メディアスホールディングス株式会社(3154)
開催日:2025年5月17日(土)
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 池谷 保彦 氏
1.企業概要
・ 当社の設立は2009年7月ですが、事業会社は創業70年、80年などの会社ばかりです。戦後、医療の発達とともに大きくなってきた会社が一緒になって現在のメディアスホールディングスをつくりあげてきました。
- 昨年12月末時点で、資本金は13億8,000万円、従業員は2,589名、拠点数は84カ所です。
- 2009年7月にジャスダック証券取引所に株式上場し、2016年9月に東証二部、2017年に東証一部、2022年にプライム市場へ移行しました。
メディアスグループ
- 昨年12月末時点で、14のグループ会社で構成しています。中心となる医療機器販売会社には、注射器など小型の消耗品から、MRIや手術用ロボットなどの大型備品までを扱う総合医療機器卸と、循環器の製品に特化したアルバース、整形外科の製品に特化したオーソエッジジャパンなどの専門商社があります。
- 循環器、整形外科、眼科などの専門商社が事業としてなぜ成り立つか、ご説明します。循環器系でいえば、冠動脈が閉塞したときの治療に、今はステント(体内の管状の部分を内側から広げるために使う器具)が多く使われています。昔であれば心筋梗塞で亡くなってしまうような患者さんもこれによって命を取り留められるようになりましたが、ステントは消耗品ですが、高額です。循環器に特化しても事業としてやっていけるのは、そのためです。
- 整形外科では、加齢にともなう膝や腰の障害や、女性に多いリウマチなどにより関節の動きが制限される場合、人工関節を入れます。膝の場合は上下に金属製の人工関節を入れますが、1セットで100万円以上します。専門性の高い高額商品を扱うので、単科でも事業が成り立ちます。
- 眼科も、昔とは異なり現在は白内障の治療が可能となってみいます。白髪と同じように、加齢によりだんだんと目の水晶体が白濁し、白内障になります。これを眼内レンズという人工レンズに置き換えることで視力の改善が期待できるのですが、眼内レンズも高額な上、需要も多いので専門会社が存在するわけです。
- そのほかのグループ会社として、医療機器の修理・保守の専門会社、病院の物流管理や物品の価格分析などを行うソリューションサービス会社があります。
- また、ベッドや車椅子など介護福祉機器のレンタルや、珍しいところでは救急車内で扱う医療機器を販売しています。昔の救急車にはあまり医療機器を搭載されていませんでしたが、最近は、人工呼吸器や、心停止時に電気ショックを与えて心臓の動きを再開させるAED(自動体外式除細動器)などの高度な医療機器が装備されています。
事業概要、取扱商品
- 当社の医療機器販売事業で扱っている商品に、先端医療機器があります。
- その一例が内視鏡です。かつては軟性内視鏡を用いた診断が主でしたが、現在ではステンレス製の硬い棒のような内視鏡(硬性内視鏡)を使って手術するのが一般的になりました。
- 例えば、以前は胃がんなどの手術では、開腹して患部を切除しており、その場合、最低でも約1カ月の入院が必要でした。
- ところが最近は、お腹にいくつか小さな穴を空け、そこから内視鏡を用いてテレビモニターに映しながら鉗子(かんし)を挿入治療すると、開腹手術に比べて患者さんに対する侵襲が少なく、1週間ほどで退院が可能です。また予後も良好で、入院日数の短縮により医療費の低減にもなります。
- そのため、厚生労働省は内視鏡手術に対して高い点数を診療報酬点数を設定しています。そうしたこともあり、今ではほとんどの手術で内視鏡が使われています。
- そのほか、当社ではMRIも取り扱っています。磁気を使って体の中の臓器を見るMRIは1億円前後と高額ですが、現在はほとんどの病院に導入しています。
- また、手術支援ロボットも取り扱っています。ロボットと言っても人間が操作し、単体では動きません。開発当初は、日本人は器用で、こうしたロボットがなくても細かい手術ができるからあまり売れないだろうと言われていました。ところが、器用な先生が使うとより精度の高い手術ができるということで、今は人口比率で見ると世界の中で日本が最も普及している国となっています。さらに、内視鏡手術と組み合わせることで、体内の細かいところに小さな穴を空けるだけでアプローチができるようになっています。
