ラサ商事株式会社(3023)
開催日:2025年7月5日(土)
場 所:オービック御堂筋ビル 2階 『オービックホール』(大阪府大阪市)
説明者:代表取締役社長 青井 邦夫 氏
1.当社グループの概要
・ 当社は専門商社として、資源や産業機械を取り扱っており、一般消費財を扱っている会社ではありません。そのため、皆さまにはなじみの薄い会社だと思いますが、大阪地区との関わりでは、当社機械部門の主力商品である産業用ポンプのワーマンポンプは、神戸製鋼所様の加古川製鉄所や日本製鉄様の和歌山、堺の製鉄所のほか、住友金属鉱山様、三菱マテリアル様、さらには関西電力様、四国電力様、J-POWER電源開発様などに数百台単位で使用されています。その他のポンプについても、各市町村の水処理、下水処理、し尿処理場などで幅広く使われています。
- 資源部門の主力商品である鉱物資源のジルコンサンドは、耐火レンガ、セラミック、研磨剤などのメーカー様に納入しているほか、チタン原料を神戸製鉄所グループ様に溶接棒の原料として納入しています。
- ラサ商事の「ラサ」とは、沖縄本島の南東、約400kmにある「沖大東島」という島が、通称「ラサ島」と呼ばれていることに由来しています。この島で戦前、リン酸肥料の原料となるリン鉱石を採掘していたのがラサ工業であり、1939年に商事部門が分離独立し、子会社としてスタートしたのが当社、ラサ商事です。現在は独立系の商社として事業を営んでおり、2006年に東京証券取引所の第2部に上場、翌年の2007年には第1部に指定替えし、2022年の市場再編に伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。
- 大阪府此花区には、ラサ工業が経営していたラサ・スポーツセンターという複合施設がありました。1984年に閉鎖されましたが、関西で初めてお会いする方には「ラサ・スポーツセンターか」と言っていただくことが多いです。
- 次に、事業の変遷です。当社はもともと食糧や鉱物資源を扱う商社機能からスタートしています。牛肉、鮮魚、小麦などを扱っていましたが、独自性の高い分野へ経営資源を集中させるため、2009年に食糧分野から撤退しました。
- 一方、鉱物資源を取り扱う過程でオーストラリアとの関係が非常に深くなり、オーストラリアのワーマン社で開発されたワーマンポンプという産業用の特殊ポンプに着目し、日曹製鋼株式会社様(現在の大平洋金属株式会社様)との共同開発で商品化したことが、産機・建機関連事業を営む足掛かりとなりました。その後は単品の機械販売にとどまらず、その周辺機器、さらにはプラント設備を手掛けるような技術力を高め、下水汚泥関連、産業廃棄物関連、高炉の付帯設備である水砕スラグ製造設備などの環境設備関連事業へと拡大してきました。商社機能から機械メーカー機能、そしてプラントエンジニアリングへと事業範囲を拡大しており、この三つの事業は現在も主要な3本柱となっています。
- 当社は、2010年代にM&Aを二度行っています。2012年にイズミ株式会社を得たことで、新たに「化成品関連事業」と、同社が保有していた不動産を集約化した「不動産賃貸関連事業」の2事業が加わりました。さらに2014年には、旭テック株式会社の「プラント・設備工事関連事業」が加わり、現在、当社グループは6事業となり、「主要3事業」プラス「新3事業」という体制になっています。
- なお、イズミ株式会社につきましては、経営資源の集約、管理部門の組織の効率化を図るとともに、営業面での連携強化、コンプライアンス・リスク管理の強化を推進することを目的に、2024年4月に当社を存続会社として吸収合併しています。
2.事業の概要・特徴
・ 資源・金属素材関連事業の主力商品は、ジルコンサンドです。ミネラルサンドと呼ばれる天然の鉱物資源で、「熱に強い」「重い」「硬い」という特性があります。この特性を活用し、半導体素材であるシリコンウエハーの表面加工用の研磨剤として日本国内で最も多く使われています。その他、煉瓦の原料である耐火物材料、鋳物の資材、ファインセラミックス(陶器)等の用途として供給しています。セラミック業界では釉薬の原料などにも使用されており、トイレや洗面台などの衛生陶器の白い色には、ジルコンサンドを主成分とした上薬が使われています。
- ジルコンサンドは、オーストラリアと南アフリカが二大生産地で、特にオーストラリアは世界の生産量の約4割を占めています。その中でも当社は、世界最大の生産量を誇るアイルカ社と日本における総販売代理店契約を締結しており、ジルコンサンドの国内シェアの50%前後を占める、シェアナンバーワンの企業です。
