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ヤマシンフィルタ株式会社 (6240)
開催日:2024年12月14日(土)
説明者:代表取締役社長  執行役員  山崎 敦彦 氏

 

1. ヤマシンフィルタの強み
・ ヤマシンフィルタは、建設機械や重機の油圧用フィルタを軸に、重機周りのエンジンやエアフィルタなど色々なところで使われているフィルタ類を扱っているメーカーです。
具体的な重機としては、まず、道路工事でよく見かける油圧ショベル。それから、ダンプトラックに砂利を積み込むホイールローダー。ローディングする機械でタイヤがついているのでホイールローダーといいます。さらに、鉱山現場などのオフロードのダンプトラック。これはタイヤだけでも私の身長よりも大きいくらいで、巨大な建物が動くようなダンプトラックです。こういったものが荷台をグーッと押し上げる時に油圧を使っており、そこには必ずフィルタがつきます。それから、整地作業に使われるブルドーザー。ブレードを上げ下げしますが、これも油圧で動いており、ここでも油圧が使われています。
時々投資家の皆様から、「今、自動車がEV化してきている。油圧もいずれモーターで電気になってくるんじゃないのか」という質問を受けることがあります。油圧は地面を削ったり、山を削ったりする作業で使われます。これにはとても大きな力が必要で、この部分は油圧以外に非常に効率的ないいツールはないと言われています。エンジンが電気で動くようなっても、作業機の油圧システムは変わらない。すなわち、そこには必ずフィルタが使われる。したがって、EVになってもヤマシンフィルタの油圧は当分大丈夫です。
・ ヤマシンフィルタの特徴について。当社はTier1(一次請け)のメーカーです。建機メーカーと直接、開発や営業、アフターマーケットについてお話をして、最新情報を取り込み、こちらからも情報発信する。これが当社の強みの1つです。
ポイントの2番目は、世界のトップシェアがあることです。建設機械用の油圧周りのフィルタという限られた分野ですが、この分野ではトップシェアです。皆様が国内や海外旅行先で、建機・重機を見て、「どこかにヤマシンフィルタが入っているな」とお考えになっても大丈夫だということです。
・ ポイントの3番目は、安定した補給品市場があることです。建設機械用のフィルタには、まず1つがライン用(新車市場)のフィルタ。建機メーカーが建設機械を工場で生産する時に部品として組み込まれていくフィルタです。
もう1つが補給用のフィルタ。工場で作った機械が現場に出て実際に稼働する。フィルタは使い捨ての消耗品なので、稼働後、一定時間動くとフィルタを交換します。これが補給用のフィルタ、サービスパーツとしてのフィルタです。
当社にはこの2つのマーケットがあります。比率は、ライン品が37%、補給品が63%。6対4又は7対3ぐらいの比率です。
ライン用のフィルタは、どうしても景気の変動を受けます。景気がいいと建機メーカーの機械がたくさん売れるのでたくさん作る。そうするライン用のフィルタの売上も伸びます。ところが、景気が悪くなると、在庫調整ということで生産台数はぐっと絞られてきます。そうすると、ライン用のフィルタの売上は影響を受けます。
ところが、補給用のフィルタは全く逆転しています。世界中どこの国でも景気が悪くなると、道路を作ったり、橋を作ったり、公共投資を実行します。そうすると機械が動き、消耗品であるフィルタが使われるわけです。不況になってもアフターマーケットのフィルタは売れ、しかも若干利益率が高いです。補給部品があるがゆえに、とても安定した経営を行えます。
そのため、ライン品と補給品の比率は年によって微妙に異なります。景気がいい時はライン用のフィルタの比率が高く、景気が悪い年は補給品の売上の比率が高いです。大体6対4又は7対3ぐらいの比率で動いているのが当社の状況です。
・ 良いフィルタの条件についてですが、金網のふるいでお風呂の水でもジャッとすくう様子をイメージしてみてください。ふるいの目が細かければ細かいほど、細かいゴミが取れますが、通過抵抗は高くなります。そこにゴミが詰まると、非常に大きな通過抵抗が働きます。つまりフィルタは、目が細かくなきゃいけない。しかもゴミもたくさん取らなきゃいけない。でも水はサッと抜けなきゃいけない。この矛盾する技術がフィルタの技術です。これをどう実現するかが、我々が日々開発センターで取り組んでいるテーマです。
