ヤマシンフィルタ株式会社(6240)
開催日:2025年7月12日(土)
場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)
説明者:取締役 専務執行役員 井岡 周久氏
- ヤマシンフィルタとは
・ 建機用のフィルタは、B to Bのビジネスです。建設機械にはたくさんの種類がありますが、例えば油圧ショベルは世界でも一番主力の建設機械です。油圧ショベルには平均すると5個のフィルタが使われており、人間で言うと血液に当たるオイルを巡回しながらシリンダーを動かし作業します。その時、いろんなところにゴミが入る。これをそれぞれのラインについている各フィルタで取り除きます。フィルタの中でもリターンフィルタは、腎臓の働きをする。取り切れなかったゴミや汚れを究極まで取り除く機能性部品です。油圧ショベルの故障原因の70%以上を占めるのが、フィルタの汚れによるもので、フィルタの性能の良し悪しが重要です。
当社は、ナノファイバーを使い、世界で70%を超える市場シェアを有しています。フィルタユニットの中には、ろ材と言われるごみを取るために一番重要な部材があります。私どもは、上流段階で研究開発し、各建機メーカーのニーズに合ったフィルタを自社工場で生産。オーダーメイドで提供できる世界で唯一のフィルタメーカーです。国内外に多くのフィルタメーカーがありますが、私どもが日本総研と1年かけて、いろいろと調査したところ、私どものように、フィルタの上流から下流まで垂直統合型のメーカーは1社もありません。他のフィルタメーカーは、製紙会社からフィルタを購入して、それをアセンブリして提供する会社ばかりです。ここが当社とは決定的に違います。
ヤマシンフィルタは、単体での従業員が約175名で、連結で800名弱。日本の本社を含めた単体で175名のうち60名以上が研究開発部員です。もうこの70年間、一貫しており、ものづくりに力を入れている会社です。その結実が70%を超える世界シェアを有しているということになります。
本日、入口で展示しているのは、次世代の合成高分子系ナノファイバー「YAMASHIN Nano Filter®」です。これは昨年12月からコマツの新世代油圧ショベル「PC200i-12」に搭載されています。
建機メーカーは5年に1度、フルモデルチェンジを行います。15トン、20トン、25トンと多くの車種がある中、5年をかけて全てモデルチェンジをする。今年10月からは最大手も5年をかけて全ての新車が私どものナノフィルタに変わります。それから時期を待たずに、伝統的な主要大手7社が7〜8年をかけて全ての車種に私どものナノフィルタを搭載します。
これによってヤマシンフィルタが各社に供給しているフィルタそのものの売価が2倍から2.5倍になります。そして昨年の決算数字がこの5年前後で2倍以上の売上になり、利益の改善・拡大に繋がります。私どものイノベーションは、当社の収益を改善し、EPSをさらに拡大し、株価と時価総額を一気に上げていく大きな局面にあるとご理解いただきたいと思います。
ナノファイバーの技術は、皆様のお手元にノベルティでお渡ししている「ゼクシード」というマスクにも使われています。ベンチマークは3MのN95という医療用マスクと同等以上のものを作ること。実際、第三者機関の性能評価でそれを凌駕するものが出来ています。
いいものを作れば皆様のお役に立つ、ということで、当社はB to Cのビジネスを2020年当時始めました。しかし一般消費者の方々にはなかなか受け入れられなかった。デザインがよく、カラフルで使い捨ての非常に便利な中国製などのマスクに皆様の関心が集まるので、当社はこのビジネスに関しては実質的に撤退しています。
しかし、このマスクには大きな特徴があります。国内大手の医薬品やメーカーが出されているマスクは全てそうですが、静電気を帯電させてウイルスを取る仕組みです。呼気には水蒸気があるので、静電気はあっという間に中和され、1日も性能は持たないから使い捨てになるのです。
当社のナノファイバーのフィルタは、平均繊維径が大体100nm前後から800nmぐらいの集まりで、立体構造です。そして多孔体で、コロナウイルスなら直径100nmレベルのウイルスを99.8%、捕集し続けることができます。
