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株式会社ワコム(6727)
開催日:2025年3月15日(土)
説明者:代表取締役社長 兼 CEO  井出 信孝 氏

1. 事業説明〜ワコムがお届けする「体験の旅」〜
・ ワコムを皆様、聞かれたことがあるかどうか。実は日常の暮らしの中でも、クレジットカードのサインをするデバイスやホテルのチェックインのデバイスで、ワコムという名前をご覧になっているかもしれません。
 僕たちは創業から41年、「デジタルで描く/書く」ことに、ずっとフォーカスしてきた会社です。その一つが、世界初のコードレスペンタブレット。このペンタブは、ディズニーが「美女と野獣」のアニメーション映画を初めてデジタル化する時に提供した道具です。そこから始まり、今、すごく大きな進化を遂げているデバイスを作っています。
・ また、同じくワコムブランドで去年出した「Movink(ムービンク)」は、薄さが4mmで重さが420g。コクヨのキャンパスノート1冊分の軽さしかありません。液タブ(液晶タブレット)の世界も進化しています。
・ 先月発表した板タブ(板型ペンタブレット)の「Wacom Intuos Pro」は、画面の上に直接書くのではなく、パソコンに繋いで、この板の上で描く道具ですが、これも非常に薄くて軽い。こちらも以前のモデルから進化させて発表しています。
・ 現在運営中の中期方針は「Wacom Chapter 3(ワコム チャプタースリー)」と呼んでいます。ここでは「Life-long Ink(ライフロングインク)」というビジョンを掲げています。
「ライフロング」とは、お客様の長い長い時間軸、一生涯。「インク」は手書きをするということ。これを「僕たちの技術で一生涯、並走させてください」という約束を、ビジョンとして掲げています。
・ もう1つは「道具屋」。ドンと大きく書いた文字は、見事な書道に見えますが、実は僕たちの液タブで書家の方に書いていただきました。
「道具屋」。僕たちはデジタルを扱う会社ですが、決してITプロバイダーやDXソリューション会社ではありません。人間がこの手に握って使う道具を提供する、道具の体験を提供する会社であり続けることを含め、自分たちを「道具屋」と呼んでいます。
・ ワコムのコア技術には、デジタルペンの技術とデジタルインクの技術があります。
デジタルペンの技術では、原理的にはシンプルな電磁誘導方式と静電結合方式という技術を使い、自然な書き心地を実現しています。
デジタルインクの技術では、デジタルペンから出てくるデータを使い、色々な新しいサービスやソリューションを提供しています。
ハードウェア+ペンのデータ(ソフトウェアやサービス)が僕たちのコア技術です。
・ 2つの大きな事業ユニットがあります。一つは「ブランド製品事業」。ワコムというブランドの冠をつけた完成品を主に販売している事業です。
もう一つが「テクノロジーソリューション事業」。これはワコムのブランドの冠はついていませんが、デジタルで書くという技術を切り出して、色々なお客様に展開している事業です。例えば、Galaxyのスマホでペン付のものがありますが、このペンはワコムの製品です。この他にも最近、パソコンやタブレットにペンが付いていることが多いのですが、ほとんどが僕たちの技術です。ただ、Appleは違います。Appleは素晴らしいコンペチターであり、ライバルです。Apple以外でペン付のパソコンやタブレットを見かけたら、大体ワコムのものです。
デジタルインク部門は、ハードウェアだけではなくて、ソフトウェアやサービスとしてペンから出てくるデータを使って新しい体験を作っていくユニットもあります。
こんな「道具屋」であるワコムは、単なるハードウェアの物売りだけではなく、ソフトウェアやサービスも含め“コト”として体験をお届けする、ワコムがプロデュースする“モノ”と“コト”で展開しています。