お客様にこのようなお話をすると、「もう1つ忘れているだろう」とよく言われます。はい、コストです。コストを安く実現するのが最も難しい課題です。
・ ヤマシンフィルタの特徴の4番目のポイントは、自社での「ろ材」開発と供給です。フィルタにとって一番大切な部品は、ろ材です。これを自社で開発し、生産し、自社のフィルタに使っている。これをやっているフィルタメーカーは世界中を探してもほとんどありません。ろ材の自社開発と生産はヤマシンを最も特徴づけるポイントです。
中国などの新興国からコピー品もたくさん出回っています。ところが見た目は似ていても中身は全然違う。これが当社の強み。ろ材が違うということです。
例えば、街中にラーメンの専門店があります。専門店と名乗りながら、そこで使うスープや麺をどこかから買ってきて、それでラーメンを出している。これでは専門店ではありません。同じスープや麺を使って作れば、家庭でも大体同じような味ができます。
専門メーカーを名乗るからには、やはり当社秘伝のタレがあってこそ。それが秘伝のろ材であり、これがあってこそヤマシンフィルタは専門メーカーと言えるのです。
フィルタのろ材は、昔は布を使っていました。それがコーヒーのフィルタに使う紙のろ紙になり、1990年ぐらいからガラス繊維ろ材が中心になりました。建機の油圧フィルタ業界で初めてガラス繊維を使い始めたのは、ヤマシンフィルタです。
それが1990年代で、もうかれこれ30年近くガラス繊維ろ材の時代が続いている。世界中どこでも偽物も含めて、ガラス繊維ろ材が油圧フィルタの主流になっています。
しかしヤマシンフィルタとしては、これではダメだ、誰もが同じようなフィルタやろ材を使っていたのでは、性能も同じだ、と考えました。そこで、ここ5〜6年ぐらい前からYAMASHIN Nano Filter(ヤマシン ナノフィルタ)を開発し、ナノファイバーを新しいろ材として導入しています。
・ ナノファイバーは、自社で開発・生産していて、ホワッとした綿みたいな状態のろ材です。これをシート状にして、フィルタにしています。他社メーカーはフィルタのろ材会社から素材を購入し、フィルタに加工し販売しています。ヤマシンの場合は、自分たちでろ材を開発・生産してフィルタを作る、ここに専門メーカーの強みがあります。
いわゆる細い繊維のことを何でもナノファイバーと言うことがありますが、ヤマシンでは太さが1ミクロン以下の繊維をナノファイバーと言います。1ミクロンは1ミリの1000分の1。1ミクロンのさらに1000分の1が1ナノメートルで、100万分の1ミリという言い方もできます。
例えば、人間の髪の毛の太さは70〜80ミクロンです。この髪の毛に対して、一般樹脂繊維の直径は8ミクロンで、その中にあるポツッとした小さな点のような大きさのものが、ナノファイバーです。当社のナノファイバーは、ミクロンで換算すると0.2〜0.8ミクロンで、髪の毛とは比較にならない細さです。以前当社でも使っていたガラス繊維の太さが3〜10ミクロン。今も一般的に使われているフィルタの繊維の太さは3〜10ミクロンです。
ヤマシンのナノファイバーは0.2〜0.8ミクロン。ガラス繊維の10分の1以下です。そのため、ナノファイバーで作られたシートは、隙間がたくさんできる。これが小さいゴミをたくさん取っても、通過抵抗が少なくてサッと抜けるというマジックを実現する技術になっています。
細かいゴミをたくさん取って、サッと抜けるのはとてもいいフィルタです。これを油圧フィルタに使うとロングライフが実現する。今まで500〜1,000時間で交換したフィルタの3〜5倍のロングライフが現実になるのです。
フィルタは消耗品で、使い終わったらゴミになります。今までは1,000時間に1個のゴミが出ていたのが3,000〜5,000時間に1個のゴミになれば、環境に対してとても優しい技術になります。このような取り組みもヤマシンは進めています。
・ ヤマシンフィルタの特徴を整理すると、ポイント@は、Tier 1のメーカーで、建機メーカーと直接、開発や営業のお話ができて、提案もできます。ポイントAはトップシェア。世界中どこの建機メーカーともお付き合いがあり、多分皆様が見かける建機メーカーには、全て何らかのヤマシンフィルタ製品が入っている。ポイントBは、アフターマーケットの補給部品があり、景気比較的左右されず、安定した経営が実現しています。ポイントCはフィルタの専門メーカーであること。ヤマシンのフィルタを真似しようとすると、見かけは似せても本当の性能はまず出せないと思います。

