株式会社日本ケアサプライ株式会社(2393)
開催日:2025年3月9日(日)
場 所:グラントウキョウノースタワー 18階 『大和コンファレンスホール』(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 平松 雅之 氏
1.会社概要
・ 当社は1998年に設立し、2000年の介護保険制度の始まりと同時に、福祉用具レンタル卸事業を開始しました。
・ 現在は「健康長寿社会への貢献」を社是とし、コアビジネスである福祉用具レンタル卸事業と、食事サービスなどの高齢者生活支援サービス事業を展開しています。本社は東京にあり、全国に97カ所の営業拠点を設置しています。
・ 高齢者向けの事業というのは市場が拡大している分野ですが、当社は直接、福祉用具のご利用者に向けたビジネスではなくB to Bであるため、一般的に認知度も低く本日は当社のご理解を深めていただきたいと思っています。
・ 会社の沿革としては、1998年に三菱商事株式会社などを株主として設立し、福祉用具レンタル卸というビジネスモデルを生み出したパイオニア企業であると自負しています。
・ 会社設立当初より、ITを活用して効率的な経営を目指してきました。2001年から当社独自開発の受発注システム「e-KaigoNet」サービスを開始しました。このようなサービスは、今では当たり前となりましたが、当時は、FAXが主流のなか、非常に珍しく現在でも提供しています。
・ 当社はメーカーではありませんが、オリジナルの車いすやベッドなどを仕入先のメーカー共同で開発して、レンタルをしています。2004年には東京証券取引所マザーズに上場しました。
・ 2016年には、事業の第2の柱として育成している食事サービス事業を開始。2020年に、ケアマネジャーや福祉用具貸与事業者などに向けたオンラインセミナーを開始しています。
・ 2020年12月には、三菱商事、綜合警備保障株式会社(ALSOK)と当社の3社で資本業務提携契約を締結し、事業拡大を図っています。
・ 事業内容を、福祉用具サービス事業と高齢者生活支援サービス事業の2つに分けていますが、非常に近い業務内容のためそれぞれが連携して展開しています。
・ 1つ目の福祉用具サービス事業では、介護保険制度の対象となる福祉用具を地域の福祉用具貸与事業者にレンタル・販売しています。利用者にとってレンタルの良いところは、介護状態で必要な時に借りて、入院などのため不要になれば返すことができます。施設向けのレンタルですかとお問い合わせをいただくことがありますが、提供している製品は、ご自宅やサービス付きの高齢者住宅のような自宅に準ずる場所で生活されている方向けです。そのため、レンタルする商品のメンテナンス施設や人員の配備、商品の配送や回収など非常に手間がかかるビジネスではあります。
・ 2つ目が高齢者生活支援サービス事業です。高齢者の方やそのご家族の生活支援につながるサービスで、施設向けの食事サービスやフィッティング付きおむつの配送サービスなどを提供しています。
・ 社是は「健康長寿社会への貢献」としています。日本は世界的にみても、高齢化が進んでいる社会です。当社は、この社会を支えるために貢献していくことを社是としています。
・ 社是を実現するための企業理念に「品質第一」、「誠実第一」を掲げています。当社には、非常に真面目な社員が多く、朝礼でこの言葉を唱和して日々の業務に取り組んでいます。
・ 会社のロゴマークには、社名にもなっている緑色をベースに黄色の3本線があります。3本線は、福祉用具メーカー、福祉用具貸与を行う事業者、そして利用者を表しています。当社が、三者を大きな包容力でまとめ、健康長寿社会に貢献する企業を目指す、という思いをロゴマークに込めています。
・ 業績については、売上高の推移をみると10年間で約3倍になっています。営業利益も右肩上りに成長しています。2021年3月期に上がっているのはコロナ禍による営業活動の減少によるものです。その後、中長期的な成長に向けた先行投資として、人員の採用強化やレンタル資産の積極的な購買を実施したため、若干、営業利益が下がっていますが、今期は増収増益を予定しており、今後は安定的な増益が達成できるものと考えています。
・ 当社の最も重要な指標と考えているEBITDA(経常利益+支払利息+減価償却費)の推移も、売上高と同様に、着実に向上しています。
2.事業環境および事業内容
・ 当社を取り巻く事業環境について。これから日本全体の人口は減少していくとみられていますが、当社事業の最終消費者である65歳以上の高齢者の人口は、2040年頃まで増え続けるといわれています。その後も、特に支援が必要な75歳以上の高齢者はさらに増加すると見込まれ、当社の事業は拡大していくと考えています。
