佐鳥電機株式会社(7420)
開催日:2025年7月19日(土)
場 所:シティプラザ大阪 2階 『旬の間』(大阪府大阪市)
説明者:代表取締役 社長執行役員 佐鳥 浩之 氏
SMエレクトロニクス 副社長 Yashoranjan K V 氏
1.会社概要
・ 当社は1947年に設立、今年創立78周年を迎えたエレクトロニクス商社です。設立当初より、お客さまが必要とする商材を拡充し、お客さまへの貢献を重ねながら事業を拡大してきました。現在は、国内・海外の製造業を中心としたさまざまな企業に対し、半導体や電子部品を中心に、エレクトロニクスに関連する部品や製品、サービスの提供を行っています。特に自動車向けの半導体を中心としたモビリティ関連、工場設備等の産業インフラ関連では、お客さまから一定のご評価を頂いています。
- 2025年5月期の売上高は、前年度比5.5%増の1,562億円、営業利益は前年度比16%減の39億円でした。総資産は2025年5月末時点で791億円、自己資本比率は41%です。日本や東南アジアを中心に、グローバルに10カ国・21拠点で事業を展開し、約800名の従業員で、国内・海外の約5,000社のお客さまと取引をしています。
- 当社は、事業領域や事業戦略に基づき子会社を設立し、事業を展開しています。国内は佐鳥電機を含め4社、海外は現地法人11社でグループ経営しています。国内は佐鳥電機の他に、パナソニック株式会社の電子部品を主に扱う佐鳥パイニックス株式会社、モビリティ市場向けのビジネスを展開する株式会社スター・エレクトロニクス、パソコンやコピー機の他、最近では自動車にも使われるハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置のソリューションを提供する佐鳥SPテクノロジ株式会社で構成しています。国内ネットワークにおいては、北は北海道・札幌から南は九州・熊本まで10カ所に拠点を構え、日本各地のお客さまのサポートを行っています。
- 当社は単なる商社機能だけではなく、技術開発機能を有しています。秋田テクノロジーセンターでは、お客さまのさまざまな要望に沿った製品や部品の設計・開発・試作評価・量産管理まで行い、幅広くサポートをしています。
- 大阪での活動です。当社はNECや住友電気工業の代理店としてスタートしました。現在でも住友電工の大手代理店の一社として活動しています。当時の日本は、東京オリンピックに向けてさまざまな取り組みが展開されていましたが、当社ではNECの写真伝送装置の販売及びそのアフターサービスを目的に、1960年に国内初の拠点として大阪支店を開設しました。以来、大阪の発展とともにビジネスを拡大し、現在は大阪支社として事業を行っています。主にパナソニック、オムロンなどの日本を代表する企業や、新コスモス電機といったお客さまと取引を行っています。
- アメリカはデトロイト、ヨーロッパではドイツとオランダに拠点を構え、東南アジアを中心に11社の現地法人を持ち、グローバルネットワークを構築しています。2023年にインドのSMエレクトロニクス社(SMET)を子会社化し、さらに2024年5月にはオランダのMAGnetIC(マグネティック)社の株式を80%取得し、子会社化しました。
- 当社の主要な販売品目と売上構成です。世界で2年連続、2桁成長が見込まれる半導体製品が36%を占めています。生成AIに使われているサーバや、パソコンなどに使われるキャパシタ等をはじめとする電子部品が43%。そして、半導体製造装置や産業向けの装置や機械の中で使われているさまざまな制御機器やコントローラ、ロボット等の電子機器が19%を占めています。また、売上では37億円、シェアは2%程度ですが、佐鳥オリジナルブランド製品も扱っています。
- 2018年5月期以降、それまで売上高は1,000億円から1,100億円程度で推移していましたが、2017年にアメリカのウエスタンデジタル社との代理店契約や、2019年5月期にはパナソニック社との半導体調達サービスの開始など、事業領域の拡大に努めてきました。2021年5月期にはルネサスエレクトロニクス社との特約店契約解消もありましたが、半導体調達サービスの事業領域拡大や、2023年2月にインドのSMエレクトロニクス社を連結子会社化するなど、事業ポートフォリオ改革に努めた結果、現在の売上高と営業利益は増加傾向となっています。
2.2025年5月期実績/2026年5月期予想 業績ハイライト
- 2025年5月期の決算は、下期後半に半導体製造装置向けやデバイス全般の需要が盛り返してきたものの、需要が落ち込む前の水準には至っていません。一方、インド市場向けのビジネスは好調が継続しており、国内の車載市場向けビジネスも想定どおり成長しました。AI市場の拡大により、PC・サーバ向け電子部品の所要も増え、売上高は前年度比5%増の1,562億円でした。
