artience株式会社(4634)
開催日:2025年12月6日(土)
場 所:オービック御堂筋ビル2階 オービックホール (大阪府大阪市中央区)
説明者:グループ経営部長 古知屋 建悟 氏
- 会社概要
・ 本日お伝えしたいことは3つあります。
1つ目は社名を変えたということ。当社はartience(アーティエンス)という名前に社名を変更し、それをきっかけに会社を大きく変えようとしています。
2つ目は事業について。もともとのビジネスであるインキ事業やパッケージを中心とし、海外での需要を取り込み、着実に成長しています。それに加えて、新事業として、電気自動車周辺の材料をさらに乗せて成長を加速させています。
3つ目は株主様への還元です。利益成長に合わせ、株主の皆様への還元水準を高めていく方針を掲げています。株主優待もあります。
・ 会社概要について。創業は1896年。130年近い歴史を持っている会社です。
創業者は小林鎌太郎。彼は文字が読めませんでしたが、教科書の印刷などで日本の教育に貢献したいという思いでインキの販売店から始めたというストーリーが、社内で今も語り継がれています。
元々はインキからスタートした当社のビジネスは、色々な素材を提供する化学メーカーとして現在、活動しています。昨年度の売上は約3,500億円、社員数はグローバルで約8,000人、東証プライムに上場しています。
・ 2024年1月に社名変更しました。元々は東洋インキという会社でした。この社名ならご存じの方もいらっしゃいますか。東洋インキからartienceという名前に変えました。
・ 社名の変更の理由について。創業当初から印刷用のインキを提供する会社として活動してきました。その後、自動車や電子材料など、様々な用途に素材を提供し、2011年からはスペシャリティケミカルメーカーとして活動の幅を広げてきました。
一方で、近年のデジタル化の浸透等々で、新聞を紙で読まなくなったり、本も携帯やタブレットで見るようになり、紙の印刷が減っています。これは大きな市場変化で、その中で当社の事業成長も一度やや停滞気味になりました。
そこで、私たちも世の中の変化に対して変わらなければならない。そのために昨年、社名を変更する決断に至り、社内外に私たちは新しく変わっていくことを示しています。
artience(アーティエンス)という横文字の名前は、art(アート)×science(サイエンス)の掛け合わせで作られています。Scienceは科学を指しますが、元々メーカーが持つべき安定した品質や製品自体の機能、あるいはお客様へ論理的な提案といった価値に加えて、製品をお使いいただくお客様がワクワクしたり、感性に響かせる。それを大事にする思いをartで表しています。これまで培ってきた信頼は大切にしながら、人々の心に届くような価値を提供する会社になりたいという思いを込めた社名です。
会社のイメージ動画では、「モノ作りはしない。インキは作らない」とちょっと極端なメッセージを発信していますが、これらはもちろん続けていきます。ただ、単純にモノを作って提供することから脱皮して、もっと人々の心を動かすような価値を提供していきたいという思いを込めています。
・ 当社の事業は4つの事業で構成されています。売上も営業利益もおおよそ4分の1ずつで、非常にバランスが取れている。
・ 世界での事業展開について。23ヵ国で事業を展開し、工場や事業所が各国にあります。
日本や韓国、中国のほか、東南アジアのほとんどの国、さらにインドとアジアが多いのですが、それ以外にもヨーロッパではフランス、ベルギー、ハンガリー、トルコ、またアメリカやメキシコ、南米のブラジルと世界各国で展開しています。
現在、海外の売上高比率は55.4%に達しており、すでに半分を超えています。今年度以降も海外の需要を取り込む方針で、海外売上高比率はさらに高くなる見込みです。
・ ビジネスは主に顔料系、樹脂系、インキ系の3つから成り立っています。そして祖業の印刷インキは、印刷・情報関連事業とパッケージ関連事業の大きく2つに分かれます。
印刷・情報関連事業は、主に紙に印刷するインキを提供しています。雑誌やカタログ、化粧品の箱などの厚紙のパッケージなどに使われているインキです。
パッケージ関連事業は、食品パッケージです。スーパーやコンビニで手にされることが多いと思います。
またインキを作るには、主に2つの原料があります。1つは顔料という色の粉。ただ、顔料はサラサラしていて、このままでは紙に印刷してもくっつかない。そこでノリのような役割をするのが樹脂。英語でポリマーと言います。