 

2. 新たな価値創造の取り組み
【建機事業―重点戦略】
・ 北米建機メーカーに向けて、売上高比率を大幅に拡大していきます。
世界で一番大きい建機メーカーは、北米にあります。日本の建機メーカーはNo.2、No.3です。日本とアメリカの建機メーカーを比べると、北米の大手メーカーは今の為替レートで換算しても、11兆円ぐらいの売上があります。一方、日本の大手メーカーの売上は4兆円弱。4兆円と11兆円なので、アメリカの建機メーカーは、日本の2.何倍かの大きさがあります。そして同じような機械を作っています。
ヤマシンフィルタの売上構成比をみると、北米メーカーに対する売上比率は19%。円換算でザッと30億円ぐらいです。ところが日本の大手メーカーに対する販売は、50億円ぐらいあります。
売上規模でアメリカのメーカーの方が2.何倍も大きい。ところがヤマシンの売上では、日本のメーカーが50億円で、アメリカのメーカーが30億円。本来なら、アメリカのメーカーには100億円ぐらいの売上があってもおかしくありません。しかし、実際には30億円ぐらい、売上比率で19%ぐらいしかない。これはひとえに、言葉や文化が違うことと、もう一つ、アメリカに売り切れていないということがあります。
このための対策はとても簡単です。日米の建機メーカーを比較し、アメリカで使われていないフィルタを洗い出す。そしてアメリカの建機メーカーに交渉する。当社はTier 1メーカーなので、アメリカのメーカーの開発部門に直接話をして、メリットをアピールできます。ここにリソースを割き、お金もかけ、向こう3年間の中期計画の中で重点販売をしていきたいと思います。
2024年3月期で30億円、19%の売上構成比を、2028年3月期は50億円で23.5%。さらに2031年に80億円。個人的にはもっといくと思いますが、ここにフォーカスすればドンドンいける。何をやるべきなのか、極めてわかりやすい。ヤマシンサイドから見ると、ここを攻めればお宝がある、攻めれば確実に売上・利益は伸びていくと言えます。
一方で、お客様の方から見て、ヤマシンはどう見えるか。充分に伸びない原因を3〜5年前から社内で協議してきました。
やはりどのメーカーも、いいサプライヤーを選び、そこから買いたい。納期をきっちり守り、不良品はほとんど出さない。コスト改善を努力し毎年原価を下げていく。こういういいサプライヤーを選んでそこに集約していきたいのが、メーカー各社の意向です。
当社はコロナ禍以降、特に北米メーカーに対し、納期達成率や品質、原価改善を集中的にやってきました。何せアメリカの大手メーカーなので、取引しているサプライヤー数も2万何千社と大変多い。その中で昨年の実績で、サプライヤーの評価として2万何千社のトップ7に入ることができました。ヤマシンとフィルタのお付き合いをすれば、納期も品質も大丈夫。コストも物流も大丈夫。マネジメントもしっかりしているという評価をいただき、北米メーカーからアワードも頂戴しました。
メーカーもいいサプライヤーに集約したいのは、ごく自然な流れだと思います。その意味で、当社には今流れが来ている。チャンスが来ている。向こう3年間はここに集約してやっていくことが売上・利益を伸ばしていく一番のポイントになります。
・ 重点戦略の2番目は新しく開発したナノファイバーを伸ばすこと。ナノファイバーはとても細い繊維です。イメージとしては、クモの巣の網目の横糸ぐらいの細さの繊維が当社で量産しているナノファイバーの太さです。
このナノファイバーでフィルタを作ると、非常に細かいダストが取れる。そして、通過抵抗も少なくてサッと抜ける、ゴミもたくさん取れる。まさに理想的なろ材となります。
メーカーに紹介する時は、ロングライフという言い方と、通過抵抗が低く、今までのフィルタよりも小さくできるという提案もします。フィルタを小さくすると周りの入れ物などもコンパクトになり、機械として大幅なコストダウンに繋がります。
今年はまだマーケットに導入し始めた段階なので、ポートフォリオとしては6%ぐらいですが、2028年には30%、2031年には70%とナノファイバーの比率を上げていく。環境にも優しいフィルタと訴求できるので、間違いなくこの流れになると思います。多分、コピー品もナノファイバーを使った方向で開発が進んでいくでしょう。
・ 重点戦略の3番目はアフターマーケット活動の進化です。
当社に限らず、フィルタメーカーにとってアフターマーケットはとても大事な補給品市場です。代表的な建機に油圧ショベルがありますが、年間の新車販売台数が各社合計して、30万台ぐらいです。一方、5〜10年のアフターマーケットは新車の約10倍、年間290万台の市場規模があります。ここが補給品市場になります。
ところが、自動車を新車で買ったら、純正の交換部品使うけど、5年〜10年経ったら、純正のタイヤでなくてもいい。使えればいいよという方がおられます。建機でもそう考えるお客様もいると思いますが、これからヤマシンではナノファイバーのろ材を使います。ロングライフで3,000〜5,000時間、ずっと使えるようになる。そうすると、アフターマーケットの分野もかなり純正フィルタで取っていけると思います。
ちなみに、ヤマシンフィルタは建機メーカーの補給用品として、フィルタを建機メーカーに販売しています。ところがアメリカのフィルタメーカーは、建機メーカーにも販売する一方で、自分たちも直接、建機のユーザーに販売しています。つまりアフターマーケットでは、建機メーカーとフィルタメーカーはコンペティター。ライバルの関係です。
ヤマシンはそういうことしません。全て建機メーカーを通して補給部品を販売しています。むしろ建機メーカーの補給部品チームとヤマシンのアフターマーケットチームが組んで、純正フィルタの比率を上げるための検討を重ねています。これが建機メーカーとヤマシンフィルタとの信頼関係を醸成している大きな理由の1つになっています。