【道具屋ワコムがプロデュースするモノとコト@】
・ まず原点は、「筆が走る」体験をお届けしたいと考えています。筆が走るというのは、皆様もご経験あるかもしれません。字でも絵でも何かを書いて/描いていて、忘我の域に達し、筆が止まらなくなることです。これを僕たちがいかにユーザーにお届けするか。その相手はクリエイターに限らず、勉強する人も教える人も文章を書く人も皆様に筆が走る体験をお届けしたいと考えています。
・ 筆が走る体験を実現するモノとして、液晶タブレットやペンタブレットを提供しています。これらはプロの人にも、アマチュアや絵を個人で楽しむ方にも使っていただいています。具体的にCintiq Proは、アニメスタジオや映画スタジオで1,000台もの規模でクリエイターに使われています。また、少しお求めやすい価格のプロダクツもあり、中学生や高校生が絵を始める段階で使っていただく商品もあります。

【道具屋ワコムがプロデュースするモノとコトA】
・ それ以外に「日常に溶け込む」ペンも提供。これは絵を描くよりも日常使い、例えば、ノートを取るとか、メモを書くとか、ホテルのチェックインなど、日常に溶け込み何かを書くという行為をデジタル化する時にご提供しています。
・ 製品としては、スマホのペンや折りたたみタブレットのペンなどを展開。パソコンやタブレット、スマートフォンだけでなく、デジタル文房具と僕らは呼んでいますが、色々なアナログの文房具をデジタル化するお手伝いもしています。
 僕のご自慢のペンケースには、鉛筆風や万年筆風の色々なペンが入っていますが、全部デジタルペンです。ドイツの筆記具メーカーのLAMY(ラミー)のボールペンをデジタル化したり、三菱鉛筆のブランドのHi-uni(ハイユニ)の鉛筆をデジタル化したりしています。小学校や中学校でよく使われるパイロットのDr. GRIP(ドクターグリップ)もデジタル化して、タブレットの上で使えるようにすることも僕たちでやっています。

【道具屋ワコムがプロデュースするモノとコトB】
・ これまで“モノ”についてお話してきましたが、ここからは“コト”についてお話します。まず、僕たちはAIと組んで新しい体験を作ろうとしています。例えば、クリエイターがイラストを描く。その時、クリエイターはデジタルペンを動かしたり、消したり、色を変えたりして、7〜8万ストロークの軌跡を残します。このクリエイターが絵を描く過程を僕たちは全部デジタルで捉え、深層学習のモデルを開発し、このクリエイターにしかない唯一無二の筆使いの特徴を抽出します。それを僕たちは人間の指紋ならぬ「絵紋(えもん)」と呼んでいます。クリエイター一人ひとりが持つ筆遣いの特徴である絵紋を抽出し、サービスに変えることもしています。
例えば、あるクリエイターが違う絵を描いても、同じ人なら大体同じような特徴が出ます。また、20〜30人のクリエイターが同じモナリザを模写しても、それぞれの描き方により絵紋が違う。僕たちは一人ひとりが持つ特徴を抽出することに成功しています。
これを使い、ファンが絵紋をシェアしたり、イラストを学んでいる人に、憧れの先生と自分の特徴の差を可視化することができます。何よりも絵紋は唯一無二なので、作家と作品を結び付けられる。その作品をこの作家が描いたことの証明もできる。そういうサービスに展開しようとしています。
・ Wacom Yuify(ワコムユイファイ)は、昨年の秋口にベータ版を発表しました。これはイラストに仕込むデジタル透かしのようなサービスです。人間の目には見えないので普通のイラストに見えますが、特殊なソフトウェアのスキャナを使うとしっかりウォーターマーク(透かし)が見えるようになります。そしてイラストの作者や制作日時・場所、使用したツールが明らかになり、創作の証を証明できるサービスです。
これは昨年発表し、非常にバズりました。今のAI時代・デジタル時代の中で、自分が描いたことをデジタルの世界で証明するのはすごく大事です。また、デジタル作品を買う時に制作者を証明できるのもすごく重要です。
Wacom Yuifyの「ユイ」は、日本語の「結」に由来しますが、作品と作家をデジタルの世界でもしっかり結びつけて、それを証明する。このような“コト”のサービスを展開しています。今はまだベータ版なので、商用化サービスとして2025年度に何とか実現したいと考えています。