- 産機・建機関連事業では、国産の機械と輸入の機械の両方を扱っています。ポンプには、一般的な水を送るポンプから、スラリーといって砂利や石ころなどが混ざった液体を送るポンプまでさまざまありますが、当社は対摩耗性、対腐食性に優れたスラリーポンプの分野を得意としており、国内シェアナンバーワンを争っています。
- 中でも、1958年の販売開始当初から60年以上にわたって主力商品であり続けているのが、ワーマンポンプです。もともとは、オーストラリアの鉱山技師、Charles Harold Warman氏によって開発された鉱山向けの特殊ポンプですが、鉱石が混ざった流体を送るなど、非常に過酷な環境での使用に適合し、なおかつ取り扱いが簡単で長持ちすることから世界中に広まっているポンプです。
- 当社はこのワーマンポンプの特性に注目し、国内に導入しました。日本の金鉱山や銅鉱山はほとんど廃坑になっていますが、鉱山以外の用途開発も行い、現在では製鉄、非鉄金属、電力、精密機器、電子、半導体、セラミックス、食品など、国内外で3,000社あまりの企業に納入実績があります。その他にも国内、海外ともにさまざまな商品があり、その多くは国内・海外メーカーと独占販売権を締結した上で販売しています。
- 環境設備関連事業は、「商社」という枠組みを超えて、大型のプラント設備などの設計から建設、運転サポートまでを一貫して提供しているのが特徴です。そのため、当社は商社でありながらエンジニアリング部門を保有しています。
- 現在の主力商品は、製鉄業界においてラサ・システムとして世界的にも知られている水砕スラグ製造設備です。製鉄所では、高炉に鉄鉱石とコークスを入れて、ドロドロに溶かして「銑鉄(せんてつ)」という鉄鋼原料を作っています。鉄鉱石には、酸化カルシウムとシリカという鉄分以外の成分が含まれており、製鉄の過程で「スラグ」と呼ばれる溶岩のような状態の副産物が発生します。以前は埋立処分するしかなかったのですが、当社のラサ・システムを用いて砂状の物質にすることで、路盤材やセメント原料などに再利用され、環境に配慮された設備となっています。
- 溶岩状になったものを粉砕して砂状にするには大きなエネルギーが必要ですが、ラサ・システムはスラグが固まる前に水で砕くことで、少ないエネルギーで変換することができます。製鉄所において必要不可欠な設備となっており、当社は国内大手の全ての鉄鋼メーカーに納入実績があります。
- 化製品関連事業は、2012年にM&Aによりグループ化したイズミ株式会社が担ってきた事業で、自動車分野や建材分野、工作機械分野などの幅広い業界に多種多様な合成樹脂や化学製品を提供しています。取扱商品は、電線被覆用や建材用途向けの合成樹脂、ワイヤーハーネスに使用される特殊な電磁波を遮蔽するシールドテープ、粘着テープやグリースなどに使用する油脂類、及びそれらに付随する商品を販売しています。
- プラント設備工事関連事業は、2014年にM&Aによりグループ化した旭テック株式会社が担っている事業です。同社の活躍の舞台は、東京湾の千葉県側の海岸部に広がる「京葉臨海コンビナート」で、お客さまの多くはこの地区で活動している大手企業の工場です。エリア内の石油化学、石油精製プラントの配管工事において設計・施工からメンテナンス工事まで、一貫した対応を行っています。
- 旭テックは約4万平方メートルの自社工場を保有しており、プラント工事で使用する各種配管を事前に組み立てるプレハブ加工や、鋼材・製缶品の加工、ポンプのメンテナンスなども行っています。
- 不動産賃貸関連事業は、所有不動産の有効活用を事業の目的として、子会社のラサ・リアルエステート株式会社が企画、運営、管理を行っています。イズミビルと、2011年に当社が建設したRASA日本橋ビルの2棟の賃貸オフィスビルを保有しており、現状どちらも満室の状態です。
3.当社グループの強み
・ 当社が考える五つの強みについて説明します。
- 一つ目は、ニッチ市場における“トップシェア”を構築していることです。資源・金属素材関連では、ジルコンサンドが国内シェアの約50%を誇り、産機・建機関連ではスラリーポンプが国内シェアナンバーワンを競っています。中でもワーマンポンプはあらゆる業界から絶大な支持を得ており、環境設備関連では、水砕スラグ製造設備のラサ・システムが業界内で広く知られ、建設、運転サポート、メンテナンスまで一貫して提供できるのは、世界でも当社を含めて数社しかありません。ニッチな分野ではありますが、トップシェアを持つことは当社が必要とされる分野を確立し、収益の安定性を確保する原動力となっています。