- このほか、介護福祉事業として、ベッドや車椅子などのレンタルも行っています。
仕入れ先、販売先
- 仕入れ先である世界の医療機器メーカーは、メドトロニック(アイルランド)、アボット(アメリカ)、ジョンソンエンドジョンソン(アメリカ)、シーメンス(ドイツ)などがあり、数兆円規模の企業と取引しています。
- 国内では富士フイルム、オリンパス、テルモ、キヤノンなどから仕入れています。
- 販売先としては国公立病院、日本赤十字病院、厚生連、済生会などの公的医療機関・病院が全体の売上のおよそ半分を占めています。非常に安定しているお客さまが多くなっていますが、季節によって売上が変わる傾向があります。この点は後ほどご説明します。
医療機器卸業界の商流
- われわれはメーカーから仕入れて医療機関に製品等を販売する事業をしています。薬の卸も似ていますが、違う点がいくつかあります。
- まず、薬の場合はどの病院も薬剤部が一括管理しており、薬剤部に持って行けば院内のほとんどの部署に回ります。一方、われわれが扱う医療材料は、直接外来や手術室などに届けています。
- 大きく異なるのは、薬はどの先生が処方しても効能は変わりませんが、医療機器は道具であるため使い方によって効果が変わる点です。電気メスを使うにしても、患者さまの体格によって出力を変えたり、スピードを速くしたり遅くしたりすることによりしっかり止血するなどの工夫が必要になります。そうしたアドバイスをするのも、われわれ医療機器販売会社の重要な仕事です。
当社グループのトータルソリューション
- 私どもは、「ASOURCE」「Meccul」「SURGELANE」「SPD」「STORE」といったソリューションを病院に提供しています。業界の中でこれだけのソリューションツールを持っている会社はほかにないと自負しています。具体的にご紹介します。
- 「ASOURCE DATABASE」は、当社が持っている医療材料のデータベースです。現在、約100万件あり、情報の鮮度などの意味からも業界一だと考えています。
- 「Meccul分析サービス」は購買マネジメントをサポートするツールです。国内約2,000病院分の医療材料の購買価格データを持っており、各病院が購入している額が適正なのか、高いものを買っていないかなどを分析しています。
- 「SPD(Supply Processing Distribution)」は、もともとアメリカから入ってきた物流方法で、現在は国内のほとんどの医療現場が採用しています。「富山の置き薬」などの配置販売と同じように、当社は病院の手術室あるいは外来に、使いそうな物をすべて置き、病院が使った分を補充する。その時に売上を上げる仕組みです。
- SPDができる前は、病院の師長さんや主任さんが週に1回など、定期的に何が足りないか病院の倉庫を調べて、用度課が当社に発注していました。しかし、このSPDを使うと担当者の仕事が不要になるだけでなく、年間5%出ていた滅菌期限切れの在庫を病院で抱える必要がなくなり使った分だけ支払えるので効率化につながります。
- 「ASOURCE STORE」は、ある程度大きな病院でなければ導入しにくいSPDを、100〜150床など中小規模病院でも活用できるようにした、簡易SPDサービスです。
- 「SURGELANE」は、システムによってオペ室の稼働状況を見える化するサービスです。病院の収入の約半分が手術室といわれていますが、経営サイドからすると手術室はなかなか立ち入ることができず、本当に効率よく運用されているのか分かりにくい部分でした。当社では、例えばA先生とB先生の胃の切除手術の時間や費用の違いをデータ化し、どこが原因で違いが出ているのかなどを分析して手術の効率化を支援しています。
2.業界を取り巻く環境
- 今後、総人口は減少していく一方で、高齢者人口は2040年くらいまで増加傾向が続くと予測されています。 医療業界(医療・介護費)も、全体の人口は減少するものの、高齢者人口が減らないことから、2040年頃までは需要が高い水準で推移すると見込まれます。さらに、世界的に新しい医療機器の開発が進んでおり、新たな製品が市場を支える要因となり、医療業界全体としても2040年頃までは順調な成長が続くと考えられます。日本の医療機器の市場規模(推測値)は、202023年度が3兆7,000億円、24年度が3兆8,000億円弱と、少しずつ伸びていく見通しです。2年に1度、診療報酬改定が行われるのと同じタイミングで伸びるのが特徴です。薬やわれわれが販売する医療材料の価格は診療報酬で決まり、薬は100%、医療材料は約3割が国から価格を指定されます。
