株式会社アルトナー(2163)
開催日:2025年9月20日(土)
場 所:ミッドランドスクエア オフィスタワー5F『ミッドランドホール』
(愛知県名古屋市中村区)
説明者:代表取締役社長 関口 相三 氏
1.会社概要
・ 株式会社アルトナーは、1962年9月18日、大阪市北区で設立しました。現在、東京証券取引所プライム市場・証券コード2163で上場しています。現在の事業拠点は、横浜、宇都宮、大阪、名古屋の4拠点で、北は東北から西は九州までのお客様をサポートしています。従業員規模は、2025年7月31日現在、約1,500人です。
2.2026年1月期第2四半期(中間期)決算概要
・ 総括として、第2四半期の市場環境は、米国の関税措置等の発表はありましたが、業績悪化への大きな影響は顕在化しませんでした。また引き続き、当社の主要顧客である自動車関連メーカー並びに半導体製造装置メーカーから技術者の要請が活発でした。
このような市場環境の中、技術者派遣事業では、前年を上回る稼働人員で推移したことと前年を上回る技術者単価を獲得したことが大きく増益に寄与しています。
・ 売上高は、前年対比で7.9%の増収、売上総利益で10.9%の増益、営業利益は14.5%の増益、経常利益も14.5%の増益、中間純利益は14.7%の増益、中間期は前年対比増収・増益で着地しました。また、中間期の営業利益率は18.7%です。
・ 事業別の売上高について。当社は、技術者派遣事業と請負・受託事業の2つの事業を展開しています。派遣事業は、前年対比6.1%の増収、請負・受託事業は21.4%の増収、請負・受託事業の事業構成費は、前年10.9%から本年12.3%まで増加しています。
・ 顧客の業種別の売上高について。特に売上の伸びが顕著なのは、自動車完成メーカー並びに自動車部品メーカーが属する輸送用機器で、17.5%です。輸送用機器の全体の構成比は44.3%です。
・ 技術領域別の売上高、当社のエンジニアの職種別の売上高について。特に伸びたのはソフトウェア分野です。エンベデッド・モデルベースが16.9%増、ITソリューションが5.8%増。エンベデッド・モデルベースとITソリューションのソフトウェア分野を合わせ約45%の構成比です。
・ 地域別の売上高について。特に伸びたのは関東エリアで、11.9%増。関東の売上構成比は64.6%まで拡大しています。
特に関東エリアの売上が伸びた要因は、当社の主要顧客が自動車完成メーカー並びに自動車部品メーカー、加えて半導体製造装置メーカーで、各種メーカーが所属する所在地が関東エリアに集結していること。これにより関東エリアの伸びが顕著でした。
・ 売上高、費用、利益率向上の考え方について。まず、技術者派遣における売上高の構成要素は、技術者の総数に稼働率を掛けたものが稼働人員として算出されます。その稼働人員に技術者1人/1時間当たりの技術者単価と働いた時間である労働工数を掛けます。これにより、技術者派遣事業の売上高が計上されます。
利益率の向上のポイントは大きく2つ。まず、売上総利益率向上には、エンジニア1人当たりの技術者単価を向上させる必要があります。
また、営業利益率向上には、管理効率を上げることで、販売管理費を抑制します。
・ これらを前提として、期末技術者数は前年1,281名から1,312名でプラス31名。稼働率は、前年の98.2%に対し、本年は97.9%となりました。
・ 技術者単価は、前年4,457円から本年は4,676円でプラス219円となりました。また、労働工数は、前年169時間に対し167時間でマイナス2時間となりました。
3.11期連続の増収・増益の要因
・ 本年の決算で増収・増益を達成すると、12期連続の増収・増益となります。これまで11期連続の増収・増益をもたらした要因には、まず、市場環境があります。
当社が属する技術者派遣事業の事業市場は、毎年約10%前後の成長を遂げている成長業界です。また、当社の主要顧客である製造メーカーの開発費は年々増加傾向です。事業環境に恵まれていることが、要因の1つ目だと分析しています。
