株式会社セラク(6199)
開催日:2025年3月4日(火)
説明者:代表取締役 宮崎 龍己 氏
1.会社概要・事業内容
・ 当社は「IT技術教育(人材育成)によりビジネスを創造し、社会の発展に貢献する」を経営方針としています。1987年に設立し、創業社長の宮崎が現在も代表取締役を務めています。連結従業員数は約3,400名で、90%以上がITエンジニアで構成されています。
・ これまで新しい技術トレンドに先駆けて事業化を行うことで、規模拡大とともに利益成長を続けてきました。クラウドシステム運用・定着化事業につながるSalesforce領域にも2010年代初めから取り組み、これが現在のセラクCCCにつながっています。
・ また2014年には、農業にITで貢献する「みどりクラウド」事業を立ち上げました。そして2023年には、生成系AIサービスの「NewtonX」を開始するなど、大きな社会課題や未来を変えていく先進的技術において自社サービスを創造し、事業化しています。
・ 今後も技術トレンドに先駆けた事業化に加えて、高い利益率での成長を実現する自社サービスによって拡大を続けていく計画です。
・ 次に、当社が現在向き合う社会課題と、その取り組みについてです。当社では、まずIT人材の不足や、ITシステムのクラウド移行に取り組んでいます。そして、社会の大きな課題である農業および一次産業に対して、ITによる生産性向上や課題解決を実現する「みどりクラウド」事業を行っています。
・ さらに、生成系AIのビジネス活用についても、その将来性を見込んでいます。当社は、急速に発展する市場において、AIニーズの発掘から導入・運用を実現する「NewtonX」を通じて企業のAI化を支援しています。
・ これらの課題に取り組む当社の事業は、「デジタルインテグレーション」、農業ITを手がける「みどりクラウド」、事業子会社セラクビジネスソリューションズの「機械設計エンジニアリング」という3つのセグメントで構成されています。
・ 主な事業である「デジタルインテグレーション」セグメントについては、ネットワーク構築・運用などのITインフラや、業務システム開発を手がける「システムインテグレーション領域」と、クラウドシステム定着活用支援などを手がける「デジタルトランスフォーメーション領域」で構成されています。
・ 「システムインテグレーション領域」は規模が大きく、顧客との案件が長期かつ安定的に継続するため、積み上げ型での成長が特徴です。そして「デジタルトランスフォーメーション領域」は成長性が高く、先端領域のため、高い付加価値が特徴となっています。
・ 2025年8月期においては、売上高245億円、営業利益25億5,000万円を計画しています。
・ 今後の業績マイルストーンとしては、まずクラウドシステム運用・定着領域の利益率向上によって営業利益率を高め、早期に営業利益40億円を達成したいと考えています。そして、現在投資フェーズにある自社サービスが収益化フェーズに移行する段階で、営業利益率を15%以上に高め、時価総額の最大化を実現します。その時価総額を背景に、新しい技術領域での事業拡大など、多角的な成長の取り組みによって売上高を500億円に拡大し、その後の成長へとつなげていきます。
2. 成長戦略
@ ビジネスモデル進化による利益額拡大の取り組み
・ 当社は「IT人材創出モデル」によって新しい技術トレンドに対応し、ビジネスの創造、市場の拡大に応じた地方展開、そしてエンジニア数の拡大を行うことで収益性を高めていくなど、独自のノウハウで優位性を獲得してきました。
・ 加えて、エンジニア数によって成長を実現する従来のビジネスモデルを進化させ、エンジニア採用に依存しない新たなビジネスモデルを構築し、今後の高成長に向けた取り組みを進めています。その成長性は、今までをはるかに超えるものになると考えています。
・ また、当社のエンジニアだけでなく、パートナー企業約1,500社の人材をプラットフォーム上で可視化し、顧客との案件にマッチングさせる仕組みも確立しています。成長の大きな力となるパートナー企業は、この半年で500社以上増加しており、システム開発会社を中心に順調に拡大を続けています。
A クラウドシステム運用・定着の将来像
・ 現在、世界のクラウド市場は拡大を続けています。2024年には100兆円を突破し、2030年までに150兆円規模まで拡大することが見込まれており、特に企業ITシステムのクラウド化と生成AIの活用がさらに進むことが予測されています。
