京阪神ビルディング株式会社(8818)
開催日:2024年12月15日(日)
場 所:TKPエルガーラホール 8階 大ホール(福岡県福岡市中央区)
説明者:代表取締役社長 若林 常夫 氏
1.会社概要
・ 本社は大阪市中央区瓦町、メインストリートである御堂筋に面したビルに所在しています。社名の「京阪神」は京都・大阪・神戸を指す、関西発祥の企業です。
・ 資本金は現在、約98億円、従業員は2024年9月末で65名と上場会社の中でも少人数で経営しています。
・ 会社設立は1948年、翌1949年に大阪証券取引所に上場、2003年3月からは東証1部に上場、2022年4月に東証プライム市場に移行しました。
・ 証券コードは8818、最低売買単位が100株で、直近の株価で16万円前後です。
- 売上高は、創業以来、各時代のニーズに合わせて事業ポートフォリオを変化させながら、着実に成長を積み重ねてきました。
2.京阪神ビルディングの強み
・ 不動産賃貸事業に特化して合理的な運営をしてきた結果、良質な不動産を保有し安定したリターンの取れる会社と評価していただいてきた歴史があります。その背景には、「多様なアセットタイプ」「健全な財務バランス」「きめ細かいビル管理」「高効率の不動産賃貸事業」という4つの強みがあり、これらが経営理念にも掲げている「価値ある事業空間の提供」を実現する柱となっています。
多様なアセットタイプ
・ 当社の物件数の約半分を占めるデータセンタービルやウィンズビルはオフィスビルの市況に左右されにくいこともあり、当社物件の空室率は、東京や大阪のビジネス地区の空室率を大きく下回っています。2024年9月末の当社の保有ビル全体での空室率は1.27%と低い水準を維持し、今年度末に向けてはさらに空室率が改善し、1%を切る見込みです。
健全な財務バランス
・ Net有利子負債/EBITDA倍率は、正味の有利子負債が年間の現金収入の何倍にあたるかを示したものです。当社は、新規投資に伴う資金調達によって一時的に負債が上昇した場合でも10倍程度までに留めるという財務規律を掲げております。
・ 長年にわたり企業価値を着実に向上させる安定した経営方針が評価され、格付機関のR&Iさまからは28年連続でA−の評価をいただいています。この良好な格付と信用力を活かし、現在500億円の社債を発行しています。年間平均調達金利も低く抑えられており、前期末時点では0.81%です。今後もこの信用力を生かし、直接金融と間接金融のバランスや返済期日の長期分散化に留意し、低い調達コストの維持に努めます。
きめ細かいビル管理
・ 少人数経営ではありますが、大手ゼネコンでの現場経験豊富な技術スタッフを多く雇用し、高品質なビル造りや建物、設備の管理運営面で気配りの行き届いたビルマネジメントを実現しています。
・ 営業スタッフも技術スタッフやパートナー企業と連携し、テナントさまとの親密なコミュニケーションを取ることを重要視し、お客さまのご要望にきめ細かく応える体制を敷いています。その結果、各テナントさま、とりわけデータセンターのお客さまから高い評価と信用をいただいています。
高効率の不動産賃貸事業
・ 65名という少人数経営でありながら、専門性を有する人材を活用することで、高効率の事業運営を実現しています。長期経営計画を実現するには、新規事業を推進する人材の確保が欠かせないため、事業戦略に沿った専門人材の採用や育成、人材配置に努め、少人数の高効率経営を維持しつつ、企業価値の向上を目指します。
3.データセンタービル事業
・ データセンタービルとは、インターネット用のサーバやデータ通信のための装置を設置することに特化した建物です。データセンタービルでは、大切な情報やシステムを守るため、通常のオフィスビルに比べて、立地や防災対策、電力供給、通信設備、セキュリティ対策がより重要視されます。
・ 当社のデータセンタービルは都心型データセンタービルに特化しており、通信インフラが密集した大阪の都心に所在しています。このため、当社の従業員による行き届いたメンテナンスが可能となり、緊急時にもすぐに駆けつけられる体制を敷いています。
・ 当社はビルをスケルトンの状態で賃貸しているので、入居テナントさまのニーズに合った内装や機器の設置が可能です。
・ 1988年からおよそ30年にわたり培ってきたデータセンタービルの企画・運営ノウハウ、パートナー企業さまとの良好な関係が当社の最大の特徴であり、強みです。
・ 今後はAIやIoTの発展、5G通信などに伴うデータ通信量の増大により、データセンターの市場規模は引き続き拡大が見込まれます。
4.長期経営計画
- 2023年5月に長期経営計画を発表しました。不動産賃貸事業に特化した結果、極めて安定的な事業運営を続けてきましたが、昨今、安定性だけではなく資本効率の向上も投資家さまから強く求められるようになりました。そのため、本経営計画では、主力の安定的な不動産賃貸事業を維持しつつ、資本効率の向上に資する新たな不動産の事業分野にも取り組むことを掲げています。
- 計画の対象期間は、2024年3月期から2033年3月期までの10カ年です。
・ 基本方針として、「サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値向上を図る」、「投資環境の変化を見極め、ポートフォリオの拡充による企業規模の拡大と新たな収益モデルの創出を目指す」ことを掲げています。