かつ、静電気は一切帯電させず、性能を維持できる。そのため当社では「このマスクは1日使って洗濯機で洗って次の日も使える。少なくとも20回繰り返し洗って使っても性能はほぼ落ちずに使い続けることができる」と説明していました。
また、合成高分子系ナノファイバーの特徴として、生分解性の素材もフィルタとして使用することができます。たとえポイ捨てされても、数ヵ月も経たないうちに土に還ることができます。
このようにサステナビリティの面でも力を入れている会社です。直近ではサステナビリティの外部スコア機関のCDPから、最高ランクのAをいただいています。同じようなサステナビリティの検証機関であるFTSE(フィツィー)でも、直近で5点満点のうち3.8の評価をいただいています。FTSE BlossomのJapan Indexにも選定され、ますます当社の株の流動性は上がっていくと確信しています。
・ 当社のモットー(社是)は、「仕濾過事(しろかじ)」。「仕事」の間に「濾過(フィルタ)」があります。フィルタを通して社会に貢献する。これが当社のモットーです。
元々、建機用のフィルタとして始まったビジネスで70年の歴史がありますが、「YAMASHIN Nano Filter®」は、液体中のゴミを取るだけでなくて、空気中のウイルスなどのゴミを取ることもできる。と同時に、光を取る、熱を取る、音を取る。非常に高いレベルでいろいろなものが実現できます。これを今後、本格的な第3の柱として展開していきます。
銘柄としては、ハイブリッド銘柄。これは私の思いとして語らせてください。
当社の売上と利益の9割以上が建機用のフィルタです。四半期に一度、平均40〜50社の機関投資家とお会いしますが、多くの皆様から「しっかりした技術力とグローバルでトップのシェアを維持し続けることができている。かつ、今後5〜10年は、イノベーションにより、世界の上位7社をしっかり押さえている」と評価されます。利益の改善や拡大に取り組み、配当をしっかり拡大していけるベースを機関投資家は見極めてくれています。その一方で、なかなかやっぱり株価が上がらない。
これは、ヤマシンフィルタという小型銘柄を知る投資家が限られているから。しっかりとした技術のベースとマーケットのポジションと顧客を持ち、利益を出し続けられるヤマシンフィルタが、株価としては過小評価されているのは、バリュー的な意味合いがあると思います。
一方、合成高分子系ナノファイバーを使った新しい事業領域を再スタートしています。ターゲットとしては、市場規模10兆円のスマートテキスタイル市場や産業資材など。非常に大きな広がりがある市場に、今後3〜5年でしっかり売上・利益を出していく所存です。これはまさにグロスであり、成長銘柄。バリューでありながらグロスでもあるハイブリッド銘柄です。
私どもは、しっかりと株主の皆様に還元し、長く支えていただきたい。皆様もそういう株主として、ぜひ、私どもの会社事業に関心を持ち、投資対象として選んでいただきたいと強く思います。
- ヤマシンフィルタの強み
・ 株主還元については、高配当銘柄です。2028年3月期までの中期経営計画で、配当についても開示しています。これは私どもからすれば、コミットメントでありボトムラインとお考えいただいて結構です。そのぐらい自信があります。私どもは、中長期的に確信を持ったビジネスの拡大・拡張に取り組み、利益改善も図れると思っています。
上場以来、DOEを私どものKPIとしてきました。さらに1〜2年前からは2028年3月期に向けて2桁まで上げていこうとしています。配当性向も開示内容をしっかり実現させたいと思います。
ちなみに2014年10月の上場以来、当社は株価を30分割しています、流動性を上げながら、皆様の投資のための資金を少額に抑え、ぜひ、私どもの会社を応援していただきたい。その思いも込めて30分割し、現在の株価になっているとご理解ください。
・ 世界の建機メーカーの主要上位7社が私どもの安定したお客様です。今後もビジネスパートナーとして非常に強い関係が続く。ビジネス上の信頼関係があると同時に、下請けではない。私どもはパートナーとして、機能性素材を各社に提案する。それはメーカー様にとっても、建機を使うお客様にとっても、私どもにとってもいい。“三方良し”の製品を開発し供給していくことで一貫しています。
・ 当社が7割を超えるマーケットシェアを有するようになった変換点は、ろ材開発にあります。
