日産化学株式会社(4021)
開催日:2025年3月2日(日)
説明者:サステナビリティ・IR部 IRグループリーダー 上出 未来 氏
1.沿革・会社概要
・ 当社は、1887年に日本初の化学肥料製造会社、東京人造肥料会社として創業しました。高峰譲吉氏が英国留学中に化学肥料に感銘を受け、帰国後に日本でも化学肥料が必要と考えて、財界人の澁澤栄一氏に働きかけて設立されました。
・ その後、事業の多角化を進めて創業50周年の1937年に日本産業コンツェルンの傘下に入り、日産化学工業株式会社に改称しました。1965年に石油化学事業へ進出しますが、体力勝負の業界で当時は収益が上がらず、1988年に石油化学事業からの撤退を決断します。これを機に収益性を追求するファインスペシャリティメーカーへと舵を切り、研究開発が主導するコンパクトで収益性の高い会社を基本コンセプトとして現在に至っています。
・ 当社は独立した化学メーカーであり、他の上場会社と資本関係はありません。従業員数は連結で約3,000人です。
・ 事業は機能性材料事業、農業化学品事業、化学品事業、ヘルスケア事業の4つのセグメントで構成しています。機能性材料事業と農業化学品事業が営業利益の9割近くを占めています。
・ 業績は、2012年度〜2022年度まで営業利益とEPS(1株当たり当期純利益)が右肩上がりで上昇してきました。2023年度は半導体市場の低迷を受けて一時的な減益となりましたが、2024年度は半導体市場が回復し営業利益は過去最高となる見通しです。
2.当社の特徴
・ 当社の特徴の1つ目は売上高営業利益率です。一般的に化学業界は景気の変動を受けやすいと言われますが、当社は長期にわたり安定的かつ高い売上高営業利益率を維持しています。2003年度以降21年連続で10%以上の売上高営業利益率を維持しているのは、当社ともう1社ぐらいしかありません。2023年度の営業利益は一時的に減益となりましたが、売上高営業利益率は20%以上と高い水準を保っています。
・ 特徴の2つ目はROE(自己資本利益率)の高さです。ROEとは株主様からお預かりした自己資本に対してどれほど純利益を稼いだかという資本の効率性を示す指標です。当社ではROEを最重要の経営指標と位置づけ、2027年度までの中期経営計画ではROE18%以上の維持を目標に掲げています。日本企業はROEが10%に満たないと長年言われていますが、当社は高い水準を維持しています。2023年度は半導体市場の低迷を受けて17.1%と目標の18%を若干下回りました。2024年度は半導体市場が回復して純利益を上方修正したものの、韓国に増設した半導体新工場の償却費の負担が重く、ROE予想は17.7%を見込んでいます。韓国の工場は6年定率法を適用し、初年度の償却率は33%です。既存工場も含めた韓国工場全体での償却費は、2024年度は30億円の見込みです。
・ 3つ目の特徴は株主還元です。配当性向は45%から10%引き上げ55%を目標としています。これは、より直接的な株主還元を重視しているからです。2012年度〜2022年度まで11期連続で増配しています。
・ 自己株式取得を含めた総還元性向は75%を目標としています。1年間で稼いだ税引き後の利益の4分の3を株主様に還元しています。2023年度は総還元性向86%となりました。従来の目標から足元の状況を勘案し柔軟に変えた結果です。2024年度は自己株式を100億円取得し、総還元性向は79.4%の見込みです。当社はROE向上を目的に2006年度から継続して自己株式取得を実施しています。スポット的ではなくほぼ毎年コンスタントに自己株式を取得し、基本的に取得した年度で償却する方針です。
・ 4つ目の特徴は、研究開発力の高さです。独自の革新的技術で社会の要請に応える未来創造企業が当社の目標の一つです。研究開発を重視して相応の資源を投入することを長年継続しています。研究開発費を売上高で割った売上高研究開発費率は7〜9%で推移しています。大手総合化学6社の平均は3%台であり、当社が研究開発を重視している度合いがわかると思います。近年7%台で推移しているのは研究開発費の圧縮が原因ではなく、コロナ禍で海外出張がオンラインに変わるなどしたための自然減です。
