単発の課金。1回分で支払うものです。
ストックビジネス部分が綺麗に積みあがっており、非常に堅調に伸びるビジネスであること。ボラティリティの波があるビジネスではないことを示しています。
・ 営業利益・EBITDAの推移について。どちらも今は安定的な黒字を示しています。
我々は2020年のコロナ禍を、「コロナ禍になるとリモートワークが増える。ビジネスチャットとして非常に追い風だ」と認識し、しっかり投資をしました。そのため、2019年の上場後、2期は連続黒字でしたが、コロナ禍になり、大きなトレンドを捉える投資のために、グーッと赤字を掘ることになりました。
サブスクリプションの月額課金のビジネスモデルは、コストは単年でかかりますが、回収自体は3〜5年が必要です。そのため一時的にどうしても赤字になる。しかし今はそちらが落ち着いてきて、収穫できるフェーズになっています。これからしっかりと利益が出るフェーズへの転換点にあるとご理解ください。
・ 今後の我々の色んな情報については、メールマガジンで配信しています。QRコードを通じて登録していただければ、IRニュースを送信します。IRサイトにも様々な情報を記載していますので、そちらもぜひご確認ください。
4.質疑応答
Q1. 会社名を製品名Chatworkからkubellに変えたのはなぜですか。また、会社名kubellの由来を教えてください。
A1. 昨年7月、現在の株式会社kubellへと社名変更しました。これは、ビジネスチャットのChatworkもやりつつ、これからはBPaaSの「タクシタ」というサービスも大きく展開していくから。「タクシタ」の内容は、経理の代行や労務の給与計算代行、営業事務など様々なものがある。色んなビジネスを展開することになります。
Chatworkは、おかげさまで非常に有名で、知名度も高いので、「なぜ社名を変えたのか」とよく言われます。ただ、Chatworkにはビジネスチャットのイメージが強すぎて、我々が経理や労務を代行するに当たり、「チャットの会社がなぜそのような事業をやるのか」という説明コストが高まる。そこで、様々な事業を展開していることを包含した社名にアップデートしなければならないと考えたことが、社名変更の大きなきっかけです。
kubellという名前は、実は日本語です。「薪をくべる」の「くべる」から採用。「働く人の心に宿る火に薪をくべる存在になりたい」という思いが込められており、コーポレートミッションの「働くをもっと楽しく、創造的に」とリンクしています。ロゴも薪が燃えている炎をイメージしているので、ぜひ覚えていただければと思います。
Q2. ビジネスチャットは正直これまで聞いたことがありませんでした。中小企業などで具体的にどのようなシーンで利用されていますか。
A2. 内線電話や会議の代わりにチャットを使うことをイメージしていただければと思います。例えば、営業の方が送る日報を、紙で書く会社もあれば、ホワイトボードに書く会社もあれば、メールを使う会社もありますが、これをチャット上でやるのです。LINEのグループをイメージしていただければと思いますが、営業日報の送信をチャットで行うと、リアルタイムでどこでも見ることができ、そこに反応して会話することができ、時系列でずっと追っかけていくことができます。
部門内のコミュニケーションも、例えば経理部や開発部などの部門単位でチャット内に会議室を作るイメージです。そこで会話することにより、わざわざリアルな会議室を予約して、そこに移動して、色々と説明する手間なく、そのまま会話ができる。また、その内容を残せるクラウド会議室みたいなイメージを持っていただければと思います。
さらに、プロジェクト単位で使っていただくこともあります。例えば展示会の出展プロジェクトや特定の大型のお客様に向けたプロジェクトなど。プロジェクト単位でこの箱を作っていただくと、そこにファイルのアップロードや会話のやり取りが残され、データがずっと時系列で溜まっていきます。後からプロジェクトに参加した人も、過去のやり取りを見れば、状況を追っかけていくことができます。
オンライン上で無限に会議室を作れて、時間と場所を選ばずに同時並行でビジネスができる。そんな新しい形のコミュニケーションツールだとご理解ください。中小企業の方々にも非常にたくさん使っていただいています。
Chatworkが特徴的なのは、お客様と使うケースが非常に多いこと。例えば、税理士や社労士、弁護士といった方々でChatworkのユーザーはとても多いのですが、顧問先と使われているのです。今までなら、税理士や弁護士は顧問先に月1回訪問し、色々とアドバイスしたり、月次の資料を見せていただくことが多かった。ところがChatworkをお客様に入れていただき、チャット経由で顧問する方がすごく増えています。
