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DIC株式会社(4631)

開催日:2025年12月21日(日)

説明者:代表取締役社長執行役員  池田 尚志 氏

 

1会社概要

・ 2024年から代表取締役社長執行役員を務める池田です。DIC(ディーアイシー)は東証プライム市場上場の化学メーカーです。

DIC株式会社は、かつて大日本インキ化学工業という社名で活動していました。創業100周年の2008年に現在の社名に変更。DICは、旧社名の英語名「Dainippon Ink and Chemicals」の頭文字を由来としています。色見本帳として有名なDICカラーガイドでご存知の方もおられるかもしれません。

DICの現在地を示すポイントについて。DICは「100年を超える歴史」の中で、「多数の世界トップクラスの化学製品」を育て上げ、「日本の化学メーカーでも有数の売上規模」です。また、DICを語る上で欠かせないのが「グローバルな事業展開」であり、「日本よりも海外の売上高や従業員の割合が多い」のが特徴です。

・ DICの117年の歩みについて。DICは日本が近代化に向かう1908年創業。日本国内の文化の活性化に伴い印刷需要が増える中、創業者の川村喜十郎が印刷インキの製造・販売会社として東京の現・墨田区で事業を開始しました。そして、印刷インキの原料の有機顔料や合成樹脂の製造に進出し、徐々に多角化を図りました。

さらに、1980年代には、当時の日本企業として過去最高規模の金額でアメリカのSun Chemical社のグラフィックアーツ部門を買収。グローバルでの事業規模を拡大し、近年では2021年にドイツのBASF社の顔料事業を買収しました。

このように、117年の歩みの中で培った新たな事業領域への積極展開と、果敢なM&Aによるグローバルな事業展開が、当社の企業DNAの根幹で、現在も続いています。

・ 印刷インキからの多角展開について。創業からの「印刷インキ」事業は、雑誌や新聞などで使われる出版用インキが出発点でした。徐々に生活全般に欠かせないパッケージ用インキに製品ラインナップを拡大。さらにパッケージに必要な接着剤や包装用フィルムを含めた『パッケージング&グラフィックセグメント』に発展しました。

色の表現に欠かせない「有機顔料」は、1925年に印刷インキの原材料を自社生産することから始まりました。同業他社が輸入品の顔料に頼っていた時代に自社生産を始めたことで、印刷インキメーカーとして競争力が高まりました。

同時に、化学メーカーとしての第一歩を踏み出すことになりました。100年近い歴史の中で培われた高度な技術を生かし、化粧品用顔料やディスプレイ用顔料など高付加価値な顔料製品へのシフトを進め、現在は『カラー&ディスプレイセグメント』として、広く世の中に色の素となる素材を提供しています。

インキの性能アップに必要な「合成樹脂」は、1952年に本格的に事業参入しました。当時最先端の海外の技術を積極的に導入し、開発力を向上。エレクトロニクス、建材、モビリティ、半導体など幅広い用途で需要が拡大し、インキ・顔料に次ぐ第3の柱として『ファンクショナルプロダクツセグメント』となりました。近年では、AIサーバや高速通信の普及を支える高機能樹脂を開発するなど、デジタルイノベーションを支える機能性材料に注力しています。

・ DICを語る上で欠かせないキーワードが「グローバル」です。早くから幅広い地域で自前での海外進出、あるいはM&Aを進め、グローバルでの一貫した生産・供給体制を確立。その結果、現在は世界62の国と地域で164のグループ会社を展開しています。南極を除くすべての大陸に拠点があり、連結従業員数約21,000名の4分の3にあたる15,000名超が海外の従業員です。

グローバルな拠点や多様な人的資本を有してることはDICの強みです。困難な事業環境に直面しても多様性を結集することで、グループ全体でしなやかに乗り越え回復する力、いわゆるレジリエンスをこれまで何度も発揮してきました。