- 営業利益は、為替の影響と人的資本への積極的な投資により、前年度比16%減の39億9,000万円でした。経常利益も同じく16%減の30億5,000万円でしたが、親会社・株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の計上や税金費用の減少により17%増の25億2,000万円となり、売上高及び親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比で上回っています。
- 2026年5月期の業績予想は、現在の不透明な事業環境を鑑みつつも、売上高1,600億円、営業利益43億円の増収増益を見込んでいます。
- 2026年5月期予想のセグメント別売上増減要因について。産業インフラセグメントでは、昨年度に回復が遅れていた半導体製造装置向け制御機器が顧客内での在庫調整が終わったことで需要が回復し、今年度は9%増の316億円を見込んでいます。エンタープライズセグメントも同様に、調達マネジメントサービスやデバイス全般の回復により、16%増の527億円を予想しています。
- モビリティセグメントは、インド市場向けのビジネスは拡大する一方で、国内車載市場向けのビジネスが端境期を迎えるため、4%減少の399億円を見込んでいます。グローバルセグメントも、前年度に好調だったAI関係のハードウェアやPC・サーバ向け電子部品の需要は少し落ち着くことが予想されます。また、事務機器向けユニット製品は前年度に大幅に伸長したものの、今年度は生産減少に伴い10%減少の428億円を見込んでいます。
- 2026年5月期の営業利益は、前年同期比8%増の43億円で、四つのセグメントの全てで増益を予想しています。特に、産業インフラでは売上が8%、エンタープライズでは17%増加することから、営業利益もそれぞれ4億円、3億円の増益を見込んでいます。モビリティセグメントでは、国内車載市場向けビジネスは端境期により伸び悩むものの、インド市場向けビジネスの好調により営業増益を見込んでおります。なお、現時点でトランプ関税による顧客の生産計画や投資計画への直接的な影響は出ていませんが、市場や顧客の投資に対するマインドは慎重になっています。取締役会でも議論を重ねた結果、当社はリスクバッファとして5億円を見込み、営業利益は43億円で開示しました。
- 当社の配当方針は、配当政策を経営上の重要課題と位置づけ、株主還元と内部留保をバランスよく実施することを基本としています。経営状況の見通し等を総合的に勘案の上、親会社株主に帰属する当期純利益に対し、配当性向50%を目処として業績に連動した配当を実施することを目標としています。この方針に基づき、2025年5月期は通期の実績を踏まえ、前年度から6円増配し、年間配当86円としました。
- 2026年5月期は、配当方針ならびに通期の業績見通しを踏まえ、前年度より4円増配の年間配当90円を見込んでいます。
3.「中期経営計画2026」の進捗状況
・ 昨年度より「中期経営計画2026」を策定・実行していますが、2025年7月14日に開示したとおり、「中期経営計画2026」の経営指標を修正しました。トランプ関税や地政学リスク、インフレの影響、2025年5月期の実績などを踏まえ、2027年5月期の経営目標を売上高1,650億円、営業利益48億円に変更しました。なお、今回の「全社及び消去」には、5億円のリスクバッファを含めています。
- 「中期経営計画2026」のセグメント別事業戦略です。産業インフラセグメントでは、産業ロボットの活用や飼料タンク残量管理ソリューションなどの産業DXに取り組み、お客さまが抱える社会課題の解決に貢献してまいります。エンタープライズセグメントでは、ラインカードを拡充し、さまざまな顧客ニーズに対応します。また、特徴のあるネットワークセキュリティソフトを活用した再生可能エネルギーソリューションを提供し、持続可能な社会実現に貢献します。モビリティセグメントでは、モビリティの電動化・DX化でカーボンニュートラル社会に貢献します。また、インド市場でのビジネスを拡大し、成長するインド市場に貢献します。グローバルセグメントでは、新規顧客や新商材を発掘し、国内・海外のグループ会社へ展開し、シナジー効果を創出します。また、2024年に買収したオランダのMAGnetIC社の半導体回路設計ビジネスをグローバルに展開していきます。
4.事業戦略
- 当社の三つの事業戦略を紹介します。
@産業ロボットを活用した社会課題の解決