数値目標
・ 計画の最終年度の2033年3月期の数値目標は、事業利益140億円、償却前事業利益180億円、財務規律として自己資本比率30%以上、Net有利子負債/EBITDA倍率10倍程度、資本効率を示す指標としてROA5.0%以上、ROE8.0%以上です。
・ なお、東京証券取引所が掲げる資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、本年9月に長期経営計画の数値目標を見直しました。10年間の経営計画を公表した段階で、投資家さまから目標達成の早期化に関する要請を受けていましたが、計画の1年目が順調に推移したこともあり、利益目標等については取り組みの前倒しを行い、スピード感を持って対応していきます。
・ 今回の見直しにあたり、政策保有株式の縮減目標を新たに掲げました。資本効率の向上のために株式の売却等も検討し、政策保有株式の連結純資産に対する割合をフェーズTの最終年度である2028年3月期までに、現在の16%強から10%以下に縮減します。
投資計画
・ 長期経営計画の10年間で収益物件の取得に1,800億円、エクイティ投資や海外投資等に700億円と総額2,500億円規模の投資に加えて、収益物件の売却により800億円の投資回収を行う計画です。
不動産賃貸事業
・ 主力の不動産賃貸事業については、立地と収益性を重視した従来の方針に基づき、今後も資産の拡充に努め、安定利益を確保します。
・ 売上の地域ポートフォリオについては、現在、保有物件の85%程が関西圏に集中していることから、首都圏をメインターゲットに立地の分散を図ります。計画の最終年度には関西圏以外の売上比率を現在の15%程から30%以上に引き上げることで、地震をはじめとする自然災害などの地域集中リスクを低減します。
資産回転型事業
・ 不動産のキャピタルゲインの獲得を目的とする資産回転型事業を新たに立ち上げます。テナントの入れ替えや改修工事等により、取得物件をバリューアップして売却し、それによって獲得した資金を成長分野へ再投資します。それを繰り返すことにより収益の最大化を図り、資本効率の向上を目指します。なお、バリューアップした収益物件の売却により、10年間で800億円を回収する計画です。
エクイティ投資
・ エクイティ投資とは、不動産そのものではなく不動産を保有する会社の持分を取得するものです。他社との提携による物件の取得など投資手法の多様化を進めることで、10年間で累計160億円の投資を目標としています。
海外不動産投資
・ 日系企業とのアライアンスによる出資を足掛かりに、10年間で累計250億円の投資を目標としています。
新規投資の実績
・ 収益物件として、2023年6月に東京都台東区浅草の商業ビルを取得しました。東京メトロの浅草駅至近に位置する立地の良さと利便性の高さから、将来的な資産価値の向上が期待できるため、資産回転型事業と不動産賃貸事業のいずれの戦略も検討可能な物件と考えています。
・ 2023年10月には東京都港区のオフィスビルに、2024年3月には兵庫県西宮市のヘルスケア施設にエクイティ投資を実施しました。港区のオフィスビルは立地が非常に良く、将来的に再開発の可能性が見込めますし、保有し続ける限り、収益の獲得も可能な物件です。ヘルスケア施設は日本国内の高齢化に伴う需要の増加を見込んでおり、当社にとっては新たなポートフォリオですが、今回の投資を足がかりにヘルスケア施設のノウハウを蓄積し、次の投資につなげたいと考えています。
・ 海外投資については、情報収集やノウハウの蓄積を目的に2023年10月にアメリカの不動産ファンドに出資しました。アメリカは今後も経済成長が見込まれ、不動産マーケットでの法的な透明性が確保されているため、海外の最初の投資先として選定しました。
・ 本ファンドへの投資を機に2024年5月にはアメリカ現地法人Keihanshin Building America Co., Ltdを設立し、8月にフロリダ州のマルチファミリータイプの賃貸レジデンスの開発案件にエクイティ投資も行いました。今後も現地ディベロッパーとの関係構築を通じて、アメリカを中心に事業を展開していきます。
財務戦略
・ 直接金融と間接金融のバランスに留意し、安定的かつ低金利での資金調達に取り組みます。
・ 新規事業である資産回転型事業への取り組み等によりROAの向上を目指し、その結果としてROEの改善・向上を図ります。
5.サステナビリティ戦略
・ 長期経営計画では基本方針として、サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値の向上を図ることを掲げています。
環境投資
・ 「気候変動への対策を通じて事業のレジリエンスを強化すること」、「グリーンビル認証の取得を推進し、環境性能が高い不動産への需要の高まりを収益の機会につなげること」を重点施策としています。
・ この方針の下、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標として、2031年3月期までにScope1+Scope2を46%削減(2020年3月期比)、2051年3月期までにGHG排出量(Scope1+2+3)のネットゼロ達成を掲げています。