・ 機能性材料事業は売上高営業利益率が26.6%でしたが、このうち9.7%を研究開発にかけています。当社は、総合職の4割が研究開発に従事しています。
・ 当社のコアな成長ドライバーは、機能性材料事業および農業化学品事業です。機能性材料事業には、液晶ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドがあり、ディスプレイの稼ぐ利益が大きくなっています。農業化学品事業は一般農薬に加え、収益性の高い動物用薬品が成長に寄与しています。この2つの事業は概ね売上高営業利益率が30%と高い収益性になっています。営業利益では、機能性材料事業は2012年度に72億円でしたが、2023年度は3.1倍の225億円となりました。農業化学品事業は2012年度の50億円に対して、4.7倍の234億円と大きな成長を遂げています。
3.主要セグメント概況 機能性材料セグメント
・ 機能性材料セグメントは、全体の営業利益の約50%を占め、営業利益率は30%前後で推移しています。このセグメントの特徴は、高収益、世界市場シェアの高い製品を有している、新製品開発に経営資源を投入していることです。
・ ディスプレイ材料の主要製品は「サンエバー」という名称の液晶パネルの配向膜です。配向膜は液晶パネルの製造に必要不可欠な材料です。液晶分子の向き、反応速度、コントラスト、解像度などを制御するため、液晶パネルの品質を左右する重要な役割を担っています。液晶パネルの構成において液晶分子を上下に挟むものが「サンエバー」で、高精細で視野角の広い液晶画面の製造が可能です。製品はボトルに入った液体です。また、「サンエバー」は単一の製品ではなく、顧客の要望に合わせて配合を変えてカスタマイズし、何百種類と展開しています。
・ 競合は日本にもう1社あり、市場を二分しています。当社は特に新技術の光配向IPS市場において100%に近いシェアを保持しています。当初はスマホ向けが多かったものの、現在はタブレット、ノートPC、モニター、車載、車用と用途を拡大しています。コロナ禍でテレビ会議やパソコンの動画視聴の機会が増えるなか、高精細や視野角の広い液晶画面を求めるニーズが高まり、光配向IPSが大きく伸びました。
・ 半導体材料については、EVやAI等で大量のデータを迅速に処理する需要が急増すると言われています。2023年度は調整局面にあったものの、半導体市場は今後も大きく成長していくと考えられます。
・ 当社の半導体の主力製品は、「ARC®(Anti-Reflective Coating for semiconductor)」です。「ARC®」は半導体反射防止コーティング材という意味です。露光のプロセスで当社の材料を使わないと、基板に光が反射して現像がいびつになります。当社の材料を塗布すると露光した際に基板に反射せずきれいに回路を形成できます。アジアで圧倒的なシェアがあり、アジアの半導体市場の成長とともに当社の事業も拡大しています。「ARC®」も顧客の要望に合わせてカスタマイズし、何百種類と展開しています。顧客との密なコミュニケーションが重要なため、機能性材料事業に研究員を最も多く配置しています。それがこの事業における研究開発の源泉となっています。
・ 「ARC®」は主にKrF、ArFで用いられています。当社は最先端のEUV向け材料も製造しており、今後の成長ドライバーと位置づけています。経済産業省が2024年5月に発表した資料でも7ナノ以下の半導体需要が今後飛躍的に伸びることが示されています。
・ 韓国に新設した半導体工場の投資額は約90億円です。6年定率法を適用し、初年度の償却率は33%です。「ARC®」から最先端のEUVまですべての半導体材料を製造する予定です。既存工場も含めた韓国工場全体の償却費は、2024年度は30億円となる見込みです。なお償却負担は2024年度がピークです。半導体事業は技術の進化のスピードが速く、継続的な設備投資が必要です。当社では定率法を適用しているため、初年度の償却負担が重くなります。半導体事業の利益はトップラインの動きにも影響されますが、償却負担によってもかなり変動があります。半導体事業のウェイトが高まるにつれ、市場の影響を受けやすくなります。