・ グローバルな事業展開を進めた結果、現在売上高の7割強が海外です。特定の地域に偏るのではなく、日本、欧州・アフリカ、北米・中南米、日本を除くアジア・オセアニアの4つの地域でバランスよく売り上げています。過去のM&Aでも、各地域にバランスよく拠点を有することを重視。地域的な補完関係を構築し、シナジーを高め、様々な製品を世界の隅々に供給する体制が整っているのも当社の強みの1つです。

・ このようにして培った社会に必要な広範な製品群や厚みのある資産、グローバルな事業展開、多様な人的資本のおかげで、世界シェアNo.1である印刷インキをはじめ、有機顔料、PPSコンパウンドなど、世界トップクラスのシェアとなる製品を多数保有。それ以外にも、当社の強みであるスモール&スペシャル、つまり身近で小さいけれど、特別な価値を持つ製品作りに基づき、特定の分野で欠かせない素材を数多く有しています。

 

【事業紹介】

・ 吉岡里帆さんの企業CMで取り上げられている3つの異なる製品は、それぞれ違うセグメントに属します。

イージーピールフィルムは、コンビニの惣菜品に使われており、パッケージング&グラフィックセグメントに入ります。液晶用グリーン顔料はテレビの発色に使用されており、カラー&ディスプレイセグメントに入ります。半導体材料は、AIサーバなどで使用されるエポキシ樹脂を代表に、ファンクショナルプロダクツセグメントに入ります。

売上規模は、パッケージング&グラフィックセグメントが全体の約半分、カラー&ディスプレイとファンクショナルプロダクツが残りの半分の構成です。直接に目に見える製品ばかりではありませんが、化学を通じ、皆様の生活や社会を支える製品が中心です。

 

【パッケージング&グラフィックセグメント】

・ 「包装材料を通じて社会や暮らしに『安全・安心』を提供する」という基本方針のもと、食品や日用品の包装に使われるパッケージ用インキが売上のメインを占めます。10数年前は、雑誌や新聞に使われる出版用インキとの割合が半々程度でしたが、計画的にパッケージ用の割合を増やし、現在は印刷インキの売上高の8割強がパッケージ用です。

生活必需品として景気の変動を比較的受けにくいパッケージ用インキを中心に、このセグメントで安定的に利益を確保しながら、デジタルやモビリティなどの成長領域の事業拡大を進めることが、DICの大きな方向性です。まさにDICの屋台骨を支える役割をこのセグメントは担っています。

・ このセグメントを説明する上で欠かせないのが、サステナブルなパッケージ実現のための製品群です。様々な場面で環境対応が求められる中、パッケージ分野でも、使用する原料やリサイクル性、社会問題の解決などの観点から様々な工夫が求められています。

当社では、バイオマス原料を使用したパッケージ材料、リサイクル性を向上させる接着剤、フードロス削減に貢献するピールフィルムなど、多様な製品ラインナップを揃え、社会に寄り添っています。

こうした製品は、性能面とのトレードオフとならぬよう、本来備えるべき機能性を高めることで、顧客にとっての付加価値を一層高めることに努めています。また、パッケージ用インキを含め、パッケージに必要な素材を幅広く揃えているのも当社の特徴。お客様にワンストップの製品供給が可能な体制をグローバルで有しています。

・ パッケージング&グラフィックセグメントのもう1つの重要なポイントは、印刷のデジタル化への対応です。印刷分野でもデジタル化への対応が求められており、これによりインクジェット印刷用のインキ、いわゆるジェットインキが伸びています。

ジェットインキはインキの粒を印刷したいものに噴射する方式で、従来の出版インキに必要な版が不要なため、オンデマンド印刷など少部数に対応しやすいのが特徴です。

代表的なものは、皆様もよくご存じの家庭用プリンタがあります。当社は商業用や産業用として使用される印刷物、例えば大規模なバナーや屋外看板などに使用するジェットインキに強みがあります。

また、紙だけでなくテキスタイルや建材、壁紙にも印刷可能です。規模はそれほど大きくないものの、高付加価値で着実に成長が見込まれる製品として、パッケージング&グラフィックスの利益成長に大きく貢献しています。