- ジルコンサンドは、オーストラリアの世界トップ企業であるアイルカ社と契約し、高品質な商品を扱っています。ジルコンサンドは天然資源のため、定期的に供給不安を引き起こし、需要と供給のギャップが発生する素材ですが、国内在庫を保有することで安定供給を実現しています。都度輸入している他社と違い、需給バランスが崩れたときも国内在庫を保持することで、お客さまに大変喜んでいただいています。
- ワーマンポンプは対摩耗性・対腐食性に強い商品です。また、普通の水ポンプは金属のケーシングの内側に液体が通りますが、ワーマンポンプは二重構造になっています。液体が通る部分には特殊な金属やゴムで製造したライナーが入っているため、摩耗や腐食してもライナーを交換すれば使用でき、長寿命という特徴があります。2011年に発生した東日本大震災では、多くの納入先の工場が被災し、修理が必要なポンプが関連会社の太平洋機工株式会社に戻ってきました。その多くは1960年〜1970年代に製造されたもので、その当時で既に40〜50年間も利用されているポンプでした。今で言えば納入当初から60年間稼働しているポンプで、非常に長寿命となっています。
- 二つ目の強みは、「商社の枠組み」を超えた技術・ノウハウが蓄積されていることです。それを支えているのは、「提案型営業力」だと考えています。商品の販売においては、代理店を介さず常にお客さまと直接の接点を持つことで、新たなニーズや課題を把握できるようにしています。
- 当社の営業担当者は、小型ポンプであれば自力で分解・点検ができるように研修を受けています。工場の工務担当の方々から、当社製品だけではなく他社の設備や機械の問題点についても話を伺い、自分の目で問題のある設備を確認することで、より具体的な改善や改良ができる製品を提案することができます。最近は、各取引先様のセキュリティが厳しくなり、営業担当者が現場に入って作業する機会は少なくなってきましたが、当社から稼働しているポンプの点検などを提案し、点検後にポンプの状態を報告した上で、必要に応じてメンテナンスを行っていただくなど、予防保全に取り組んで当社製品の信頼度を高める努力をしています。
- 三つ目の強みは、一貫した対応が可能な技術力です。当社が取り扱う商品は、非常に特殊なものばかりです。したがって、導入に当たっての設計・施工からその後のメンテナンスまで、当社が責任を持って対応することが必要不可欠です。特に当社では、国産の機械に加えてドイツから輸入するポンプも取り扱っており、この輸入した機械に関しては、お客さまにとっては当社がメーカーの立場にあたる存在です。トラブル発生時は、ドイツから技術者を呼んで対応している時間的余裕がないため、当社の技術者がさまざまな問題を迅速に解決せざるをえない状況です。このような対応や改善の歴史により、技術力を培ってきました。さらに、自社工場を持ち、回転機の保守やメンテナンス業務を行う旭テックが当社グループに加わったことで、強みがさらに強化されています。
- 四つ目の強みは、充実した社員教育です。人材面において、機械関連部門に在籍する営業職及びエンジニア職の5分の1は、理工系の学部や大学院の卒業者が占めています。営業担当者にも技術的な知識と技能を持たせることに努めており、社内教育や研修会を行うほか、毎年数名の若手社員をドイツやオーストラリアのメーカーに派遣し、研修を行っています。
- 今年は6月にオーストラリアのポンプメーカー、Weir Minerals Australia社に当社から5名、グループ会社から2名を派遣し、約7日間の研修を行いました。こうした海外研修を通して、製品に対する海外との考え方の違いや新たな発見等を若い社員が経験することによって、今後の営業や商品開発に生かせると考えています。
- 五つ目の強みは、健全な財務体質です。有利子負債は圧縮傾向にある一方で、純資産は着実に積み上がっています。2025年3月期は現預金が有利子負債を上回り、2021年3月期の自己資本比率は2%でしたが、直近の2025年3月期では65.7%に上がっています。今後も着実にキャッシュフローを積み増し、M&Aを含め将来の成長に向けた投資に適時、的確に実行し、株主の皆さまへの還元についても積極的に行いたいと考えています。
4.当社グループの成長戦略
