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日本製鉄株式会社(5401)

開催日:2025年5月25日(日)

説明者:コーポレートコミュニケーション部 部長 金子 雄一郎 氏

 

1.はじめに

・    2025年5月24日(米国23日)、米国のトランプ大統領が当社とU. S. Steelとのパートナーシップを承認する意向をSNSで発信しました。トランプ大統領のご英断に心より敬意を表します。当社の提案は、米国の労働者、鉄鋼業、そして国家安全保障を守るというトランプ政権のコミットメントと合致しており、当社とU. S. Steelとのパートナーシップは、U. S. Steel、ステークホルダー、米国の鉄鋼業・製造業全体にとって画期的な転機となるものと考えています。

  • 一方で、U. S. Steelへの投資計画についてさまざまな報道がされていますが、これらは当社が発信したものではありません。現時点でコメントは控えたいと思いますが、今後、公表すべきタイミングでご説明してまいります。

 

2.当社の経営概況

事業環境

・    世界全体の鉄鋼需要は、2020年をピークに横ばい、あるいは微減という状況です。その中で、中国からの鋼材輸出が近年急増し、過去最高水準を突破しています。中国の鉄鋼需要が減少する一方で、粗鋼生産は高いレベルが続き、需給ギャップが拡大することで大量の余剰鋼材が輸出に向かっています。中国は、高度成長期が終わり、人口が減少していく状況で、これまで伸び続けてきた1人当たりの鉄鋼需要も先進国並みに下がってくるという局面を迎えており、需要規模の減少は避けられません。

  • 一方、鉄鋼生産は雇用維持の観点から能力削減や減産がしづらい状況にあり、需給ギャップと大量輸出の問題を解消する見通しが立っていない状態です。中国から安値で大量の鋼材が輸出されることによって、アジアの鋼材市況が低迷し、その結果、鋼材マージンは過去平均レベルを100ドルも下まわる状況となり、世界の鉄鋼メーカー全体の収益に対して約30兆円の下押し要因になっています。
  • 国内の鉄鋼需要も2014年以降、右肩下がりになっています。人口減により内需は減少が続き、自動車・機械などの最終製品の輸出についても、各国の保護貿易化等の動きもあって減少しています。

2024年度実績・2025年度見通し

  • このような厳しい中でも、当社は高い収益を維持しています。実力ベースの連結事業利益は、2021年頃から高水準が続き、2024年度は未曾有の厳しい事業環境となる中で7,937億円という高水準を上げることができました。一過性利益などもあり過去最高となった2023年度の9,350億円を別にすれば増加基調が続いています。
  • 当社は早い時点から厳しい経営環境を想定しており、2020年2月に生産設備構造対策、2021年3月に中長期経営計画を公表し、収益構造の強化に取り組んできました。いかなる環境下でも、実力利益6,000億円以上を確保する収益構造を構築することを目指し、2021年度から6,000億円を大きく超える利益を継続して確保しています。世界の主要鉄鋼メーカーが2021〜2022年をピークに右肩下がりになっている中、当社は安定して高位を維持しており、2024年4-6月以降は世界トップレベルの収益力となっています。
  • 2025年度の業績は、既に着手していた成長戦略の効果発揮により9,000億円以上が狙えると考えていましたが、環境がさらに悪化していく中7,000億円以上は確保できる見通しを持っていました。しかし、米国の関税政策が次々と打ち出され、今後の動向や業績への影響は極めて見通しづらい状況になりました。そこで、米国関税政策の影響を最大限見積もったとしても6,000億円以上の事業利益を確保できることを確認する意味で、三つの保守的な影響を想定しました。
  • 一つ目は、当社の米国向け鋼材輸出への影響です。米国への輸出量は全体の1.5%に当たる50万トン弱で、多くはありません。しかもその内容は、高合金シームレス鋼管、高強度レールといった米国では生産が難しい高付加価値製品のため、関税がかかっても直ちに受注が減ることはないと考えていますが、関税相当を当社側で負担する場合を想定しました。
  • 二つ目は、間接輸出です。当社が製造業のお客さまに販売した鋼材が自動車や機械などの最終製品として米国に輸出されているケースです。自動車関税や相互関税によって輸出が難しくなるため、米国への最終製品の輸出が下期にゼロになるという、かなり保守的な想定を置いて影響額を考えました。
  • 三つ目は、日本以外から米国に輸出されいている鋼材に対する鉄鋼関税の間接影響です。鉄鋼関税がかかることでさまざまな国が米国に鋼材を輸出しにくくなり、輸出先が他の地域に変わることが想定され、アジアマーケットにも鋼材が流入する懸念がありますし、日本に対しても輸入材のプレッシャーが高まります。為替も円高に振れていることから、輸入材の価格競争力が高まってくることに伴い、日本の鋼材市況が下落するという影響を想定しました。
  • このような最悪のケースを想定し、米国の関税影響は1,000億円程度の業績下押しになると想定しましたが、これらを織り込んだ場合でも6,000億円以上の利益は確保するというミニマムレベルの数字を公表しました。当然6,000億円以上の水準で満足することなく、今後の環境変化も見据えながら、さらに上を目指して収益の底上げに取り組んでまいります。
  • U. S. Steelの件は、トランプ大統領がSNSで発信されていますが、まだクロージングしていないため、6,000億円以上という見通しにU. S. Steelの利益貢献は織り込んでいません。仮に6月にクロージングした場合、2025年度には9カ月分の利益(現在のアナリストの予想に基づけば1,000億円程度)が連結されます。