 

【カラー&ディスプレイセグメント】

・ 「表示材料を通じて社会や暮らしに『彩り』を提供する」という基本方針のもと、このセグメントでは顔料製品が売上の大部分を占めます。

顔料は世の中のあらゆる着色に必要な素材です。中でも化学原料を有機合成して作られる有機顔料は、世界でもリーディングサプライヤーの地位にあります。

2021年にドイツのBASF社のColors & Effects顔料事業を買収し、その地位をさらに強化し、海外での売上比率を拡大しました。

塗料用、プラスチック用、インキ用顔料がボリュームゾーンとして売上の7割近くを占めます。また、機能性に特化したディスプレイ用、化粧品用、スペシャリティ用顔料は、売上規模はそれほど大きくないものの、高付加価値製品として収益性に優れています。

・ 収益性の高い製品群の代表選手がディスプレイ用顔料です。ディスプレイのガラスの下には、レッド、グリーン、ブルーの3原色の顔料を塗ったカラーフィルタが取り付けられており、バックライトの光がカラーフィルタを透過し、画面上に画像が表示されます。

このカラーフィルタに使われる顔料の中で、グリーンとブルーでは世界シェア1位です。当社は世界で初めてカラーフィルタ専用のグリーン顔料を開発。他社製品と比較して突出した輝度やコントラストを実現。その性能が評価され、圧倒的な世界シェアを獲得しています。

また、買収したBASF社のColors & Effects顔料事業の素材力、技術力を生かし、ディスプレイ用のレッドやイエロー顔料の開発にも着手しています。

液晶ディスプレイのサイズアップ傾向などを背景に、今後も拡大基調が見込まれます。当社はさらに時代の要請にマッチした製品の開発に取り組んでいきます。

・ もう1つ、これからの成長が期待される機能性顔料として、遠赤外線コントロール黒顔料があります。黒色の顔料は本来、熱を吸収しやすい弱点がありますが、当社が開発した黒顔料は赤外線を反射するため、黒でも光を吸収しにくく、熱くなりにくい塗料用顔料として使用できます。これにより遮熱効果を高め、自動車や住宅室内の温度を下げ、エアコンの使用率の節約につながります。

また、自動運転実現のためにLiDAR(ライダー)というセンシング技術が求められる中、当社の黒顔料は、従来の黒顔料の弱点である光の吸収を抑え、LiDARで検知しやすくなります。これから世の中に自動運転が広がる過程で、欠かせない製品の1つとして成長することを見込んでいます。

 

【ファンクショナルプロダクツセグメント】

・ 「機能材料を通じて社会や暮らしに『快適』を提供する」という基本方針のもと、このセグメントでは、電気・電子やディスプレイを中心とするデジタル分野、自動車を中心とするモビリティ分野に注力し、合成樹脂を中心に幅広い製品を提供しています。

需要業界別の売上高はデジタルとモビリティが半分強を占めています。特に半導体製造分野では、製造の前工程と後工程それぞれに欠かせない先端製品を多数展開。顧客と連携しニーズを的確に捉えることで、半導体の進化に合わせた製品のアップデートをタイムリーに行っています。

高付加価値製品の拡充に加え、樹脂の需要拡大がこれからも見込まれるアジアでは、インドや中国でのM&Aを含めた拠点拡充による成長の取り組みにも注力しています。

パッケージング&グラフィックとカラー&ディスプレイが安定的に利益を稼ぐ中核事業という位置づけが強いのに対し、当セグメントは今後の成長を牽引する成長事業という位置づけが強くなります。

・ デジタル分野の高付加価値製品を代表する製品の1つがエポキシ樹脂です。エポキシ樹脂は反応性の高い熱硬化型の樹脂で、優れた成形性や耐熱性、電気絶縁性などの特性があり、幅広い産業で活用されています。