- 診療報酬は18年間、マイナス改定で値下げされてきています。昨年も0.1%マイナス改定で、物の値段が上がっている中で医療材料だけは上がりません。今年は改定はありませんが、来年の改定時にもし診療報酬が上がらない、あるいは材料費の価格が上がらなければ本当に病院経営は厳しくなってしまうだろうと懸念されます。
- また、国内の医療業界のうち、販売額が1,000億円以上の会社は7社、500〜1,000億円未満の会社は12社で、同業の会社は全部で約1,000社あります。3兆7,000億円のマーケットに対して1,000社は多く、いずれ淘汰して業界の再編が起きるのではないかといわれています。
- そうした中で、当社は業界のナンバーワンディーラーとして、今後もM&Aを中心に進めることで、より良いサービスを提供できる企業として発展するという目標を掲げています。
3.業績の状況
・ 2018年に1,680億円だった売上は、2025年6月期予想で3,200億円と順調に成長しています。2023年から収益認識に関する会計基準に変わったので売上は微減していますが、昔の会計基準でいけば7年でおよそ倍になっています。
- 今期の中間までの業績は、売上1,427億円(前期比112%)、営業利益7億5,000万円(同110%)、経常利益9億8,000万円(同109%)です。
- 第3クォーターの決算は、売上2,195億円(同113%)、営業利益20億円(同122%)、経常利益24億円(同122%)という状況です。
- 通期業績見通しは、今期の初めに発表した数字から変わらず、売上2,800億円、営業利益14億円、経常利益20億円、純利益12億8,000万円となっています。
- 販売先のご説明の時にお話しした、季節によって売上にばらつきがあるというのは、当社の売上の半分が公的医療機関によるため、売上が年度末にあたる3月に集中するからです。当社においてはそれが第3クォーターに当たり、第3クォーターは売上が非常に上がる一方、公的医療機関の予算執行が減少する4〜6月、第4クォーターは売上が若干下がる傾向があります。
4.今後の成長戦略
・ マーケットがシュリンクしていき、業界再編がされると予想される中、当社では引き続き既存事業の強化と積極的なM&Aを図っていくことで営業基盤を固め、さらなる成長を目指していきます。
戦略1「顧客価値の最大化」
- そのための戦略として、まず当社グループの提供価値の最大化に向けて取り組んでいきます。具体的には、今までに培ったノウハウと情報ネットワークの活用、ソリューションツールの提供のほか、急性期医療を提供する医療機関への営業を強化していきます。われわれは慢性期病院にも営業活動をしておりますが、厚生労働省は急性期病院を現在の半分にする方針を示しており、今後は限られた病院に対する競争が激化してくると予想しています。
- また、先ほどご説明したように低侵襲手術がどんどん進化していますので、そこにも注力していきます。
- このほか、プライベートブランド商品の製品拡充を図ります。当社では先ほどお話ししたマスクだけでなく、さまざまな医療材料をプライベートブランドとして、主に東南アジアで製造し、日本に輸入しています。プライベートブランド商品はまとめて買うことで安く入り、利益率が上がります。それによって、物流費の上昇をカバーしていきたいと考えています。
- その他、BCP対応が可能な体制構築にも取り組みます。「医療を止めない」というテーマの下、東日本大震災の際には東北に医療材料を、新型コロナの時にもマスクや手袋などを提供しました。われわれの事業会社ではパンデミックに備えて防護用服等を準備し、いざというときにはそれらを身に着けて病院への納品を行う体制も整えています。
戦略2「M&A・グループ管理体制」
- 戦略の二つ目として、継続的なM&Aやアライアンスの推進、ならびにグループ経営管理体制の強化を図ります。昨年から委員会等の組織横断的な取り組みに力を入れているほか、人事交流を通じたグループ内の連携の強化、IT・物流等の業務インフラの整備を進めています。