【一般教育向けタブレットにワコムの技術を搭載:Z会×ワコム】
・ 次の“コト”は、ガラッと変わり、教育です。通信教育のZ会とコラボしています。
通信教育は、昔は紙と郵送。生徒さんが回答を紙に書いて郵送で送り、先生が添削して送り返す。今はこれが全部タブレットになっている。僕たちはZ会のDXをお手伝いし、僕たちのタブレットやペンを使っていただいています。
デジタルなので、生徒さんが書いた回答をプレイバックできる。それも単にプレイバックして自分の回答を見るだけでなく、生徒さんが回答を記入する時に迷ったり、試行錯誤した箇所を筆跡から追うことができる。そこを目立たせる試行錯誤ポイントのハイライトのサービスをしています。
また、生徒さんがタブレットに書いた量を距離に直し、東京から東海道を歩む「インクジャーニー」というサービスも提供。「もう神戸まで来た!」「なかなか成績は上がらないけど、こんなに勉強している」と生徒さんのモチベーションを上げ、ご好評いただいています。
ワコムの技術は、単にデジタルで書いて便利になるだけではなく、生徒さんのモチベーションを上げるサービスに展開しています。
この他にもZ会向けサービスに「学び検索チエノワ」があります。タブレットを使い勉強する中で、わからない言葉を検索すると、その意味を示すだけでなく、関連する周辺知識も表示。生徒さんの興味の広がりをサポートしています。
Z会向けサービスのポイントは、単にハードウェアを売るだけでなく、生徒さん一人ひとりにチャージするサブスクのようなビジネスモデルを新しく始めています。

【VR空間にも「描く/書く」を追求】
・ 画面や板の上に書くのがこれまでのワコムのソリューションでしたが、僕たちは空間に何かを書くソリューションも作っています。それがVR Pen(VRペン)です。
VR Penは、普通の板タブも使えますが、VRのゴーグルを被ると、VR空間の中でお絵描きができたり、図面を書いたり、デザインができる。そんなソリューションを今、鋭意開発中です。これもなんとか来年度に商用化するメドが立っています。
車のデザインやインテリアデザイン、医療のアプリケーションなど、VRが使われる場面で、空間に描き込んだり、削り出していく体験(コト)を提供できます。

2. 連結業績と株主還元
・ 今月締めることになる第42期・2025年3月期の業績について。今年度の当初に計画した売上高1,200億円、営業利益85億円の予想は変更せずに今日まで来ています。この数字をベースに、しっかりと42期を着地しようと思っています。
・ 売上高の推移は、コロナ禍で少しデコボコしていますが、基本的には伸びています。
・ 営業利益は2023年3月期、コロナ禍後に、ブランド製品事業が少し沈んだため、凹んだ部分ありますが、その後、ワコム全体として順調に回復基調にあります。
・ ブランド製品事業が少し苦戦していため、去年の秋口にトランスフォーメーションのプランを発表しました。売上規模と固定費の規模のバランスが取れなくなっているので、結構大掛かりな改革を実施中です。
金額としては20億円以上の固定費を削減。人員ポジションとしては、ワコム全体の15〜20%のポジションをクローズするトランスフォーメーションを実行中で、今、計画通りに進んでいます。目標としては、赤字が続いていたブランド製品事業を来期・2026年3月期にしっかり黒字化させることを目指しています。
・ 株主様への還元としては、配当と自己株式の取得を両方使いながら、安定的な配当と機動的な自己株式の取得で還元に努めています。