【エアフィルタ事業―重点戦略】
・ 2019年に大阪のアクシーというフィルタメーカーをM&Aで経営統合し、完全子会社化しました。というのも建機事業だけでは、どうしても景気変動がある。そこで、エアフィルタの会社を経営統合。建機の状況が悪くなってもエアフィルタの部分で安定した収益が上げられることを考えました。
アクシーは、ビル空調を主体としたフィルタを作っているメーカーで、建機とは全くマーケットが重ならない。そこでこのメーカーを完全子会社化しました。
ヤマシンと組んだからには、当社のろ材開発が応用できます。油圧でも水でも空気でも、フィルタ技術そのものは変わらない。細かいゴミをたくさん取り、サッと抜けるのがフィルタの根本技術なので、エアフィルタの分野でもナノファイバーが使えます。
そこでナノファイバーを使ったNanoWHELP(ナノウェルプ)というエアフィルタ用のろ材を開発しました。通過抵抗が低いので電気代が低く抑えられます。もちろんロングライフなので、今まで500時間、年1回の交換だったものが、2〜3年使えるメリットも出てきています。
さらに海外にも展開。エアフィルタはかさばり、スペースが取られます。それを海外に輸出しようとすると、コンテナに積み込む量も限られてしまう。そこでろ材のNanoWHELPを海外のエアフィルタメーカーに販売し始めています。
実は環境関連では、PFAS(一部の有機フッ素化合物)やZEB(Net Zero Energy Building:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証などの規格があります。また半導体の分野ではボロン(ホウ素)フリーの素材が求められます。ガラス繊維はボロンが出てしまうので、半導体分野では使えません。ところが、そういった部分のフィルタもNanoWHELPを使えば問題ありません。ろ材販売はこういった分野で展開していきます。
・ エアフィルタの一種にクリーンルームなどで使われているHEPA(ヘパ)フィルタがあります。これはかなりのろ過精度が求められ、ここにもやはり厳しい規格があります。
NanoWHELP 95・98・99には、Merv(マーブ)14-15と示されています。Mervはアメリカの空調の規格で、Merv15・16・17まであります。一般に使われているのは15・16までで、ヤマシンでは16まで認証を取っています。日本のエアフィルタメーカーでMerv 16の認証を持っているのは、当社のNanoWHELPだけ。これを強みにエアフィルタの分野で戦っていきたいと思います。

