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ZACROS株式会社(7917)(旧社名:藤森工業株式会社)

開催日:2025年12月21日(土)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:代表取締役社長  下田 拓 氏

 

  1. 会社概要

・ ZACROS(ザクロス)をご存知の方はどれぐらいいらっしゃいますか。10月1日に藤森工業から社名を変えていますが、藤森工業をご存じの方は?やはり藤森工業の方が若干多いですね。ZACROSという名前をもっと知っていただくために、こういう機会をどんどん設けていきたいと思います。

私の自己紹介について。この4月、社長になりました。1972年生まれの52歳です。社会人生活は今年で丸々30年。最初の15年間は旧・松下電器産業(現・パナソニック)で、自動車用の蓄電池(カーバッテリー)の営業や営業企画をやっていました。主に国内営業でしたが、最後の4年ほどは海外の事業責任者としてタイに駐在。タイでも自動車のバッテリーのモノ作りから拡販までずっとやってきました。

その次の15年は藤森工業(現・ZACROS)に転職。最初はアメリカに駐在し、今のZACROS AMERICAの立ち上げに関わりました。海外から帰任したタイミングで、100年の歴史がある会社で初めて医療機器事業を立ち上げるということで、こちらに関わりました。その上でウェルネス事業本部を立ち上げ、昨年1年は、経営企画で中長期の経営戦略を作ってきました。そして、作った経営計画の責任は自分で取りなさい、ということで、今年、社長の大役を拝命しました。

パナソニックの新入社員時代は、まだ黒電話がありました。新入社員の仕事は誰よりも先に電話を取るという時代でした。趣味はラグビーです。6歳の時から小中高、大学、社会人とずっと続けています。今でも週1回、仲間と遊んでいます。ただ、社長になると、ケガが心配なので、今は練習だけと制限していますが、健康のために続けています。

・ 当社のポイントは、110歳の会社である一方で、常に究極の先端を行く会社であること。その結果、世界初・日本初という製品多数。110年を積み上げてきた会社が、この先さらに成長するために、ソリューション創造企業に進化しています。

・ 社名はZACROS。造語です。「Z」と「ACRO」の2つの言葉からできています。Zは、アルファベットの最後の文字で、その後ろにはもう何もない。そこから「究極」を意味します。ACROは、ギリシャ語で「先端」や「頂点」という意味があります。アクロポリスという言葉もあります。ZとACROで「究極の先端」。それを複数作っていく、という意味で複数形のSを付けています。そういう会社であり続けたいという思いを社名に託し、この10月1日から進めています。

創業は1914年、大正3年。ちょうど第一次世界大戦が始まった年です。日本国内だと東京駅が開業した年です。現在の売上高は1,361億円。連結の従業員数は海外も含めて今2,600名が働いている会社です。

・ 拠点は国内外に販売拠点、製造拠点、研究開発拠点がそれぞれあります。今も海外を中心にどんどん事業を展開し、どんどん増やしています。

・ 業績推移について。我々、110年間、常に安定して成長してきました。2008年に営業利益が落ちていますが、リーマンショックの時です。この時、我々も非常に厳しい状況でしたが、意図的な赤字も含めて構造改革をしました。したがって110年の歴史の中で赤字に転落したのは意図的な構造改革の一度だけ。その後すぐにV字回復をしています。

新型コロナの厳しい状況で、エネルギーコストや材料高の影響を受けましたが、2023年には復活。今年は売上高では過去最高、営業利益も105億円を予想しています。

実はこの9月にランサムウェアの被害を受けています。その結果、2週間ほど生産や色々なシステムが稼働できない非常に苦しい状況がありました。その間、お客様にもサプライヤーの皆様にもご迷惑をおかけしました。しかしそこも、全社一丸で通り抜け、見事に復活しています。

 

  1. 110年の軌跡

・ 大正3年(1914)、創業者の藤森彌彦が初めて開発した製品が、藤森式ターポリン紙という防水防湿紙です。この当時、日本の輸出品のメインは生糸(シルク)です。ただ、海上を輸送すると、船上の湿度や海水で、生糸がダメージを受ける。劣化してしまう。多くの人はこれは仕方がないと捉えていたのですが、我々の創業者は、「それを何とかする。それができれば日本の生糸はもっと品質が高まり、世界に広めることができる。つまり日本がもっと発展する」と考えました。そして、試行錯誤を繰り返し、紙にアスファルトを塗って防水防湿機能を高めることを考え出しました。今までにない高い防水性をもった塗料を開発し、その塗料を用いて国産初のターポリン紙をつくりました。開発に当たっては特許も取得していました。