3. 中期経営方針
・ この3月は実は狭間にあります。2ヵ月後の5月に「Wacom Chapter 4(ワコム チャプターフォー)」という新しい中期計画を発表する予定です。まだ、今日は詳しいプランや経営数値は申し上げることができませんが、ぜひ5月にご注目ください。
・ 今日は触りの部分というか、大きな方向性だけ申し上げます。今運営中の中期計画・Chapter 3は、ハードウェアやソフトウェア、サービス、色々なコミュニティ連携など、新しいことに取り組み、個々には非常に成果を上げています。
来月から始まるChapter 4のポイントは、色々なペンやペンとインクにまつわる技術、体験、コミュニティ等を全部統合し、「ペンとインクの統合体験」としてお客様にご提供していく。新しい技術をこれまで色々と開発してきたけれど、それをいよいよ市場実装していく。そんなイメージを持っていただければと思います。
・ 成長に向けた投資にも幾つか取り組んでいます。その一つが、昨年12月にリリースしたPreferred Networks(プリファードネットワークス)社と資本提携し、共同開発を進めることです。Preferred Networksは、日本が誇るAIのユニコーン会社です。
AIとワコムは非常に大きな可能性があります。例えば、ユーザーの筆跡データを捉え、僕たちのオリジナルの深層学習モデルでその特徴量を抽出する技術を開発しています。
これはクリエイティブだけでなく、色々なところに展開可能。例えば医療関係なら、病気や認知症に対し、それらの症状が出る前に、患者さんの筆跡からその傾向を読み取ったり、レベル感を読み取り、悪化する前に医療的なサービスを提供する。筆跡は、単に絵を描くだけでなく、自分の内面や状況みたいなものを表します。それを僕たちのデジタル技術を使えば捉えられる。特徴量やその推移などの宝物のようなデータを使い、ユーザーに役立つ体験を作ることができる。それを具体的に開発し、社会実装・市場実装することを目論んで、Preferred Networksと資本提携しています。
JENESIS(ジェネシス)社にも出資しています。JENESISはポケトークなどのIoTデバイスに特化している会社です。色々なIoTデバイスにワコムのペンの技術をどんどん搭載する。そんな面としての広がりを担保する資本提携もしています。
・ このようなことを背景に、ビジネスモデルが変化しています。
これまでは、ブランド製品事業ならプロダクツを売る。テクノロジーソリューション事業(OEMビジネス)なら、技術を切り出し、部品としてOEMのお客様に提供する。これが既存のビジネスモデルでしたが、最近はペンから出てくるデータを使って色々なサービスを展開。サービスとハードウェアを合わせたリカーリングビジネスモデルに変化しています。通信教育の生徒さん一人ひとりにチャージさせていただいたり、クリエイター一人ひとりにサービスの対価をいただく。こういったもうすでに始まっているリカーリングやサブスクのビジネスモデルを、Chapter 4以降は加速する展開を考えています。
・ 僕たちの市場ドメインには、デジタルコンテンツ市場と教育DX市場、ワークフローDX市場があります。教育DXはEdtech(エドテック)とも呼ばれます。またワークフローDXには、公的なワークフローや普通の会社のワークフロー等、多岐に渡ります。
これらに対して、僕たちのペンとインクの技術が生かせます。そのため、どのドメインも年率2ケタの率で伸びています。これから伸びゆく非常に有望な市場・ドメインの中で僕たちの非常にユニークな技術を展開することをイメージしています。

【利用事例について】
・ ゲームのキャラクターデザインとして、「ストリートファイター6」があります。キャラクターデザインの最初の0から1を作り出すところも僕たちのペンです。また最近は3D-CGでキャラクターを作るので、出来上がったキャラクターのイメージを3D化し、コンピューターグラフィックスで動かすところにも僕たちのペンが使われています。
・ DX事例では、市役所などの公的な場所での申請書の書き込みに僕たちのタブレットが使われたり、戸籍謄本を取り出す時の申請書をワコムのペンで書いたりしています。最近のマイナンバーの申請はほとんど僕たちのデバイスです。この他にホテルのチェックインなど、クリエイティブ以外のところでもDXをお手伝いしています。
・ B to Bでは病院での事例があります。先生がカルテに書き込んで患者さんに説明したり、手術の同意書を患者さんにタブレットでサインしていただくなど、医療現場でもDXが進み、それらのワークフローを僕たちの技術がサポートしています。