・ 機能性材料事業は、売上高営業利益率が30%近くと高収益で、ディスプレイや半導体材料において世界市場シェアの高い製品を有しています。特に半導体市場は技術の進化のスピードが速く、最先端であるためには研究開発が重要になります。新製品の開発力を上げるべく、この事業では売上高研究開発費率が高くなっています。
・ 液晶ディスプレイの将来性や成長性では、有機ELディスプレイ(OLED)の台頭を懸念される方が多いです。当社の液晶配向膜「サンエバー」はOLEDには用いられないため、OLEDが増えると当社の液晶ディスプレイ事業にはマイナスの影響があります。ただ、2030年度までの予測データを見るかぎり、スマートフォン以外はまだ液晶ディスプレイが優勢です。これは主に3つの理由があると推測されます。1つ目は製造コストが安いことです。2つ目は耐久性が高いことで、これは特に車載、屋外で長時間使用する車において重要なポイントです。3つ目は消費電力が低いことです。ディスプレイは2桁のパーセンテージで伸びる事業ではありませんが、今後も安定した成長が見込めます。
・ 当初、半導体事業は2024年度下期から本格的に回復すると見ていました。米国の規制を警戒した中国の顧客の在庫積み増しなどの特殊要因もあるものの、2024年度上期から回復の動きが見られ、2月に発表した2024年度の半導体の売上伸び率はプラス28%に上方修正しています。
・ 半導体事業の業績ボラティリティは、市場の影響はもちろん、設備投資の償却負担によっても変動があります。加えて、近年はインフレや円安も進んでいるため、評価装置などの導入コストもかさみます。下方修正した2023年度は、半導体市場の調整に加え、韓国新工場稼働に向けた固定費の増加により減益となりました。2023年度の営業利益は前年同期比でマイナス41億円でしたが、このうち半導体事業によるものがマイナス44億円です。半導体事業の調整の影響をかなり受けたものの、景気に左右されない農業化学品事業でマイナスの影響を抑えることができました。
・ 中国リスクは、大きく分けて中国市場への依存と中国ローカルメーカーの台頭の2つです。当社の主な顧客は韓国、台湾、中国のメーカーです。ディスプレイは中国メーカーが多いため、全体に占める中国の割合は他の地域よりも高いです。一方、半導体は韓国、台湾、中国に分散しています。また、当社の半導体材料そのものは米国の規制対象にはなっていません。中国ではディスプレイ、半導体ともにローカルメーカーは存在していますが、現時点で当社の優位性やシェアを脅かす存在ではありません。当社と他の化学メーカーのEPSと総還元性向を比較すると、当社の営業利益率が高いことがわかります。半導体事業におけるボラティリティを農業化学品事業でカバーし、他社と比較すると利益の落ち込みや変動が抑えられています。
4.主要セグメント概況 農業化学品セグメント
・ 農業化学品は当社のもう一つの主要セグメントで、営業利益全体の4割強を占めています。売上高営業利益率も30%弱を維持し収益性の高い事業です。
・ 当社の農薬の売上の過半は国内向けであり、国内販売額第1位のメーカーです。2021年、日本の農薬市場は世界第4位です。2050年までに世界の人口が97億人に達すると言われるなかで作物収量の増加は非常に重要です。農薬を使用しなかった場合の収量はどうしても落ちるため、食料問題に対する農薬の貢献度は高くなっています。開発力の高さは、規模としては大手の欧米企業と比べると小さいものの、新規剤研究開発力は相対的に高いです。また、日本の地理的特徴としてヨーロッパと比較すると南北に長く、多種多様な気候・栽培条件を有しています。農薬は長く使うと抵抗性が出てきて効力が弱まるため、新製品の開発力が事業を左右します。
・ 当社の主力製品は短いスパンで新製品を上市しており、研究開発力の高さが理解いただけると思います。
・ 新剤開発のスケジュールとして農林水産省がモデルを示しています。まず、スクリーニング期間が約5年で、その後に様々な試験も含めて初期開発から本格開発までの期間が約10年です。トータル期間は約15年で医薬品と同程度の期間を有します。また、効能だけではなく、安全性や環境への影響の変化が大変重要であると認識しています。