 

  • 株主還元

 

  • 2024年度の年間配当は160円(期末配当80円)で6月24日の株主総会にお諮りしたいと思います。
  • 2025年度の配当は、現時点では実力利益6,000億円以上という見通ししか出せていない状況、かつ、実力利益の外数で構造対策に伴う一過性の損失等もあり、当期利益は昨年より減少せざるを得ないという見通しを持っています。当社は当期利益の30%程度を配当で株主還元するという方針のため、単純に当期利益の想定に適用すると60円程度の配当になってしまいますが、2025年度は2021年からの中長期経営計画の最終年度となることもあり、2021年〜2025年度の5年間の配当性向の平均が30%になるようにという考え方を適用し、120円を予定させて頂きました。前年度の160円から減配となってしまいますが、環境変化を見極めながら、少しでも利益を底上げしていけるように努力してまいります。

 

4.当社の成長戦略

  • 当社は国内製鉄事業の再構築により競争力を強化し、幅と厚みのある事業構造に進化していこうとしています。「幅」とは地域的な広がりで、海外事業を拡充していきます。また、「厚み」として、川上の原料、川下の流通・加工も自らの事業領域としていくことで付加価値を高めていきます。
  • 国内では、生産設備構造対策によって、生産能力を20%削減することで固定費を削減しています。中国の影響で輸出が困難になっていく中で、数量が減っても適正な稼働率で利益を確保する構造を作っています。
  • 注文構成の高度化については、世界の同業他社に比べて優位な高付加価値製品にシフトし、その価値に見合った価格・適正マージンを実現する戦略を取っています。こうした一連の施策によって、国内製鉄事業の損益分岐点を4割引き下げることに成功しています。
  • 海外事業の深化・拡充については、中国からの影響を受けにくく、高級鋼の世界最大の市場である米国、インド、ホームマーケットであるアセアンなどの地域で事業を拡大していきます。
  • 原料自山鉱比率の向上については、原料の市況は中国の需給影響で大きく変動していますが、原料権益への投資を拡大し、その利益によって市況変動に左右されにくい収益構造を作っています。
  • このような成長戦略に沿って、既に多数の施策に着手し、成果を上げています。今後成果が発揮されるものや、資料に書いていない施策もあります。現在は次期中長期経営計画の策定に着手をしており、年内には公表できる予定です。計画策定の中で、個別の施策で成案化できたものについては、計画全体の公表を待たずに、足元から実行してまいります。
  •  