・ 当社はこれをクラウド化による新市場の出現と捉え、旧来のIT時代とは大きく異なるスキルを持つ「カスタマーサクセス人材」の育成によって、優位性を獲得しています。
・ クラウド化の領域においては現在、顧客管理・営業管理システムの「Salesforce」、人事・労務システムの「COMPANY」、業務プロセスデジタル化の「intra-mart」を手がけています。
・ 当社は、単にクラウドシステムの初期開発や導入を行うのではなく、その後の永続的な運用・定着支援を伴走型で行う「カスタマーサクセス」を最大の強みとしています。今後は年間20%以上でカスタマーサクセス人材数が増加し、顧客数が5年間で3倍の600社以上となることを見込んでいます。
・ この領域は全社平均を上回る高い売上成長率と利益成長率で推移していますが、今後もセラクCCCでは営業利益率15%以上、カンパニー領域では営業利益率20%以上を実現するビジネスになっていくと考えています。これは、当社のカスタマーサクセスが付加価値として市場で評価されていることに加えて、人材の希少価値が高く、先行優位性を有していることが理由となっています。
・ 今後もカスタマーサクセスにおいて国内ナンバーワンのポジションを確立し、利益率と売上成長率をさらに高めていきたいと思います。
B 自社サービスの収益化への取り組み(らくらく出荷)
・ 当社では、農業を含む一次産業の将来課題にITで貢献する「みどりクラウド」事業を2014年から開始しています。
・ ビニールハウスなどの圃場環境をIoTでモニタリングする「みどりクラウド」や、畜舎環境に応用した「ファームクラウド」だけでなく、そこで培った技術を農水産ソリューションとしても提供してきました。
・ その中で、JAひろしまとの取り組みにより、QRコードとスマートフォンアプリを用いて青果の集出荷業務を効率化する「らくらく出荷」を開発しました。これが大きな効率化をもたらすと評価され、現在は全国のJAに向けて販売を開始しています。既に複数のJAにおいて導入の準備が進んでおり、今後は流通ラベル数に応じた売上利益の拡大が見込まれています。
・ 直近では年間1億2,000万枚の流通量を目標とし、将来的には集出荷以降の工程におけるサービス拡大や、漁業などの農業以外の流通にも応用を見込んでいます。これはまさしく、農業のDX化の本流となるものです。
・ これまでの出荷作業は、市場出荷物の取りまとめや検品に人員・時間・労力がかかり、出荷する生産者と、集荷するJA担当者の双方にとって負担となっていました。生産者は伝票と段ボールへの記入作業があり、集荷担当者は伝票をもとに数量を目視で確認し、販売伝票を書き起こしていました。場所の制限もあり、全て人の手に頼った作業であったため、間違いが起こりやすい状況でした。
・ この集出荷作業における課題を解決したのが「らくらく出荷」です。「らくらく出荷」の導入によって、手書きの紙伝票を使用することがなくなり、作業時間の短縮と労力の削減が達成され、人的エラーが発生しにくい状況となりました。
・ 出荷先ごとに伝票や段ボールの記載が異なり、それぞれ用意する手間が負担となっていた点についても、「らくらく出荷」によって紙媒体でのやりとりが減りました。生産者番号や規格などを手書きする必要がなくなり、シールを段ボールに貼るだけになったことで、出荷作業のスピードが上がって全体の時間短縮につながっています。
・ 加えて、「いつ、誰が出荷に来たのか」を出荷担当者がタブレットで確認できるようになり、生産者へのサポートをより迅速に行うことが可能となっています。
・ JAひろしまは、2023年4月に県内9つのJAが合併したことで誕生しました。元の9つのJAでは集出荷業務において同じ課題を抱えていましたが、現在はこのシステムを圏域に普及させ、よりスケールメリットを生かした生産販売を実現することが期待されています。
・ このような新しいサービスだからこそ、当社はユーザーと密に連携を取り、要望のある機能について随時アップデートを行いたいと考えています。今後も「みどりクラウド」では、データ活用によるスマートフードチェーンの実現や、付加価値の高い青果流通に寄与していきます。
C 自社サービスの収益化への取り組み(NewtonX)
