株式会社Will Smart(175A)
開催日:2025年3月8日(土)
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 石井 康弘 氏
1.Will Smartについて
・ 当社は、地図情報の調査・制作・販売を行う株式会社ゼンリンの社内ベンチャーとして2012年12月12日に立ち上げた会社です。上場当初にもよくご質問を受けましたが、当社は社内ベンチャー制度から生まれた会社ではありません。新規事業を行うなかで、社内の部門としてではなく、一からの立ち上げを前提に作った会社です。
・ それ以降も類する会社が存在せず、非常にユニークな立ち上がり方をした会社です。その背景から当社はベンチャー会社と実質的に同じだと考えています。当社はベンチャー企業として社内のなかから生まれたことで、ゼンリンにも投資家として当社を支えていただきました。そのため100%の子会社ではなく、様々な事業会社からの出資を受けながら2024年にIPO(新規株式公開)を行いました。
・ 社長の私は、当社の立ち上げ時点から関わりました。当時は取締役の立場でしたが、2016年に代表となり現在に至ります。基本的には立ち上げ段階のビジネスモデルの模索や確立、資本を集める段階まで、ほぼすべて中心となり取り組んできました。
・ 当社の主な取引企業は、特にモビリティと呼ばれる分野の大手企業です。自動車を使ったビジネスをされている企業が、当社の顧客です。例えば、旅客向けの鉄道・バスのサービスを行う企業、物流分野も当社の大きな顧客群です。
・ 従業員は正社員が50名(2024年12月末現在)です。業務委託も含めると、常時70〜80人で体制を組み、仕事をしています。
・ 創業以来、キャッチコピーをブラッシュアップしていますが、一貫してモビリティ分野が主なお客様です。ニュースを見ると、移動を取り巻く環境は非常に厳しい状況で、バスのドライバー不足などが地方では非常に大きな問題となっています。こうした移動における社会課題に着目し、当社は技術の力やアイデアを使ってお客様と一緒に課題解決することに首尾一貫して取り組んでいます。
・ 当社は、ミッションで、「自らのアイデアとテクノロジーを活用し、社会課題を解決する」と宣言しています。まさに今、市場は移動が中心的なテーマになっています。
・ 基本的には皆様が普段利用される公共交通の分野が主たるお客様です。旧来のバスや鉄道といった乗り物に加えて、新しい分野のカーシェア、EVを使った乗り物サービスも当社は支援をしています。旧来の乗り物の現状の課題を解決する一方で、新規サービスを一緒に作り、現在と将来の両方の取り組みを開発会社としてお手伝いしています。
・ この分野で当社の掲げるテーマは非常に大きいですが、まだ小さな所帯かつ若い企業です。大手のシステム会社があるなかで、当社はチャレンジするスタンスです。なぜチャレンジできるのか、それは顧客である企業がよりローコストで高効率なサービスを求めているからです。コストパフォーマンスを上げることなど、大企業では小回りの利いた仕事が難しいなか、当社は速く、できるだけ安くコスト効率を上げて、人手をかけない仕組みの実現をテーマに、競合との違いを打ち出してきました。結果として、現在、モビリティ分野で様々な実績が積み重なっています。
・ 当社が取り組んできた事例の一つに、駅・鉄道では上場前に当社の株主でもあったJR九州(九州旅客鉄道株式会社)のシステムがあります。九州地区は福岡の都市圏を除くと過疎地域が多く駅の無人化が進んでいました。無人化すると、どうしても安全面で不安な状態となります。そこでデジタルを使って運行案内をクラウド型にし、ネットワークを通じて情報を配信するなど、できるだけローコストで実現する取り組みをしました。
・ バスターミナルなども当社のシステムが365日常時動いています。東京ミッドタウン八重洲の地下に日本最大級のバスターミナルがあります。その運行システムのダイヤ管理からバスが発着した案内、売上管理などの業務に関わるシステムを当社が構築しています。それを使って京王電鉄バス株式会社は、バスターミナルを運営しています。