その結果、日本の輸出産業は大いに盛り上がりました。こういった、誰も当たり前で仕方がないと思っているところに着目する。そして、誰もできなかったことにチャレンジしてこそ新しい価値を生み出すことができる。これが我々の祖業であり、今も脈々と受け継がれているDNAです。

・ 当社の事業は、異なる性質のものを組み合わせて新しい価値を生み出し、これまでにないものを生み出すという活動を繰り返してきました。

例えばプラスチックの包装では、カプリソーネというパウチ型の飲み物がありました。こういった包装を日本で初めて出したのは我々です。他にも私が小学生時代の給食で出た三角のテトラパック。これもテトラ社と一緒に日本で立ち上げたのが我々です。

このように、色々な技術を組み合わせ、その時代の先端のものを開発する。その技術と展開領域を広げていくことで事業をどんどん拡大している会社です。

現在は、建築土木の世界からメディカルや医薬の世界、電子部材。さらには医療機器や細胞培養まで事業領域を展開しようと進めている会社です。

・ 事業内容は多様に見えますが、「塗る」や「貼る」、それを「加工する」という基本の技術を使い、4つの事業領域に展開しています。

「ウェルネス」と、日用品や食品などをターゲットとした「環境ソリューション」、半導体やディスプレイに使われる「電子部材(情報電子)」、排気用の煙突やトンネルの防水シートなどの「建築資材(産業インフラ)」の4つです。

この4事業で、2024年度の目標として1,500億円の売上を構成しています。

それぞれ全く違う業界に見えますが、使っている技術は全て共通。展開用途を違う形にして、4本足でしっかり立っています。

4本足が非常にポイントです。やはり時代によって厳しい状況は変わります。例えば、リーマンショックの時は、情報電子がガタガタになりました。コロナ禍では、薬の一部は非常によく出ますが、ほとんどの病院が稼働できなかったので、その分野の売上がどんどん減ってしまう。ただ、4つの柱があると、どれかがダメでも、どれかでちゃんとカバーできる。これが我々、110年を安定して成長できた秘訣だと思っています。

・ その結果、多数の世界初・日本初を生み出しています。

日本で初めてポリエチレンラミネーターを自社開発したのが我々です。ご自宅で食品のプラスチックフィルムの袋を開けてよく見ていただくと、断面に透明のフィルムと銀色のフィルムと、色がついたフィルムの3つぐらいのフィルムが見えます。これはそれぞれの特徴のある機能を組み合わせ、中身をしっかり守っているのです。今や当たり前ですが、その技術を日本で初めて導入したのが我々です。

ハイピーシートは、いわゆるブルーシートです。台風や地震の後の建物の雨漏り防止に使われます。元々最初に導入したのは我々。その頃はオレンジでしたが、有害物質を含んでいることがわかったので、青色に変え、ブルーシートで日本で広めています。

また、1994年には、当時最先端だったタッチパネル技術も取り込んでいます。今ではスマートフォンで当たり前となったこの技術にも、私たちは早くから挑戦していました。このように常に新しいものを日本初・世界初で生み出している会社です。

・ その結果、多くのトップシェアの製品があります。

世界シェアNo.1では、大きなディスプレイで使われている保護フィルムや液体容器など。その他にも数多くの世界一・日本一のトップシェアを持つ会社です。

 

  1. 中長期の成長戦略

・ 4つの事業領域でしっかり世界初・日本初を出して、その結果としてトップシェアのモノ作りを続けていく。そして、安定的な成長を続けてきた会社です。それで110年を生きてきましたが、次の10〜20年をどう成長するか。それが中長期の成長戦略です。昨年1年かけて、私も経営企画の立場で社内で一緒に考え、今年打ち出しました。

 

【ソリューション創造活動の進化】

・ 創業から110年、社会の問題やお客様がまだ気づいてない困りごとにも我々が着目し、新たな製品を開発し、それを世に出し、解決してきました。いわゆるソリューション創造をしてきたわけです。