- このたび、2025年度から2027年度までの3カ年を計画期間とする中期経営計画「“Step Forward”Rasa 2027 〜成長のステージへ〜」を策定し、5月14日に公表しました。企業理念の追求と長期ビジョンの実現に向けた三つの中期経営計画は、2025年3月末で「STEP-1」が終了し、4月1日より「STEP-2」がスタートしました。「成長のステージへ」をテーマに、前中期経営計画で強化を図ってきた経営基盤のもと、新たな成長のステージへの一歩を進めていきたいと考えています。
- 弊社の長期ビジョンに基づき、新中期経営計画では三つの重点施策を掲げています。
- 重点施策の一つ目は「新規・成長分野への取り組み」です。新規分野では、伸長している海外マーケットの重点エリアにおける販売体制の強化など、新しい取引先や商品の開拓に取り組んでまいります。当社は輸入販売が主体ですが、建設機械関連は輸出取引がメインであり、東南アジアやインドを中心に今まで以上に販売体制を強化していきたいと考えています。また、既存の取引先様への取引アイテムの拡張として、レアアースの開拓に向けた市場調査や販路開拓を進めていきます。
- 成長分野としては、これまでM&Aはコンサルや証券会社、銀行などからの紹介で検討していましたが、営業本部・管理本部合同の「M&A推進委員会」を設置し、当社グループが成長できる分野の事業や、グループシナジーの発揮が期待される分野を自分たちで探していき、主体的なM&A案件発掘への取り組みをより積極的に進めます。
- 重点施策の二つ目は「既存領域の深耕」です。既存事業の効率化や深掘りなどによって成長を目指していきます。
- 重点施策の三つ目は「サステナビリティ経営の推進」です。当社グループでは社会インフラに関わる事業に取り組んでおり、社会・環境課題へ一定程度、貢献しているものと自負しています。一方、昨今はESGへの意識を持ちつつ、持続可能な社会の実現に貢献することがさらに求められ、当社グループとしても引き続きサステナビリティへの取り組みを強化していきたいと考えています。
- 新中期経営計画の最終年度となる2027年度は、営業利益、経常利益、当期準利益の全てにおいて過去最高益となる計画を立てています。経営指標については、前中期経営計画の数値を上回る目標としており、資本の効率的な活用、本業の収益力強化を図り、ROE(自己資本当期純利益率)は10%以上、売上高営業利益率は9%以上を目標としています。
- 投資方針は、財務の健全性に配慮しつつ、企業価値向上に資するM&A案件に機動的に対処するとともに、将来を見据えた能力増強や業務効率化に資する投資も併せて行ってまいります。
5.株主還元方針、配当、株価など
- 株主の皆さまへの利益還元については、重要な経営課題の一つと認識しています。「配当性向は引き続き40%前後」の水準を維持し、機動的な自己株式の取得も行い、新たに「総還元性向50%以上」に設定しました。
- 2025年3月期は、年間配当が72円、配当性向が9%でした。2026年3月期については、現時点で年間配当72円、配当性向は38.4%を予想しています。
- これまでの配当実績です。当社は2006年2月の上場以来、安定配当を目指して2012年3月期以降、配当性向を段階的に高めてきています。2023年3月期からは配当性向を40%前後へ引き上げ、さらに2026年3月期からは「総還元性向50%以上」といたしました。これからも株主の皆さまの価値の極大化に努め、業績の成長を通じて、増配や配当性向の引き上げを実現できるように取り組んでまいります。
- 当社の株価は、昨日の終値で1,440円です。昨日終値ベースの予想配当利回りは5%、PBRは73倍、PERは7.58倍となっています。
6.質疑応答
Q1.株主還元について、配当性向の目安を40%前後とした根拠を教えてください。
A1.当社は、株主の皆さまへの長期的な利益還元を重要な経営課題の一つと考えており、企業の体質強化や今後の事業展開、内部留保の充実などを勘案した上で、2023年3月期から配当性向を40%前後に引き上げました。直近の2025年3月期では、自己資本比率が65.7%となり、実質無借金経営となりましたので、内部留保も実質2011年以降、14年連続で減配していません。今年度の中期経営計画では、新たに株主還元方針に「総還元性向50%以上」を追加し、今後も株主還元の強化に努めてまいります。
以上
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