当社は1968年からエポキシ樹脂の製造販売を開始し、原料から製品までの一貫した開発・生産体制と、長年培ってきた量産化ノウハウを強みに、エレクトロニクス分野で最先端の樹脂を提供してきました。中でも、通信技術の高速データ大容量化によって高耐熱化や伝送損失の低減などが求められる半導体用途で、当社のエポキシ樹脂は不可欠な素材となっています。

今後は需要の拡大が見込まれる低誘電基板や半導体パッケージ向け樹脂を伸ばす計画です。売上高は2030年には2024年比で1.4倍に拡大する見通しです。当社では、こうした需要成長を見越し、経済産業省の補助も受けながら、2029年までに半導体に使用されるエポキシ樹脂の生産能力を1.6倍に拡張する予定です。

・ モビリティ分野での高付加価値製品としては、PPSコンパウンドが挙げられます。PPSコンパウンドは、高度なポリマー技術と独自のコンパウンド技術をベースに、原料となるPPS樹脂から加工された素材です。一般的にスーパーエンプラと言われています。高い耐熱性、優れた耐薬品性、軽量化を兼ね備えたPPSコンパウンドは、エンジニアリングプラスチックとして秀でた特性を有し、金属部品からの代替を中心に自動車で使用され、ハイブリッドカーや電気自動車への採用も増えています。

当社のPPSコンパウンドは世界シェアNo.1の地位にあります。それを支えるのがPPS樹脂からコンパウンドまでの一貫生産体制で、自動車メーカーの細かい要求に対応できる開発力を有しています。また、グローバルネットワークを生かした強固なサプライチェーンにより、日本のみならず海外の自動車メーカーでも使用されています。自動車の種類や地域に限定することなく強みを発揮し、ますますの成長が期待されます。

 

2.長期経営計画

・ 当社は、2022年から2030年を対象とした長期経営計画「DIC Vision 2030」を2022年2月に発表。「グリーン」「デジタル」「QOL」を当社が貢献する社会と定め、2030年の目指す姿に向けて、事業ポートフォリオ変革への取り組みを開始しました。

計画開始直後から、長期的な目線に立って、新事業開発のための研究開発投資やM&Aを積極的に行い、可能性の探索を幅広く進めました。しかし、これが結果として経営資源の分散を招き、加えて新型コロナやウクライナ戦争に端を発した地政学リスクに伴う外部環境悪化の影響も受け、計画開始から最初の2年間は買収した事業や新事業の収益化が計画通りに進みませんでした。

これにより、2023年度に営業利益が大きく低下。こうした状況を受け、私が2024年に社長に就任。まず2025年までのPhase(フェーズ)1の計画値の見直しを行い、経営資源の適正配分と構造改革を推進し、収益の改善を最優先課題として取り組みました。

その結果、2024年度の営業利益は計画値の300億円を大きく上回り、今年度も計画値の400億円を大きく上回って着地する見通しです。

この流れの中で、2026年から2030年はPhase2となります。まずは2017年度に達成した過去最高益565億円を更新することが、私が掲げた目下の目標です。

・ 具体的な戦略の見直しについて。DIC Vision 2030の最初の2年間は、経験の少ない新分野の事業開発にも果敢に取り組みました。しかし、チャレンジした領域が多岐であったこと、かつ飛び地的であったことから、必ずしもすべての領域で均等に成果を上げられませんでした。そこで、DICが蓄積した基盤技術や製品開発、製造技術などの強みを発揮しやすいスマートリビング領域を最優先し、そこに経営資源を集中。次世代成長事業の早期創出に取り組みました。

スマートリビング領域とは、当社が独自に定めた事業領域です。暮らしがデジタル化により進化する中で、化学的ソリューションを通じた新しい生活体験の提供を目指しています。製品例として、5G・6G通信対応材料や次世代半導体樹脂などが該当します。

もう1つの課題が買収事業の成果の具現化です。特に2021年に買収したBASF社のColors & Effects顔料事業は、外部環境に変化があったとはいえ、買収後のシナジーを十分発揮できず、業績の悪化要因となっていました。そこで、最優先で進めるべき課題を生産体制の最適化と定め、シナジーを最大限に発揮できる体制の構築に向けて、欧米顔料事業の構造改革に取り組みました。