顔料もポリマーも、元々購入してインキを作っていたのですが、自社で開発しインキに使うようになりました。そして顔料も樹脂もそれぞれ展開し、いろいろいろな製品群を構成し、事業を展開しています。
・ さまざまな事業を展開できるのは、我々の技術力がベースにあります。いろいろな素材を作り上げる技術力がありますが、その中でも「分散」という技術がコアになっています。
インキは色のついたドロっとした液体です。中身を見ると、色の元になる顔料が粉をくっつける役割の樹脂の中に均一に散らばっています。この均一に混ぜることが非常に難しい。均一に混ざる状態を分散されていると言います。
樹脂の中の顔料のひとつひとつの粒は、ナノという非常に小さいサイズです。毛髪の10万分の1もの小さいものをドロっとした液体の中で混ぜ合わせています。例えば、小麦粉を蜂蜜の中に均一に混ぜるのは非常に難しいと思いますが、それをうまくやっているような技術です。
【顔料系ビジネス】
・ 顔料系のビジネスは主に色をつけるビジネスです。印刷のインキ以外でもプラスチックのキャップやシャンプーのボトルなど、色々なプラスチックに色が付いていますが、そういったところに使われているのがプラスチック着色剤です。自動車の塗料にも我々の顔料が使われています。
・ 変わったものだと液晶テレビ。ディスプレイを拡大すると、カラーフィルタがあり、我々の技術で非常に細かく分散した緑・赤・青のインキが塗られています。ここに光が透過することでカラーテレビとなる。これがないと白黒テレビになってしまいます。
顔料系の分散技術は、新事業の電気自動車にも活用されています。
【樹脂系ビジネス】
・ 樹脂(ポリマー)は、インキから色の元である顔料を抜いた透明の液体で、色々な機能を持つコーティング剤や接着剤になります。例えば飲料缶の内外には、缶が錆びたり、傷つかないようにコーティングされています。これが缶用コーティング剤です。
そのほかにも、開け閉めするウェットティッシュのラベルにも粘着剤や接着剤が使われているし、スマートフォンの中にも様々に使われています。
・ 我々の技術から生まれた樹脂を塗って固め、電気を通したり、熱を通すなどの機能を持たせてフィルム状にしたものが、スマートフォンにもかなり使われています。例えば電磁波を遮断して人体への影響を抑えたり、電気を通す導電性のフィルムなどです。
【インキ系ビジネス】
・ 紙やラベル、パッケージに印刷する形で使われています。壁紙や木目調にインキで印刷された家具など、皆様の周りで色のついたものは相当数あると思います。
・ スーパーやコンビニに行けば、ポテトチップスやレトルトカレーなど、様々な食品パッケージがあります。食品以外でもシャンプーや洗剤の詰替用のパウチにも私どものインキが使われています。
【アサヒビールの生ジョッキ缶】
・ アサヒビールの生ジョッキ缶は、缶を開けると泡がシュワシュワっと出て、ご自宅でも生ビールのように楽しめるということで話題になりました。実はこの泡が当社の塗料によって実現しています。
・ この塗料は、アサヒビールと共同開発したものです。もともとは泡が出過ぎてしまう失敗作でしたが、それを逆転の発想で、泡を出し、泡の量もコントロールし、生ビールのようなビールが缶で飲める。これを実現したのがこの製品です。
本来、缶のコーティング剤や塗料は、内面を守り、缶を錆びさせない役目があります。内面は泡が出てはいけないので、平滑なものになっています。
ところがこの製品は逆に、泡を出すためにわざとデコボコを作り、その量をコントロールし、アサヒビールが求めるビールの泡立ちが出る設計にしています。
フタを開けてシュワシュワッと泡が出ると、飲む人が驚いたり、ワクワクしたりする。こういうことも私どもの言うアート。感性に響く価値と言えるのではないか。今後も皆様の生活に身近な、ちょっとしたイノベーションや製品開発を進めてたいと思います。
・ 当社は、消費者の皆様に直接、社名が入ったもので提供することが非常に少ないので、会社名も含めてなかなか馴染みが少ないと思われる方もいらっしゃると思います。しかし、生ジョッキ缶をはじめ、実は皆様のご家庭にあるものにたくさん使われています。
紙用の印刷インキや食品パッケージ用のインキや接着剤では日本で1番のシェアを持っています。また、例えば、コカ・コーラの赤い缶。インキで印刷されていますが、日本国内の缶の90%ぐらいの色は当社から提供させていただいています。