・ 農業化学品事業の新規開発は、時間と多額の研究開発費を要する一方で半導体などと異なり、経済変動の影響が小さいのも特徴です。自社開発新剤を柱に剤の買収・導入による販売力強化も図っています。殺菌剤では2019年に「クインテック」、2020年に「ダイセン」を米国コルテバ社から買収してポートフォリオを補完しています。
・ 当社は、今後の成長ドライバーとなる製品を多数有しています。2018年に上市した殺虫剤「グレーシア」をはじめ、2027年にはアジアを中心に大型除草剤の上市を予定しています。
・ 農業化学品の開発は、自社開発、買収、他社からの導入があります。最も利益率が高いのが自社開発製品です。2008年の殺菌剤「ライメイ」、殺虫剤「スターマイト」、2011年の除草剤「アルテア」、2013年の動物用医薬品原薬「フルララネル」、2018年の殺虫剤「グレーシア」が自社開発製品です。
・ 新製品のパイプラインには、現在3製品がラインナップされています。パイプラインとは、長い時間を要する開発過程において上市できる確度が非常に高い製品のことです。2024年度および2027年度に上市を見込んでおり、3製品に期待できるピークの売上は各25〜100億円レベルです。
・ 当社の農薬の売上は2022年度に大きく伸びています。これはコロナ禍の物流混乱のなかで在庫確保の動きがあったためと推測されます。この影響で欧州・北米市場は現在、流通在庫問題がありますが、当社はこの地域のポーションがあまり高くないため影響はさほど受けていません。当社でポーションが大きいのは除草剤で、全体の6割を占めています。グローバルの農薬市場と比較すると殺虫剤が少ないため、「グレーシア」をはじめとする剤の拡販を図ります。
・ 殺虫剤の「グレーシア」は、虫の経皮から直接薬剤が吸収されるため即効性があり、日本、韓国、インドで拡販が進んでいます。ミツバチへの影響も少ない環境に配慮した剤です。順調に売上が伸び、ピーク時に売上高100億円を計画していますが、2024年度には早くも達成の見込みです。これは自社開発品のため利益率も高い製品です。
・ 動物用医薬品原薬「フルララネル」は、当社が発明した化合物です。「フルララネル」を有効成分とした「ブラベクト®」が米国メルク社より100か国以上で販売されています。当社の売上は「フルララネル」と「ブラベクト®」の売上に一定の料率をかけたロイヤリティで構成されます。「ブラベクト®」の販売は、2023年に10億ドルを超えたとメルク社から発表がありました。これはペット用で、犬猫のノミ・ダニの駆除剤です。ビスケットのような形状で餌に混ぜて摂取させます。最大の特徴は効き目が3ヶ月と長いことです。既存製品は効力が1ヶ月なので3倍長持ちします。「ブラベクト®」は獣医の処方薬なので、効力が長くなると病院に行く頻度を減らせます。こちらも特にコロナ禍でペットオーナーの数が増えたため大きく伸びました。
・ インドにおける原体製造工場の新設は、投資額が約60億円で、償却方法は10年定額法です。これまで当社の原体生産工場は国内のみでしたが、旺盛な需要に対応するため、現地パートナー企業と合弁で設立しました。
5.2024年度通期業績予想サマリー
・ 2025年2月7日に発表した2024年度通期業績予想の概要ですが、第3四半期は農業化学品および機能性材料セグメントが好調に推移しました。為替などのリスクを足元の状況を踏まえて一部見直し、売上高、各利益の通期業績予想値を上方修正しています。なお、営業利益は550億円で、過去最高値を更新できる見込みです。
・ 化学品事業は中国の安値品流入の影響で現在ほとんど利益が出ておらず、ビジネスモデルの再検討と構造改革が急務となっています。詳細は2025年5月15日に発表予定の2024年度決算・中期経営計画説明会で示す予定です。
・ 当社は2022年5月に2027年度までの中期経営計画を策定し発表しました。半導体市場の調整や化学品事業における中国の安値品流入の影響を想定できておらず、2024年度の予想は中期経営計画を下回る見込みです。現在、2025年度〜2027年度におけるステージ2の中期経営計画を見直しています。見直した中期経営計画は5月に発表予定です。
6.ESGトピックス