【コミュニティ】
・ 僕たちは色々な事業を進めるにあたり、コミュニティを非常に大切にしています。ワコム1社の技術では、色々な体験を作ることがなかなか難しい。コミュニティを作り、その中でパートナーや仲間を作り、そこに関わる人たちに価値や新しい体験を提供することを考えています。
例えば、僕たちは毎年1回「コネクテッド・インク」という大きなコミュニティイベントを開催。色々な企業やユーザーが集まり、デジタルで描く/書くことを中心に新たな挑戦をしています。
・ その中で具体的な共創が生まれています。文房具メーカーのパイロットのDr. GRIP DIGITALも、Z会とパイロットがコミュニティの場で出会い、共同開発することになりました。Z会に新規加入した生徒さんにDr. GRIP DIGITALを使っていただくキャンペーンなどの組み手が広がっています。

4. 企業活動を通じたサステナビリティ
・ サステナビリティにも我々はしっかり取り組んでいます。まず環境の「E」では、そもそもデジタルで書くことが、紙の使用を減らしています。僕たちの商品作りも、なるべく再生プラスチックを使ったり、箱を簡素化するなど、ものづくりの面でサステナビリティを意識しています。
また、枠組みとしても、色々な取り組みをしています。環境に関する指標であるCDPスコアでは、去年のBからA−に少しずつグレードアップしており、社会の一員としての義務を果たすべく取り組んでいます。
・ 社会の「S」も、色々と取り組んでいます。Wacom Creators College Club(WCCC:ワコムクリエイターズカレッジクラブ)は、学生など未来のクリエイターを支えるプログラムです。例えば、ワコムの製品をお求めやすい割引で提供。僕たちの事業を通じて社会(S)とのインターフェースを作る事例です。
・ 学校などの教育現場でも、単なるお絵描きだけでなく、未来のデジタル人財育成のために、僕たちのデバイスやサービスで後押ししています。
・ ガバナンスの「G」については、なかなか尖った取締役会を構成。社外6、社内の取締役3の6対3で運営しています。女性取締役も1人しっかりと定着。非常に質が高くて独立性も高い取締役会を運営し、質の高い議論をしています。
・ 事業全体を中期経営方針のChapter 3からChapter 4にしっかりと拡大しつつ、Meaningful  Growth(ミーニングフル グロース)していく。Meaningful Growthとは、意味深い成長と僕たちは呼んでいます。財務的な成長をしっかり遂げながら、社会や個人、コミュニティと共に、それぞれにとって意味深い成長を遂げていく。そんなことを探求していきたいと考えています。

5. 質疑応答
Q1. 競合企業と競合に対する御社の強みを教えてください。
A1. 競合には、僕たちのブランドの冠をつけたブランド製品事業での競合と、テクノロジーを切り出したOEMビジネスの中での競合があります。
まず、ブランド製品事業では、特に中国から強い価格戦略をしてくるところがあります。ここに対しての僕たちの強みは、やはり技術です。
創業から41年間、描く/書くことに注目している技術があります。これは技術原理やハードウェアだけでなく、ソフトウェアも含め、いかに自然な書き心地をお客様にご提供するかを追求。この技術は、ノウハウや具体的な特許(IP)の保有も含めて、強い部分だと思います。
同時に、その技術をプロフェッショナルに使っていただいている、例えばアニメやゲームのスタジオや映画制作、車のデザイン、服のデザイン等色々なところに使っていただき、そのお客様から得る信頼は僕たちの非常に大きな強みです。
これは単に性能がいいということだけでなく、お客様のワークフローの中に技術が入り込んでいる。例えばアメリカの超大手のスタジオの事例では、ハードウェアを納入するだけでなくて、お客様のスタジオの中で動いているワークフローのシステムに、僕たちのドライバーソフトウェアを最適化して埋め込み、常にお客様と一緒にアップデートしています。
これはやはり、長年のノウハウとお客様からから得ている信頼と僕たちのきめ細かい技術対応があればこそ。こういったことはなかなか真似できないし、他社の参入障壁にもなる。これが僕たちの強みです。
また、今はソフトウェアにも取り組んでいます。単にハードウェアだけでなく、ペンから出てくるデータを使い、新しい技術を作り、一歩先を進んだソフトウェアによる体験提供をしています。機能や性能だけでなく、体験に踏み込んだ価値提供を僕たちは始めている。ここが競合と比べたワコムの強みになっています。