・ それ以外にパッケージの一例では、日清食品のカップヌードル。このパッケージでも当社のインキが使われています。私も学生時代からよく食べていました。昨年まで海外に駐在していましたが、ちょっとした時にカップヌードルを食べて、日本の生活を思い出し、癒されていました。
・ さらにそれ以外にも、インキの会社ですが、液晶ディスプレイに使われる色やスマートフォンの中に使われている機能性のあるフィルムでは、世界のトップクラスのシェアを持っています。
- 成長戦略
・ 直近の業績について。2021年以前、売上高が3,000億円に満たない状況がずっと続いていましたが、2023年は3,200億円、2024年は3,500億円を超える形で伸びています。
また、営業利益も100億円台半ばでずっと推移してきましたが、昨年2024年には200億円を超え、収益を上げる、利益を上げる体質も強くなったと言えます。
・ 当社では、2024年からの3年間、2026年までを「中期経営計画artience 2027」とし、最終年度の2026年の終わりには売上高4,000億円、営業利益250億円まで持っていきたいと計画を進めています。
中期経営計画とその先の2030年を見据えた成長の展望について。目指す姿は「心豊かな未来」「持続可能な社会」ですが、同時に「企業価値の最大化」も進めたい。具体的な数字として、2029年の終わりにROE10%以上を指標としています。ROEはこれまでずっと5%未満でしたが、2024年には7.3%まで向上しました。
2026年にかけての中期経営計画で、大きく業績を進展させるために、会社として3つの方針を進めています。
1つ目は「事業ポートフォリオの変革」。しっかり利益を上げ続けて大きくするために、事業をうまく組み替えていくということです。また、「資本効率とキャッシュフローの最大化」も方針の1つです。さらに3つ目として、それらの事業の拡大を支えるための財務や人事など、「企業基盤構築とサステナビリティ経営実践」を掲げています。
・ 事業ポートフォリオの変革は、主に2つの内容から成り立っています。基本方針(1)の「高収益既存事業群への変革」は、既存事業についてです。
既存事業と言っても、これからもどんどん伸ばしていくものや、売上の大きな伸びはないが、これからもしっかり利益を上げていくもの、ちょっと苦しくなり戦略を変え、再構築しないと利益を上げられないものがあります。それぞれの中身を精査し、戦略を立て、長く続けてきた既存事業といえども、より利益を拡大させることを進めています。
基本方針(2)の「戦略的重点事業群の創出」は、既存事業の他に新たな事業の柱を作ることです。主にEV(電気自動車)や半導体関連の材料を展開していきます。
これらの組み合わせで売上や営業利益を大きく伸ばし、特に今の中期経営計画が始まる前の2023年には134億円だった営業利益を、2026年には250億円まで持っていきたい。そのうちの4分の1程度の伸びは、新しい事業で作り、残りの4分の3は、成長事業にさらに稼ぐ力をつけ伸ばしていくことを計画しています。
【基本方針(1)高収益既存事業群への変革】
・ 既存事業を大きく伸ばす中で成長が期待できるものの1つが、パッケージ向けの材料です。製品として、パッケージ用のインキ以外にも、接着剤や粘着剤が多く使われています。これらの製品は今の中期経営計画が始まる4〜5年前から、特に海外の伸びる市場で設備投資を進めてきました。
・ 食品をはじめとしたパッケージの需要は、人口増加、あるいは生活様式や経済力が高まっているところに比例して増えていきます。
例えば、経済が成長すると、市場で食品をそのまま買っていた人たちが、スーパーマーケットでパッケージに入っている食品やデパートでより高級なパッケージに入った食品を買うようになります。
このように人口が増え、経済成長が今後も見込まれる東南アジアやインド、トルコ、あるいは成熟社会であるものの人口が増えている北米で生産設備の増強や工場の設立を進めてきました。
これが昨年度、大きく花開き、海外での数量がかなり伸び、業績も向上。事業全体での比率はまだまだ限られますが、特に世界でも人口1位のインドは、我々の事業も毎年2桁台、10%以上伸長。すでに工場はありますが、つい先日、工場を追加する大型の投資を決めたので、来年、再来年とまた増やしていくことが期待できます。
【基本方針(2)戦略的重点事業群の創出】
・ 新たな柱として考えているのは主に2つあります。1つはモビリティ・バッテリー関連事業、もう1つはディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業です。