・ 東京国際空港(羽田空港)のバスターミナルやバス乗り場も当社が京浜急行バス株式会社と一緒に取り組んでいます。当社は、主たるバスターミナルのシステム構築をしています。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場バスの管理も、当社システムを利用するということで、現在最後の準備を行っている状況です。バスターミナルは、当社にとって非常に大きな事業の一つとなっています。
・ その他にカーシェア、公共ライドシェアがあります。地方の足をどう確保するかが国の政策的課題となっており、そのデジタルの仕組みを構築することに携わっています。
・ 当社は基本的にお客様と直接の取引契約を結んでいます。様々なシステムの提供や受託開発をする場合もあります。また、自社サービスをライセンスとして提供するビジネスも並行して行っています。
・ 当社が通常の中小企業やベンチャーと異なる点は、クライアントが非常に大きいことです。それと同時に、当社はその業界の大企業とある意味、競争関係にあります。大手企業のほうが規模としても安心で安全面でも秀逸なシステムです。しかし、それゆえに高コストであったり、お客様の変化に柔軟に対応しづらくなる状況が現実にはあります。当社は、クラウドシステムやIoTの技術をできるだけ活用しながら、コストパフォーマンスの良いシステムを提供しています。そうして自社のポジションを確立しようと頑張っています。
2.業績について
・ 2024年度は決算期の変更を行っており、9か月だけの決算です。12か月間の決算ではなく3か月分がない状態の数字であることが大きなポイントです。既に発表していますが、数字に関しては非常に厳しいものとなっています。これは既存の事業、鉄道やバスの改善の取り組みと、新規事業を作っていくことの両輪で進めていたからです。昨年度、一昨年度と直近は、新しいサービスを続けて立ち上げており、それが売上の大半を占める状況が続いていました。
・ 一方で、EV関係の新しい先行投資の部分をお客様と一緒にシステムを作ることが、売上の中心となりました。日本国内でなかなかEVは浸透していませんが、大手企業は一つの新しい成長起爆剤として捉えています。例えば、電力会社が新規事業として充電設備を作ると発言していました。こうした企業と当社は様々な事業の展開を準備していましたが、立ち上がりが遅れた分、投資計画がずれたため、見込みの数字が組み替わってしまいました。これが昨年度の決算の大きなトピックでした。
・ EVや新しいモビリティサービスに関しては、今後も大事なポイントとなって成長する可能性があります。ここは長い目でみていきます。今年度からは直近の課題に集中し、より現状課題の解決に注力することにしました。
・ 大手企業の新規事業に関する取り組みには、住友商事グループの株式会社Hakobune(ハコブネ)の通勤用EVと職場充電環境のサブスクリプションサービスである「Hakobune」があります。また、伊藤忠エネクス株式会社のグループ会社である株式会社エネクスライフサービスによる「楽のりスマート」があります。これはレンタカーのサービスです。ガソリンスタンド併設型のレンタカーの新規サービスの支援も進んでおり、引き続き取り組んでいきます。
・ 軸足を現状課題に向ける大きなテーマが地域・地方に関することです。そこで元国土交通審議官、観光庁長官の田端浩氏に当社顧問になっていただき、アドバイスを受けながら、地域課題にどのようにデジタルを活用して政策支援を行うかといった取り組みも準備してきました。2025年度には、いくつか代表的な事例を公表できると思います。
・ 地域・地方の交通問題に対する取り組みの一例として、長崎県平戸市における実証実験があります。バス・タクシーがない地域で自治体および観光事業者がドライバーとなってお客様の移動を支援して目的地に運ぶ仕組みを提供しました。
・ 一方で安定的な黒字化への取り組みが重要だと認識しています。当社は黒字になっているなかで成長投資を行うと赤字になり、またそれが落ち着くと黒字になることを数年繰り返しています。安定的な黒字化が今年度の一番のテーマで、「販売力・商品力の強化」と「収益性・生産性の向上」の2軸で取り組みを進めていきます。
・ 「販売力・商品力の強化」については、自社で営業スタッフを抱えることも大事ですが、その方々が育つまでの時間や、お客様が大手であったり地方に分散しているといった課題もあります。そうした課題に自社だけで取り組むのではなく、パートナーシップを強めていきたいと考えています。引き続きゼンリンとの連携強化が一つの大きなテーマになります。また、株式会社NTTドコモとのモビリティサービスの連携などもあります。
