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日本紙パルプ商事株式会社(8032)
開催日:2025年3月16日(日)
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 社長執行役員 渡辺 昭彦 氏

1.当社グループの概要
・ 当社は、日本の紙・板紙の卸売分野において、一次卸のリーディングカンパニーとして、長年にわたり紙・板紙の安定供給を支えてきました。日本の紙・板紙の流通は、特に印刷用紙やグラフィック用紙の場合、製紙メーカーからまずは一次卸である当社のようなメーカー代理店が仕入れ、その後、二次卸となる各地の卸商、印刷会社、出版社、加工会社、ブランドオーナーなどに販売されていきます。当社はこのような紙のサプライチェーンの中で圧倒的な役割を果たし、確固たるプレゼンスを構築してきました。
・ 2017年より、多角化・グローバル化が進んできた当社グループの役職員の帰属意識や、統一された方向感などを醸成させ、グループとしての企業価値を一層高めるために、グループブランドである「OVOL(オヴォール)」とそのブランドロゴを導入しました。長年、自利利他の精神を社是として重んじてきましたが、あらためて企業理念等を取りまとめました。当社の商売はBtoBが大半のため、個人の投資家や一般消費者にはなかなかブランドが伝わりにくいですが、ブランドを導入して以来8年が経過し、紙業界ではだいぶ知名度が高まってきたと認識しています。今日を契機に、ぜひ皆さま方にも「OVOL」というブランドをご愛顧いただけますと幸いです。
・ 今年で創業180年を迎えます。2024年3月末時点のグループ会社数は国内外合わせて127社であり、1972年の東証上場以来、52年間継続して経常黒字を記録しています。2024年度の連結売上収益は5,342億円、連結経常利益は168億円です。2023年3月には、海外市場が空前の活況を呈したことなどから、過去最高となる連結経常利益212億円を記録しています。連結での従業員数は、2024年3月末時点で4,157名、海外事業拠点の占める割合がその内46.5%まで高まっています。
・ グローバル化や多角化の進展具合を示すデータは資料をご覧ください。
・ 1845年に和紙商として京都で創業した後、日本で初めて国産の洋紙販売に乗り出しました。日本の経済成長とともに、紙・板紙の内需は順調に拡大し、長年にわたり米国に次ぐ世界第2位の規模を維持。近年でも中国、米国に次ぐ世界3位の年間約2,000万tという規模です。その中で、当社は常に時代や社会の変化を捉え、事業を変革・拡大しながら紙・板紙の卸売事業を中心に新たな価値を創出してきました。1970年代には株式上場や古紙再資源化事業に参入。2000年代に入ると、古紙を原料とする段ボール原紙や家庭紙などの製紙事業にも参入し、2010年代には、再生可能エネルギーによる発電事業を強化しています。
・ とりわけ海外事業に関しては、太平洋戦争前にも上海等へ進出しており、戦後には香港・バンコク・デュッセルドルフなど多くの主要都市に駐在員事務所や現地法人を設立し、主に日本製の紙・板紙の輸出販売拠点として活動してきました。2000年代にピークアウトした日本国内の紙・板紙需要を鑑み、2010年ごろより巨大な海外市場の需要を本格的に取り込むべく、現地に根ざした、現地での在庫卸売機能を有する紙卸商、いわゆるpaper merchantの買収に乗り出し、直近、昨年末のドイツ、フランスでの買収に至るまで、各国での補完的な周辺事業買収も含め、飛躍的にグローカリゼーションを進めてきています。
・ 当社グループの事業領域は五つに分類されています。
・ 一つ目は、祖業である国内紙卸売事業です。2023会計年度のものでは、売上収益で連結業績の37%、経常利益で33%を占める事業領域です。日本紙パルプ商事株式会社本体の代理店販売が大半ですが、物流会社、ICTシステム系子会社、二次流通の卸商などの子会社がこのセグメントに含まれています。
・ 二つ目は、海外卸売事業です。日本紙パルプ商事本体の輸出部隊である国際事業本部の他に、世界各地で紙類の在庫・卸売・加工・輸出入に関わる子会社・グループ会社から成っています。紙・板紙に加えて、パルプ、古紙、関連機械、フィルム、ラベル、デジタル印刷素材、パッケージング関連商品、印字リボンなど、幅広い印刷・包装資材を取り扱っています。このセグメントは売上収益で全体の49%、経常利益で直近は17%を占めています。こちらは、2022年度の活況の反動もあり、実力値より一時的にパーセンテージが低くなっています。
・ 三つ目は、製紙加工事業です。古紙100%原料に特化し、段ボール原紙の製造、段ボールシートやボックスの加工販売、ならびにトイレットロールを主体とする再生家庭紙の製造販売となります。グループ内にある古紙の回収選別販売事業とのシナジーや、難再生古紙を活用できる技術の優位性を生かして、特に再生家庭紙においてはマーケットリーダーとしての地位を固めています。このセグメントは売上収益では全体の9%のみですが、経常利益では全体の35%を占めています。
・ 四つ目は、環境原材料事業です。本体でのパルプ・古紙・PKS販売の他、古紙事業会社、バイオマスや太陽光などの再生可能エネルギーによる発電事業、マレーシアでのPKS輸出事業、そしてプラスチック新法も見据えた総合リサイクル事業などが含まれます。SDGsも強く意識しながら企業としての社会的責任を果たし、社会価値の創造にも貢献していきます。このセグメントは、売上収益では全体の4%、経常利益では7%にとどまっていますが、2024年度ではPKS事業(PKSとは、アブラヤシの実の種の殻で、バイオマス発電の燃料になるもの)が大きく伸長したので、利益貢献度も格段に高まってきています。
・ 五つ目は、不動産賃貸事業です。東京、大阪、京都などの自社保有不動産のポートフォリオの最適化を通じて、安定した収益確保に貢献してきています。
・ 祖業である紙卸売を起点とし、循環型社会の構築を強く意識しながら、シナジーを発現すべく、川上と川下の双方へと事業の多角化を進めてきました。
・ 当社の顕著な特徴を三つご紹介します。一つ目は、近代国内紙流通の有史以来、国内において圧倒的ナンバーワンの紙流通企業であることです。
・ 二つ目は、世界でもほとんど類を見ない紙のグローカル企業グループであることです。グローバルなネットワークを有し、世界の主要な国や地域で、現地に根ざした卸商を展開しています。また、その機能やサービスのクオリティーをさらに向上し、自他ともに認める世界最強の紙流通企業グループという評価の獲得を「OVOL長期ビジョン2030」(以下、長期ビジョン2030)において目指しています。
・ 三つ目は、循環型社会の構築を当社の使命としていることです。環境性能が極めて高い紙という素材を専門に扱う企業として、コーポレートスローガンである「Paper, and Beyond」の下、川上から川下への展開を通じて、循環型社会の構築に取り組んでいます。