モビリティ・バッテリー関連事業は、電気自動車やその中に入る電池向けの材料に関する事業です。電気自動車に入っているリチウムイオン電池には、接着剤や電極の周りに様々な材料が使われています。これらを展開して、立ち上げています。また、電気自動車の次の世代と言われている全固体電池に向けての開発も進めています。
ディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業では、今、流通している液晶テレビには、色のインキの他にも様々なフィルムを張り合わせる粘着剤が使われています。また、電子部品には様々な半導体が入っています。伸び続ける半導体の市場に向けて材料を開発し、次の柱にしていきたいと進めています。
《モビリティ・バッテリー関連事業》
・ 電気自動車用の材料について。脱炭素社会では、二酸化炭素(CO2)削減の実現に向け、電気自動車の市場が大きくなると期待されています。当社では電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池向けに、カーボンナノチューブという材料を分散したCNT分散体を提供。電気自動車の市場の拡大に向けて、当社の分散技術を駆使した製品を展開しています。また、世界各国に先行投資した製造拠点網を強みとして、リチウムイオン電池のCNT分散体を開発しています。
・ CNT分散体について。カーボンナノチューブ(CNT)は、電気を通す導電材料です。CNTを分散した素材は、ドロっとした黒い液体で、見かけはインキに似ています。これがリチウムイオン電池の正極材に使われます。
リチウムイオン電池には正極と負極の電極があり、その中で活物質が働いています。具体的にはニッケルやコバルト、マンガンなど、その電気の容量を大きく左右する素材です。この活物質同士を繋げ、電気を通すための素材がカーボンナノチューブで、黒い繊維状のものです。これをうまく分散したものを私どもは製品として提供しています。
電池の容量を決める活物質を効率よく繋ぐかが、電気をどれだけうまく通せるかという電池の性能に関係します。電池の性能が上がると、最終製品の電気自動車の走れる距離が伸びるたり、充電のスピードが速くなったり、電池の小型化に貢献します。
また、カーボンナノチューブは細い糸のようなもので、強く混ぜるとすぐに割れてしまう。きれいにほぐしながら均一に存在させることに我々の分散技術が生きています。
我々は突然、自動車業界向けにカーボンナノチューブを始めたわけではありません。実は以前は違う材料が使われていました。この時も私どもの材料が使われており、もう10年以上前から自動車業界で事業展開を進め、今ここにたどり着いています。
・ モビリティ・バッテリー関連事業では、先行投資を進め、欧州、中国、日本、北米(2拠点)の4つのエリアで5つの工場を展開しています。これらの製造拠点と分散という技術的な強みを生かし、それぞれの大陸でそれぞれのお客様に同じ品質のものをお届けできる体制を整えています。
・ 電気自動車の市場は、足元では各国でいろいろな動きがあります。アメリカもトランプ大統領が出てきて、市場の調整が続いていますが、CO2を減らし、脱炭素社会に向け、EVの市場自体は徐々に拡大するという方向性は変わらないと私どもは考えています。
いち早く拠点網を整えた唯一のCNT分散体メーカーとして、2024年には36億円の売上でしたが、2026年には100億円、2028年には220億円。その後さらに成長させていきたいと考えています。
《ディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業》
・ 電気自動車向けの材料の他に、新たな事業の柱としてもう1つ取り組んでいるのが半導体向けです。AIの出現で半導体の需要もどんどん増えています。
私どもも半導体の市場で今年度も昨年度もいくつかの材料が採用されています。中期経営計画では、来年度までで10億円程度の営業利益となる見込みです。まだまだ数字としては小さいのですが、次の中期経営計画に向けた収益源の柱として、さらに成長させていく分野になります。
【基本方針(3)経営基盤の変革】
・ ESGという切り口で見てみます。EはEnvironment、環境です。私どもは化学メーカーなので、環境への負荷に配慮しながら経営を実践することが重要だと考えています。