これにより、顧問先に行かなくて済む。今までは行ける範囲が商圏でしたが、全国からのお客様を受け付けられます。しかも、時間と場所を選ばない。海外からでも、夜中でも対応できます。
とある弁護士でChatworkのヘビーユーザーとして有名な方がおられるのですが、その方の売上はChatworkを使う前と後で10倍に増えました。本当に大成功されていて、「もうChatworkじゃないとお客さんを取らない」と言っていただいています。その様子を見て、同じことをやりたいという方の中でも結構広がりました。このようにお客様との間でもお使いいただけます。
Q3. 今後、より多くの企業、特に大企業が参入してくることが考えられますが、優位性を維持するための戦略をご説明ください。
A3. 競合はすでに2社あり、どちらも我々よりも圧倒的に資本力がある、いわゆるビッグテックと言われる時価総額何兆円みたいな会社です。これらの企業がもう10年以上前から参入しているマーケットで、生き残っている国産プレイヤーで上場企業なのは我々ぐらいです。他にも業界に特化している会社で、似たようなサービスを展開しているところはあります。
我々が勝てている大きな理由は、ターゲットが違うこと。我々のサービスは中小企業の方々にとって非常に使いやすくなっています。
それはまず、簡単なこと。他社のビジネスチャットは非常に高機能ですが、難しい。使いこなすのに苦労します。それに対して我々のチャットは非常にシンプルです。
それから、社外と使いやすい。他社の製品は1社ごとに、テナント単位で区切られている。自社のコミュニケーションは非常に簡単ですが、他社とのコミュニケーションにはテナントごとの接続設定をやらなければならなくて、非常に難易度が高いのです。
我々のChatworkもテナントという概念はありますが、全部が繋がった1つの世界になっていて、FacebookやLINEに近い概念です。例えば「山本」をChatworkで検索すると、全世界のChatworkの山本さんが出てくる。他のサービスではそういったことは絶対に考えられません。
これは社外の人と繋ぐ時に、非常に簡単だということです。Facebookで友達申請したり、LINEでコンタクトを繋ぐ感覚で社外と繋がれるのはChatworkだけです。
それらを踏まえて、Chatworkが中小企業にフィットしているのは、中小企業の方々は自社1社で業務が完結することが少ない。大きな案件を何社もが組んでやる構造になりやすいのです。例えば建設業界なら、工務店がまず案件を請け負います。その下に連携する形で、建材屋や左官屋、電気屋がいる。いろんな業者を繋いでプロジェクトが進みます。その時に参画しているのは、全部違う法人です。
そこをまとめるコミュニケーションツールは、従来、電話とFAXでした。でも電話は繋がらなかったり、折り返し連絡をもらうことが頻繁にありました。それをChatworkでやれば、いつどこで会話しても全部クラウド上に記録されているので、非常に生産性が上がります。
建設業界の現場では、色んな業者が入れ替わりになるプロジェクトのたびに、「このプロジェクトのやり取りはChatworkでやるので、チャット入れてください」とお願いする。すると初めは「Chatworkって何ですか?」と聞かれますが、使ってみると「これ便利だね」ということになる。
このようにChatworkの拡大は、中小企業の方々が口コミで広げていただいたことに尽きます。初期の頃は営業も0人で、まさに口コミで大きく広がってきたと言えます。
Chatworkは、小さくて色んな法人が連携しながら仕事を進める中小企業のスタイルと、Chatworkの外との繋がりやすさや簡単に使いこなせること、無料から使えることがフィットし、中小企業の皆様にとって非常に使いやすく便利な形になっていきました。
そして、「みんなが使っているから使いやすい」。LINEもみんなが使っているから便利です。Chatworkもみんなが使っているから便利というネットワーク効果があります。みんなが使っているから価値が高いという状態が作れているので、他社が参入しようとしても、周りが使っていないから入りにくい。我々は中小企業では負けなしのポジションを作れていると思います。
以上
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