5GX(グリーントランスフォーメーション)の取り組み

当社のCO2削減シナリオ

  • 気候変動問題への対応は当社の重要な使命だと考えています。一方で、社会基盤を担う素材である鉄の持続的提供という社会的使命も背負っています。そして株主の皆さまには、「企業価値を持続的に成長させる」という使命も担っています。ただ、気候変動対応でCO2が削減できても、会社が潰れてしまっては元も子もないので、経済合理性に基づいて気候変動対応を実行していく必要があります。
  • 当社は、2030年のCO2排出量30%削減と2050年カーボンニュートラルを目標に掲げています。この二つの実現に向けて、技術の開発と実装が必要であるとともに、経済合理性を持たせるためにGXスチール市場の形成が必要だと考えています。GXスチールとは、グリーンスチールとも言われますが、CO2を発生させずに製造された鉄のことです。2050年には当社の全ての製品をGXスチールにしていく予定です。
  • 技術の開発・実装に向けて大きく二つの取り組みをしています。電力業界における再生可能エネルギーや原子力発電、自動車業界におけるEV(電気自動車)といった既存の脱酸素化技術は、残念ながら鉄鋼業にはありません。開発中の技術もこれ一つで万能というものはありません。したがって、当社は三つの超革新技術を開発・実装していく複線的アプローチを取っています。
  • カーボンニュートラル化には、大量の水素やグリーン電力などの脱炭素エネルギーが必要になるため、政策としての社会インフラ整備がされるように働きかけを行っています。
  • GXスチール市場形成についても、GXスチールの販売価格においてCO2削減価値がきちんと評価されたルールが必要になるため、マスバランス方式を提唱しています。
  • 技術開発の実装のためには巨額の投資が必要で、コストも上昇していく中で、経済合理性が成り立つためには、府による支援とGXスチールの市場形成が必須です。
  • 鉄鋼業でどのようにCO2が発生するかを説明します。鉄鋼業は電力業と並び最も多くのCO2が発生している産業ですが、発生のメカニズムは他の産業と少し異なります。鉄鋼業は化石燃料を燃やしてCO2が出るわけではなく、石炭を使って鉄鉱石を還元するために発生しています。自然界に存在する鉄鉱石は、酸素と結びついて酸化鉄(Fe2O3)となっており、酸素を取り除かなくてはいけない。いわゆる還元反応を起こさなければいけませんが、還元を大規模に行うには炭素を使った方法しかありません。したがって、炭素と鉄鉱石が結合してCO2が発生します。
  • 鉄鋼生産プロセスは、使用する原料、還元に用いる材料、プロセスによっていくつかのルートが存在します。既存プロセスは三つあります。一つ目は高炉−転炉ルートです。高炉という大きな炉の中で、鉄鉱石と還元材の石炭を入れて、還元され液体となった鉄を取り出して転炉で精錬するプロセスです。二つ目は電炉ルートです。高炉−転炉プロセスで作った鉄が寿命を終えてスクラップ(屑鉄)になったものを電炉で溶解し精錬をするプロセスです。三つ目は直接還元・電炉ルートです。直接還元炉という小規模の炉で天然ガスを使い、かつ鉄鉱石を固体のまま還元し、その個体となった還元鉄を電炉で溶解し精錬するルートですが、いずれもCO2が発生するため、これらを脱炭素化するために開発中のルートが二つあります。
  • 一つ目は、高炉で用いる還元材の石炭の一部を水素に転換することでCO2を削減するルートです。二つ目は、直接還元炉で用いる還元材を天然ガスから水素に転換して削減するルートです。ただ、この二つのルートには制約があり万能ではありません。高炉で水素還元を行う方法では、石炭の全てを水素に置き換えることができないため、CO2の発生が一部は残ってしまいます。この残るCO2を分離・回収して地中に埋める、あるいは化学反応によって資源化するといったCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・利用・貯留技術)のプロセスも同時に使う必要があります。
  • 水素直接還元・電炉ルートは水素還元高炉よりもCO2を作成することができますが、制約があります。今、直接還元プロセスで使う鉄鉱石は、非常に高品位の鉱石(世界の鉄鉱石資源の5%〜10%)でなければできないため、残念ながら世界の鉄鋼生産を全てこのプロセスにすることは不可能です。電炉スクラップ溶解プロセスは、スクラップをリサイクルすることには優れていますが、スクラップは鉄鉱石と違い、掘れば出てくるものではありません。発生量は年々増加していますが、限りがあるためスクラップだけで世界の鉄鋼需要を満たすことは当分不可能です。また、スクラップを溶かして製鉄する場合、さまざまな不純物が混ざっています。電炉で溶解するときにできるだけ不純物を除くのですが、全ては取り除けないために鉄の品質が悪くなってしまいます。残念ながら、当社が得意としてこれから需要が伸びる高級鋼は、電炉スクラップ溶解から作ることはできません。