・ 「収益性・生産性の向上」については、改善の要旨がはっきりしています。営業利益のさらなる改善が目標値として見えていますので、それをしっかり実行していきながら利益向上を図りたいと考えています。
・ 2025年度12月期の業績は、売上高1,200百万円に対して営業利益はプラスになると予想しています。上場の際に黒字になりましたが、その水準より高いところまで伸ばすことに取り組んでいきます。まず、現時点での問題解決に集中していきたいと思います。
・ お客様とのパートナーシップや、お客様の深い理解も大事です。既に取引のある京王電鉄株式会社と、同社代表取締役会長の紅村康氏にアドバイスをいただく体制をもって、公開情報上の問題にとどまらず鉄道業界やバス事業の本質的な課題をより深く理解していきます。そうして、当社もその解決に取り組みたいと考えています。
3.中期成長戦略について
・ 当社を取り巻く市場環境ですが、今、移動の分野は需要が拡大しています。インバウンドのお客様が年々増え、2024年の訪日外国人は4,000万人でした。市場規模では、観光業がアパレル業を抜き、観光事業自体は拡大の一途を辿っている状況です。
・ 一方、課題は担い手で、鉄道・バスのうち、特にバスが問題です。物流も同様ですが、大型自動車免許をもつドライバーが圧倒的に少ない実情があります。成長できる機会はあるものの、供給をもたないことが当社のお客様が直面する課題になっています。それを踏まえたうえで当社は事業推進のテーマを3つ掲げています。
・ 1つ目は「モビリティ企業DX」です。個別企業のDX支援では、省人化や無人のサービスに切り替えて、人手をかけない仕組みに作り変えていく取り組みを行います。
・ 2つ目は「地域共創」です。多くの移動企業、モビリティ企業は、地方に本社があります。地方の個別企業の課題は、すなわち地方の課題でもあります。その課題を解決することが、結果的には地域全体の課題解決につながります。これを地域共創というテーマで位置づけ、国・自治体とも連携をしていきます。当社が請け負いながら国の政策支援をする場合もあれば、具体的な地元の課題になれば自治体との連携になる場合もあると思います。モビリティの分野、特に交通分野は地方に目を向けていくことが、大きな取り組みの柱になります。
・ 3つ目は「Nextモビリティ」です。新しい技術分野、例えば車の自動運転なども一つのテーマです。引き続きEVや充電スポットもあります。ここは少し長い目でみて、お客様企業としっかりと連携を維持しながら、事業計画上は実際の数字のポートフォリオ管理を変えていく方法を取りたいと考えています。
・ 現在、当社の取引社数は約100社です。数字上はまだ伸びしろ、成長余地があります。これまで取引がない企業は、当社の既存事業の分野で2,500社超あります。さらに物流業界にも取り組みを広げたいと考えています。物流業界には約2,500社、国・自治体数は約1,700自治体あります。まだ取り組む余地がたくさんあります。当社の取引相手としていくためには、パートナーとも組まないとなかなか広がらないと考えています。パートナー企業、営業の代行、一緒にものづくりをしていくお客様との連携で、この分野を広げていくことが基本的な戦略です。中期的に考えて、どれだけ取引社数が伸びていくかが企業の成長です。こうした取り組みも含めて、何社の取引になったかを数字として発表したいと思いますので、成長をご覧いただければと考えています。
・ 物流業界への本格進出は2年前から計画し、今年度にも直接的な取引が入ってくる予定です。物流は、運ぶ物は増えても働く人が減っている業界でもあります。ここでもDXの必要性が高くなっています。当社は、今まで行ってきた旅客分野での実績を今度は横展開することを考えています。物流業界は旅客と同じような法律のもとで事業を行っています。運輸、広くは国土交通省の監督分野の旅客と物流の両方に携わる形を、しっかりと取り込みたいと思います。
・ 地域共創分野への本格進出の主たるテーマは、交通分野と観光です。交通・観光分野はこれまで様々な事例があるため、これらをしっかりと体系的にラインナップし直します。当社が自分たちで各自治体を回ることは困難なため、地域の自治体と関係性が深いところと積極的な連携を考えています。