・ ESGではマテリアリティを3つ掲げています。特にGHG(Green House Gas:温室効果ガス)排出量は、2027年度までに30%以上削減(2018年度比)する目標を掲げています。当社は研究開発重視型の企業であるため、ダイバーシティにおけるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)も、研究所女性総合職比率を18%以上に設定しています。
・ GHG排出量が550万トンを超える大手総合化学メーカーと比べると排出量は多くありませんが、当社は削減に向けて努力しています。
・ ガバナンスでは、役員報酬体系にESG指標を組み入れています。2024年6月に女性取締役(社外)が2名となりました。取締役10名のうち4名が社外取締役です。
・ ESGインデックスや外部評価では、Dow Jones、FTSE、MSCIなど主要なESG銘柄に複数年連続で選定されています。また、2024年2月に初めて当社統合報告書が「日経統合報告書アワード」の優秀賞に選定されました。
・ IR活動では、公益社団法人証券アナリスト協会よりディスクロージャー優良企業として化学・繊維分野で2位となり、「JPX Prime 150」の構成銘柄にも選定されています。
・ 一般社団法人日本IR協議会より初めて「IR優良企業特別賞」を受賞しました。ホームページも一定の評価をいただき、これまで実施した説明会資料や様々なデータを掲載しています。当社IR活動に関する情報は、メールでも配信しています。
7.質疑応答
Q1. 半導体関連の製品について、競争環境やシェアはどうなっていますか、半導体業界における御社の競争力、成長性が気になります。
A1. 半導体の主要製品である「ARC®」は、長年アジアで70%のシェアを維持しています。また、先端の半導体材料向けのEUV下層膜はトップシェアです。半導体分野では、顧客の用途に合わせて材料を作り込む当社の技術力や開発体制が評価されていると考えています。機能性材料の営業も当社の場合は技術系の社員が担っています。営業と研究で頻繁に人事異動があり、両方を理解していることが当社の強みだと認識しています。今後も高いシェア、成長性を維持できると考えています。
Q2. 半導体材料の競合企業はどちらでしょうか。
A2. 「ARC®」、EUV下層膜ともに競合はデュポン社(DuPont de Nemours, Inc.)です。その他に中国や韓国でもローカルのメーカーはありますが、ほぼデュポン社と当社の2トップになっています。規模や知名度などはデュポン社のほうが圧倒的に上ですが、当社のほうが高いシェアを獲得できているのは、先ほど申し上げたような点が、顧客に評価されているのではないかと考えています。
Q3. 生成AIの台頭が御社の半導体事業にとってプラスになりますか。
A3. 生成AIが伸びることで特に先端の世代の半導体事業も伸び、当社の材料の使用量も増えます。そうすると当社の半導体事業にプラスに働くと考えています。
Q4. 社員における女性の登用は進んでいらっしゃいますでしょうか。
A4. 私自身も女性ですが、私の所属するサステナビリティIR部の部長も女性が務めています。当社は管理職に占める女性比率はあまり高くないですが、近年は女性のリーダーシップに特化した研修を実施したり、女性の社外取締役と対話の機会を設けたりと環境の整備を進めています。当社は研究開発重視の会社でKPIに研究職女性総合職比率も掲げています。女性の登用推進も少しずつ環境を整備しています。
Q5. 御社は化学業界で安定的かつ高い営業利益率を維持していらっしゃいますが、他社との違いや理由は何でしょうか。
A5. 大きな違いとして、当社の場合は汎用化学品の構成が低い点にあると考えています。当社は1980年代に石油化学事業から完全に撤退し、そこでスペシャリティ化学メーカーへと大きく舵を切りました。その後、機能性材料事業や農業化学品などの分野において、ニッチな市場で高付加価値の製品を生み出すことに注力しています。いち早く経営の方向性を定め、ブレずに続けたことが現在の姿につながっていると考えています。
Q6. 海外売上高比率など海外展開の状況はどのようになっていますか。
