フロイント産業株式会社(6312)
開催日:2024年12月20日(金)
場 所:シティプラザ大阪 2階 『旬の間』(大阪市中央区)
説明者:代表取締役社長CEO 伏島 巖 氏
1.当社について
・ 当社フロイント産業は1964年4月に設立され、今年60周年を迎えました。本社は東京にあり、大阪にも事業所があります。昨年の売上高は229億円で、従業員数は連結で468名です。事業内容は、機械事業と化成品事業の二つがあります。
・ 私、伏島巖は1997年に入社し、2012年から社長を務めています。現在は子会社を含めて経営を担っています。
・ フロイント産業の「フロイント」はドイツ語で「友達」を意味します。創業者の伏島靖豊が友人と2人で創業したことから、この名前が付けられました。ロゴマークは、漢字の「友」を崩したデザインです。
・ 企業理念は60年前から変わらずにあるもので、「創造力で未来を拓く」が私たちの企業理念です。
・ 創立60周年を機に、今年から新たな経営ビジョンを、グループ会社を含めて社員と共有しています。“「なくてはならない技術」に挑み、健やかで潤いのある生活を支える”が私どもの経営ビジョンです。
・ まず、機械事業の話をします。私たちのキーテクノロジーは「造粒」と「コーティング」の二つです。
・ 造粒とは、粉を大きくする、またはかたまりを小さくして粒にすることです。私たちの場合は、ほとんどが細かい粉を粒にすることを造粒といいます。
・ 私たちの身の回りには、造粒されたものがたくさんあります。例えば、インスタントラーメンのスープの粉、コーンスープ、青汁、漢方薬、鶏ガラのスープ、スティックコーヒーなどです。私たちの主なお客さまは、このような食品メーカーだけでなく、製薬メーカーも多く、製薬メーカーは粉を粒にする造粒を私たちの機械で行っています。
・ 造粒の目的をご紹介していきます。まず一つに、流動性の向上があります。薬を作る際、粉のままだと細か過ぎて均一な分量を測ることができません。粒にすることで流動性が向上し、均一にきちんと計量できます。
・ 次は溶解性の向上です。ラーメンのスープやコーンスープなど、溶解性が悪く溶けにくいですが、溶解性が良いと、水やお湯でさっと溶けます。
・ ここで動画をご覧ください。これはプロテインが溶ける状況です。左側が造粒していないもの、右側が造粒してあるものです。このように、造粒してあるものはさっと溶けます。
・ 3番目の目的は偏析の防止です。粉のままだと、重さや大きさ、形がそろっていないので、混ぜたときに成分がばらばらになってしまいます。造粒することで、均一な成分量を保てます。
・ 次に粉末飛散の防止です。粉体のままだと、粉が舞って汚れてしまいます。造粒することで、比重が重くなり、粉立ちを防ぐことができます。
・ 次は付着の防止です。粉体は手に付きやすくなりますが、造粒することで、取り扱いが楽になります。特に薬では、造粒によって大きなメリットが得られます。
・ 次は造粒の仕組みです。造粒は、粉を粒にするプロセスです。造粒機の中で、主薬と添加剤を上または横からスプレーします。粉同士をうまく付着させて粒にするのが造粒です。私たちはこの添加剤も販売しています。主薬は製薬会社が用意するものです。主薬と添加剤をバインダー液で結合させるプロセスを造粒プロセスといいます。
・ 製薬メーカーに納めている私たちの機械装置はこれくらい大きな機械です。
・ これは流動層造粒装置で作ったものです。この機械で作ったものは、かさ密度が比較的大きいものになります。かさ密度の大きい粒を作るには理由があります。薬の場合、錠剤を作るには、まずかさ密度の大きい、ふわふわとした造粒物にします。その後、これをきね臼で打ちます。このとき、締まった粒であると作りにくく、少しふわっとしていたほうが錠剤を作りやすくなります。この流動層造粒装置で作ると、かさ密度の大きな造粒物ができるため、錠剤を作る際に適しています。
・ 次は、もう一つの私たちのキーテクノロジーであるコーティングの技術についてお話しします。コーティングとは、錠剤やお菓子などに、適切な物質で非常に薄い皮膜を作ることです。コーティングをする目的についてご説明します。
・ 薬をコーティングする理由の一つは、薬が光や酸素、湿気に弱いことです。水分を吸収すると薬の成分が変わることがあり、暑すぎると薬が溶けてしまうこともあります。錠剤一つ一つに均一な膜を作ることで、外気から薬を守ることができます。
・ 次に美観の付与です。私たちのコーティング装置は、薬だけではなく、チョコレートやガムなどにも使われています。パリッという食感や光沢のある艶はコーティングすることによって得られます。
・ 次は主に薬の場合ですが、コーティングで少し甘くすることにより、飲みやすくします。苦味や匂いを消すために、コーティング技術が用いられます。
・ 次に主薬間の相互作用防止についてですが、薬同士が保存中に影響を及ぼさないようにするためにコーティングする目的もあります。