・ 当社が何を行うかですが、代表的なものとして「公共ライドシェア」サービスがあります。バス・タクシーがなくなった交通の空白地に対して国が規制緩和をしています。今まで第二種運転免許をもつ専門のドライバーだけが、タクシー・バスの運転が可能でした。交通の空白地では第一種運転免許、つまり一般の方の免許でも有償で人を乗せて良いという内容です。特に昨年度、今年度に入ってから国が本腰を入れており、国土交通省の一大政策になっています。
・ 政策の中心は公共ライドシェアです。運営上のシステムについて料金設定、予約や車の管理、お客様の会員情報の管理に関するパッケージシステムを現在作っています。まず長崎県平戸市でトライアルとしてスタートしています。今年度、当社はより完成度を高めると同時に複数自治体へ展開する準備を進めています。国の政策とも連動する公共ライドシェアですが、これを進めることで単純に当社のビジネスを拡大するだけではなく、地域の新しいビジネスの機会、住人、そこを訪れる観光客の皆様に利便性を提供するお手伝いをしたいと考えています。現状の課題把握とその対策を中心に取り組みます。
・ 基本的には、データで単純に分析するのではなく、課題解決にまで踏み込もうとしているのが、この地域共創の分野です。既に事例が複数あり、長崎県平戸市、そして熊本県のバス事業者5社の共同経営事業の経営と経営推進室のデータ事業の「見える化」を支援しています。当社だけで行き届かないところは、様々なパートナーシップを結びたいと考えています。地方銀行など地域に根差した事業に携わる企業はたくさんあります。そうした自治体・企業と組みながら、この取り組みを広げていくことを考えています。
・ もう一つは売上の平準化です。収益性を上げると同時に売上が定常的に上がっていくことが大事です。当社のようなIT企業は、自社のストック性が高いもので売上を増やすこととなります。自社の商材をプラットフォーム化する、自社サービスを増やしていきます。当社は受託もしていますし、自社で商品開発を行って商売もしています。受託のなかで得た知識は、積極的に自社のパッケージに取り込んでいく取り組みをさらに拡大していきます。
・ 既にカーシェア向けに関しては、システムをもっています。そこに情報を配信するクラウド型のシステムを用意しています。ここにプラスアルファとしてこれから先、様々なものを加えていく予定です。
・ ここまでが自助努力でできる部分ですが、M&Aも重要になります。当社は大手企業との取引が中心になっています。今まで当社ができなかった新しい技術やサービスを付け加えることで、取り扱える商材が増えていきます。そういう観点でのM&Aは非常に重要だと思っています。ここは今年度以降に階段状で上がっていくための一つの重要な戦略として、自社が提供できる範囲をより広げるM&Aを考えたいと思っています。
・ 当社はB to Cに取り組むモビリティ企業との仕事が中心です。鉄道会社などは、デザインやウェブサイトの使いやすさが重要ですが、当社はそうした技術的な能力が不足しています。ただ、その分野を自社のケイパビリティのなかで組み込んでいければ提案範囲が広がり、取扱額が増えるという単純な構図があります。こうしたところを意識しながら領域を拡大してシェアを増やすことを考えています。
4.株主還元方針について
・ 当社は成長過程であり、これからどう伸ばすかが経営上の最大のテーマです。事業拡大と企業価値の向上が、株主の皆様に対する最大の利益還元と考えています。
・ 目の前の課題を中心に解決を進めることであり、そしてそのテーマは個別企業や地方に関わる部分です。まず、向こう3年間はしっかりと伸ばしていきます。単純に取引高を伸ばすだけではなく会社の企業価値として世の中に必要なものであることを認識していただく動きも並行して行います。そして、企業価値の拡大を進めたいと考えています。
5.質疑応答
Q1. 御社のサービスを私たちが目にする機会はありますか、代表的なサービスをいくつかご紹介ください。