2.当社グループの事業紹介
国内卸売セグメント
・ 日本の紙流通においては、一次流通である当社の川下に、二次流通としての卸商が全国各地に数百社存在しています。2018年と2023年に、卸商約250社400名を招いてフォーラムを開催しました。2018年の第1回フォーラムでは、当社グループの海外の紙卸商によるパネルディスカッションで、海外での紙流通の経営・営業・販促・物流・労務などの手法を紹介するとともに、当社グループが開発を進めていた物流におけるIT活用システムをご紹介しました。
・ 2023年の第2回フォーラムでは、卸商が抱える課題解決のヒントになる講演や、紙の価値の再確認をテーマとした講演、パネルディスカッションを行いました。卸商経営の課題については、比較的に規模が小さく同族経営が多い卸商について、人手不足へのDX化の重要性などをソフトバンク株式会社の今井康之副社長(現会長)に、中小規模事業者の事業承継の留意点などを日本総合研究所の翁百合理事長に、また自社のV字回復という成功体験とその手法を株式会社学研ホールディングスの宮原博昭社長にそれぞれご講演いただきました。パネルディスカッションでは、他業界で紙の優位性や機能価値を高く評価されている経営者の方々、および紙卸商の経営者代表により、紙にはどのような価値や機能があり、それをどのように社会全般に周知していけるのかといったことを議論していただきました。
・ どちらも盛況で、卸商の経営者の皆さまはもちろん、来賓の製紙メーカー経営者、業界紙の皆さまからも高く評価され、社会価値を含めた企業価値向上に結びついたと自負しています。副産物として、当社グループの役職員の間にも、このような大規模なイベントを成功裏に開催できたことが大きなモチベーションとなり、今般進めている「長期ビジョン2030」と「OVOL中期経営計画2026(以下、中計2026)」での新たな0から1への動き、仕掛けづくり、仕組みづくりのマインドセットにも大いに有効だったと考えています。第2回フォーラムの場で卸商に対して当社が約束した今後の取り組みについては、卸商様を巻き込みながら既に実行に移しています。また、2028年をめどに、次回、第3回のフォーラム開催を計画していく所存です。
・ 一方、当社では、減プラ・脱プラが進む環境意識の高まりに加え、政府目標なども視野に入れ、紙化ソリューションの提案に力を入れています。製紙メーカーやマーケットとの緊密な関係性を生かして、さまざまな環境配慮型商品を開発し、これらに特化したサービスサイト「Paper & Green」を運営する一方、各種展示会にも積極的に参加しています。昨年は当社開発商品が高く評価され、経済産業大臣賞やアジアスター賞などを受賞しました。
海外卸売セグメント
・ 日本の紙・板紙内需が2000年代にピークアウトし、他の先進国の多くも人口減少やデジタル化の進展による紙需要の伸び悩み、減少といった状況にありますが、世界全体ではこの先も全体需要は増加が続くものと推測されますし、先進国にあっても米国のように極めて底堅い市場も散見されます。また、当社が進出済みの多くの市場では、既に紙流通の淘汰はほぼ完了しており、従来の紙卸商の在庫・配送・金融機能などをすぐに有効活用することが出来る周辺素材、サイン&ディスプレイやパッケージング関連の印刷・包装資材を含めますと、当社が持つグローカルなネットワークはこの先もしっかりとしたビジネスモデルとして収益の源泉になっていくものと確信しております。
・ 2024年末から2025年2月にかけて、ドイツで3社、フランスで2社、ポルトガルで1社の事業や企業を買収し、拠点数も増え、従業員数も500人規模で加わりました。地域別売上収益でも、仮に直近3カ国の当社買収前の2023年度の実績を単純に計算すると、約1,000億円規模の収益が既存の売上収益に乗ることになります。
製紙加工セグメント
・ 段ボール事業、再生家庭紙事業が主力事業ですが、移動式トイレトレーラーについて紹介したいと思います。自然災害等の避難所で最も深刻な問題の一つとされているのがトイレ問題です。アメリカ製の移動式トイレトレーラーですが、清潔で快適なトイレ環境を被災者に提供できるものとして大変喜ばれています。主に全国の自治体にご購入いただいており、災害発生時には、各自治体が協力して被災地にこのトレーラーを集結させることで、非常に大きな力になっています。こちらも社会課題の解決の一助として、今後さらに注力してまいります。
環境原材料セグメント
・ 紙を起点に資源循環型社会の構築を意識して事業展開していますが、ここへ来て輸入PKSの需要が伸びており、当社グループでも調達元であるマレーシアのPKS回収・輸出事業において、積み出しヤードを既存の2拠点に加えて、3拠点目の獲得を進めているところです。
・ 熊本で行っている総合リサイクル事業は順調に安定経営を続けています。プラスチック新法の施行を受け、製品プラスチックの回収・選別を主体とする第2工場の建設を視野に入れています。
不動産賃貸セグメント
・ 東京・大阪・京都の所有不動産の有効活用を続けていきます。2022年度に本社を含む勝どき地区の4物件を売却し、今後の理想的な働き方を検証しながら移転先を探してきましたが、2025年3月3日に開示したとおり、人的資本投資とワークエンゲージメント向上による生産性の飛躍的な上昇を目指し、2026年下期に東京八重洲にて建設中の「TOFROM YAESU TOWER(トフロム ヤエス タワー)」の23〜25階に移転することで、先般、賃貸借契約を締結しました。