・ 当社事業に大きな関わりを持つ介護保険制度は、世界でも例を見ない制度です。財源は公費と40歳以上の方が納めた保険料で運営されている制度です。
・ 介護保険制度を利用する介護認定を受けた方の推移をみると、増加傾向にあり、足元では700万人となっています。
・ 介護保険制度では、さまざまなサービスが提供されています。ヘルパー・看護師の派遣といった人的サービスや、デイサービスのような施設の提供などが中心ですが、当社が手掛けている福祉用具は唯一人手を介さないサービスになります。現在、介護保険サービス受給者280万人の方が福祉用具をご利用されており、これは、介護サービス受給者約570万人の約半数になります。
・ 介護は人的サービスが中心ですが、日本の人手不足を考えると、人手を介さずに提供できる福祉用具の役割が重要になります。福祉用具を自宅で利用し、生活を支援するサービスは、これからの社会において欠かせない存在だと認識しています。
・ 介護保険制度における福祉用具貸与の介護費をみると、2022年度は4,000億円になっており、これが当社の福祉用具サービス事業のターゲットとする市場規模ということになります。高齢者人口の増加とともに、事業としてはこれからも順調に伸びていくと予測しています。
・ 日本全国には8,000以上の福祉用具貸与事業所があり、当社はそのうち約4,000事業所と契約しています。まだ取引のない事業者も多く、成長の余地は十分にあります。また、既存の取引先も事業拡大を進めています。
・ 介護費の推移をみると、2025年度の予算ベースで16兆円に達し、社会保障費の中でも大きな割合を占めています。厚生労働省の試算によると、このまま高齢者人口が増加していくと、2040年度には介護費が27兆円になると予測されています。ただし、国の財政状況を考えると、単純な事業成長は難しい面もありますが、今後も長期にわたって成長の可能性がある事業であるといえます。
・ 福祉用具レンタル卸事業のビジネスモデルについて、小規模な事業者が、介護保険の対象となるベッドや車いすなどを購入するには、高額なため、大きな負担ですが、当社はスケールメリットを生かして大量購入することで、福祉用具メーカーから福祉用具を仕入れることができます。これを、当社が福祉用具貸与事業者にレンタルし、事業者がさらに利用者に貸し出すビジネスモデルとなっています。
・ 使用後、返却された福祉用具は、当社が洗浄・消毒・修理を施し、新品のような状態にして、再び事業者に貸し出す環境負荷に配慮した、循環型のビジネスを構築しています。
・ 個人でベッドを購入した場合、不要になると廃棄する必要がありますが、レンタルであれば、必要な時期だけ使って不要になればすぐ返却できるため、気軽に福祉用具をご利用いただけます。
・ 当社の97拠点(2025年3月末時点)ある営業所には倉庫を併設しており、そこで福祉用具を保管し、再びレンタルするまで管理しています。設備投資やメンテナンスなど必要な部分は当社が担い、実際の顧客対応は事業者が行うという形で役割の分担ができています。数名で運営しているような小規模な事業所でも、福祉用具貸与事業が可能であることが非常に大きな特徴となっています。
・ 介護保険でレンタルできる福祉用具のうち、現在、最もニーズがあるのは手すりです。手すりは、布団で寝ている方が起き上がる際や、玄関・お風呂などで体を支えるために設置されることが多く、将来的に使用しなくなる可能性があるため、レンタルの需要が高くなっています。その他、車いすや介護ベッドなどもよく利用される福祉用具です。
・ 第二の収益の柱を目指す、高齢者生活支援サービス事業について。最も力を入れているのは、施設向けの食事サービスです。これは、ブランド名を「バランス弁当」として冷凍弁当を提供しており、近年、冷凍技術も高まり、出来立てに近い状態の食事が食べられると好評です。介護施設給食の現場は、人手不足のため自前での食事提供が難しくなっています。冷凍食品であれば保管も可能で、温めるだけで簡単に食事の提供ができます。人手不足を補うための手段としても活用されています。
・ 冷凍食品のため、必要な分だけ温めることができるので、フードロスも削減にも貢献できます。さらに、おいしさはもちろん、栄養バランスや塩分量にも配慮しており、高齢者の健康維持にも役に立つ食事となっています。
・ また、介護関連商品を販売する事業者向けECサイト「グリーンケアオンラインショップ」を運営しています。ネットで必要なものを注文すれば、最短で翌日に届くサービスを展開しています。
