株式会社キングジム(7962)
開催日:2024年12月7日(土)
場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 木村 美代子 氏
1. キングジムについて
・ 私はキングジムに入ってまだ2年ほど。プラスという文房具の会社に大学卒業後に入社し、アスクル事業をスタートしました。最初は4人で始めたアスクルも、今現在、5,000億円近い売上高があります。私もアスクルと共にいろいろと学び成長しました。
キングジムは、アスクル時代の仕入先で30年ぐらい前から知っていました。とてもアイデアのある商品や他には代えがたい商品があり、営業社員の方も信頼でき、真面目な会社だと思っていました。2年前にアスクルを退任することになり、キングジムの今の会長からお声がけいただき、入社。社長になったのはまだ2ヵ月前です。今までの私の経験を生かし、さらにいいキングジムに変えていきたいと思っています。
・ キングジムは文具や事務用品のメーカーです。オフィスは千代田区東神田。秋葉原や岩本町に近い、昔の問屋街に本社オフィスがあります。創業は1927年。もうすぐ100周年を迎える老舗の会社です。現在はプライム市場に上場しています。
・ 経営理念は「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」です。パイプ式ファイルがない時はファイリングの文化はなく、「テプラ」がない時はファイルに「テプラ」で印刷したラベルを貼ることも考えられなかったと思います。そういうユニークで独創的な商品を開発し、新たな文化を創造し、社会の皆さんのお役に立ち、貢献していきたいという思いで事業を続けています。私もこのパーパスを絶対に大切にしようと思い、入社しました。
・ 沿革について。キングジムのスタートは、創業者が人名簿を発明したことにあります。人名簿とは、届いたはがきの差出人の部分を切り取り、小さなカードにして、それをファイルに差し込むと名簿になるというものです。すごい発明だと私も思うのですが、1927年にそこからスタートしました。そして1964年、代表的なパイプ式の厚型ファイルを日本で初めて発売しました。キングジムといえばこのファイルです。その後の大型ヒット商品では1988年の「テプラ」。これはラベルライターです。今現在は文具だけでなくいろんなジャンルのものを作っている会社です。
・ キングジム全体の売上構成比について。約400億円の売上の66%がキングジムのブランドの文具事務用品、残りがライフスタイル用品です。ライフスタイル用品事業では5社の子会社があり、文具以外のものを作っています。
【文具事務用品事業】
・ 有名な商品はラベルライターの「テプラ」。国内のラベルライターでシェアNo.1(※自社調べ)です。今は外国語モデルも作り、海外販売も始めています。
そして、デジタル文具。電池や電源を使う文房具で、文房具もどんどんデジタル化しています。代表的な商品は、「ポメラ」やビジュアルバータイマーなど。ビジュアルバータイマーは(計測時間の進行状況を)目盛りで表示し、残り時間が一目でわかるので、大ヒットしています。
・ キングファイルは、国内の厚型ファイルシェアのNo.1(※自社調べ)。発売から60年も経っており、累計では6億冊販売。皆さんにとてもご好評なファイルです。
その他のステーショナリーも特長のあるものが作られています。例えば、楽譜の閲覧に特化したファイルなど。ちょっとニッチですが、ファンの方にはなくてはならない商品をたくさん作っています。
・ スタイル文具は、女性に人気の文具です。「HITOTOKI(ひととき)」というブランド名で、マスキングテープや「氷印(こおりじるし)」というスタンプなど。氷印は氷のように綺麗なスタンプで、かつ透明だから、スタンプで捺す場所がとてもわかりやすい。こういうものがまた大ヒット商品になっています。
バッグ・収納用品も扱っています。例えばぬいぐるみのように見えるペンポーチ(筆入れ)の「ポーズー」は、骨格パーツ入りのため手足を動かしてポーズが取れます。またESG活動の一環として、公益社団法人日本動物園水族館協会へ「ポーズー」シリーズの売上の一部を寄付しています。