3.当社グループの成長戦略
・ 当面のゴールとして「長期ビジョン2030」にて、2030年に当社がありたい姿、あるべき姿を描いています。その実現に向けて、2024年度から始まる3カ年の「中計2026」をバックキャストにて策定しました。
・ 「長期ビジョン2030」で描いている姿の一つ目は、「世界最強の紙流通企業グループ」です。単に販売数量や販売金額、従業員数などで世界最大の規模になるという意味ではなく、世界のさまざまな紙市場の中で、最も機能やサービスが充実しており、最もお取引先から信頼され、頼りにされる紙流通の企業グループになりたいということです。
 規模だけで言えば、現時点で米国の2社に次ぐ世界3〜4位に位置していると認識していますが、米国の2社は活動範囲が米国内に限られており、大ロットの投機的な貿易取引を得意としている企業のため、決してわれわれが望む世界最強の姿ではありません。
・ 二つ目は「持続可能な社会と地球環境に一層貢献する企業グループ」です。企業活動による経済価値のみならず、地球環境や社会に対する社会価値も合わせて創出していける企業グループになりたいということです。紙という素材自体が再生可能な木質資源から作られており、世界トップクラスの古紙回収率、古紙利用率を誇るこの日本で、紙の卸売を起点とした事業の多角化を通じてサステナブルな循環型社会の構築に貢献できるものと確信しています。
・ 三つ目は「紙業界の枠を超えて広く高く評価されるエクセレントカンパニー」になりたいということです。国内の紙流通にあっては、創業以来、リーディングカンパニーとして一定の評価をいただいてきました。しかしながらBtoB主体の事業構造であることから企業認知度が低く、2000年代で国内の紙需要そのものはピークアウトしたこと、紙の生産そのものが環境に悪いのではないかといった間違った認識が一部で広がっていることから、業界以外では当社が正しく認識して頂けていないのではないかと感じています。役職員のエンゲージメント向上も含め、幅広くステークホルダーの皆さまにご評価いただけるような施策を今後も実行したいと考えています。
・ 前回の「中計2023」で、当社は非常に大きな飛躍を遂げることができました。その結果、安定した収益力、充実した資金力、国内外に広がるビジネスプラットフォームという三つの大きなアセットを獲得することができました。しかし、「長期ビジョン2030」で掲げている姿との間には依然として大きなギャップが存在することも事実です。その大きなギャップをどのように埋めていくかをバックキャストであぶり出して策定したのが現在進行中の「中計2026」であり、「長期ビジョン2030」実現のために必要な仕組みづくり、仕掛けづくりの3年間と位置付けています。
・ 長期ビジョンの実現、つまり経済価値と社会価値の創出のためには、圧倒的な競争力の向上、圧倒的な収益性の向上、圧倒的な収益規模の拡大が必要不可欠です。そのための三つの基本方針を掲げています。
・ 一つ目に、グループ内外のコミュニケーションを拡充し、機能やサービスなどの提供価値を圧倒的に高めることで、競争力を飛躍的に向上し、特に世界第3位の規模にある国内市場において勝ち残り、残存者利益を最大限獲得します。二つ目に、人材力を引き上げるとともに、ワークエンゲージメントを飛躍的に高めることで、生産性や合理性を高め、収益性を圧倒的に向上させます。三つ目に、M&Aを駆使して、既存領域および新規領域での事業を飛躍的に拡大することで、収益規模そのものを一段も二段も引き上げます。これらの基本方針に沿う形で、営業部門はもちろんのこと、管理部門やグループ会社でも具体的な仕組みづくり、仕掛けづくりを始めています。
・ 「中計2026」の初年度(2024年4月以降)の実例としては、ドイツ、フランス、ポルトガルでの紙および周辺素材の卸売事業の買収が挙げられます。従来から持っている米国事業、フランス事業、ドイツ事業などとのシナジーも既に発現しており、「長期ビジョン2030」の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができました。
・ 株主様に対する還元方針も、「中計2026」で具体的にお示ししています。配当に関しては、これまでも記念配当を除いて減配はありませんでしたが、「中計2026」期間中の方針として、連結配当性向30%以上とする累進配当をお約束しました。
・ また、ご好評いただいている当社グループ内のコアレックス社製トイレットロールは、従来の1,000株条件から500株(5単元)条件に引き下げ、優待品として各1ケースを株主の皆さまにご利用いただいています。