・ 要因の2つ目は、長い歴史による顧客企業からの信頼感です。当社は1962年の設立で、現在64年目を迎える技術者派遣事業の老舗企業です。長い歴史の中で培ったお客様との信用と信頼関係が好業績をもたらしているベースになると考えています。
・ 要因の3つ目は、11期前からアルトナーが作り上げてきた技術者派遣事業における他社との差別化できるビジネスモデルにあると思います。
当社が作り上げてきたビジネスモデルは、当社の主要顧客である製造メーカーの開発工程と合わせて説明できます。メーカーの業務工程には、研究開発領域、製品開発領域、生産関連領域があります。その中で当社は、研究開発領域から製品開発領域を得意分野としており、当社のエンジニアの約80%がこの領域に配属されています。それにより、高い技術単価を獲得し、それがすなわち高利益率と高収益企業の要因です。
・ 要因の最後は、マーケットニーズの高い技術分野への技術者の配属です。これは事業戦略でもあります。当社は現在、自動車メーカーで特に社会的ニーズの高いハイブリッドや電気自動車、燃料電気自動車、また自動運転や半導体製造装置関連等のプロジェクトに積極的にエンジニアを配属しています。これらの分野は、高い技術力を要求されますが、その分お客様からいただく技術料は高いという結果が得られます。
これら4点が、当社を11期連続の増収・増益に導いた要因だと分析しています。
4.中期経営計画(2026年1月期〜2030年1月期)
・ 前中期経営計画を振り返ると、前中計の技術者数目標は、1,600名でしたが、着地は1,251名で、マイナス349名です。
売上高は、目標116億円に対し、着地は111億円で、約4億7,500万円のマイナス。一方、営業利益率は、14.0%の目標設定に対し16.3%となり、2.3ポイントのアップです。またROEは、目標20%以上に対して28.1%で、8.1ポイントのプラスです。配当性向は、50%以上の目標に対して69.1%で19.1%のアップとなりました。その他、カーボンニュートラルに対するエンジニアの派遣と請負・受託が前中計の戦略でした。
・ 前中計を踏まえ、新中計を構成するための外部環境及び社会的課題、市場の需要予測、提供価値を総合的に判断し、当社の2030年1月期のあるべき姿を想定しています。
・ あるべき姿に対する当社の課題について。課題の1つ目は、当社はプロダクトアウトではなく、マーケットイン。いわゆる需要の取り込みを基本にしています。マーケットに対する当社の準備のあり方を考えると、課題は採用に集約されます。
課題の2つ目は、顧客ニーズに応えられる人財を採用・育成し、お客様に供給するビジネスサイクルを追求することです。当社の特徴であるセグメント管理、いわゆる細分化管理をさらに進化することを新中期経営計画の中心的なテーマとしています。
・ これらの2つの課題を踏まえ、中期経営計画の基本方針は、「持続的成長および次世代成長のための基盤を構築する」ことです。これにより、業界No.1の高付加価値の技術者集団の組織化を達成します。また、総合技術サービス会社への進化を目指します。
・ 3つの基本施策について。まず、1つ目は、セグメント戦略の推進です。カーボンニュートラル対応を中核に据えたハイエンド領域の人員ウエイトを拡大し、請負・受託プロジェクトのOJT活用による配属業務レベルを引き上げます。具体的な目標としては、技術者派遣のハイエンド領域を36%から50%に拡大します。
施策の2つ目は、多種多様な人財活用の推進です。具体的には、事業環境の変化に対応するための戦略的な請負・受託シフトを行い、シニアエンジニアや女性エンジニア、また留学生を中心とする外国人労働者を積極的に活用します。さらに、協力会社の活用または組織化を行い、稼働人員数の拡大を図ります。その受け皿として請負・受託事業の比率を30%まで拡大します。
3つ目は、新たな事業・収益機会の模索です。積極的なM&Aやアライアンス提携を推進します。
・ 中期経営計画の経営数値目標は、売上高で187億円。営業利益率で16.0%です。