その解決方法は「モノ」でした。我々がモノを作り上げ、それで解決してきました。

では、これから10年先はどうやって生きていくのか。得意のモノ作りはさらに磨きます。我々の腕をしっかり磨いていきます。それだけでなく、モノの価値を最大化させるサービスや仕組みを付け加えていこう。それを自分たちだけでやるのではなく、外にいる周りのパートナーも巻き込んで、一緒になって世に出していくのを、これからの戦い方として考えています。

それを「ソリューション創造活動の進化」をキーワードとし、今全社で展開しています。

・ では「ソリューション創造活動」とは?一番わかりやすい事例がつめかえパウチです。

ご自宅で詰め替えたことがある方いらっしゃいますか。これを日本で初めて提案したのが我々です。当時、容器リサイクル法という法律が施行されました。すると、洗剤メーカーやシャンプー・コンディショナーメーカーはプラスチックの使用量を減らさなければならない。洗剤やシャンプーの容器は、今もそうですが、プラスチックのボトルです。これをどう減らして中身の液体を守ればいいかが彼らの問題点でした。

その一方、我々、家庭の消費者は、使い終わったボトルを捨てるのに、家のスペースは限られる。家庭内でゴミのスペースを確保することも一つの問題でした。

その時、我々が提案したのは、我々が技術を持っていたスタンディングパウチでした。これを詰め替えに使えばいい。そして、このスタンディングパウチの詰め替えが普及した時に、どんな問題が起こるかを考えました。

シャンプーやコンディショナーを詰め替えるのは、お風呂場。封を開けるためにお風呂場にハサミを持っていくのはイヤ。それなら、手で簡単に切れるようにしよう。でも、手で簡単に切れても、流通途中で切れたら困る。そこを工夫しなければならない。

また、お風呂場で使おうとしたら滑る。滑らないような加工が必要だ。

封を開けて入れる時に下手すりゃこぼれる。こぼれにくくするためにはどうすればいいか。ストローを中に入れました。最近は少なくなりましたが、昔はストローが入っていたものがありました。あれを世界で作れたのは我々だけです。

そういったものをメーカーに提案し、詰め替え文化が普及しました。

ただ、あくまでもこの時の問題解決は「モノ」です。それを今後は、モノの価値を最大化させるサービスをやろうと考えています。

その具体例がトンネルの防水シートです。我々はトンネル内の水漏れを防ぐシートを50年前から作っています。幅が30mほどあり、水が漏れず、絶対に破れてはいけないものです。

ただ、今のトンネル工事現場では、湧水下(掘り進んでいったときに自然に湧き出る水)では、湧水量を減らす薬剤を注入し、その上でシートを貼っていきます。そこで我々は、薬剤を注入しながら機械的にシート貼りが可能な機械を提供しています。

さらに、トンネルの工事現場では、地山を支える支保材料(土砂の崩落などを防止するために施工される構造物)やコンクリートなど、様々な資材が使われています。それらの資材の在庫管理や受発注管理も現場でする必要があります。それらを一括で管理できるシステムも、我々が併せて提供しています。

建設現場は今、人が足りない。労働時間は短縮しなきゃいけない。週休2日制が義務付けられている。色々な課題があります。その中で人を減らしながら、現場が適切に動くサービスも併せて提供しよう。

これはモノだけではなく、プラスアルファが必要です。こういったことをどんどん展開していくのが「ソリューション創造活動の進化」で、今取り組んでいます。

 

・ 2023年度は売上高で1,360億円、ROE(自己資本利益率)5.4%です。ソリューション創造活動の進化により、2030年には売上高2,200億円でROEは12%。今の倍以上の付加価値の高い事業体に変えていくのが我々の中長期計画の骨子です。

その間、事業構造を変えたり、新たな投資をしなければならない。2024〜2026年の3年間は積極的に投資し、基盤をしっかり作っていく。そして、2026〜2030年までで回収する。2026年までの3年間は約700億円を投資します。さらにプラスアルファの部分は、M&Aなども含めているので、随時増える形で考えています。

このようにして3年間をやりきった上で、付加価値の高い事業体に変えていきます。

 

【成長牽引事業】

・ まず足元でしっかり稼いでいく事業は何なのか。その次の3〜5年先で事業として立ち上げていくものは何なのか。さらにその先の、まだ事業になるかはわからないけど、何をしようとしているのか。将来については、この3つの観点で考えます。