OEM事業でも、今申し上げたワコムの強みは一緒です。ただ、もう1つOEM事業でのユニークな強みは、僕たちとOEMの相手先の企業とは、ワコムの一部の特許を開示しライセンス化しています。
ワコムのデジタルで描く/書くという行為は、ペンとシステムに入れる半導体とセンサーの組み合わせで成立します。半導体をワコム1社で独占すると、天井に行き着いてしまう。そこで、ワコムの持つ技術をセミオープンにしてライセンス化し、ワコムのペンが使える半導体を無限に増やしています。そうすると、ワコムの半導体でなくても、ワコムのペンが使える。ワコムのペンとワコムの半導体なら、最高の組み合わせとなる。こんな状況を作り、OEMのお客様がより採用しやすく、ワコムのペンが使いやすい環境を作る。そういったライセンスのフレームワークを作ることも、ワコムの強みです。

Q2. 御社の製品開発はとても先進的に見えますが、これらの投資を回収するにはどれぐらいのスパンをお考えですか。
A2. お褒めいただき、ありがとうございます。僕たちの技術開発の回収期間は、正直、一つひとつの技術に対し、具体的な期間で一元的に可視化するのはなかなか難しいところがあります。僕たちの技術は、ハードウェアならハードウェア自体の開発もあれば、搭載していく半導体の開発もあります。ペンの信号を受け取るセンサーの開発もあります。同時に、半導体の中に埋め込むファームウェアと呼ばれる制御のソフトウェアの開発やペンから出てくるデータを使った深層学習モデルの開発、およびデータフォーマットの開発等々、本当に多岐に渡ります。
その中でわかりやすくお答えしようとすると、1本のお客様向けのペンとしてのプロダクトで考えると、2〜3年、場合にはよっては4〜5年と長くなりますが、プロダクトのライフサイクルに合わせてしっかり回収しています。
一方、半導体や制御ソフトウェア、深層学習モデルの開発は、1個の商品で使って終わりではなくて、何代にも渡って使われ、何代にも渡ってアップデートしていく開発行為でもあります。そのため回収期間が長く、技術の礎を作る時に大きな投資をするので、回収期間もばらつきがあります。
ただ、いずれにしろ、僕たちの本分は技術会社です。技術イノベーションを常に起こし、開発した技術そのものをどんどん進化させるための投資を考えています。

Q3. これからペンの技術はどのように進化していくのですか。
A3. シンプルですが、力強いご質問、ありがとうございます。ペンの進化は本当にバラエティがあると思います。
ペンの姿形の進化では、結構、今でも、人間が握りやすく手に取りやすい形になっています。この分野は、文具としてのバラエティ。多様性の方向で進化していくと思います。
一方、デジタルで書くという技術の進化の果ては、“モノ”ではなく、“コト”になると思います。一番重要なのは、どのペンかというよりも、そのペンでお客様が何を書いたか。どんな思いで、いつ、どの文脈で書いたのかということが、書くコンテンツで一番大事だと思います。それを考えると、ペンの進化の果ては、ペンで書き付けたコンテンツが物語るようになります。それがメモでも、字でも、文章でも、絵でも、コンテンツ自身がどのように進化していくのか。
僕たちが今、開発している技術を使うと、コンテンツそのものが時空を超えます。過去に遡れたり、未来の空間に自分が書いたものを浮かび上がらせたりします。そして、何かを書いている時の気持ちや状況など、書いている人の内面にアプローチしていく。
また、メディカルや医療のレベルなら、気持ちではなく、身体や心の状況を捉えていく。
書くことは、シンプルな行為ですが、内面と外面の両方に関係があります。ペンの技術は、人間の書くという深い行為に迫る進化を遂げられると僕たちは信じています。そしてその進化を加速させる技術開発をしていきます。