・ 生活環境用品と防災用品も扱っています。キングジムはオフィスに強いので、働く現場の生活環境を良くする商品も作っています。例えば「テッテ」は自動手指消毒器で、コロナ禍には相当売れました。「扉につけるお知らせライト」は、扉を開ける時に、反対側に人がいるのをセンサーが感知して光が付くライトです。反対側の人に扉を当てることを防ぎます。このようなオフィスや工場などの働く現場をサポートする商品があります。
また、防災用品にも特長があります。トイレセットや災害衛生セットなど何種類もあり、どれもファイルサイズのパッケージにまとまっていて、棚に収められる。オフィスでいざという時にそれをさっと持ち出せばいい。そんな防災セットがとても人気です。
・ 海外拠点について。中国は上海と香港・深圳に事務所があります。海外販売や中国の工場からの仕入れ管理をする大きな拠点です。
東南アジアにはベトナムとマレーシア、インドネシアにファイル生産の自社工場があり、我々の品質の高い商品を作っています。
【ライフスタイル用品事業】
・ ラドンナは、オーブントースターやコーヒーメーカーなどのキッチン家電とフォトフレームなどを企画販売しています。
・ ライフオンプロダクツは大阪にある会社です。シーズン家電やフレグランスを展開しています。例えば、夏に持ち歩いて使うハンディファンや、雑貨屋さんなどで扱っているいい香りのアロマフレグランスなど。こういったものまでキングジムのグループで作っています。
・ 家具の会社もあります。和歌山県海南市のぼん家具で、家具を製造し、インターネットで販売しています。家具をインターネットで販売するには、特長が必要です。この会社では、RTA(Ready To Assemble:レディートゥーアセンブル)と言われる組み立て式の家具を製造しており、今とても伸びています。
・ 名古屋市のアスカ商会は、アーティフィシャルフラワー(造花)の会社です。とても精密な造花で、空間デザインのプロの方から「ここの造花で店舗をディスプレイしたい」とお墨付きをいただくほど。オフィスや結婚式場、レストランなどで人気があります。
香川県高松市のウインセスは、作業手袋の会社です。オフィスへのB to Bのルートで販売しています。
・ キングジムの強みのひとつは、ファンとのコミュニケーションです。当社のX(旧Twitter)は、46万人のフォロワーがいます。中の人(Xの担当者)が書いた本は、他社のTwitter運営の見本になるほどです。さらに、FacebookやInstagram、YouTube、TikTokも重視。これらのお客様との繋がりを上手に作れるのも、キングジムのとてもユニークな強みです。
・ サステナビリティについては環境対応もしっかり行っています。「テプラ」のテープカートリッジは、100%リサイクルやリユース、再資源化しています。パイプ式ファイルも金具の取り外しができ、表紙を取り換えてまた何度も使える工夫をしています。
・ 昨年は(株)伊藤園とコラボレーションしたファイルを作りました。伊藤園で余る茶殻を活用。茶殻を練り込んだ紙でファイルを作ると、お茶の香りがします。このファイルで挟んだ資料をもらった人もホッとするし、環境にもいいです。
また、エアコン室外機への遮熱塗料塗装サービス事業は、エアコンの室外機と周辺の床に遮熱塗料を塗装。それによりCO₂や電気代の削減ができます。環境にいいものを他社と組んだり、サービスとして販売したりすることも今年からチャレンジしています。
2. 業績推移
・ 連結売上高推移について。売上とはお客様からの支持でそれが着実に伸びています。現在は約400億円の売上高です。
・ 課題なのが営業利益と当期純利益です。前期(2024年6月期)は悪い結果になり、損失を計上しています。その理由は3つあります。
1つ目は、想定を上回る円安です。価格改定も行いましたが、それでも追いつかず、大きな改善となりませんでした。2つ目は、コロナ禍では手指消毒が盛んに行われましたが、コロナ禍が収まることで、それらに関係する商品の動きが大幅に減っています。そのために減損し、販管費が増え、マイナス要因になりました。3つ目は、エイチアイエムののれんの減損損失です。これらの要因で前期は今までにない赤字になりました。しかし原因ははっきりしているので、しっかりと直すことを始めています。