- 当社は、約4年前からロボット業界の大手である株式会社安川電機様の販売代理店として活動しています。当初から社会課題の解決策として、ロボットの活用を日本全国の工場・生産ラインへ推進してきました。最近では、労働人口の減少やDX活用の波を背景に、複雑な工程での活用や、匠の分野でのニーズが顕在化してきました。ロボットの活用領域は年を追うごとに拡大し、昨年からは作業要員とロボットがともに生産を行う「人協働ロボット」の導入が始まりました。さらに、人材紹介会社との協業により、人材派遣ならぬ“ロボット”派遣サービスのマーケティングを開始しました。
- 大規模な工場ラインは自動化が進んでいますが、日本全国の中小規模、複雑なラインの工場の自動化は、課題も多くまだまだ進んでいないのが現状です。当社では、お客さまの生産ラインへのコンサルティング営業に注力し、それぞれの生産特性に合ったロボットを導入することで、人手不足の解消や複雑・匠の分野で貢献しています。このロボットの分野で、2030年度には関連売上30億円を目指しています。
- 定型作業領域でのロボット活用事例です。導入後はコスト削減のみならず、工程全体の効率化が実現されています。工作機械への加工部品の供給・排出をロボットが行うことで、作業員は他の業務を行えるようになりました。その結果、効率化のみならず、コスト削減にも貢献しています。
- 工作機械メーカーでは、PCB基板分割装置への部品の供給・排出作業をしています。酒蔵では、仕上がったお酒の箱詰め工程などで活躍しています。自動車部品メーカーでは、製造工程での部品の移動作業などでロボットが活用されています。
- 匠・複雑な分野での導入事例です。立体物を他方面からチェックする外観検査、熱圧着など、熟練工が今まで行っていた匠の世界を自動化しています。自動車の塗装後の表面にムラがないかをチェックしたり、高熱での接着をロボットが実施したりしています。このように、大変危険かつ高度な技術が求められる工程でもロボットが活躍してくれます。こうしたロボットによる自動化が可能となる領域について、当社の営業担当がお客さまとともに検討・導入していくことで、労働力不足などの社会課題の解決に貢献しています。
A再生可能エネルギーソリューションプロバイダー
- 当社は、太陽光パネルやパワーコンディショナー、バッテリー、メンテナンスなどのアフターサービスを含め、再生可能エネルギーに関するトータルソリューションを提供するプロバイダーとしての取り組みを開始しました。現在、再生可能エネルギーの現場では、サイバーセキュリティリスクの問題が顕在化しています。当社では、世界最高水準のセキュリティ機能を、パワーコンディショナーやバッテリーといったハードウェアと組み合わせて、再生可能エネルギーソリューションとしてお客さまに提供し、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
- ここで、サイバーセキュリティシステムを開発したスカイ・エレクトロニクス社を紹介します。同社はAshar Aziz氏が米国フロリダで創業したソーラー&ストレージシステム企業です。
- 世界最高水準の高度なサイバーセキュリティを備えた独自のクラウドとゲートウェイを開発しました。創業者のAziz氏は、ネットワークセキュリティ、暗号化、データセンターの仮想化など、サイバーセキュリティ技術に関する80件以上の特許を保有し、技術的な先見性を持った先駆者として認められています。
- スカイ・エレクトロニクス社の「Sky Electric Secure Gateway(SSG)」は、日本・米国で今後必要となるサイバーセキュリティ対策の要件を全て満たし、さらにそれらを凌駕する業界最高水準のサイバーセキュリティ機能が搭載されています。当社はスカイ・エレクトロニクス社の販売代理店として、安全・安心な脱炭素社会の実現に貢献します。
BSMETによるインドビジネスの拡大
- グループ会社のSMETについて、直近の業績と今後のビジネス戦略を説明します。
- 2025年3月に終了した2024年度において、SMETは主要事業で素晴らしい業績を上げることができました。売上高は前期比37%増の1億7,100万米ドルとなり、主に産業分野とモビリティ分野の成長が牽引しました。営業利益は前期比55%増の400万米ドルで、SMETが継続して取り組んでいるビジネス戦略の成果が出ています。
- インドのスマートメーター市場は非常に好調で、2030年まで引き続き堅調に成長する見通しです。監視及び鉄道は新たに成長が期待できる分野で、ソリューションの展開に力を入れています。
- 2025年度は、売上高を1億9,200万米ドルと見込んでおり、営業利益率のさらなる拡大も予想しています。SMETは現在の事業戦略に自信を持っており、株主の皆さまに価値を提供し続けることに尽力してまいります。