Q4. 今年度の戦略で教育現場への拡大を掲げていましたが、進捗状況を教えてください。
A4. 教育現場への拡大は、Edtechや教育のDXを背景に、非常に大事だと考えています。そして進捗もしっかりと進めています。
カテゴリー別では、まずクリエイティブ関連のクリエイティブ教育があります。クリエイターやアーティスト志望の方の専門学校や専門コースでのクリエイティブエディケーションでは、日本にあるクリエイティブ系専門学校のほとんどで僕たちのソリューションをお使いいただいています。アート系大学や大学のクリエイティブコースでも、どんどんご採用いただいています。
世界に目を向けると、身近なところでは韓国の市場があります。今は漫画もスマホで読む時代で、縦方向にスクロールするウェブトゥーンという形式の漫画が大ヒットしています。これは韓国発祥で、世界に伸びています。そして、ウェブトゥーンを学ぶ大学や専門学校、入試のシステム等で、僕たちの技術や商品が標準として使われています。
一方、クリエイティブ系以外の、国語や算数、理科、社会といった一般の教育でも、通信教育のZ会とは深くコラボレーションが進んでいます。Z会以外のプライベートスクールでも、専用の教育端末や教育タブレットとして採用される例が増えています。
また、僕たちはパソコンや普通のandroidタブレット等を色々なOEMのお客様に提供しています。教室で使われるパソコンやタブレットに付属しているペンはワコムのペンといった形です。OEMのお客様と共に、教育現場にも少しずつ入っていく歩の進め方をしています。

Q5. 社長の趣味はなんですか。
A5. まさかそんな質問が来るとは。ありがとうございます。
僕の趣味は結構多いのですが、その1つは、別に仕事に寄せているわけではないんですが、アニメが大好きです。出張の移動時間は、タブレットにアニメをシーズンごとダウンロードし、それを飛行機の中で寝ないで見ているという楽しみがあります。
今日もこちらのカンファレンスは準備をして臨んでいますが、準備の前は映画館でガンダムを見てきました。そのくらいアニメが大好きです。
自分の趣味と照らし合わせても、クリエイターの現場を見るチャンスは多い。そうすると、自分がコンテンツとして楽しんでいるアニメなどは、デジタルコンテンツという呼び方ではなく、もう文化の域に達している。それぞれの作品は文化や文明であり、日本が誇るカルチャーになっていると思います。そして、アニメを趣味で楽しむと同時に、仕事としてクリエイターを支えることに、より一層のモチベーションを感じる。アニメが好きという趣味は、そんな相乗効果をもたらしています。

Q6. 区役所や市役所などの役所での利用状況はどのようなのでしょう。
A6. 日本でも海外の市場でも、公的機関のデジタル化やDX化で、僕たちの技術を使っていただく例は結構増えています。
日本では、マイナンバーの申請のデバイスは、僕たちのものが非常に多くなっています。また、区役所の窓口にタブレットが置いてある時は、僕たちのものであることが多い。
今、提案している案件では、電子投票があります。自治体での投票に僕たちのデジタルデバイスを使うと、ミスの少ない投票や投票結果を集計しやすくする効果があります。
海外の市場でも一緒です。海外では裁判所で使われています。裁判所は日本でも使われていますが、裁判所の記録やちょっとした署名で使われています。このような公的機関での利用を、僕たちも重要なマーケットと考えており、取り組みを加速しています。

Q7. 御社の女性幹部社員及び女性役員登用の割合を教えてください。
A7. 僕たちはグローバルで事業を運営していますが、マネージャーの中の女性の割合は、25〜30%ぐらいで、増えつつあります。
取締役は、全体数として社外取締役が6名、社内取締役3名で、6名の社外取締役の中に必ず1名、女性取締役がいます。一方、執行のキーパーソンたちを見ると、例えばそれぞれのリージョンの代表者は、アメリカの代表も中国の代表も女性です。執行役員でも、サービス部門や人事部門は女性。執行役員が8〜9名いる中で2名が女性です。いろんな局面で女性が活躍できる環境を整えています。
以上

 

 

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