・ まず、足元の基盤となる事業について。1つは、建築資材の分野で、オフィスビル用の煙突です。このビルもそうですが、停電になった時のために必ず非常用電源があります。それはジェネレーターを回すので、かなり発熱します。それを逃すために、ビルには必ず煙突があります。

これはビルの設計に応じて形が変わるので、カスタマイズする能力が要求されます。我々にはカスタマイズしながら短納期で収めるサービスがあり、今、日本でトップシェアです。そして、この事業をさらに拡張するために、納入だけでなく、その後の点検、調査、補修まで対応する形で展開しています。

ビルの種類として、データセンターが増えるといわれています。データセンターはかなりの熱の排気があるので、ビル用煙突は必ず採用されます。それから商業ビル。都内でも築地の再開発などの計画があり、そういったところでも必要になります。

オフィスビル用煙突は、当面、堅調な需要があるので、サービスまで展開します。

・ 2つ目はプロテクトフィルムです。テレビやスマートフォンを買った時に表面にフィルムが貼られていますが、これではありません。

例えばテレビのモニターにはガラスが使われており、偏光板メーカーやパネルメーカー、組立メーカーを経て、最終的にテレビが出来上がります。その間、それぞれのガラスにちょっとでも傷や埃がついたらモノにならない。もし傷や埃がついたガラスがテレビに組み込まれると、テレビを点けた時に黒い点ができてしまいます。

そこで、非常に厳密な品質管理が求められますが、偏光板が貼られたガラスの表面を守る保護フィルムを我々が提供しています。世界シェアNo.1です。

その理由は、剥がれないけど剥がしやすいという特徴があるからです。ガラスの輸送途中にフィルムが剥がれたらダメですが、作業内で剥がす時にはスッと剥がれて糊が残らない。この要求を満たす必要があります。

さらに、汚れはつかないけど検査印は消えない。埃や汚れは絶対にダメですが、検査終了後に押印される検査済のハンコは、きれいに残らないといけない。

また、3m幅のフィルムを作りながらも、厚みがミクロン単位で均一でないとダメです。ミクロン単位というのは髪の毛の太さくらいです。

そういった矛盾する要求をしっかりモノとして作り上げる。その技術を我々は持っています。そして、圧倒的なシェアがあるからこそ、世界シェアNo.1なんです。

3m幅のフィルムは、世界で誰も作ったことない。我々は今、そこにチャレンジしています。日本をリードする技術で世界を引っ張っていく。そのための投資はかなり巨額になりますが、経済産業省からの助成金も受けながら、2026年の稼働を目指して、生産設備の増強を図っています。

・ 3つ目は、情報記録用材。半導体関連です。半導体パッケージ基板とは、パソコンやサーバーに入っているロジック半導体を載せるための微細配線の回路基板のこと。コンピュータの計算処理能力を決める頭脳部分に直結します。

今後、AIが発展し、画像処理がどんどん発達し、自動運転が普及し出すと、ロジック半導体の能力をどんどん上げないといけない。それにより搭載するチップの面積・個数が増えるため、半導体パッケージ基板の面積を今の3〜3.5倍に広げ、さらにそれをより多く積み重ねていく必要があります。

そこで今、我々は、半導体パッケージ基板を積層するための層間絶縁材料を味の素と一緒に作っています。「味の素ビルドアップフィルム:ABF」と呼ばれる製品です。これは高性能ロジック半導体に使われるものとしては世界シェアが9割以上あります。

我々の群馬県の昭和事業所は、味の素と横並びで工場があります。味の素と相互協力しながら生産しています。今後のAIや自動運転の需要増を考えると、我々の設備をしっかり増強しなければならない。生産能力の拡張をどんどん進めています。

 

・ 足元の事業をしっかり投資をしながら固めていく。そして、その次には、3〜5年先の事業を立ち上げることもやらねばなりません。

・ 次の成長牽引事業の1つは、血液検査に使われる試薬を入れる容器です。これは世界トップシェアです。製品名を「キュービテーナー」と言いますが、業界内では一般的にその名前で通用しています。