・ 最後に、薬物放出制御です。昔は朝昼晩と飲まなければいけない薬が多かったですが、最近は、夜寝る前に1錠飲めば24時間効く薬があります。薬一つ一つに薄い被膜を付けることで、主薬が徐々に体の中で放出されるようになりました。薬は基本的には腸で吸収されるため、1錠ずつコーティングすることで、腸内で徐々に薬が放出され、24時間効果が持続するようになりました。
・ これがコーティング装置です。錠剤を装置に仕込み、スプレーガンでコーティング液を6〜8時間スプレーします。上から乾燥した風が流れ、1錠ずつ均一な膜を作ることができます。
・ 錠剤1錠当たりの有効成分、つまり主薬はどれぐらい含まれているかご存じですか。実は、薬の中の有効成分は、1錠の中の5%〜10%です。残りは全て医薬品添加物です。私たちはこれをペンとインクのビジネスと呼んでおり、この医薬品添加剤も機械と同様に製薬メーカー様に販売しています。
・ 最近、口腔内崩壊錠という水なしで飲める錠剤が売られています。口の中でさっと溶けるため、高齢者や子どもなど、飲み込む力の弱い方たちにとって便利です。口の中で柔らかく溶けてしまうので、水を飲むのは1回で済みます。この医薬品添加剤が使われた薬は日本で非常にポピュラーになりましたが、海外ではまだあまり知られていません。私たちはこの技術を世界に紹介していきたいと考えています。
・ こちらは日本の人口の推移グラフです。日本の人口は減少していますが、高齢者の割合は増加しています。これからも薬の需要が増える中で、私たちの事業の社会的役割は重要になります。
・ 次に、世界の高齢化の推移をご覧ください。日本だけでなく、イタリア、スウェーデン、スペイン、アメリカでも高齢化が進んでいきます。日本と同様に、私たちの技術を先進国に届けていきたいと考えています。
・ 続いてアジアの状況です。アジアは私たちが今後力を入れていかなければいけない市場と見ています。中国、インドの高齢者数は、2020年に約3億人でしたが、2040年までに5億人を超えるといわれています。東南アジア諸国も高齢化が進む中で、薬の需要が増えると考えています。私たちはアジア市場でのビジネスを拡大し、これらの国々で貢献したいと考えています。
・ 当社のビジネスフィールドについて説明します。薬が病院や薬局で渡されるまでのプロセスについてですが、まず、製薬メーカーが主薬を開発します。その主薬を体で吸収されやすい大きさに砕きます。その後、主薬と添加物を混ぜて造粒し、乾燥させて打錠して錠剤を作ります。次にコーティングし、必要に応じて印刷します。当社はこのプロセスの中で造粒とコーティングの役目を担っています。また、医薬品添加剤の販売も行っています。
・ 次に紹介するのは食品品質保持剤です。お菓子などに「食べられません」と書いてあるものが入っていますが、私たちはこういったものも創業時から作っています。
・ 私たちが製造販売しているものは、エタノール蒸散剤といわれるものです。しっとり系のお菓子の後ろを見ていただくと、私たちの食品品質保持剤が入っていることが多いと思います。私たちは毎年9億包以上作っています。
・ 食パン、バウムクーヘン、どら焼き、麺類、ドライフルーツなどに、私たちの食品品質保持剤が使われています。この食品品質保持剤を入れることによって長期間の保存が可能になり、私たちの生活を豊かにすることに貢献しています。
・ このように、私たちの事業は、機械事業、医薬品添加剤事業、食品品質保持剤、の三つから成っています。当社の事業を私たちはペンとインクの事業と呼んでいます。字を書くにはペンとインクの両方が必要です。薬を作る際にも、機械と添加剤の両方がなければ薬はできません。両方の事業を持っているのが私たちの強みであると考えています。また、食品品質保持剤、も手掛けており、この三つの事業でビジネスを展開しています。
・ 業績の推移です。今期の予想は、売上高が235億円、営業利益、経常利益ともに11億円、純利益7億7,000万円という予想を立てています。
・ 私たちはグローバルに事業を展開しています。本社は東京にあり、国内には大阪の事業所、浜松の研究所と工場、名古屋に営業所があります。グループ会社のフロイント・ターボもあります。海外には、アメリカ、イタリア、インド、中国に拠点があります。
・ 横須賀にあるグループ会社であるフロイント・ターボは、車載用バッテリー、特に全固体電池に使われる電池製造機械の分野で強みを持ち、最近では受注が増加しています。アメリカのグループ会社であるFreund Inc.は、機械装置をアメリカ、ブラジル、ヨーロッパなどの市場に販売しています。
・ Freund S.r.l.は5年前にグループ入りした会社で、イタリアが拠点です。こちらも機械を製造販売しています。Parle Freundはインドでの合弁会社です。アメリカの薬の半分以上はインドで製造されていると言われるほど、インドは製薬企業が多い国です。Freund-Chinewayは3年前に設立したもので、上海に拠点を置いて活動しています。