技術開発〜実装

  • 当社は、現状の高炉と石炭を使った還元プロセスから、原料、還元材、プロセスを転換することによって三つのルートを採用する複線的アプローチをとっています。
  • 一つ目は、既存プロセスであるスクラップの電炉による溶解です。今は作れませんが、ここで高級鋼を作っていけるような技術を開発しています。二つ目は、直接還元・電炉ルートです。今は天然ガスですが、これを水素で行う技術を開発していきます。また、高品位の鉄鉱石だけではなく低品位のものも使えるようにしていくことにチャレンジしています。三つ目は、高炉の還元材の一部を炭素に置き換えていくプロセスです。
  • 大型電炉での高級鋼製造、水素による還元鉄製造、高炉水素還元という三つの超革新技術を開発・実装化していきます。早いものは2008年から着手し、着々と進捗しています。

大型電炉での高級鋼製造

  • 一つ目の大型電炉での高級鋼製造。開発のポイントは、生産性課題を解決するための電炉の大型化と、品質課題を解決するための高級鋼の製造です。生産性課題とは、高炉と電炉の規模の違いの問題です。当社の高炉は1基あたり年間400〜500万トンの生産ができますが、今世の中にある電炉は、平均で約70万トン程度の生産規模しかありません。現在、製鉄所の下工程は高炉での生産を前提に作られています。高炉から電炉に切り換えた際に、下工程を継続して使い続けるためには、新たに導入する電炉を高炉と同じぐらいの生産性にしていかなければいけないため、大型化が必要です。

 

・ 大型化と高級鋼製造の二つの軸で技術開発を進めていますが、高級鋼については2022年に瀬戸内製鉄所広畑地区に電気炉を新設し、世界初となるハイグレード電磁鋼板の製造・供給に成功しています。2029年までに2基目の電炉を増設することも検討中です。

  • 大型化については、2025年に茨城県の波崎研究開発センターに試験用の電炉を設置し、既に試験を開始しています。この成果を八幡製鉄所に造る大型電炉に導入し、2029年までに実機化させる予定です。
  • 九州製鉄所八幡地区は日本の大規模製鉄、近代製鉄の発祥の地です。ここのシンボルが高炉だったのですが、今は一基残った高炉を電気炉に転換していくという一大プロジェクトを行っています。単に高炉を止めて電炉に置き換えるだけではなく、ヤードから輸送設備、電力設備、製鋼工場の改造も含めて、八幡地区の総面積の5割を作り変える大規模なプロジェクトで、2029年の完成予定で検討を進めています。

水素による還元鉄製造

  • 二つ目の超革新技術は、水素による還元鉄製造です。現行技術で使っている天然ガスを水素に転換し、高品位の鉄鉱石しか使えないプロセスを低品位でも使えるようにしていきます。現状の技術では、低品位鉄鉱石を使用した場合には、生産性、安定操業、還元鉄の品質に重大な影響が出るといった課題があります。さらに水素による還元反応は、天然ガスや石炭による還元と違い吸熱反応になってしまいます。したがって、還元反応を継続的に起こすためには熱の補償が必要です。
  • さらに、鉄鉱石が還元の途中で粉化し、粉が下に行くにしたがって固まってしまい、炉が詰まるという課題があります。したがって、より低品位鉄鉱石を使えるようにすること、還元材を天然ガスから水素に置き換えていくこと、この二つの軸で技術開発を進めています。2022年から千葉県富津市の研究開発センターに設置したベンチシャフト炉で開発を進めていましたが、2025年度は波崎研究開発センターにてスケールアップした直接還元炉の試験炉を設置し、試験を開始予定です。2040年頃には技術を完成させ、導入していきたいと考えています。
  • 低品位鉄鉱石を使う技術の開発だけではなく、高品位鉱石の確保にも取り組んでいます。カナダ東部のKami鉄鉱石鉱山は高品位の鉄鉱石が産出される可能性が高く、FS(フィージビリティスタディ)に着手しています。