・ 綿みたいにフワッとした白いものがナノファイバーです。これを布団の綿として使うと、布団の綿よりも細かくて温かい優れ物になります。そこでフィルタのみならず、寝具や生活用品、エレクトロニクス、航空機、吸音材・断熱材、医療・バイオなど、色々な分野で使えるのではないかと多くの引き合いを頂戴しています。それに合わせて今後、開発を続けますが、あれこれもやってもダメ。集中して取り組むべく絞っています。
・ まず、フィルタとして使う。その次に重点的に攻めたいと思っているのがアパレルです。洋服の中面にナノファイバーを入れる。そうすると、軽くて暖かい衣料ができます。例えば、ダウンジャケット。本物のダウンは水鳥の羽毛から作られますが、動物愛護の観点からも好ましくない。私は個人的にはもう一段工夫が必要だと思いますが、ナノファイバーをコートの内側に入れるのは環境にも動物愛護の点からもよろしいと思います。
それから、吸音材や断熱材にもなります。アパレルの続きで断熱性能も注目できます。
・ 断熱材としては、消防士が着こむ防火服や耐火服でナノファイバーを内面に使うと、断熱効果が抜群に高まる。市場規模も14兆円ととても大きな規模があります。
さらに、車や飛行機の断熱材や防音材としても使えるのではないかと言われています。
・ 断熱性・耐熱性の他に、ナノファイバーを生産する時に、添加剤を加えることで導電性を持たせることができます。導電性を持った新素材を使い、シャツ全体が心拍数や血圧などのウェアラブルなセンサー機能を果たすことができる可能性もあります。
さらに電気自動車はモーターを使って走りますが、モーターから電磁波が出ます。これをブロックする用途も今後は出てくるのではないか、というお話も頂戴しています。これも専門の開発チームを作り、今後取り組むべきテーマとして検討中。将来どこで花開くかわかりませんが、とても可能性のある話だと考えています。

 

3. 新中期経営計画定量目標
・ 株主還元について。2025年3月期の修正予算で、1株当たりの配当金を12円としました。DOEは3.9%、配当性向57.2%です。
今までヤマシンフィルタはDOE2%を配当基準として考えてきましたが、方針を変更。株主様に対して配当性向とDOEを見直していきます。ちなみに新中期計画では、2026年3月期のDOEは5%、2027年は7.4%、2028年は10.3%となり、配当については相当手厚く対応していきます。特別に何か大きな設備投資やM&A案件などがなければ、この方向で配当し、株主還元していきたいと考えています。
・ 中期計画の定量目標は、売上高で2028年3月期に237億円。これに近づくパワーであり、原点となるのは北米を攻めろということです。さらに新しいナノファイバーやエアフィルタを組み合わせ、2025年3月期に193億円の売上を3年間で237億9,000万円に上げていこうと考えています。
併せて営業利益率は、2025年3月期に11.5%の目標値を3年後には16.3%。5ポイントぐらい営業利益も改善していく方向です。
当社の場合、MAVY’s(マービーズ:投下資本を通じ獲得される事業収益から創出される付加価値の定量指標)という指標を社内的に使っており、これを2.9までプラスにしようと考えています。
・ セグメント別の定量目標では、2025年3月期の建機事業の売上高165億円を2028年3月は206億9,000万円。エアフィルタ事業は28億円から31億円に上げていく。営業利益率も、建機事業で12.7%から17.9%に5ポイントぐらい上げていく計画です。
・ 非財務情報のKPIについて。フィルタは使用後にゴミになるので、環境は考えざるを得ません。2023年3月期は、FTSEのスコアが1.5。CDP気候変動スコアがD。これはちょっとフィルタメーカーとしてだらしないので真剣に取り組むこととしました。
Y・S・S(ヤマシンサステナブルソリューションズ委員会)という委員会を立ち上げ、毎月取り組んできました。その結果、2024年3月期は、FTSEのスコアが2.7。1.5から2.7に変わりました。CDPのスコアもBに上がりました。
3年後の2028年には、FTSEのスコアを4.0、CDPスコアはAを狙いたいと思います。
私どもの年代は、偏差値教育で育ちました。会社のスコアがDとかBとか言われると、反射的に上を目指さなきゃと思ってしまう世代です。少なくとも私の代では、FTSEスコアは4、CDPスコアは最高スコアを狙いたいという風に考えています。

 