A6. 当社の海外売上高比率は2023年度実績で38%です。現在は国内が主体ですが、海外にも少しずつ展開を図っていきます。農業化学品事業は、インドで農薬の原体製造工場が2022年度に稼働しています。機能性材料事業は、韓国で半導体向けの新工場が稼働しています。こうした海外製造拠点の整備も進めながら、農業化学品や半導体分野を中心に海外の販売を今後増やしていこうと考えています。
Q7. 今期業績予想での為替レートの前提はいくらでしょうか、為替変動による業績への影響を教えてください。
A7. 2024年度の為替レートの前提は1ドル=152円です。2024年度は年間でドルベースですが、円安に1円振れると営業利益で約3億円プラスです。逆に円高に振れた場合には3億円のマイナスです。当社は、年間の営業利益500億円程度の会社ですので、それほど為替変動の影響は大きくないと考えています。
Q8. 2027年度の中期経営計画は見直すとのことですが、前回策定時から事業環境は何が変わったのでしょうか。
A8. 中期経営計画の策定は2022年2月頃ですが、この時点では半導体市場の低迷や中国の安値品流入による化学品事業への影響を想定できていませんでした。一方、農業化学品事業はコロナ禍による物流の混乱などの関係で、農薬の在庫確保の動きがありました。また、ペットを所有したい人も増えて動物薬の売上が伸びたため、こちらは前倒しで目標を達成しています。今走っている現中期経営計画は、こうした足元の状況を反映できておらず、2025年度〜2027年度までの後半3年の見直しを図っています。この結果は、5月の決算発表時に一緒にお知らせできる予定です。
Q9. 御社の化学品事業が置かれている状況を教えてください。
A9. 当社の化学品事業は汎用品を製造しているため、当社のなかでは外部環境の影響を受けやすい事業になっています。現在、中国の安値品が市場へ流入した影響を受けている製品があります。収益性悪化のため、ダウンサイジングなどを検討しています。一方で半導体の洗浄に用いられる高純度硫酸などは収益性の高い製品です。これはTSMC(台湾積体電路製造)の熊本工場など、現在国内で半導体工場の設立が増えているため順調に伸ばしていけると考えています。また、化学品事業の構造改革は過去にも実施し、2022年6月にメラミン事業から撤退をしています。
Q10. ROEを従前から最重要の経営指標にしているとのことですが、いつ頃どのようなお考えから社内でご決定されたのでしょうか。
A10. 当社はコンパクトで収益性の高いニッチな成長分野に、集中的に資源を投資する方針を進めてきました。そうした意味では様々な指標があると思いますが、計算のしやすさも含めて内外にもROEはわかりやすい指標だと考え、2000年代初めぐらいからROEを重要な経営指標に掲げて経営をしています。コーポレートガバナンスコードが日本でも2010年代半ばから広まってきており、ROEの合格点は8%と言われています。そのような世の中の動きが始まる前から当社はROEを重要な経営指標と捉えてきました。こうした考え方を社内にも浸透させて、この指標で会社の舵取りをすると決めたことが、今まで順調に経営を進めてこられた要因であると考えています。なお、当社のROEの高さは、ROA(総資産利益率)の高さに起因しています。
Q11. 御社のようなR&D(Research & Development)型の企業であれば、株主還元に変えてもっと投資を積極的に行っていく方針はありませんか。
A11. 当社はR&Dに注力している会社なので、研究開発に必要な投資にも目配りしています。潤沢なキャッシュ・フローを株主様にどのように還元するかに関しては、積極的に還元していく方針を変えていません。しかし、光配向IPSや動物薬に続く新製品、成長ドライバーが出てきていないことも事実です。稼いだキャッシュ・フローを何に対してどういった形で使っていくか、いわゆるキャッシュ・アロケーションについて、当社はこれまで開示していませんでした。そうしたことも5月の中期経営計画の発表のときに示したいと考えています。
以上
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