当社は発展期においてガラス繊維をろ材の素材に活用しました。ガラス繊維は、実際にパウダー状のものです。これを使い、世界で初めて、オイル用のフィルタを開発したのが、ヤマシンフィルタです。今から40年前のことです。
それ以前は、例えば日本では、大戦後の進駐軍時代に建機がアメリカから来ていましたが、フィルタそのものは紙でした。それを私どもがガラス繊維を使ったフィルタに変えることにより、フィルタ性能が飛躍的に変わりました。
フィルタには、大きく3つの要素が必要です。たくさんゴミを取ること。たくさんゴミを取りながら長く使えること。これをライフと言います。そういう状態でも、常にフィルタを通過するオイルの通過抵抗は究極まで抑えてさっと流れること。
私どもは、この3要素を各建機メーカーの設計開発のポリシーに合わせ、微妙に組み合わせながら、開発し供給しています。その結果、主要な建機メーカー7社を中心に純正品としての採用が始まり、今に至っているとご理解ください。
開発を主体にしながら、常に5〜10年後の目指すべき性能や、コストや環境を意識した開発テーマを持ち、時代のニーズに合ったものをお客様に提案する。この姿勢により私どものフィルタは各社に採用されるのです。
それは、各建機メーカーから、「この図面で、こんな形の、これこれの性能のものを作ってくれ」と言われて作るのではありません。その先を見ながら、フィルタ性能を提案しているのです。
例えば、ガラス繊維を使うことにより、紙のフィルタの半分の大きさで、ライフは2〜3倍になりました。さらに今回のナノファイバーを使ったフィルタは、ガラス繊維のフィルタと比べ、ライフが3倍の3,000時間。これまで年に一度のフィルタ交換が3年に伸び、サイズも小さくなりました。そうすると機械設計そのものがサイズダウンし、コストダウンや燃費の改善など、いろんなものに波及します。
これがヤマシンフィルタの開発力です。各建機メーカーにとっても、5年ごとのフルモデルチェンジに向けた設計の根本に大きく影響する技術です。フィルタという消耗品でありながら、各建機メーカーのパートナーとして、次世代モデルの開発に積極的に取り組んでいることをご理解いただきたいと思います。
・ 油圧ショベルの油圧用には4つのフィルタが使われています。それぞれのフィルタでゴミを取りますが、取りきれなかったゴミを最後に取り切るのが、運転席の後ろのオイルタンクの中にあるリターンフィルタです。この性能で全て決まると言えます。
今、自動車ではエンジンの電動化がどんどん進んでいます。建設機械でも小型機ではエンジンが電気に置き換わりつつあります。ただ、各建機メーカーに確認すると、20トンを中心に、それ以上のものはなかなか電気に変わることはない。また油圧ショベルは、シリンダーをテコの原理で伸び縮みさせながら掘削すると、小さなエネルギーで最大の力を発揮する。この原理は変わることはない。このような状況なので、当社の本業のビジネスモデルは変わることはないとはっきり言うことができます。
・ ヤマシンフィルタのビジネスモデルは、基本的にはストックビジネスです。
例えば、コピー機の新品トナーの単価は高いが利幅は少ない。しかし、その後の消耗品の交換でしっかり利益を取っていく。これと同じです。
各建機メーカーには新車に搭載されるフィルタ(ライン品)を納品する。その後、定期的に消耗品が発注されます。これを補給品売上といいます。平均すると、ライン品の売上・利益1に対して、補給品の平均的な利益率が1.5倍前後。そのため売上構成比では、補給品の売上が増えています。
2014年に上場する前の5年間で平均すると、ライン品と補給品の売上は、ほぼトントンでした。しかし直近数年では、ライン品の売上以上に補給品が増えている。これは補給品ビジネスの利益率が非常に高いから、補給品ビジネスに力を入れています。
当社は補給品を一般のユーザーや、あるいはメーカー以外の小売店やロードサイドショップで販売することは一切ありません。補給品は全て各建機メーカーの補給品部門のみで販売する。そして補給品の純正率を上げるために、私どもは各建機メーカーと共に、それぞれの代理店に対して定期的に研修会や講習会を開いています。昨今、純正品を使うことのメリットや故障の軽減に力を入れ始めている結果、補給品優位の売上構成比率になっています。これは非常にいい傾向だと思います。