4.APPENDIX
・ 当社が利益指標としている経常利益は、過去最高である2022年度の212億円を上回る220億円、ROEは8.0%以上、ROAは5.0%以上、ROICは7.0%以上を目指し、ネットD/Eレシオは1.0倍以下にコントロールして、長期発行体外部格付けを現行のシングルAに維持、あるいはさらに向上させたいと考えています。
・ 祖業である卸売が事業の中核である当社グループにとって、人材が最大の資産です。「中計2026」においても人的資本強化のためのさまざまな施策を設定し、鋭意取り組んでいます。
・ ゴールの達成やビジョンの実現に向けては、まずはそのゴールやビジョンの内容、背景、策定者の意図をメンバーに共有、共感してもらうことが最も重要だと考えています。過去にも経営サイドから従業員への発信の強化には努めてきましたが、一方通行に落ち陥りやすいため、昨年より、私と部長職、課長職、非管理職従業員も含めた対面での対話会や、社長メッセージの全社ライブ配信、その動画アーカイブの設置など、経営サイドと従業員との双方向のコミュニケーションの機会を増やし、経営サイドの思いや考えに対する共有、共感を図っているところで、「長期ビジョン2030」実現に向けて、明らかな手応えを感じ始めています。
・ 同様に、投資家の皆さまとの共有、共感も重要だと考えています。当社Webサイト内に個人投資家の皆さまに向けてより充実したコーナーを配置すべく、準備を進めています。
・ 当社としては、これまでも、そしてこれからも企業理念を常に航海の羅針盤とし、「長期ビジョン2030」の実現を通じて、ステークホルダーの皆さまのご期待に誠心誠意お応えしてまいります。皆さまにおかれましても、ぜひとも当社グループの更なる発展成長を近くで見守っていただけますと幸いです。