- また、管理業務の集約による効率化として、事業会社14社の給与計算などの業務を1カ所で行うシェアードサービスを行っています。
- 働き方改革に向けた業務環境の改善にも取り組んでいます。
- さらに、成功確率が2割といわれている国内のM&Aを必ず成功させるために重要となるM&A後の統合プロセス管理も、経験を生かしてしっかり進めていきます。
5.資本コストと株式に関する情報
・ ROEは2021年6月期をピークに低下傾向です。長期的にはROE8%以上を目標としていますが、医療機器価格は政府に決められるため自由に設定することができず、低水準になりがちな状況です。これまでは売上高(トップライン)を伸ばすことに力を入れてきましたけれども、今後はROEを上げるために収益性の改善をめざして、より利益を上げることに注力していきます。
- PBRは1倍を維持しています。
- 配当性向は30%以上を基本方針としています。前期は利益が(上方修正した)予想を結果的に下回ったため41%となりました。それらも踏まえ、業績としては伸びているものの、今期1株当たりの配当金は19円を予想しています。
- 株主優待は、100株以上お持ちの株主さまには1,000円相当のQUOカード、500株以上お持ちの株主さまには6,000円相当のQUOカード、もしくはそれぞれ社会貢献として国境なき医師団への寄付の2種類から選択いただいています。
6.社会貢献活動
・ 社会貢献活動として、国境なき医師団へ、社員等から430万円、株主さまから頂いた寄付に同額を当社が加算して17万6,000円。そのほか、途上国の子どもたちに給食を提供する国連のWFP(レッドカップキャンペーン)に、プライベートブランド商品の販売額の1%、1,260万円ほどを寄付しています。
- また、静岡県を中心に「メディメッセージ」という、医者や看護師、放射線技師、パラメディック(高度の救急処置技術をもつ救急隊員)の方が日ごろ病院でどのような仕事をしているのかを紹介するイベントを開催しています。先生方や病院の職員の皆さまに手弁当で参加いただき、普段なかなか見られない病院での活動を小さなお子さんを中心に体験していただいています。大変好評で、このイベントをきっかけに医者を志すお子さんがいらっしゃったり、すでに看護師として働いたりしている方が増えてきています。
7.質疑応答
Q1.創業から約15年が経過しましたが、これまでの歩みと成果、今後10年に向けたビジョンと成長戦略をお聞かせください。
A1.病院を取り巻く環境は非常に厳しくなっていることから、今までは堅実に歩みを続けてきました。今後も一層厳しい環境になると予想しています。
そうした中で、グループのスケールを生かし、プラスM&Aを進めてさらに大きくなることで効率化を図り、より適正な価格で、より安全に医療材料を届けられるような体制を今後もつくっていきたいと考えています。「医療を止めない」を合言葉に、全社一丸となって今後も進んでいきます。
Q2.医療DXの推進が医療機関に求められている中で、御社はどのようなデジタルソリューションを提供していますか。収益の見通しはいかがでしょうか。
A2.医療DXについては、当社は医療材料の物流領域を中心にソリューションを提供しています。SPD、SURGELANEもといったサービスを通じて、お医者さんや看護師さんが本来の業務に専念できるように、それ以外の周辺業務をITを使って効率化きるようなサービスを今後も開発していきたいと思っています。
当社の収益は、診療報酬の動きに大きく影響されます。そうした中でも、効率化できる部分は効率化し、スケールを大きくすることで収益性を高くできる部分はそうした努力をすることで、今後もしっかりとした成長を遂げていきたいと考えています。
Q3.拠点展開において、将来的に日本全国をカバーするお考えはありますか。
A3.基本的には国内を網羅的に販売できるような体制はつくらなければいけないと考えています。「医療を止めない」が目標ですので、過疎地域は収益が見込めないから展開しないといったことは避けるつもりです。極めて社会貢献度、公共性の高い仕事だと思っていますので、場合によっては収益性を無視してでもしっかりした医療の提供体制を国内で網羅的に張り巡らせるつもりです。
以上
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