・ 再生可能エネルギーの導入や太陽光パネルの設置も進めており、これらの取り組みを客観的に評価していただくためにグリーン認証の取得も推進しています。
人材投資
・ 外部人材の登用と内部人材の育成をバランスよく組み合わせることで、少人数経営による事業の効率性を維持しつつ不足するリソースを補完し、今後の持続的な成長の実現に向けて企業風土の根幹をなす人材育成に取り組んでいきます。
・ 幹部候補生の育成や、自発的なキャリア形成の後押し、事業戦略に沿った専門人材の採用、育成、人材配置に取り組みます。
・ 多様な価値観を組織内に内在化させることが、多様化・複雑化する社会における当社の発展につながるとの認識のもと、経験者やシニア人材等を積極的に活用するとともに、女性活躍の推進にも力を入れています。
・ 働きやすい環境をつくるために、業務効率・生産性向上につながる仕組みづくりにも取り組んでいます。
6.今期の業績予想
・ 2025年3月期の業績は、売上高は197億円と前期比3億8,900万円、2.0%の増収を見込んでいます。営業利益は56億円と前期比5億1,600万円、10.2%の増益、経常利益は55億円と前期比6億5,700万円、13.6%の増益となる予定です。当期純利益は38億円と前期比600万円、0.2%と若干の増益に留まる見込みですが、事業とは関係のない特別利益が剝落したことによるものです。売上高営業利益率は、28.4%と高い水準を維持しています。
・ 当社が長期経営計画で重要な経営指標として掲げている償却前事業利益は98億円と前期比6億7,100万円、7.4%の増益を見込んでいます。
7.株主還元
・ 今回の長期経営計画の見直しにより、1株当たりの利益を重視した累進配当とすることを新たな方針として掲げました。配当性向の目標は、前中期経営計画の35〜40%から45%程度に引き上げています。
- 2013年3月期の1株当たりの年間配当は14円でしたが、2025年3月期は37円とする予定です。
- 直近では自己株式の取得を実施しました。
8.まとめ
- 今後も事業を成長させることにより、企業価値の向上に努めていきます。関西の企業であることから九州に在住している皆さまにとってはなじみが薄いかもしれませんが、今回を機に関心を持っていただけますと幸いです。
8.質疑応答
Q1.1948年の創業以来、さまざまな試練を乗り越えながらも存続できた一番の理由は何ですか。将来的にはどのような会社でありたいですか。
A1.当社は創立翌年に阪神競馬場を設立したものの、日本中央競馬会さまが全競馬場を所有する方針を示されたため、阪神競馬場を譲渡する代わりに開発用地を取得して不動産事業を開始しました。当初は分譲事業を中心に展開していましたが、その後オフィスビル事業や商業施設・物流倉庫事業に進出し、1988年に現在の主力となっているデータセンタービル事業に進出しました。このように時代のニーズに合わせて事業を展開することで、持続的な成長を実現してきました。 分譲事業から撤退した後は不動産賃貸事業に特化し、管理業務をアウトソーシングして少人数で事業を展開してきた結果、安定的に利益を積み上げるとともに高い利益率を確保することができました。
今後は、長期経営計画の10年後のありたい姿を目指し、事業を通じて企業価値を向上させつつ社会の発展に貢献することで、ステークホルダーの皆さまおよび社会の皆さまから必要とされる会社であり続けたいです。
Q2.今までに行われた修繕・管理の事例を教えてください。また、地震大国日本における防災・管理会社へのサポートを教えてください。
A2.当社は30年間データセンター事業に取り組んできました。データセンタービルはオフィスビル以上に安全性とともに災害に強いビルづくりが求められるため、非常用発電機などの設備を研究し続けてきました。データセンタービルで培ったノウハウをオフィスビルでのBCP対応にも活用しています。例えば、非常用発電機をオフィスビルにも設置し、災害時に停電が起きても24〜48時間電力を供給してテナントさまの事業継続を支えつつ、地震対策として全物件での耐震補強を完了し、水害対策として物件の浸水を防ぐために防潮板を設置するなど、水害や地震等に対応した設備を導入することでることでテナントさまにより安心していただけるオフィスビルを提供しています。今後のBCP対応でも必要な投資を前倒しで実施することで、安全・安心な空間を提供していきます。
また、日本では、今年の1月に能登半島沖地震が発生したように、いつ地震が起きても不思議ではない状況です。事業上のリスクヘッジとして、現在関西圏に集中している保有物件の地域ポートフォリオを首都圏に分散する方針も掲げています。
以上
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
大和インベスター・リレーションズ(以下、「当社」といいます。)はこの資料の正確性、完全性を保証するものではありません。
ここに記載された意見等は当社が開催する個人投資家向け会社説明会の開催時点における当該会社側の判断を示すに過ぎず、今後予告なく変更されることがあります。
当社は、ここに記載された意見等に関して、お客様の銘柄の選択・投資に対して何らの責任を負うものではありません。
この資料は投資勧誘を意図するものではありません。
当社の承諾なくこの資料の複製または転載を行わないようお願いいたします。