・ フロイント・ターボの紹介です。バランス・グランという機械が、現在リチウムイオン電池市場や全固体電池市場で使用されています。皆さん知っている自動車メーカーとの取引も開始しており、今後力を入れて成長させたい事業の一つと考えています。
・ 次は化成品部門の技術紹介です。私たちの主力製品の一つである「ノンパレル」は、業界最小の球形微粒子です。特に新薬メーカーを中心に、新しい製剤開発でこの添加剤を使用いただいています。コストダウンに貢献できる添加剤として注目されています。
2.中期経営計画および重点施策
・ 続いて中期経営計画の進捗状況および重点施策について紹介します。長期ビジョンの基本方針として、イノベーションを創出し、世界中の人々の健康と豊かな生活に貢献することを目指しています。機械事業では、エリアカバレッジを拡大し、グローバルトップ3を目指します。化成品事業では、日本ナンバーワンのスペシャリティカンパニーを目指します。ニッチな事業で他社にない技術を強みとし、今後も研究開発型の企業として成長していきます。また、従業員には世界中で活躍できる場を提供し、成長し続ける組織を作ります。目標は、10年後に売上高400億円、営業利益32億円、連結ROE10%以上の会社になることです。
・ サステナブル社会に貢献する技術開発について、日本国内の機械では省エネ機械の重要性が増すと考えています。最新のコーティング装置は従来機よりコーティング時間を40%短縮し、サステナブルな社会に貢献します。化成品では、温室効果ガス排出量削減のために、パートナー会社と協力してモーダルシフトを実施しています。その他、自動化の装置や土に還る食品品質保持剤を通じて、社会に貢献していきたいと考えています。
3.今期の業績予想および株主還元
・ 連結決算のサマリーです。通期の売上と利益について、国内は安定的に計上し、海外は下期に黒字化見込みのため、業績予想は変更なしとしています。国内の機械事業が非常に好調で、特にジェネリック医薬品メーカーの新工場建設により需要が増加しています。このため機械と医薬品添加剤の売上も順調に伸びています。そのような状況の中で、今後5年、10年先を見据え、高齢化する世界においてもプレゼンスを高めていきたいと考えています。
・ 配当予想についてですが、2025年は創立60周年を迎えたこともあり、記念配当を予定しています。
・ 株主優待としては、中間期末株主さまにオリジナルのQUOカードをお渡ししています。1年以上保有していただいている方には1,000円分、3年以上の方には2,000円分のQOUカードを配布しています。
・ 多くの製薬メーカーで、私たちの機械装置が使われており、病院で処方される医療用医薬品や、薬局で販売されるOTC薬、サプリメントも私たちの機械装置と添加剤を使って製造されています。食品品質保持剤は、バウムクーヘンや食パンなどに使用されており、ぜひ購入時には、裏面を見ていただけるとうれしく思います。
4.質疑応答
Q1.アメリカでトランプ政権になるという影響はありますか。
A1. アメリカの状況は不透明ですが、私たちの業界には大きな影響はないと考えています。医薬品銘柄は景気に左右されにくく、アメリカでも同様です。むしろポジティブな影響が期待できるかもしれません。アメリカ人が飲む薬の多くは外国製で、インドや中国が多いです。もしアメリカが国内生産を推進すれば、アメリカに子会社がある私たちに有利です。ただし、関税の問題で不利になる可能性もあります。現時点ではポジティブにもネガティブにも転ぶ可能性があります。
Q2.製薬会社に納品する場合、何年くらいで使えなくなるものでしょうか。
A2. 私たちの機械は大きなステンレススチール製で、非常に耐久性があります。基本的には10年、20年と長く使われますが、当然、更新需要もあります。例えば、8年前のモデルに比べてコーティング効率が40%向上した新製品が出れば、入れ替え需要が生まれます。
Q3.競合他社についてお聞かせください。
A3. 私たちは非常にニッチな産業で勝負している会社です。コーティングと造粒の分野では、国内で競合は1社のみで、ほぼ全ての製薬メーカーで私たちの機械が使われています。海外では、ドイツに3社、アメリカやアジアにも競合があります。
日本で競合が少ない理由は、薬に対する価値観の違いです。日本では薬がPTP包装され、品質に対する要求が非常に高いです。海外では薬がプラスチックケースに入っており、品質に対する考え方が異なります。このため、日本の製薬メーカーは高品質な薬を作り、私たちの機械が選ばれています。
日本には錠剤検査機メーカーがありますが、海外にはありません。日本の製薬工場は非常にきれいで、薬の品質に対する要求が高いです。これが日本で私たちの機械が独占的に使われる理由の一つです。
私たちは海外に子会社を持ち、それぞれの市場ニーズに合った製品を供給しています。これが私たちの強みであり、各国でサービスマンを配置して対応するビジネスモデルを展開しています。
以上
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