これからの血液検査を考えると、日本、アメリカ、ヨーロッパの先進国は、高齢化が進み、予防のための検査が増えます。すでにビジネスとして製品を提供しています。

これからが広がるのは、中国やインド、アフリカ、東南アジア、中南米など。経済成長が進むと健康意識が高まります。例えば中国では、10年ほど前は、沿岸部の一部の企業だけが健康診断をやっていました。しかし今は、沿岸部の企業では全て義務付けられているようです。それがどんどん内陸の企業でも当たり前になってくる。そして入社前には必ず健康診断の結果を出さなきゃならなくなる。

そこで使われる血液検査の試薬用の容器は全て我々が作っています。そしてこれからは、インドや中国、アフリカにも市場が広がっていく。そのために、日本とマレーシア、アメリカの生産拠点の能力をしっかり拡張していきます。

・ 2つ目はBioPhaS(バイオファス)です。バイオ医薬品の製造で使われる資材です。新型コロナ禍の時に日本ではワクチンが作れないという事態が起きました。その理由は、この部材を作っているのが殆ど海外だからです。日本で唯一作っているのが我々でしたが、部材が買えないから提供できないという状態になりました。

そこで、今後そういった状態を作らないために、生産能力を3倍にするべく三重の事業所を拡張しています。その上で、部材を国内で作れるよう、国内の部材メーカーを集め、J-STAC(ジェイ・スタック)という共同体を発足。当社はその設立発起人となり活動を進めています。

 

【育成事業】

・ 3〜5年先を超え、さらにその先の将来の事業について。医療機器では独自開発した新しい測定原理に基づく世界で初めての血栓形成能測定装置(T-TAS)を開発しています。これによりこれまで見られなかった症状が見られるようになりました。

今まではお医者様が色々な検査の結果や状態を見て、「こうであろう」と判断したものを、この機器があれば定量的に判断できるようになります。アメリカとヨーロッパでは薬事承認も通り、基本的な領域で広げていきます。さらにそこに乗せるチップや試薬を増やし、事業を立ち上げていきます。

・ 次は再生医療分野の細胞培養です。山中伸弥教授がiPS細胞を発見し、ノーベル賞を受賞したのは今から10年ほど前。その後、再生医療はどんどん医療に活用されています。

例えばがんの治療法で、CAR-T(カーティー)細胞療法があります。これはT細胞というがんと戦う細胞を外に取り出し、遺伝子を編集し、CAR-Tに変えて体に戻す治療法です。だいたい1人1回の治療で1億個の細胞が必要です。治療費はだいたい3,000万円ぐらい。保険が利くので個人負担は減りますが、一般的にどんどん使うと日本の財政は破綻する。限られたがんにしか使えない状態です。

我々がやろうとしているのは、がんの治療に使われる細胞を一度に大量に増やすことです。iPS細胞は非常にセンシティブなので、ちょっとした衝撃などの環境変化で違うものに変わってしまいます。均質なものを均質な状態で増やさなきゃいけない。我々はこれを100億個まで増やすことにもうすでに成功しています。その上で、心臓の筋肉(心筋)に変わることを確認できてます。

これが本当に医療の領域でできるようになれば、1人1億個細胞を使う治療に対し、100人分を一気に作れるようになります。そうなると、このがん治療が普及し、世の中の役に立つ可能性が大きい。我々はそれをぜひやりたいと思い、取り組んでいます。

・ バイオサイエンスの知識や技術は他のものにも生きています。例えば細胞性食品。牛を1頭育成するには大量の水や飼料が必要です。また糞尿やげっぷによる環境破壊もあります。一方、これからの世界的な人口増を考えると、これまでとはちょっと違う形のタンパク源が必要です。でも肉であることには変わらない。これを今、大阪大学を中心とする培養肉未来創造コンソーシアムに参画する大阪大学、伊藤ハム米久、島津製作所、TOPPANホールディングス、シグマクシス、ZACROSで、ステーキを細胞から作ろうとしています。なんとか来年の大阪万博で発表ができればと思い進めています。乞うご期待です。

・ さらに海洋生分解性バイオマス樹脂。海でも土でも川でも溶けるプラスチック樹脂の開発です。事業としてはまだまだ先の話になると思いますが、もうすでに基本的なものが作れる状態です。これからの事業展開について、パートナーと一緒に考えています。

 

・ モノ作りだけではない事業を展開していく。その思いを示すために、社名の藤森工業から工業を外し、さらにグローバルで展開するべく、10月1日から新社名「ZACROS」としました。社名変更を当社の決意表明として、今、取り組みを進めています。