高炉水素還元

  • 三つ目の技術は、還元材を石炭から水素に転換していく技術です。課題の一つは熱課題で、水素還元が吸熱反応になってしまうために炉内の温度が低下し、反応が持続しない、鉄が溶けないことがあります。もう一つは水素課題です。水素は加熱しなければいけませんが、爆発の危険性があるため扱いには非常に高度な技術が必要です。
  • 当社では水素を活用する技術、そしてそれをスケールアップしていく技術開発に取り組んでいます。東日本製鉄所君津地区構内の試験炉において、世界最高水準であるCO2排出量43%の削減を実現しています。これをブラッシュアップするとともに、試験炉を400倍にスケールアップした際にも実用化できるような技術の開発に取り組んでいます。こちらも2040年頃までに実現したいと考えています。

脱炭素エネルギー・原料確保とインフラ整備

・    上工程で発生する排熱や副生ガスを活用し、無駄なくエネルギーを利用するシステムを作り上げ、高いエネルギー効率を誇っています。しかしながら、一部には外部燃料や購入電力も使っているため、これらを非化石燃料化、グリーン電力化していく必要があります。さらに、直接還元炉での水素使用や高炉水素還元での水素使用を含めると、カーボンニュートラルを実現するためには、当社だけで年間400〜500万トンの水素が必要です。コストも重要ですので、大量の水素の安定供給、低価格での供給といったインフラ整備が必要です。

GXスチールの市場形成

・    当社には「NSCarbolex Neutral」「NSCarbolex Solution」という二つのブランドがあります。「Neutral」は鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出削減量を割り当てたGXスチールです。お客さまからも早く供給してほしいといったご要望がありますが、完全なカーボンニュートラル化には時間がかかるため、2050年までに実現する予定です。

  • トランジション期において行っているのが、「マスバランス方式」によるGXスチールの供給です。例えば10%のCO2を削減したら、当社が販売する製品の10%分をCO2が発生しない製品だと見なそうという考え方です。さらに言えば、GXスチールが欲しいというお客さまに鋼材を供給する製鉄所とCO2を削減する製鉄所が一致するとは限りません。したがって、CO2の削減量を全社でプールし任意の製鉄所、任意の製品に割り当てるマスバランス方式によって、お客さまにいち早くGXスチールを供給することができます。
  • こうした考え方をより標準化していくために、日本鉄鋼連盟、世界鉄鋼協会のガイドラインへの導入を当社主導で進めています。鉄鋼業に限らず、ISOやGHGプロトコルといった他業界を含む世界標準にもこの考え方を広げていくために積極的に取り組んでいます。
  • 当社のGXスチールの採用も進んでいます。これまではスポット的な利用が多かったのですが、量産車や継続前提の事例も含めて採用が広がっています。
  • 一方で、脱炭素化に向けて巨額の研究開発費と設備投資が必要です。操業コストも従来プロセスに比べて上がることは避けられず、投資回収の予見性が必要です。そのためには、まずGXスチールのコストを「CO2削減価値」として価格に反映させる。そうなれば、お客さまは当然、素材である鉄の価格の上昇を自動車や電気製品などの最終製品にも価格転嫁して反映していくでしょう。つまり、CO2削減に要するコストをGXスチールの価格、最終製品の価格として社会全体で負担をしていくことが必要になります。
  • それらをスムーズに進めるためには「CO2削減価値の見える化」を行い、GXスチールによってどれだけのCO2が削減されるのか、それを使ったお客さまの最終製品はどのぐらい削減をしているのかを測定し、表示する制度が必要です。
  • インセンティブも必須です。GXスチール、あるいはGXスチールを使用した最終製品の価格は上げざるを得ません。しかしながら、機能は従来と変わりません。使用価値が同じにもかかわらず、価格を払う。CO2の削減に価値を認めて、それに価格を払うことに対するインセンティブ・メカニズムがないと進まないため、こうした制度の導入についても働きかけを行っています。
  • その成果として、グリーン購入法の見直しやGX鋼材使用車に対する補助金の加算措置など、制度の具体化が既に始まっています。今後も公共調達におけるさらなる需要創出、民間企業におけるGXスチールの調達の拡大、そして投資家・金融機関等から投融資先に取り組みの促進を求めるようなエンゲージメントを連携していくなど、さらなる課題に取り組んでいきたいと考えています。そして、国際標準化や需要業界の標準化に向けて一層取り組みを進めてまいります。
  • これらの課題に全力で取り組み、カーボンニュートラルの実現を目指してまいります。同時に、総合力世界No.1、時価総額世界No.1の鉄鋼メーカーになれるように企業価値の向上にも取り組んでまいります。投資家の皆さまには、ぜひ中長期的な観点で当社の応援をよろしくお願いいたします。