・ 期末技術者数を2,100人、1株当たりの純利益(EPS)を195円に目標設定しています。
5.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
・ 今中計のPER目標は18.5倍以上です。現在の当業界の平均が17.6倍でなので、それを上回るものです。
・ TOPIXの新基準に対応するため、目標数値を設定しています。株価は、2025年1月末現在の1,850円から約2倍の3,600円。時価総額は197億円から383億円。浮動株比率は60%。浮動株時価総額を現在の118億円から230億円へ。EPSは118.64円から195円。目標PERは15.6倍から18.5倍に設定します。これらを達成することでTOPIXの次期基準変更への生き残りを賭けたいと考えています。
6.2026年1月期の業績予想/配当予想
・ 第2四半期終了時点の進捗状況について。通期に対し、売上高は51.1%、営業利益率は59.8%、経常利益は59.9%、当期純利益は60.5%の進捗です。
上期の業績結果を受け、現在、売上高また利益とも、順調に推移しています。
・ 下期の動向について、特に注目しているのは、関税問題がお客様に与える悪影響です。9月中旬の現在までお客様から派遣契約の終了要請や増員スピードの減速感は一切見受けられません。したがって、注視する必要はありますが、下期も引き続き需要が旺盛で推移すると予測しています。
・ 2026年1月期の配当予想は、中間期42.0円、期末42.0円、年間配当金84円を計画しています。前年の配当が年82円なので、2円の増配を予定しています。
・ 当社の配当に関する基本方針は、累進型配当を基本とし、配当性向50%をベースに、毎年純利益を増額することで、前年割れのない配当金を株主の皆様に還元することです。
7.参考資料
・ 当社の社是/経営理念/社名の由来について。当社の経営理念は「エンジニアサポートカンパニー〜私達は技術者の夢をサポートします〜」です。この理念に基づき、当社は事業運営しています。
・ パーパスとして、アルトナーの社会的存在意義は、「日本が世界に誇る財産であるエンジニアの成長、自己実現をサポートする」です。
・ 当社の売上高上位10社の顧客企業について。第1位が本田技研工業様、2位が本田技術研究所様、3位がニコン様、4位がレーザーテック様、5位がボッシュ様、6位が東京エレクトロン宮城様、7位が日立Astemo様、8位がテルモ様、9位が日本電子様、10位が住友電気工業様です。自動車完成メーカー並びに自動車部品メーカー、半導体製造装置メーカーが上位10社に顔を並べています。
・ 2026年1月期の当社の期末株主数は2万4,200人です。前年期末が2万2,181名なので、前年よりも株主数が増加しています。
・ 新中期経営計画の基本施策として、積極的なM&Aやアライアンスを展開することとしています。その方針にのっとり、本年9月26日を株式譲渡実行日として、有限会社クリップソフトの株式取得が決定しています。静岡県浜松市に所在し、組込ソフト系のエンジニアの技術者派遣事業と請負事業を展開する会社です。今後、両社のウィークポイントとストロングポイントを補完し合いながら、シナジー効果を大いに発揮し、利益の最大化に努めます。
・ 株価の推移について。昨日9月19日の終値は2,009円となっています。
8.質疑応答
Q1. 6月20日に株式会社富士テクノホールディングスとの業務提携契約締結に関するお知らせ、そして先日9月8日に有限会社クリップソフトの株式取得・子会社化に関するプレスリリースを発表されていました。これらの事業戦略上の狙いについて詳しく教えてください。
A1. まず6月に富士テクノホールディングスと業務提携契約を締結しました。また今月はクリップソフトの株式全株を購入し、子会社化しました。