7.質疑応答
Q1.防災用としての紙・段ボール製品の開発が進み、製紙業界も潤うように思いますが、かさばって倉庫が追いつかなくならないのでしょうか。
A1.防災用というご質問ですが、厳密には災害発生時の避難生活、あるいは避難所生活で活用される紙製品、段ボール製品、つまりはトイレットペーパーや段ボールベッド、段ボールシート、段ボールの間仕切り、そして段ボール製の簡易トイレなどを意図したご質問かと想像します。その前提でご回答すると、当社グループが製造販売している再生トイレットペーパーの製造工場や、段ボールのシート、ボックス、製品の加工工場は、他社も含め、段ボールの原紙や印刷用紙などの製品の工場に比べて小規模な工場が多く、全国各地に数多く点在しているのが特徴です。したがって、自然災害等が発生した場合、仮にその地区の工場が被災したとしても、近隣あるいは他地域の複数の工場から緊急支援できる体制が整っています。
 また、これらの製品は、用途的には極めて汎用性が高く、例えば一般的な段ボールのシートやボックスがあれば、簡易的なベッドやフロア、間仕切りにも利用できますし、トイレットペーパーであればペーパータオルやティッシュペーパーの代わりにも使うことができます。各工場でも日頃から一定の原紙在庫や製品在庫を持っているので、災害の規模にもよりますが、比較的ハイレベルな緊急支援が行えるものと考えています。
 昨年元日の能登半島大地震をはじめとする災害発生時には、自治体の要請に応える形で、当社グループも業務提携先と連携し、トイレットペーパー等をいち早く緊急輸送しています。トイレトレーラーも当社販売先の自治体より被災者の避難所等にいち早く派遣されており、高い評価を頂いていることも申し添えたいと思います。

Q2.今後、自社株はどのような活用を考えていますか。
A2.当社が現在保有している自己株式は、主要金融機関や製紙会社などの大株主からの売却意向を受けて取得してきたものが大半です。当社はこれまで、今後の経営環境の変化に応じて、株式交換によるM&Aの実施などの資本政策を柔軟に実行できるように、自己株式として保有してきました。その他には、少額ではありますが、株式報酬型ストックオプションの権利行使時の付与、株式報酬制度の信託財産に充当しています。また、2月10日に開示したとおり、当社従業員に対する業績条件型譲渡制限付き株式インセンティブ制度の導入を予定しており、これにも自己株式を充当する考えです。
 これらの株式報酬制度は、当社役職員が、株主の皆さまと同じ思いで、業績の向上、株価上昇を強く意識し、企業価値の持続的な向上を図ることに寄与する制度だと考えています。