A1. この説明会の会場から一番近いところでは、東京ミッドタウン八重洲の地下にあるバスターミナルのシステムを、当社が作りました。バスに乗ると実際に体感することができると思います。切符を買うところから乗るところまで、すべて当社のシステムが支えています。他に代表的なものとして、羽田空港のバスの案内表示や、券売機でチケットを買うシステムの一環を当社が運営しています。羽田空港からの発着でバスを利用いただくと当社のシステムに触れることができます。そういった事例を含めて何かしら全国で関わっていますので、知らず知らずのうちに当社のシステムをご利用いただいているかと思います。当社のシステムはインフラストラクチャ(基盤、下支え)として使っていただいているので、印象に残らないほうが良いかもしれません。印象に残るのは障害が発生したとか、使いにくかったことが多いため、スムーズに動いて記憶に残らないほうが当社としては良いサービスだと認識しています。そうした形で、思いがけず利用いただいているところもあるかと思います。
Q2. 2024年4月の東京証券取引所グロース市場上場前と後で具体的にどのような変化がありましたか。
A2. こういった説明会の機会があることも、もちろん変化の一つです。今までは企業が株主でしたので、株主総会は企業の代表者に5〜6人ご参加いただくかたちで開いていました。3月27日(木曜)に株主総会を開きますが、そこで初めて個人の株主様ともお会いすることになると思います。また、こうし説明会の場で皆様に当社を知っていただく機会が設けられることも、ビフォーアフターの話だと考えています。当社内部の話を申し上げますと、入社する人材の質が変わってきています。大手企業で一定のキャリアを積まれた方の採用が拡大しており、質の部分で非常に当社の組織を押し上げるような方々が入社されています。これは間違いなく、会社の情報公開も含めて上場前・上場後において全然違いますし、また企業としての責任も含めて変わってまいりました。幸いなことに、当社に入社される方は仕事をするならば世の中の役に立とうとする思いをもった方が多く、特に地方出身の方に多く入社していただいています。自社の取り組みについて自社を主語として話すことは、今まではゼンリンの子会社扱いでしたのでできませんでした。そこが変わったため、主体的にメッセージを出せるようになったことが一番大きいと考えています。
Q3. 意識している競合他社を教えてください。その競合と比べた御社の優位点はどこにありますか。
A3. 実名はあえて伏せますが、例えば、鉄道のシステムを担う企業は、皆様がご存知の企業が代表です。超大企業が、地方も含めてシステム供給を行ってきた歴史があります。ただ、現実をみますと、地方の鉄道会社やバス会社は補助金がなければ赤字になるところがほとんどかと思います。そのような状況では、新しい設備投資が難しいのが実情です。先日も北海道へ出張して国や自治体関係、バス事業者の方々との意見交換の場で話をさせていただく機会がありました。特にバス会社の方が仰っていたのは、人が行っている仕事をシステムに置き換えるべきなのはわかっているものの、初期投資ができないということでした。その結果、住民にも利用者にも利便性を提供できないことが課題となっています。当社に何を期待するかと申しますと、要は自社の投資ではなく地方のバス会社向けのパッケージを作ってくれないかということでした。それを使えば初期投資がいらなくなり、ライセンス料は払うという内容で、結果としてシステムが新しくなることが良いという意見があがっていました。競合関係において、これまでは大手企業が安心・安全でしっかりとしたシステムを作ることで、この50年、60年と続いてきた流れがあります。それはそれとして、それ以外の経済的にも厳しい企業に向けてより廉価なものを作り、皆様で共通して使っていただくものを用意することが昨今は重要だと考えています。当社は競合だから距離を置くのではなく、競合他社と当社ができることを定義したうえで、大手の企業とは違う業務向けの廉価で使いやすいものを皆様に広く使っていただく方が、お客様の理解や賛同も得られると考えています。
Q4. 新規顧客、既存顧客を増やすために、具体的にどのような施策を行っていますか。