このように、攻めと守りの変革をスピーディかつ確実に実行することが、業績を早期に回復軌道に乗せるために不可欠と考え、この2つを最優先に取り組みました。

・ 攻めの変革となる次世代成長事業の早期創出に向けた取り組みとして、当社の中でエレクトロニクス仕様の化学素材を軸にした事業を「ケミトロニクス」と定義。それに関連した製品を1つの組織にまとめ上げ、経営資源を集中することとしました。

当社では、エポキシ樹脂を中核に、半導体フォトレジスト用樹脂や光学材料、接合材料など、半導体の製造からスマホなどのモバイル端末のアッセンブリ工程までのバリューチェーンに幅広く製品を供給しています。これらの製品を1つの組織にまとめ、半導体実装分野や先端電子部品分野の進化に適切に対応する体制を構築しました。

また、これらの材料や加工技術を組み合わせて複合化する技術も高める体制としました。昨今、半導体は性能向上のため多層化が進み、製造プロセスも複雑化しています。エレクトロニクスとケミカルの両面からのアプローチが重要で、まさに双方の技術と知見を持つDICが強みを発揮できる領域です。

まだ成長途上ですが、ケミトロニクスの高付加価値な製品群をクラスターとして伸ばすことにより、着実に2桁%以上の高い利益率を創出。当社の次世代の柱となる事業に成長させていきます。

・ 守りの変革である欧米顔料事業の構造改革について。2021年のBASF社のColors & Effects顔料事業の買収直後から欧米を中心に統合作業を進めたものの、新型コロナやウクライナ戦争など外部環境の悪化により、欧州を中心に、当初想定していた利益を獲得できませんでした。

そこで私は、統合作業をさらに強力かつスピーディに行う必要があると判断。生産拠点の統廃合と人員の合理化を柱に、コストの圧縮に向けた構造改革を推し進めました。

生産拠点の統廃合は、買収後の世界33の生産拠点のうち、欧米を中心に4拠点の縮小、12拠点の最適化に取り組みました。人員の合理化は、買収当初より計画していた合理化に加え、事業環境の悪化に対応する追加の人員合理化を実行しました。

これにより、構造改革は年々着実に効果を上げ、2026年度計画では2022年度対比で125億円のコスト削減効果を見込んでいます。

構造改革はある程度進められたと考えていますが、今後の状況によっては手綱を緩めることなく、追加施策も検討する必要があります。また、コスト削減だけでなく、買収シナジーを生かした顔料の製品開発や高機能製品の拡販にも取り組んでいきます。

・ こうした変革の効果もあり、各セグメントの営業利益も過去2年で大きな改善が見られました。特にカラー&ディスプレイでは、構造改革により大きな赤字を計上した2023年度と比べると、2025年度は約150億円の利益改善となる見通しです。

また、ファンクショナルプロダクツも、デジタル分野を中心に高付加価値製品が伸長したことで、着実に利益水準を高めています。

これらに従来から安定した利益基盤を持つパッケージング&グラフィックを加えると、Phase1終了時点で目指す姿の実現に向けた基盤づくりが進みました。そして次の「実現と展開のPhase2」を迎えられるものと考えています。

・ Phase2は、来年2月16日に予定している2025年度決算発表に合わせ、見直し計画を発表する予定です。「DIC Vision 2030」では、2026年から2030年を目指す姿の実現と展開の期間と位置付けています。これまでの課題と成果を振り返りつつ、さらなる成長に向け、2030年までの基本戦略を一部アップデート。これに伴い、2030年までの財務計画と目標も再設定する予定です。皆様の期待に沿う内容となるよう鋭意検討中なので、ぜひご期待いただければと思います。

 

3.株主還元

・ 私が2年前に就任した際、2024年度以降2026年までの3年間で、事業ポートフォリオ変革と構造改革推進とともに、資産圧縮によるキャッシュを創出する方針を発表しました。そして、営業キャッシュフローだけでなく、資産圧縮によって計画を上回るキャッシュが創出された暁には、株主還元の一層の充実を図ることをコミットしました。