また、トランプ政権の関税問題について。ヤマシンフィルタの事業に与える影響は、基本的に一切ありません。主要取引先の建機メーカー全てと、関税分のコストは各建機メーカーで全額負担することが合意され、実行しています。
一部の建機メーカーからは「関税負担分は50%:50%にしてくれ」「他のサプライヤーと同じように全額負担してもらわないと困る」という話がありました。全てのメーカーが、当社製品を純正品として使う大きなメリットがあります。そのことをご理解いただき、全ての取引先に対して、関税分のコストは取引先様が全額負担することで話が進んでいます。そのため、関税問題が事業に与える影響は、基本的にほぼないとご理解いただきたいと思います。
【YAMASHIN Nano Filter®】
・ ヤマシンフィルタのナノファイバーの原反は綿状のものです。これを使って、まず建機用のフィルタを作ることを始めました。
本来、ヤマシンフィルタでは、2017年にナノファイバーを使った建機用フィルタの量産化に向けた投資が全て終わり、佐賀工場で稼働開始をスタンバイしていました。これは、コマツの創立100周年記念モデルにヤマシンの最先端フィルタを搭載し、世界初の製品を出すことで合意形成していたからです。ところがコロナ禍になり、半導体不足や物流の問題などが発生。そのため、当初予定よりも4年半遅れの昨年12月に新世代油圧ショベル「PC200i-12」を発売しています。
当社は4年半のコロナ禍の間、ナノファイバーに関して掲げていた成長の見通しを一旦、収縮せざるを得ませんでした。そこから他の建機メーカーに展開していくと考えていました。というのも、日本の建機メーカーは、これまでの私どもを育てていただいたお客様。そこを最優先と考えていた結果、全体的なスケジュールはちょっと遅れてしまいました。
いずれにしても、オイル用のフィルタでもエアフィルタも、ナノファイバーでコスト競争力のある製品を世の中に出せるメーカーは私どもをおいて他にはありません。
フィルタの分野では、フィルタ交換時にイミテーションメーカーが安いものを持ち込み、純正品を駆逐するパターンが多いのですが、ナノファイバーではこれができません。ナノファイバーは従来品よりもサイズが小さく、サイズが半分になると、通常ならゴミを取るライフも2分の1になるのですが、ヤマシンフィルタのナノファイバーは、サイズが半分になってもライフは3倍です。イミテーションメーカーがサイズを小さくした似たようものを出しても、ライフは数百時間も持たないので、使うお客様にとって全くメリットがありません。
これが各建機メーカーにも私どもにも、純正率を飛躍的に向上させる大きなターニングポイントになると確信しています。
・ ナノファイバーには、40〜50年前からゴルフのシャフトやテニスラケットなどに使われているカーボンナノファイバーがあります。また、木材等を使い、ジェル状の状態で開発を進めている天然高分子ナノファイバーもあります。
当社のナノファイバーは、それらとは異なります。素材は化石燃料系で、ポリプロピレンなどを使った合成高分子ナノファイバーです。これでフィルタを生成。より細い繊維で、量産性を上げながら特性を持たせる、世界初の全く新しい技術を確立しています。
一般にナノファイバーの生産方法には、海島型というものがあります。合成高分子ナノファイバーがそれで、溶剤の中に素材を通し、糸を作ります。この糸を編み込んで製品にするので、織布の形になります。一方、私どもは、同じような原材料を使いながら、綿状のものを立体構造に仕上げる。不織布に近いもので、量産性と低コストを兼ね備えた非常に付加価値が高い技術です。
今は化石燃料系の素材を使うだけではなく、リサイクルチップやトウモロコシやサトウキビなどのような植物由来のチップを使ったナノファイバーの開発にも取り組んでいます。さらに生分解性を踏まえた開発、量産、製品化が実現できています。
そして、それぞれのマーケットのお客様のニーズに合わせたものを提案できる。生産拠点は佐賀工場、研究開発が横須賀と私どもは上流側工程からの非常に高い技術力を有していると自負しています。
・ 私どもはアメリカのニューズウィーク社からも取材を受けています。「ものづくりの日本」から遠ざかった昨今の日本の中でも、日本あるいは世界を代表するものづくり企業があるというが取材テーマで、その中の1社として当社が登場。独自の技術や経営ポリシーがあり、フィルタの分野では圧倒的な世界シェアを有している会社として取り上げられています。