A4. それについては特別なことがあるわけではなくて、この分野は実績が必要な点が非常に大きなところです。物流であっても、特に旅客業は人の命を預かる移動サービスなので、技術が素晴らしいだけでは採用されません。どこかの企業で実績を積み、その後で初めて比較検討していただく流れです。当社としては成長をもっと加速度的にと考えていますが、市場の特性上、慎重に選択される実情があります。これまでに積み重ねてきた事例は複数ありますので、こういう場だけではなく、当社を知っていただくことを重点においたマーケティングプロモーションのなかで事例の公開をしていきます。国土交通省が取り組む中心事業のほとんどに、当社が関わったDXの事例があります。1年ほど前から国にまず当社の取り組みを知っていただき、その取り組みに対して補助をいただく形で、地域の事業者がより購入しやすい環境を作ってもらう、または知ってもらうといったことをしています。その部分では、非常に賛同を得ています。本日の話に交通空白地というキーワードがありましたが、2024年度から国土交通省が旗を振るかたちで交通空白地の官民連携のプラットフォームが立ち上がっています。交通空白地に取り組む民間企業と官が連動して事例の共有を行っています。パートナーシップを結んでいく開かれたマッチングの場・事例共有の場もあります。当社もそこに参加していますが、取り組みを広げて、知ってもらう機会をどれだけ増やすかが重要だと考えています。今、積極的にそうしたことを行い、まず認知度を上げて興味をもっていただき、当社が直接関わるだけではなく得意分野の会社と連携しながら、自社の取引を拡大することを考えています。
Q5. 四半期ごとの売上高を平準化するために実施している取り組みを教えてください。
A5. 自社のライセンス利用を増やすことがとても大事です。実際に全体の売上に占めるストック型のビジネス、つまり毎月お金が入るタイプの比率は増えている状況にあります。ここを増やしていくことが一番です。当社はほとんど内部で開発を行っています。人件費が固定で年間に張りつき、クォーターごとに同じような人件費がかかっています。損益分岐を超え利益が出て、自社のライセンスが増えていけば安定化します。売上および利益の安定性といった意味でもストック型の売上、自社のライセンスやパッケージをどう増やすかが重要です。パッケージを増やす際、ドコモの事例などにもふれましたが、作ったものを自社で全部売るのではなく、例えばドコモのネットワークを使って販売していくことにも実際に取り組んでいます。こうした形で、売上をエンジン化させていくことを現在計画しています。
Q6. 御社が提供する4つのサービス、総合情報配信、モビリティシステム、クラウド化支援、AIデータサイエンスのうち、最も売上が大きいのはどれでしょうか。
A6. 4つのうち、前半の3つの売上規模はほぼ同じです。AIデータサイエンスのところが少し割合で劣ると思っていますが、およそ3:3:3:1の割合になっています。ただ、最後のAIデータサイエンスはとても大事で、今年はそこに注力をしていく考えです。これはAIを使うことが目的ではありません。人手をかけないことを考えるうえで、どこに人手がかかっているかの現状を把握する必要があります。人手はあくまでかけた分に応じて本当はお金が生まれないといけませんが、実際は昔からやっているのでとりあえず人だけ置いているということが鉄道業界・バス業界には、多くあります。皆様も業務内容の割に人が多いと感じる場所を見かけたことがあるかと思います。そうしたところをできるだけ機械に置き換える、スマートフォンで完結できるようにしていくと、バックオフィスで働く人たちを他の部分の仕事に回すことができます。こうした現状にしっかり対応するためにデータをみて、施策としてそれをシステムに置き換えます。そうすると、かかっていた人件費がどれぐらい減ったのか、それによって管理会計上の部門としての利益率がどう高まったのかがわかります。これらは全部のデータを使わないと難しいと考えています。単純に、感覚的にここは人が多いからといって減らすことはすぐには難しいです。現状を改善するためにデータを活用することができれば、そこから推計をさせるとか、数字が上がるとしたらどのような効果があるかは計算の話なので、AIに任せれば良いとなるかもしれません。ですが、現状を把握するためのデータ活用、利活用が売上のなかでは重要なポイントになってくると思います。先ほどの3:3:3:1のAIデータサイエンスが占める1の部分をできるだけ増やして、比率を少し変えていきたいと考えています。
以上
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