・ また、今後注力していきたいのが、大人用おむつの事業です。ドラッグストアやネットで購入するケースが多いと思いますが、実際は体に合っていないサイズを使用していることが多いということが実情です。
・ 当社のフィッティング付きおむつ配送サービスを活用すれば、適切なサイズを選べるため、ケアされる方の不快感も減らせます。ネットで注文して配送されるので、ドラッグストア等で購入する手間を省くことができるご利用者にとってメリットのある事業です。
・ 2020年に資本業務提携先となった綜合警備保障(ALSOK)との提携もあります。互いの販売拠点や顧客基盤を活用し、介護施設向けの商品サービスの拡販を進めています。現在ではALSOKも介護業界のベスト10に入るような介護事業者となっており、当社との連携により福祉用具だけでなく、食事やおむつの提供ができることが強みとなっています。
・ この他、介護事業者支援強化のため、「グリーンケア フォーラム プレミアム」の提供を開始しました。これは、介護事業者に義務化されている法定研修、スキルアップセミナー、業務効率化支援ツールなどの情報提供などを行っています。介護事業者は非常に小規模なところが多いため、自社での対応が難しい研修や、業務に必要な情報提供などの後方支援を当社が担うことで、取引先との関係強化も図ることができます。
3.長期ビジョン(2025年2月3日公表)
・ 従来は中期経営計画を策定し、3年間の事業展開や売上高、利益の予想を立てていましたが、介護業界を取り巻く環境は非常に変化が激しく、3年後の事業環境を見据えることが困難な状況です。
・ そこで、われわれは目指す方向性を明確にしつつ、事業環境の変化応じて機動的に対応できる経営を行うために、長期ビジョンを策定しました。 このビジョンは、株主の皆さまをはじめ、取引先、利用者、そして従業員とも広く共有する必要があります。
・ 長期ビジョンは、「けあさぷVision2040」と命名しました。「けあさぷ」は、日本ケアサプライの略称です。高齢者の人口推移をみると、65歳以上の人口がピークとなる2040年をターゲットに目標を設定しています。
・ 長期ビジョンでは、2040年度に向けた当社のありたい姿を定め、スローガンは、「自分らしく生きる。明るい未来の共創」としました。
・ 介護というと、どうしても暗いイメージを持たれがちですが、われわれは、明るく楽しく生活できる環境を整えることが重要だと考えています。
・ 当社の社是は「健康長寿社会への貢献」です。健康と介護のイメージが結びつきにくいという声を聞くことがあります。WHO(世界保健機関)の定義によると「健康」とは、単に病気でないとか、弱っていないという状態ではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあるとされています。一般的に健康というと肉体的な健康が想像されますが、精神的な健康も大切です。福祉用具が必要な方は、肉体的には少し不自由がありますが、精神的には健康であると思います。当社が考える「健康」とは、WHOの定義に加え、「いくつになっても社会参加でき、自分らしく生活できる状態にあること」と再定義し、持続可能な健康長寿社会の実現を目指します。
・ 「けあさぷVision2040」における外部環境について。当社の主な最終消費者は、75歳を迎えるいわゆる団塊の世代の方々です。この方々は、豊かな生活を経験されてきたため、ニーズも多様で、ときにはこだわりが強いこともあります。そうしたお客さまの要望にしっかり応えられるよう、私たちも対応していく必要があると思っています。
・ また、テクノロジーも発展しています。さまざまな分野でデジタル技術が進歩しており、それらを積極的に取り入れていくことが大切だと考えています。
・ 当社の従来の中期経営計画は、主に株主の皆さまに向けたメッセージでしたが、「けあさぷVision2040」は、当社のステークホルダー全ての皆さまに対するメッセージとしています。
・ ステークホルダーには、取引先・最終利用者でもある高齢者を含むお客さま、株主・投資家、従業員がいます。そして、われわれにとって特徴的なのが地域社会です。これから日本の人口が減っていく中で、地域社会がどのように変化していくのかを見据えることが重要です。効率だけを考えれば、人口の集中した都市部だけに事業展開するほうが合理的かもしれません。しかし、人口が減少している地域でも、住み慣れた場所で暮らしたいという方が当然います。そのような方々に対しても、全国一律のサービスを提供していきたいと考えています。