・ 昨年頃からAIビジネス市場が急速に拡大していますが、今後はAIの活用が企業成長に大きく影響を及ぼす社会になり、さまざまな業務でAI活用が進むことが予測されています。
・ その中で、当社はいち早くAI活用サービスの「NewtonX」を開発し、事業化を行いました。また、強みであるクラウドシステム運用・定着領域など、生産性向上に役立つ分野に向けてサービスを進化させています。
・ そして、ITエンジニアの生産性や事業成長にもAIの活用力が大きく関わる未来を想定して、当社自身の「AIシフト」を開始しました。具体的には、教育プログラムや社内認定制度にAIを導入し、生産性を高めるエンジニアの育成に取り組みます。また、AI活用のノウハウを社内に蓄積し、さらなる顧客貢献にもつなげていきます。
3.当期計画進捗および株主還元施策
・ 2025年8月期の通期計画において、売上高は前期比10.3%増となる245億円を見込んでいます。また、営業利益は前期比12.1%増となる25億5,000万円を計画しています。
・ 今期の配当は13.2円を予定しており、配当性向は10.4%となります。
・ 第1四半期の決算発表に関しては、売上高が前期比15.6%増となる62億円、営業利益が前期比46.4%増となる7億6,800万円となっています。通期計画に対しては、売上高が25.3%、営業利益が30.2%の進捗となり、計画達成に向けて順調に推移しています。
・ 今期はビジネスパートナーの活用、エンジニア教育の取り組み、DX領域の事業拡大によって増益となりました。これは、新サービスに先行投資を行った上での増益となります。
・ また、今期も自己株式取得を実施し、継続的な株主還元を行います。個人投資家の皆さまには、ぜひ当社について知っていただき、株主として応援していただければと思っており、今後も企業説明会を実施していく所存です。
・ 2016年7月からのPER、営業利益率、株価、売上高、営業利益および各期の成長戦略の相関を見ると、売上高の成長による規模拡大を続けながら営業利益率を高めていることが分かります。
・ また成長戦略としても、クラウドシステム運用・定着領域の事業成長や、大きな利益貢献が見込まれる「らくらく出荷」および「NewtonX」への投資を行っており、今後の成長が見込める中で、現在の株価水準は割安だと言わざるを得ません。当社の成長戦略を多くの投資家に評価していただき、その戦略を着実に実行していくことで、株価水準は上がっていくものと確信しています。
・ さらに当社は、前期に40万株の自己株取得を行い、その約半分を償却しています。2025年8月期においても同様の取り組みを進めています。業績連動型配当による増配に加えて、自己株式取得および償却を継続し、株主の持ち株比率を高めることで、株主還元の増加に取り組んでいきたいと考えています。
・ これまで実行してきたことを今後も継続していく当社の将来について、ぜひ想像してほしいと思います。
4.質疑応答
Q1. 配当や優待など、株主還元についてどのように考えていますか。
A1. 配当については、安定配当に加えて、利益成長に応じた業績連動型配当を導入しています。また、継続して自社株買いも行っています。なお、株主優待については現在行っておりません。
Q2. 中期目標達成を目指す成長戦略について教えてください。
A2. IT人材プラットフォームによって、自社エンジニアだけに頼らない事業性成長を実現していくとともに、成長性が高く、先進性を有するクラウドシステム運用・定着事業に注力していきます。また、利益率が高い自社サービス「らくらく出荷」の成長が今後明らかになっていく見込みです。これらにより、今後さらなる利益成長を実現していきます。
Q3. 貴社の独自性や優位性について教えてください。
A3. 新しい技術トレンドに先駆けて人材育成や事業化を行うことで、先行優位性を獲得しています。その中でも、セラクCCCに代表されるクラウドシステム運用・定着事業が大きく成長しています。
Q4. 主力事業の「デジタルインテグレーション」では、具体的にどのようなニーズが多いのでしょうか。
A4. ITインフラの構築や保守運用を中心とするニーズが堅調です。また、DX領域でのクラウドシステム運用・定着のニーズが非常に増えています。当社の強みである「Salesforce」および「COMPANY」は、カスタマーサクセスサービスとして国内トップクラスだと認知されています。