そのコミットを確実に達成すべく、2024年と2025年の2年間で、様々な事業譲渡、政策保有株式あるいはその他のノンコアと位置づけられる保有資産の売却などの資産圧縮策をスピーディかつ確実に進めました。

これにより、資産圧縮の目標額に掲げた400億円を上回る追加的なキャッシュの創出が進み、総合的に判断した結果、今期末において、通常配当に加え、追加株主還元として増配に充てることを今年8月に発表しました。

・ 追加還元の内容は、2025年期末配当について、当初計画していた1株当たり50円に対し、1株当たり100円増配することにより150円をお支払いする予定です。この100円の増配は、資産圧縮が計画通り進んでいることを受けた特別配当として80円、それを除く通常の期末配当の増配が20円です。

さらに、業績が順調に回復軌道に向かっていることを受け、2026年度の配当下限を従来の100円から120円に引き上げる予定です。下限120円は、最終決定ではなく、2月のPhase2見直し時に改めて詳細をお伝えします。

・ 「DIC Vision 2030」を開始した2022年から直近12月上旬までの当社株価の推移について。ここ1年は、3月から4月にかけてトランプ関税の影響で市場全体の株価が下落し、当社株価も大きく下落に転じました。しかしその後、業績が堅調に推移したこともあり、上昇に転じ、ここ最近、長計開始以降、最も高い水準で推移しています。

ただ、残念ながらPBRの観点からは1倍割れが続いています。当社も一刻も早く安定して1倍を超える水準とすることを強く意識しています。

私から見て、当社株価はまだまだ割安だと考えています。さらに伸ばせる余地があると思うので、これからもぜひ関心を持っていただければ幸いです。

 

・ 改めてお伝えしたいことをまとめます。

DICは100年以上の歴史を通じて培ったバランスの良い事業構成とそれを支える技術を強みとしています。

これらの強みを生かしながら、中核事業である印刷インキと顔料事業から得られた利益を成長事業であるファンクショナルプロダクツ分野に注入し、非常に健全なサイクルを回すことを目指しています。

また、事業の健全な成長のみならず、保有資産の見直しによりキャッシュを確実に生み出し、株主の皆様の期待にも応えていきたいと考えます。

 

4.質疑応答

Q1. 御社は1908年の創業以来、数々の試練を乗り越えてきましたが、長期にわたり存続できた最大の理由は何でしょうか。また、将来的にはどのような企業を目指しますか。

A1. 当社の強みは100年続く長さの中にあります。そこに3つのコアとなる事業を有しています。それぞれ独立したものではなく、技術的な部分で強固につながっており、得られたキャッシュをうまく使える形で運営しています。

それを支えるのは、100年間培ってきた強固な技術基盤、それを生かしたグローバルな展開力、それを支える多様な人的資本だと思います。この3つが兼ね備えるレジリエンスをもとに、色んなことが起きても、極めて柔軟に対応できます。

例えば、最近では、関税の影響で輸出・輸入関連が大きく混乱する中、それぞれの地域や地場に根差した事業群、特に印刷インキ事業が会社を支える役割を果たしました。

このように、地政学的なリスクのみならず、市況影響等が色々と変化しても、3つの事業群を機動的に組み合わせることで、グローバルな対応で乗り越えられるのが、当社の強みだと考えています。

技術面や人的な面、地域的な面という様々な観点でシナジーの余地を多く有するのが当社の強みです。今後、世の中がさらに進化する中でこのシナジーを発揮し、様々な社会課題を解決し、また新たな価値を提供していく。そういった会社にしたいと思います。

 

Q2. 現在の株価水準は適正だとお考えですか。さらなる株価上昇に向けた具体的な施策があれば教えてください。

A2. 当社の株価はここ2年ほどで大きく上昇していますが、PBRは依然としてまだ1倍以下です。この点を非常に重く受け止めており、できるだけ早期に1倍を回復できることを目指しています。