4. 質疑応答
Q1. 北米向けビジネスの拡大の確度と売上、収益への貢献時期について教えてください。
A1. 日米の大手メーカーの全体的な売上規模を比較すると、アメリカのメーカーには日本のメーカーの3倍ぐらいの売上があってもおかしくないという原点があります。
では、先方から見た時に、ヤマシンフィルタがどう見えるか。やはりこれが問題だったと思います。今年10月に優秀サプライヤーが200社集まるサプライヤーミーティングがアメリカのダラスでありました。その中のアワードセレモニーにヤマシンフィルタも招待され、サプライヤーのトップ7に入っているというお話を頂戴しました。
私はすぐ調子に乗るタイプで、「うちはNo.1か」と聞いたのですが、「いや、お前んとこはNo.1じゃない」とはっきり言われました。それでもトップ7に入っている。分母は2万何千社の中でのトップ7ですから、大変高い評価を頂戴しています。
先方も優秀サプライヤーに集約して発注したい。優秀サプライヤーから買えば、納期も品質も問題なく部品が集められます。そういう優秀サプライヤーに今ヤマシンは入ってきている。実際、10月のセレモニー以降新しい引き合いをたくさん頂戴しています。
例えば、建設機械にはキャビンと呼ばれる運転席があります。ここにはエアフィルタがあります。建設機械なのでホコリまみれの中で稼働する。運転しているオペレーターの健康被害が出る可能性があります。そうなるとキャビン用のエアフィルタはきれいなフィルタを使わなければなりません。
アメリカでは鉱山用のフィルタのルールができています。これはいずれ大型、中型、小型と建機全体に展開するのは明らかだと思います。その中でキャビン用のフィルタの引き合いを頂戴しました。相手が大手メーカーなので、これだけでも20億円以上の引き合いになります。さらにエンジン周りのエアフィルタやオイルフィルタをヤマシンでできないかというお話も頂戴しています。当社は製造業で工場も持っていますが、設備投資も必要になるし、増産対応もしなければならない。一気に「はい、やります!」というのも現実的ではありません。
階段は1歩ずつ上っていくことしかできないので、10〜20%の売上増がせいぜいのところだと思います。ただ、先方からは実績を踏まえ、新しい引き合いをたくさん頂戴しているのが今の状況です。

Q2. 補給品ビジネスの拡大戦略と売上、収益への貢献時期について教えてください。
A2. 建機用のフィルタビジネスには、ライン用のフィルタビジネスと、機械がマーケットに出てから消耗品として求められる補給品市場、この2つのマーケットがあります。
当社の補給用のフィルタは、中国はじめ東南アジアなどのマーケットで偽物がたくさん出回っていました。見た目はヤマシンフィルタのフィルタと一緒でも、値段は半分という偽物やコピー品が多かった。特に中国でひどかった。そこで、建機メーカーの部品販売部隊と手を組み、セミナーなどの啓蒙活動をしてきました。
ユーザーを50人ぐらい集め、目の前でろ材を切り抜き、実際に泥水をろ過してみせます。するとニセモノとホンモノの性能の違いがわかります。
また、粗悪なフィルタを使ってフィルタが壊れるということはありません。ただ、フィルタが仕事をしないのは、人間なら腎臓が機能しないのと同じです。腎臓で老廃物をろ過できないと、大事な心臓が老廃物で傷むようになる。フィルタも同じでゴミがろ過されずに、どんどん流れてしまう。そして、ポンプやバルブやシリンダーなどで構成される高価な油圧機器がやられてしまう。そういうリスクを冒していることをユーザーは理解していない。そこでセミナーで純正フィルタの機能をアピールし、純正フィルタの利用を建機メーカーと一緒に促しています。その結果、アフターマーケットの純正率がグッと上がるようになりました。
昨今は建機メーカーも、偽物を叩くよりはユーザーを囲い込み、1〜5年間の保証期間を設定。有償で保証契約をすれば、フィルタに限らず全て純正の部品を使えるようにしたり、保証期間中の修理なら、建機メーカーが無償で対応しています。
ヤマシンフィルタは、ユーザーが保証制度にメリットを見いだし、加入するためのお手伝いをしていきたいと思います。もちろん、建機メーカーの部品販売部隊と一体となったアフターマーケットの活動は今後も継続していきます。

Q3. トランプ関税の影響はありますか。
A3. トランプ氏が前回、大統領になったのが2016年。トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を作るという話があり、建機が多用される。建機が動けば、当社にもメリットがあり、トランプ銘柄だと言われていましたが、それほど大きな影響はありませんでした。
今回、トランプ氏が次期大統領になり、また壁や公共投資の話も出ると思いますが、それほど大きな影響は出ないだろうと考えています。
ただ、トランプ大統領は、中国に対して関税を上げるとか、半導体に対する厳しい対応や、ベトナムやタイ経由で中国製が入るのも締め出すとか、20%の関税をかけるという話があります。これは政治の話で、一企業がどうこう言うことではありませんが、もし関税がかけられるのなら、私どもは原価改善に努めます。また、アメリカのお客様には事情を説明し、課税部分を分担していただきたいという値上げのお話をせざるを得ないと考えています。
以上

 

 

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