・ 現在、当社はほぼ全都道府県に97拠点を展開しています。これらの拠点をできるだけ長く維持していくという強い決意を持っています。
・ サステナビリティへの取り組みについては、具体的な数値目標を設定しています。2040年度はまだ先の目標となるため、中間地点として2030年度の達成を目指し、「環境」「社会」「企業統治」の各分野で目標を掲げています。
・ 事業拡大のイメージとしては、現在のキャッシュベースの利益(EBITDA)に加え、借入額も比較的少ない状況です。自己資本に加えて適切に借入も活用し、効率的な事業拡大を進めていく方針です。
・ もちろん、既存ビジネスへの投資が中心となりますが、それに加えて、業界の変化に対応するためにM&Aも積極的に活用していきます。また、人手不足の問題や、人材への投資も引き続き重視し、継続して取り組んでいく考えです。
・ 財務基盤の強化に向けて、既存事業の売上高を年間6%以上のオーガニック成長とすることを目標としています。直近の数年で10%以上の成長を遂げているため、目標としては少し低いと感じられるかもしれませんが、長期にわたり安定的・継続的な利益を生み出すことが重要です。市場の成長率は4%程度を見込んでおり、それを上回る6%の成長が現実的であると考えています。また、人手不足の課題がある中でも、安定した利益を確保することを重視しています。さらに、M&Aを積極的に活用することで、より強い成長を目指していきます。
・ 目標の3つ目は、資本コストを上回るエクイティスプレッド(ROE(自己資本利益率)–株主資本コスト)5%以上の確保です。借入をうまく活用して、資本コストを下げながらプラス成長を目指し、当期純利益の年平均成長率5%以上を目指したいと考えています。
・ 本中期経営計画においては、3年間にわたり1株あたり70円の配当を維持してきました。今後は累進配当制を導入し、70円を下限としながら、毎年着実に配当を増やしていく方針です。それに加え、自己資本の増加を踏まえ、DOE(株主資本配当率)も重視しています。現在は7%弱ですが、最低6%を維持しながら累進配当をしていくことを目標として掲げています。
4.決算ハイライト(2025年3月期3Q)
・ 売上高は前年度比で13%増、純利益も同比17.2%増と成長をしています。物価の高騰や人件費の上昇などの経費の上昇がありますが、これを上回るトップラインを確保できています。DXを活用した業務の効率化等により増益を見込んでおり、これからも継続的に利益を確保していきたいと考えています。
・ 連結貸借対照表については、総資産270億円に達し、自己資本は160億円となりました。一部から自己資本が多いとのご指摘もありますが、今後の成長のために、活用していく方針です。
・ 固定資産の多くを占めるのは、レンタル資産の残高です。レンタル資産は、商品種別ごとに、数年間で減価償却としていますが、実際はもっと長期間レンタルすることができます。メンテナンスに力を入れているため、減価償却期間よりも長く資産を利用することができています。
・ 総資産の7割以上はすでに償却が完了しているので、資産に対するコストがありません。これらの資産を有効に稼働させるほど、利益を生み出すことが可能となっています。
・ コロナ禍では、結果的に売上高の増減に大きな影響はなく、営業制限による活動費用の減少のため、一時的に利益が増えた期間があり、その際に生じたキャッシュを使って、前倒しで資産投資を行ったため、償却済みの割合は少し減少しました。しかし、この状態も一巡したため、今後は少しずつ償却済み資産の割合が増えていく見込みで、利益が出やすい経営体質になってきたということになります。
・ 2025年3月期の業績見込みについて、中期経営計画で掲げた連結ベースの目標である売上高315億円、純利益(親会社株主に帰属する当期純利益)18億円を予想していますが、どちらも達成可能だと考えています。
5.株主還元
・ 現中期経営計画の期間中は、1株につき70円の年間配当額を目標としており、今期も70円で提示しています。長期ビジョンに示したように、2026年3月期以降は、DOEの6%を下限として累進配当政策を採用しました。
・ 株価は、2025年2月25日の終値で1株1,962円でした。3月に入り2,000円を超えていますが、この時期は配当への期待があり、高まる傾向があります。予想配当利回りは70円で計算すると、足元では約3.5%となります。
以上
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