そのために様々な施策を打っていますが、重要な指標の1つがROEだと思います。「DIC Vision 2030」でも謳っていますが、まず、ROEを7〜8%台に持ち上げる。そのためには、R(Return)の適切な成長とE(Equity)の適切な管理の両面が必要です。

Rを上げ、さらに質を上げるには、高付加価値品の成長ならびに拡大が不可欠だと思います。利益率の高いデジタル関係の製品やエレクトロニクス関係の製品の利益の幅を大きく増やすことがRの拡大に不可欠です。

一方、Eの部分も、様々な観点から資産の最適化を考慮し、株主還元等も考えながら適切に運営したいと思います。

このような双方の努力によって早期にPBR 1倍を回復すると、それ以上の発展の余地があると思います。その実現の中で、さらなる株価上昇を目指したいと考えています。

 

Q3. 御社の事業セグメントで、今後最も注力して業績を伸ばしたい分野はどこですか。

A3. 第一の成長分野に掲げているのは、スマートリビング領域です。スマートリビング領域は、なかなかわかりにくい言葉ですが、例えばこれからの時代を見据えて、ロボティックスやドローン、ウェアラブルなどの新しい製品群、あるいはデバイス群、これらを私どもは「AIデバイス」と呼んでいますが、こういったデバイス群が世の中にどんどん普及していくと考えます。それらを支えるための様々な機能性材料や加工品を組み合わせた複合品、エレクトロニクスとケミカルが合わさった製品群の拡大が必要になると思います。

これらが実現することにより、AIデバイスがより社会に普及し、我々の生活が豊かになる。そこに最も我々の成長の可能性があると考えています。開発面やマーケティング面のすべてのリソースをスマートリビング領域に集中させ成長させていく所存です。

それを踏まえ、将来的にはファンクショナルプロダクツの中でスマートリビングに関係する製品群の売上と利益の比率をどんどん増やし、全体の利益率、ひいてはROEの上昇を目指します。

 

Q4. インキのイメージが強いのですが、インキと半導体の関係性がよくわかりません。インキメーカーが半導体分野へ進出する技術の裏付けは何でしょうか。

A4. インキは私どもの祖業として117年前に始めた事業です。インキは原料として、色の素となる有機顔料と、顔料を1つのインキという塊にするための合成樹脂が組み合わさって作られています。

100年間の歴史の中で、インキを中心として、顔料の色の部分と合成樹脂の部分がそれぞれ発展してきました。インキを構成する合成樹脂は1952年から製造販売し、独自の発展の先に半導体用の材料が生まれています。半導体用の材料であるエポキシ樹脂もすでに30〜40年、製造しています。

大きな流れとして、印刷インキの中の合成樹脂を一緒に作ることを始め、合成樹脂の発展形として半導体につながった。インキを支えるための合成樹脂の技術を、応用分野を広げ半導体向けの合成樹脂の技術に適応してきたのが当社の発展の歴史です。

 

Q5. ケミトロニクス事業が好調ですが、生成AI需要の今後の見通しと関連する投資計画について教えてください。

A5. AIの発展に伴い、通信関連の材料が伸びています。というのも、AIで求められる様々なデータを処理するためのサーバ群や基地局などのインフラの拡大が今盛んに進められており、その元となる高速通信や耐熱性に寄与する材料が、私どものエポキシ樹脂の中核をなす部分だからです。この部分は、AIの発展とともにインフラが拡大するのに合わせ、これからも量的に拡大するとみています。そのために、2029年に向けて現状の生産設備を1.6倍に増強しようとしており、これはまさにAIの発展に追随する形で投資を行っている部分です。

それ以外にも、AIがもたらす様々な新しいデバイス(AIデバイス)の発展に寄与できるテープや成形品、コンパウンドに関連する製品を提供するために、ベースとなるインフラ部分だけでなく、デバイスそのものに使われる材料や加工品の提供も展開していきたい。AIの発展に合わせた成長が期待できると理解しています。

以上

 

 

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