当社は、asv(artience sustainability vision:アーティエンスサステナビリティビジョン)を策定し、公表しています。CO2の削減についても、計画を立て、社外へ公表し、毎年の目標を掲げて削減を進めています。
SはSocial。社会の部分では、ヒト/風土/組織の変革にも重きを置いています。会社を変えることを最終的に成し遂げるのはヒトです。当社は社名を変え、ビジネスの骨格を変えようとしていますが、元々の経営哲学として「人間尊重の経営」という言葉を大切にしています。ここだけは変えずに他は変革していくのが基本的な姿勢です。ヒトが心地よく働けてチャレンジできることを実現するべく、人事制度もこの1〜2年で刷新。社員が新たな挑戦をしやすく、促すような風土を進めています。
また、それ以外にも、さまざまな方々が平等に働ける職場づくりを進めています。インキ業界はもともと女性比率が非常に低かったのですが、徐々に向上しており、来年度(2026年)の新入社員の半分以上が女性。50%を超えるのは初めての状況です。
GはGovernanceです。本日のような説明会など、IR活動を通じて投資家様への説明も積極的に実施。当社のことをお伝えし、透明性を上げることでガバナンスを強化しています。また、取締役会も、独立社外取締役の比率を上げ、社外からの目を重視。ガバナンス体制を強化して、皆様に安心して投資していただける環境づくりを進めています。
・ 環境については、事業面でも環境負荷を軽減する取り組みを進めています。その一例がライオンの洗剤です。バスタブ用の洗剤の詰替パウチは、私どもとライオンとの共同開発で作りました。
通常は機能を出すために何種類かのフィルムを接着剤で貼り合わせています。一方、私どもは接着剤に特殊な処理をし、フィルム同士が剥がれる設計にしました。
・ それにより、市場で流通する製品自体ではまだ難しいのですが、工場でパウチを作った後の端材はフィルム同士を剥がしてもう1回再生することを可能にしています。
この取り組みが業界でも認められ、パッケージ業界で今年度、最高賞(公益社団法人日本包装技術協会主催「2025日本パッケージングコンテスト」経済産業省脱炭素成長型経済構造移行推進審議官賞)をいただいています。
私どもは化学メーカーとして、環境負荷を減らす製品開発を進め、皆様の将来の安心な社会に少しでも貢献したいと思います。
- 株主還元
・ 株主還元方針として最重視しているのは安定配当です。これまで1株当たり90円の配当を続けてきました。2022年度も利益は非常に落ち込みましたが、安定配当ということで90円。15年連続で減配せずに進めてきました。その後、利益が向上してきたので、昨年度は100円に増配しています。
配当と自己株式の取得を合わせ、総還元性向は50%以上を達成することを2024年〜2026年の中期経営計画では取り組むとアナウンスしています。
今期の還元性向は、自社株買いも順調に進み、50%どころか、100%は上回りそうです。これらを通じ株主の皆様への還元を引き続きしっかり行いたいと考えています。
・ 2022年11月からおよそ3年間の株価の推移とTOPIXとの比較です。当初は2,000円に届くかどうかでしたが、今のところTOPIXを上回る株価の上昇を実現しています。
昨年は電気自動車の市場の調整局面もあり、株価も一時的に影響を受けましたが、中長期的に順調に伸びていくと考えています。一方で、PBRは0.6倍で、依然として割安な水準にあります。当社グループの社長の燗もPBRを非常に重視しており、早期に1倍超えを実現しようと、率先して事業変革と資本効率の向上を進めています。今後も皆様と共に私どもの企業価値の持続的な向上に取り組んでいきたいと思います。
・ 株主優待制度も2019年度から導入しているので、併せてご確認ください。
・ 改めて、本日お伝えしたい3点について。1つ目は、社名の変更。東洋インキからartienceへ変え、変革を進めています。本日、皆様にartienceという名前を覚えていただければ非常にありがたいです。
2つ目は事業について。既存事業はパッケージ中心で海外で大きく伸ばします。それに加え、新事業として、電気自動車や半導体の材料を乗せてさらに成長させていきます。
3つ目は株主還元。安定配当に加え、利益成長に合わせて株主還元をしっかりと実現していく方針です。加えて、株主優待も行っています。以上です。
- 質疑応答
Q1. 御社は総還元性向50%という方針を掲げておられますが、今後の増配についてどのようにお考えでしょうか。