Q5. IT人材プラットフォームの取り組みにおける「ウィナーシッププログラム」について教えてください。
A5. 「ウィナーシッププログラム」は、当社の技術教育プログラムをパートナー企業の社員に無償で提供するものであり、コストをかけずに、パートナー企業の人材に対して実践的な教育を実行できます。プロジェクトに参画するパートナー企業の人員を、当社が求めるクオリティーで育成することが可能です。
Q6. 「みどりクラウド」のこれまでの取り組みや将来性について教えてください。
A6. 「みどりクラウド」事業は、ビニールハウスなどの圃場環境をモニタリングし、農作物の生産性を高めるサービスとしてスタートしました。また、そこで培った技術を養豚や養鶏などの畜産業にも応用しています。現在は全国のJAに対して、農作物の集出荷支援サービス「らくらく出荷」の導入を推進しているところです。今後は農作物の流通量に応じた事業拡大が見込まれるだけでなく、他の流通分野への応用など、成長性の可能性が非常に大きいと考えています。
Q7. 「らくらく出荷」の導入拡大について、具体的な進捗を教えてください。
A7. 2025年4月からの新年度に向けて、既に複数のJAで取り組みが決定しています。導入を見据えたトライアルの実施が進んでいるケースや、トライアルを予定しているJAが着実に増えています。
Q8. 今後想定される事業上のリスクと、その対応について教えてください。
A8. 1つ目は、採用市況が年々厳しくなっている点や、人材の流動化が進んでいる点から、人材採用のリスクが挙げられます。そして2つ目は、離職リスクです。当社では、それぞれのリスクについて対策を実施するとともに、パートナー企業を増やすことで、自社の採用力にとどまらない成長を実現したいと考えています。
Q9. 直近の四半期決算における利益成長の要因は何でしょうか。
A9. 利益率の高いDX領域の伸長や、ビジネスパートナーの活用、エンジニア教育による高付加価値化が主な理由です。「みどりクラウド」および「NewtonX」への先行投資を行った上で、この利益成長を実現しています。
Q10. 今後の資本政策について教えてください。
A10. 資本政策として、自己株式の取得を実施しています。また、取得した株式の一部を償却し、株主還元を行っています。なお自己株式は、M&Aの実行や優秀な人材の獲得に活用していきます。
Q11. 優秀な人材の採用と教育はどのように行っていますか。
A11. 中途採用では、通年でポテンシャル重視の採用活動を行っています。教育としては、実践的なスキルを身につけることを重視した初期教育を行っています。新卒採用については他社と大きく変わらず、自社の独自性を伝えていくことを大切にしています。近年は「AIやクラウドといった最先端の技術に携わりたい」と入社を希望する学生が増えています。
Q12. 株価対策の方針について教えてください。
A12. まずは利益成長を実現していくことが大事だと考えています。また、株主還元として業績連動型配当や継続的な自社株買いを行っていきます。
Q13. 特にIT人材では高い報酬推進水準が続いていますが、貴社の現状の報酬水準や、報酬アップの施策について教えてください。
A13. 新卒の初任給の引き上げや、例年以上の報酬アップなど、報酬水準の向上に取り組んでいます。また、高い技術を持ち、プロジェクトで活躍している人材については、高度先端技術手当を支給しています。その他、高い付加価値を生むDXへの技術シフトなどによって、能力があり実績を出している人材が高い報酬を得やすい仕組みづくりを進めています。
Q14. 従業員のモチベーション向上施策や、人材流動化対策について教えてください。
A14. 当社では報酬アップのシナリオを掲げており、この実現のために、必要な資格取得や顧客貢献などを事業ごとに定め、各社員が取り組むことを推進しています。また、マネジャー人材の育成プログラムも実行しています。その他、ウォーキングイベントなどを中心に、長期的な活躍のための心身の健康の取り組みにも注力しています。
経営理念の一つである「社員の幸福を追求する」を中核に置いた経営を行っていくことで、社員に選ばれ続ける企業でありたいと考えています。
以上
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