 

6.質疑応答

Q1.総会に株主提案が出ていますが、内容を教えてください。

A1.今日ご参加の皆さまには、3月末以前から当社の株主でいらっしゃる方もいると思います。6月24日の株主総会に先だって招集通知を開示しましたが、今回は六つの議案のうち、第4号議案、第5号議案、第6号議案は機関投資家の方から頂いた株主提案です。 第4号議案は、定款変更(子会社管理)に関する条項を入れるという内容です。第5号議案、第6号議案は役員報酬に関わるもので、株式報酬の導入と、取締役の報酬を一部没収するクローバック条項といった提案を頂いています。 第4号議案の定款変更(子会社管理)につきましては、上場子会社の管理など、取締役会で審議した内容を開示せよという提案になっています。当社は子会社管理も含めてさまざまなガバナンス体制を実行し、取締役会も含めた審議をしっかり行っています。また、審議のあり方についてもコーポレートガバナンス報告書や統合報告書において開示しています。 ただ、株主提案は審議の仕方についてもこと細かに定めており、さらに審議内容を開示せよというご提案です。一定の開示は既にしており、今後も開示の充実には努めてまいりますが、審議途中の内容を開示することは経営判断の制約となる可能性があり、特に上場子会社に関しては、上場子会社側の株価への影響も懸念されるため適切ではないと考えています。また、こと細かな規定を会社の憲法ともいえる定款に定めることは不適切ではないかと考え、会社としましてはこの提案に反対と考えています。 第5号議案、第6号議案につきましても、私どもは反対と申し上げています。実は、第5号議案の株式報酬については、会社自身も提案を考えていました。おそらくご提案者の方は、会社が提案を検討していることをご存じなかったのではないかと思います。現在、当社は固定報酬と業績連動報酬という制度になっていますが、これに株式報酬を業績連動方式で導入し、取締役に任務懈怠などの問題があった場合は、株式報酬の一部を取り上げるという条項が入っており、第6号議案(株主提案)のクローバック条項に対応するような内容も含まれています。 したがって、報酬の内容については役員人事・報酬会議、あるいは取締役会で会社の事業の特性、インセンティブ等について検討した上で考えたものですので、株式報酬議案は会社・株主と二つの提案がございますが、当社としては会社の提案が適切であると考えている次第です。 第6号議案については、普通のクローバック条項と違い、これから子会社化、関連会社化する会社について、損失が発生したら即役員の報酬を没収するという内容になっています。このような、ピンポイントで善管注意義務の有無を問わずに結果責任を問うような制度は、かえって経営判断を萎縮させて適切なリスク提起ができなくなる。したがって成長戦略が取りづらくなり、株主の皆さまの利益を毀損することになると私たちは考えています。 当社が提案する報酬議案にも、取締役の任務懈怠の問題があった場合には付与されたポイントを失効させるマルス条項が入っておりますので、それも含めた会社提案にご賛成いただければと考えている次第です。

 

                                      以上

 

 

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