Q3.欧州はドイツやフランスの企業買収で売上に寄与していますが、イギリスでの企業買収はお考えですか。
A3.当社は、昨年末のドイツとフランスの買収に先立ち、既に2019年にイギリスの大手有力紙商Premier Paper Group Limitedを買収済みです。さらには、そこを起点として、アイルランドの紙流通におけるリーディングカンパニーであるGPMI社(Graphic And Paper Merchants Holdings Limited)、イギリスの商品陳列パッケージの販売会社等も買収しています。こうした各社のサプライヤーリレーションや物流効率化などの面で、既にシナジーを発揮しています。
 米国の子会社であるGould Paper Corp.という紙流通企業も、イギリスやフランスにさらなる子会社を持って活動しており、当社が従来から保有していたドイツでの現地法人も含め、今後は拡大したヨーロッパでのネットワークの総合力を飛躍的に高めていきたいと考えています。
 また、昨年末に買収したドイツ3社とフランス2社の業績は、実質的には2025年度の当社連結業績から反映されることになります。

Q4.ペーパーレス化対策について教えてください。
A4.環境的な側面のみならず、経済的な側面からも、個人あるいは企業においても、無駄を省くという意味でのペーパーレス化の動きは、サステナブルな社会や地球環境を目指す上で当然のことだと考えています。実際に紙を専門に扱う当社グループにおいても、サステナブル経営を推進する中で、ISO14001の一環として、社内で使用するコピー用紙の削減目標を毎年設定し、現に削減努力を続けているところです。
 しかし一方で、長い年月をかけて文化のバロメーターとして、経済成長とともに発展拡大してきた紙に対し、近年、急激に存在感を増しているデジタル化の流れの中で、本来紙やアナログのほうが機能面や精神面、情緒面、効能面で優位性があるにもかかわらず、デジタル技術の目新しさや勢いにのまれて安易にデジタル化されてしまっている用途が決して少なくないのではないかということを私たちは危惧しています。
 最近では、紙の書籍の効能、特に若年層への効能が取り沙汰され始めている中、書店の著しい減少が問題視されたり、教科書のデジタル化の是非に関する議論が活発化したり、行き過ぎたデジタル化の是正や紙の機能役割の再認識などが重要なテーマになってきていると感じています。
 当社でも、2023年開催のフォーラム以降、そうした面において業界をリードする活動を鋭意展開しています。日本製紙連合会や製紙メーカー各社とも連携しながら、紙の環境優位性も含めて、社会全体にアピールしていこうと考えているところです。

Q5.国内紙流通のリーディングカンパニーとしての御社の強みについて教えてください。
A5.国内の紙流通として、創業180年の歴史の中で築いてきた取引先からの信頼が営業活動の基盤になっていると考えています。お客さまからの信頼に応えるための紙に関する専門性や、業界内外でのネットワークを最大限活用した提案力、組織力が当社の強みです。また、大きな飛躍であった前「中計2023」で獲得した安定した収益力、充実した資金力、世界に広がるビジネスプラットフォームをベースに、これらを総合的に駆使することにより、安易な価格対応ではなく、機能やサービス、付加価値などのあらゆる面での提供価値を高めることで、取引先からの更なる満足度向上につなげています。
 また、当社グループは、国内での紙の販売のみならず、海外卸売、製紙加工、環境原材料セグメントなど、紙の原料から製造、加工、販売までのサプライチェーン全体をグループ内に抱えていることが一つの大きな特徴です。このことで経済的なリスク、地政学的なリスク、各国地域による社会的なリスクに対する耐性も、競合他社に比べて圧倒的に高まっていると自負しています。加えて、極めて健全な財務基盤の構築にもつながっていると考えています。

                                      以上

 

 

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