- 次に、SMETの中期経営計画について説明します。2025年度(FY25)は、売上高が前期比で12%成長し、1億9,200万米ドルへの増加を見込んでいます。ソリューション事業の拡大により、2026年度(FY26)には、1億9,200万米ドルから2億2,800万米ドルへ、19%の成長を目指しています。2027年度(FY27)には3億1,400万米ドル、前期比38%増という大幅な成長を見込んでいます。これはソリューション事業の本格展開によるもので、SMETの将来の成長を牽引する最も大きな柱になると期待しています。
- SMETの市場でのポジションについて説明します。産業用スマートメーターは、SMETの売上の約40%を占めています。SMETはこの分野に最も早く進出し、信頼されているサプライヤーの一つです。Renesas製MCU、Tianma製LCD、EVE製バッテリーなどの主要部品をほとんど全ての大手顧客に供給しています。スマートメーター顧客の66%はSMETが提供する部品を70%程度搭載し、残りの34%の顧客も30%程度搭載しています。モビリティ分野では、当社の顧客であるOLA及びAtherはEV二輪車の市場シェアの約36%を占めており、SMETはこの2社に対して搭載部品の50%を供給しています。さらに、TVSやBajajへのデザインインを進めており、クラスターやモーター制御用パワーデバイスの部品を供給しています。
- Renesasはインドのモビリティ及び産業分野における主要なMCUサプライヤーであり、SMETはRenesas製MCUの販売で35%という大きなシェアを保持しています。これはSMETの強固な市場ポジションと長年のパートナーシップを示しています。
- 主力ソリューションを三つ紹介します。
列車向けインフォテインメント、セキュリティソリューション
・SMETは、最大16台のカメラに対応可能な堅牢なモバイルNVRシステムを開発しました。産業用イーサネットスイッチと5G通信モジュールをシームレスに統合し、モバイルネットワークでのリアルタイム映像伝送を実現し、車両内の監視やインフォテインメント用途に最適なソリューションです。
- 既に設計パートナーであるGEOCON経由で、A-APUL社及びRT Vision社からファーストロット受注を獲得し、SPARSH CCTV社も採用が確定しました。さらに、4社の顧客が評価の最終段階にあり、今後6カ月以内に確定受注を見込んでいます。
EVチャージャ−ソリューション
・ インドのEV二輪市場において、SMETはインド初となる国産設計のEV充電器を開発しました。現在、業界大手のAnevolve社では量産が既に進行中で、今後3〜6カ月以内に複数の顧客で製品販売が開始される予定です。
・ 当社は350Wから3.3kWまで、幅広い出力レンジの充電器を提供しています。次世代ソリューションでは、GaN(窒化ガリウム)技術を採用し、高効率化、小型化、熱性能の向上を実現する予定です。また、MOSFET、トランス、コンダクターといった重要部品の供給も行っています。
EVディスプレイクラスターソリューション
・ SMETのクラスターソリューションは、ベーシックな電子インクディスプレイから、中位グレードのTFTスクリーン、さらに高度なAndroidベースのスマートクラスターまで、さまざまな市場ニーズに対応しています。
- SMETはこれらのシステムにおいて90%の部品シェアを誇り、Tianma製TFT、Renesas製MCU、QuectelまたはQualcomm製MPU、LTEモデム、Macronix製フラッシュメモリなどの主要部品を供給しています。Androidベースのクラスターに関しては、外部パートナーと協業しながらアプリケーションを開発しています。
- 現在、複数のティア1サプライヤーと連携を進めており、この急成長分野での存在感を着実に拡大しています。
5.質疑応答
Q1.配当性向についてお聞かせください。
A1.当社では、配当性向50%を目処として実績に基づいた配当をしています。
Q2.同業他社はどこですか。また、貴社の強みは何でしょうか。
A2.当社は、新聞等では「半導体専門商社」というカテゴリーで載っており、この業界では株式会社マクニカ様が売上トップに立っています。その他、加賀電子株式会社様や株式会社レスター様など、上場している会社も相当数あります。 当社の強みは海外事業です。1968年に台湾に進出し、ホンハイやクアンタ、コンパルといったスマホやパソコンを作っている台湾の企業、韓国であればLG電子など、日本の企業が海外に出て行うビジネスではなく、インド、台湾、韓国のローカルの会社とビジネスを行っています。 また、半導体電子部品を幅広く扱ってきた経験をもとに、当社オリジナルのモジュール製品を作っていることも特徴の一つです。
以上
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