A1. 私どもは、この中期経営計画では総還元性向50%以上、安定配当重視で進めています。配当は、会社の利益から提供するものですが、いくつかの利益があります。本業から稼ぎ出す営業利益やその他の特別利益・損益。土地や株式の売買から得る利益です。
特に本業で継続的に利益を成長させたもので、株主様の配当を増やしたいというのが会社としての意志です。そのため昨年、増配を行いました。
この利益の成長が本物で、さらに一段階進めていけるところを見ながら、増配についても将来的に考えていきたいと思っています。
Q2. 中計では成長投資として具体的にどのような分野やプロジェクトに資金を投入する予定ですか。また、高収益既存事業や戦略重点事業群の成長見通しを教えてください。
A2. 会社として伸ばしたい分野に積極的に投資したいと考えています。具体的には、海外を中心とした既存事業。特にパッケージ分野で、直近ではインドで大きな投資を決めました。また、トルコでも大型の投資が完了しています。これらを引き続きやっていく。また、付随する接着剤でも引き続き検討したいと思います。
戦略重点事業群は、電気自動車について、先行投資をかなり進めてきました。今後の市場の動きを見ながら、さらに投資を考えていきます。もう1つの期待の柱として半導体の分野では、実績化を見極めながら積極的に投資したいと思います。
Q3. 今日の説明を聞いて応援しようかなと思いましたが、過去の株価の最高値が1989年の5,850円を超えることについてはどのようにお考えですか。
A3. 本日の私の話を聞き、応援の意志をお持ちいただいたことを非常に嬉しく思います。ありがとうございます。
株価は事業や将来への期待度を示しているところがあると思います。当社がEVの計画を出した時は、一度大きく上がりましたが、市場の調整もあり、若干調整局面を迎えています。
本日は、既存事業の成長に取り組み、継続的に伸びて行くことをお伝えしましたが、言葉だけではなく、中身を示していくことが大切です。また、EV関連事業の成長以外に、2つ目や3つ目の柱を半導体に加えて作ることも事業面でやろうとしています。
それに加えて、株価に影響する資本効率を高め、個人投資家の皆様、機関投資家の皆様から支持いただけるように取り組みます。
過去の株価最高値5,850円をいつ超えるかは、なかなか難しい質問ですが、継続的に上がるようにしたいと思いますし、皆様への説明も引き続き透明性を上げていきたいと思いますので、応援ぜひお願いいたします。
Q4. 今回の社名変更をきっかけとした、5年後あるいは10年後の会社のビジョンをぜひ教えてください。
A4. artienceに社名変更したことで、これまで130年培ってきた信頼、製品、技術に加えて、皆様にドキドキ、ワクワクしていただくような、感性に訴えかけるような価値を提供したいと思います。
既存事業は、継続して伸ばす一方で、皆様の感性に訴えかけるように、会社としてもどんどん挑戦し、新しいものを生み出せるように取り組んでいます。その一例としてインキュベーションセンターという部門を社長直轄で作りました。例えば新事業を生み出す風土として、社員が自由に応募して新しいビジネスを提案するコンテストを開催。受賞者はビジネスの事業予算が与えられ、お客様の工場を診断してコンサルタントフィーをいただく省エネビジネスを始めるなど、いくつかの事例が生まれています。
また、社内にないものを新たに外から取り込むために、海外を含めたスタートアップやベンチャー企業が集まる場をインキュベーションキャンパスとして今期、私どもの事務所のワンフロアにオープンしました。パートナー企業やスタートアップ企業に集まっていただき、素材関連の新たな技術について、社内のノウハウのみならず、取り込もうとしています。
確固たる図はまだ描き切れていませんが、5年後、10年後に向け、新たなものを生み出そうとしているので、いずれいいニュースをお届けできるようにしたいと思います。
Q5. CNT分散体は収益の何割ぐらいまで成長する見込みですか。
A5. 本中計では、来年度(2026年)、100億円程度の売上を計画しています。ただ、利益が2桁億円出るといったレベルには達していません
売上で200億円、300億円という数字の方向性も示しましたが、ここまでいくと2桁台の営業利益率が出てくるだろうと見立てています。こうなると、会社の新たな柱として乗ってくると思います。
以上
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