富士テクノ社との業務提携の狙いは、中計の施策にもあるように、当社は今後、請負・受託事業の拡大を図ります。その中で、請負・受託事業の就業者の構成比率を、正社員と外部協力企業の人財とで1:1にすることを目標にしています。それにより、正社員の流動性を確保し、新たな派遣先にエンジニアを活用する戦略を取っています。結果として、稼動人員の拡大による売上高の増収と稼動人員増加による利益高の増益が期待できます。
クリップソフト社は組込ソフトウェアを専門に行っている企業です。こちらも富士テクノ社の業務提携の目的とほぼ同様に、請負・受託事業の拡大に伴う人財の確保や人財の流動化を行い、アルトナーの稼働人員の確保に努めたいと思います。また、クリップソフト社は、まだまだ顧客拡大余地も技術者単価上昇余地もあるので、子会社として利益の最大化を目指して今後推進したいと思います。
Q2. 今後の業務提携やM&Aなどの事業拡大に向けた戦略について詳しく教えてください。
A2. 今後の業務提携や企業買収、M&Aの戦略について、対象となるのは、当社の事業領域である機械系や電気・電子系、組込ソフト系、ITソフト系事業を行う会社です。それらの会社を買収する、いわゆるグループ化することで、当社のストロングポイントをさらに強化できること。あるいは当社のウィークポイントを補完できること。このような会社にターゲットを絞り、今後、M&Aや業務提携を推進していきます。
Q3. 外国人の採用はどれぐらいですか。外国人の技術レベルはどのように感じていますか。海外で研修所を設立して人財を育成し、日本に人財を送る計画はありますか。
A3. 外国人の採用状況は、本年度2025年4月入社の新卒151名のうち約10名強が外国人留学生でした。毎年おおむね10名前後を国内大学の留学生を中心に採用しています。
外国人のレベルについて、2つのレベル測定があります。1つは日本語レベル、もう1つは専門スキルのレベルで、これは相反する状況になっています。いわゆる難関校と言われる国内の上位校の大学に留学している留学生の技術レベルは非常に高い。しかし、授業や研究室での活動での標準語は英語なので、日本語レベルは低い傾向にあります。一方、技術レベルは低いが日本語レベルは高い留学生もいます。
当社は現在、技術レベルの高さを優先し、外国人を採用しています。日本語の補完については、新人研修期間中に日本語研修を実施。また、いきなり技術者派遣としてお客様のプロジェクトに配属するのではなく、当社の請負・受託プロジェクトの中に外国人留学生出身者を配属し、技術的な経験と日本語の習得に努め、今後、派遣就業できる状況になった場合、請負・受託プロジェクトから派遣プロジェクトに積極展開していく方針を立て、推進しています。
海外から日本への外国人の受け入れについては、今中計での着手は難しいと思います。しかしそのステップとして、中計の基本施策の中の1つとして、請負・受託事業の拡大を掲げています。現在の10数%から新中計では30%まで拡大することを目標設定しており、これが実現すると、請負・受託のプロジェクト数と取引顧客数が増加します。また、請負・受託で働く技術者数も増加します。それにより安定的な業務量の確保を行い、海外に業務移管するのが次のステップになると考えます。その中で、海外大学との連携等も実施し、海外で研修拠点を展開し、そこで育成したり、海外プロジェクトで就業・雇用した外国人を希望があれば日本国内に異動するステップになるかと思います。
以上
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
大和インベスター・リレーションズ(以下、「当社」といいます。)はこの資料の正確性、完全性を保証するものではありません。
ここに記載された意見等は当社が開催する個人投資家向け会社説明会の開催時点における当該会社側の判断を示すに過ぎず、今後予告なく変更されることがあります。
当社は、ここに記載された意見等に関して、お客様の銘柄の選択・投資に対して何らの責任を負うものではありません。
この資料は投資勧誘を意図するものではありません。
当社の承諾なくこの資料の複製または転載を行わないようお願いいたします。