当社のものづくりの原点は、やはり品質です。最高の性能と最適な品質。そしてお客様に満足いただけるコスト競争力。それからメーカーとして必要な徹底した納期管理。これを司り、基本的な前提となるのが研究開発です。
これを一貫して70年間やってきている会社です。このベースがあるから、新しい事業に繋がる。3年後、5年後のヤマシンフィルタは、企業価値や株価、時価総額がグッと上がることでしょう。その原点は当社の研究開発にあります。
- 新たな価値創造の取り組み
【建機用フィルタ事業】
・ 前述のようにナノファイバーが有する技術力によってイミテーションフィルタを徹底的に排除できることで、利益改善に大きく繋がります。
【エアフィルタ事業】
・ 当社が開示している事業業績には、建機用フィルタ以外にエアフィルタがあります。2019年に大阪のエアフィルタ会社を買収しています。
私どもは、ナノファイバーの技術を使った全く新しいビルの空調用のエアフィルタも販売。例えばこの近辺でも、欧米の一流のホテルで私どものフィルタを名指しで使っていただいています。
その理由は、有機フッ素化合物を一切使っていない、PFASフリー・PFOSフリーの製品だからです。その一方、マスクの「ゼクシード」で説明したように、ウイルスを圧倒的に捕集できる。なおかつ、フィルタ1枚当たりの通気抵抗を、外部の第三者機関で調べたところ23〜28%軽減できる。これはCO2の削減に繋がります。
地球温暖化などが今問題になっていますが、当社のフィルタに交換することで、環境への優しさが実現できる。しかも原価も既存のものと変わらない。取り替えのランニングコストも変わらない。ナノファイバーを使った新しい機能性フィルタをこれからもしっかりとビジネスとして進めていきたいと考えています。
・ 当社のエアフィルタは目的に合わせてラインナップされています。
とりわけ外資系ホテルなど欧米の環境を非常に意識する企業が、採用の前提とするMerv(マーブ)いう公的な認証規格があります。日本のJIS規格に当たるものです。最も高いフィルタの品質は、Merv16。性能的にもう1つ下のものが15、14…で、用途に合わせて変わります。ヤマシンフィルタは、Merv16、15、14、といった一番上のラインで全て認証を受けている唯一のエアフィルタメーカーです。
これを国内のビルオーナーに強く訴求する。働く人の健康や環境を考え、CO2の削減にも繋がるフィルタであることをアピールし、いろんな手段を使いながらドアを開けていきたいと考えています。
・ 建機についてはもう一つ、触れておくポイントがあります。
建設機械が使われる環境には、夜間に氷点下40〜50度にもなるアラスカのような場所があります。こういうところでも油圧ショベルは屋外に置かれます。すると翌朝、油圧ショベルを稼働しようとすると、オイルそのものがバター状の半固体化し、リターンフィルタに大きな圧力をかけ、壊してしまいます。従来品では建機の故障が多発していたのですが、ヤマシンのフィルタに切り替えた結果、極寒の環境でも、中のフィルタそのものは正常に稼働し、建機が故障しない。うちの製品の実力が現場で証明されたことが、今のビジネスに繋がっています。これが当社のもの作りにこだわる原点です。
・ ナノファイバーを使った製品は、すでに建機やエアフィルタでビジネス化されていますが、現在、コロナ禍前に始めていたビジネスを再スタートしています。
コロナ禍前はナノファイバーを使ったアパレルなどの事業領域に進出。当時は株価が1,500円近くまで上がり、時価総額も1,000億円近くありました。もしコロナ禍がなければ、新規ビジネスを本格的に進めながら、第3の柱を立て、時価総額3,000億円前後まで上げることを視野に入れていました。しかし、コロナ禍で全てが変わりました。
アパレルでは、国内最大手で海外でもトップ3に入るメーカーが、ダウンに代わる同等素材として選定し、プロジェクトを始めていました。
また、国内で一番大きなショッピングモールを運営する会社からは、コロナ禍前の2年間、私どもの製品を使った星4つの寝具を販売しました。これは、ダウン製の掛け布団の星4つの一番高い等級と同等の性能のものでした。しかしコロナ禍で本業部分の業績が悪化したため、第3の柱の研究開発や製品化が一切止まってしまいました。