・ 付加価値の高い事業にどんどん入れ替わる必要もあるので、事業ポートフォリオの変革も進めていきます。

・ 中長期計画として、しっかりと付加価値の高い事業を増やし、モノ作りだけではない事業でROE 12%を実現していきます。

・ 事業活動だけでなく、社会的な責任もしっかり果たしていきます。そこで4つの視点でマテリアリティを定めています。当社HPからご覧ください。(サステナビリティページ:https://www.zacros.co.jp/sustainability/)

・ 環境対応について。血液検査に使われる試薬を入れる容器の100%水平リサイクルとして、使い終わった容器をもう一度容器に生まれ変わらせる仕組みを、パートナー企業と進めています。この技術はまもなく完成するので、その際には報告します。(2024/12/24ニュースリリース:https://ssl4.eir-parts.net/doc/7917/tdnet/2542969/00.pdf)

 

 

  1. 株主還元

・ 我々は色々な取り組みをしながら、利益を高め、得たものをさらに次の投資に回していく。このような成長を繰り返していますが、得た利益の一部は活動をご支援いただいた投資家の皆様に還元することにしっかり取り組んでいます。

我々の基本ポリシーは安定継続です。リーマンショックで赤字の時でも、ちょっと額は減らしましたが、配当はしっかり出しています。

2024年からは配当性向の目安を従来の3割から4割に上げました。水準を上げ、引き続き安定的・継続的に配当を出す。今年度は126円の配当を予定しています。

・ 株主優待はクオカードを予定しています。6月の贈呈で保有株式数に応じて、金額も多少変わります。

・ 今日、皆様にもご用意していますが、当社のカレンダーは我々が非常に力を入れているものの1つです。創業者の「ZACROSの人間はメーカーだけじゃない。文化的な知識や要素も持って人間としての幅を広げるべし」という思いがあり、その一環として来年で51年目になりますが、従業員がカレンダーの企画を全部やります。

今年は社名に合わせ「究極の先端」というタイトルで、その時代初の技術を取り入れた作品を題材にしています。表紙は絵の世界に初めて遠近法を使った作品です。カレンダーに記載しているQRコードを読み込むと、私が動画で作品を解説しています。

これは我々のオフィスで撮影しました。朝イチから撮影しましたが、とある出来事があり、だんだん後ろが騒がしくなり、私の口調も早くなり、表情も険しくなっています。そんなところも見ていただければ、と思います。

我々ZACROSは、常に新しいことに取り組みながら、ステークホルダーの皆様と次の時代に誇れる未来を作っていく。これを大事にして企業活動を進めていきます。

 

  1. 質疑応答

Q1. 取扱製品は多岐に渡っていますが、それぞれの専門分野の人材確保は教育・研修も含めてどのように行っていますか。

A1. 我々は4つの事業領域で展開しています。ただ、使っている基本技術は全て「塗る」「貼る」「組み合わせてそれを加工する」という共通技術です。それがベースにあるので、展開領域が違うだけで基本的に同じ技術です。

ただ、そこから先、細胞培養や医療機器になると、技術は共通でも事業としては機能が足りません。そこはパートナーシップの力を借ります。再生医療なら、ベンチャー企業や大学とかなり多く提携しています。

それらの人々と我々が交流し、知識を学ぶのと同時に、一部は人の異動を行います。当社にパートナーの人々が入っていただき、ZACROSとして企業活動しています。

 

Q2. 社長も丁寧なお話ありがとうございます。御社の株を買いたくなりました。ランサムウェアの件は心配です。売上に影響はないでしょうか。

A2. ありがとうございます。ランサムウェアの件は中間決算報告でも説明しました。正直に申し上げて、今年度は約10億円の利益影響があります。

売上が一部減った分で約5億円の利益減。また、それに対し色々な経費かかっており、5億円を使っています。合計で10億円の利益を押し下げる影響出ていますが、基本的には短期的なものです。

お客様とは話をしており、売上が減った分は来年度に向けてしっかりと戻すことを今進めています。今は、生産の状態もシステムの状態も元通りです。それ以上に、システムに関してはこれまで以上に強固な状態を作っています。仮にまた同じように入られたとしても、わずか1〜2日でちゃんと回復できる状態を準備しています。

今年度として、10億円の影響はありますが、それでも8月に上方修正した営業利益105億円は今のところ変えず進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上

 

 

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