このような経緯を経て、新規事業を昨年後半から再度、本格的にスタートしています。当社は事業を加速度的に進める中で、世界最大手の化学メーカーで長年、研究に携わった開発研究者をヘッドハンティングして採用し、一気に製品化を進めています。
【新規事業】
・ アパレル分野では国内大手のアパレルメーカーや素材メーカーとタイアップしながら進めています。
・ スマートテキスタイルにも取り組んでいます。例えば石川県の金沢では薄い金箔加工の技術があります。あれよりもさらに薄いシートに有機溶剤を組み合わせることが、私どもならいくらでもできます。その技術を使い、導電性のシートを作る。これを使い、心電図など、身体から出てくるいろいろなバイタル信号を効率的につかみ、ウェラブルで健康管理ができます。既存製品はほとんどがジェル製ですが、これに代わる技術を国内大手のメディカル企業が探していたところ、当社の製品とまさに合致するようです。このような背景からスマートテキスタイルの分野に進出。メーカーとコミュニケーションする中で、メディカル関係だけでなく、スポーツ全般やファッションへの展開が具体的に見えてきています。製品化も、今年から来年前半には確立します。
・ 来年の今頃、当社で確立するのは、高耐熱素材です。デュポン社のノーメックスに代表される航空宇宙でも使われる超耐熱性と耐薬品性に優れた素材をベンチマークし、世界初の量産化技術の確立もメドが立っています。
ナノファイバーそのものは繊維が細いので、火をつけても燃えません。繊維があまりにも細いので、酸素と結合する前に溶けて、液体の塊で残ります。ただ、産業資材等で使う場合は難燃性や不燃性はどうしても必要な技術です。これが来年クリアできる。このビジネスの事業領域は、国内外を含めものすごく大きいのですが、ここに乗り込む全く新しい素材開発のメドが立っています。
・ 電磁波シールド素材もプロトタイプは出来上がっています。数十マイクロレベルの織布に私どもが得意する特殊な有機溶剤を組み合わせたものです。今後、需要が大きく見込まれるドローンや空飛ぶ車などに使われる。また自動運転中は、人命安全の立場から無駄な電波を効率的に遮断しなければなりません。そういうものにも当社のナノファイバーを使った電磁波シールド素材が役に立ちます。今日はお見せすることはできませんが、半年後など次回、機会があれば、素材そのものを見せることができると思います。非常に広がりがある製品です。
・ ヤマシンフィルタは、本業の建機用フィルタ事業では、この5年、10年、15年と取引先との安定した関係と高い技術により売価を2倍以上に上げ、売上の拡大や利益の大幅な改善を図ります。一方、ナノファイバーを使った新しい事業領域では、まさにエクイティストーリーが明確に広がっています。
9月初めに都内でお披露目会の予定があります。取引先や国内外の機関投資家など、約3,000社を集めようと思っています。建機だけでなく、化学や繊維、精密機械などの国内外の方々とも連携し、当日Webでも入ってもらおうと考えています。
最後になりますが、ヤマシンフィルタは上場来、時価総額をいかに上げるかに一貫して取り組んでいます。EPS(一株当たり当期純利益)をしっかり上げていきながら、5年後、10年後のエクイティストーリーを明確にする。本業部分でEPSをきちんと改善しながら、そこから生まれるキャッシュは資本政策の中で皆様にしっかりと還元していく。同時に、成長に向けて必要なM&Aも積極的に行い、少なくとも5〜6年後にミッドキャップに入るというコミットメントをしています。ぜひ今日の説明会を機に、ご関心を持っていただきたいと思います。
- 質疑応答
Q1. 2025年5月23日に開示された決算説明資料には、トランプ関税を業績に織り込んでいないと記載されていましたが、業績に及ぼす影響額を教えてください。
A1. 業績に及ぼす影響はありません。全くないです。例えばアメリカでは、私どもはキャタピラー社に認めてもらい、製品を製造・供給しています。そこには私どもの製品の付加価値をメーカー様に機能性製品として認められている自負があります。よりコスト競争力のあるものを提案しながら、Win-winの関係を構築しているので、突発的なトランプ関税に左右されることはなく、トランプ関税が事業に与える影響はありません。
以上
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