・ 直近の2025年6月期第1クォーターについて。売上は前年同期に比べると7.9%増で、回復基調にあります。利益はマイナスですが、赤字幅は縮小しており、計画通りです。
・ 通期予測では、計画通り順調に推移しています。今期は増収増益、そして黒字化の見込みです。我々の業界はオフィス関連が多いので、第3〜4クォーターの2〜4月が大きな需要期です。この時期に売上が加算し、損失がなくなるとみて、通期では予定通り黒字に戻すべく全社で動いています。
3. 第11次中期経営計画 2025年6月期〜2027年6月期
・ この計画は、私が社長になる1年ほど前にお話がありました。ぜひ自分にやらせてほしいと、リーダーとして計画を立てました。また、上層部だけで計画を立てるのではなく、さまざまな部門から幅広い年代のメンバーをアサインし、多様性に富んだメンバーで検討。「行くぜ!KJ」とは、キングジムがどうありたいかという思いを込めた言葉で、そういう思いを持って作った計画です。
・ 我々を取り巻く状況を考えると、今の世の中はテクノロジーが急速に進化。サステナビリティや環境意識もとても浸透しています。また、キングジムにとっては厳しいのですが、生産年齢人口が減少し、文具全体の事務用品市場も減少しています。
このような状況下で、ペーパーレス化により、ファイルの需要が急減。また、ファイルと関連する「テプラ」の販売も伸び悩んでいます。
その結果、前回の第10次中期経営計画は目標に達成できませんでした。
今回の第11次中期経営計画は1年がかりで作成。社長も変わり、今までの延長ではなく、新しく大きなビジョンを持つ成長戦略が必要という気持ちで作った計画です。
・ 社会の変化の波をチャンスと捉えて、ピンチはチャンス。新たな成長へ向かっていきたいと思います。そこで我々が大切にしていることが3つあります。
1つ目がカスタマードリブン。お客様に近づこうということです。問屋や販売店だけを見ているのではなく、しっかりとエンドユーザーを見ていこう。2つ目は「隣の土地」へ。文具にこだわることなく文具の隣の土地に向かって市場を広げます。3つ目がグローバル市場。日本は生産年齢人口が減っていますが、我々は海外にも拠点があるので、そこを加速することがポイントになります。
・ 骨太の方針と戦略について。既存のビジネスを強化する、そして4つの資源を使って、骨太の方針でサービス需要へ出ていく。それから文具だけでなくグループ会社を使いライフスタイル分野へ拡大していく。海外にも開発部隊を送っているので、海外事業も強化していきます。
【既存ビジネス強化】
・ 我々の販売チャネルには、通販チャネル・量販チャネル・文具事務用品チャネルがあります。そこに今回から新しくデマンドチェーンクリエーション、簡単に言うと、営業と開発が一体となり新しい販売先を探す特別部隊を作りました。この形で販路を拡大することをスタートしています。
・ 開発方針について。働く現場には、オフィスだけでなく、工場や飲食店、病院など、いろいろとあります。そこを意識し、生産性の向上などをテーマにした商品作りをします。もう1つはB to C。個人向けにも「暮らし」というテーマで、暮らしを便利にしたり、学びと趣味を応援したり、楽しさと彩りのある商品を開発します。
・ 開発ではとても大切なのがデザインです。キングジムの商品はこれまでファイルやテプラなど、機能性重視でした。これからは「ファンを生むアイデアとデザイン」が大切。もう少し感性の価値を加えたデザインを強化していきます。
・ 具体的には、社内のデザイナーだけでなく、国内外のアーティストやデザイナーを巻き込んでいきます。また、アート系の大学とも連携。京都芸術大学や多摩美術大学の学生とも商品を考え、デザインにも力を入れて前に進んでいきます。
【骨太の方針】
・ 3つの骨太の方針があります。1つ目はサービス事業への展開。「テプラのキングジム」から、「ビジュアルコミュニケーションのキングジム」へ。「テプラ」では限られた幅しか使えませんが、いろいろなところへに貼れる、つまり「表示」できる機能をデザインとデジタルの力で強くする新サービスを考えています。
AIベンチャーとも話し合いを重ねており、デザイナーが参加できるプラットホームを作り、新しいテプラについて考えていきます。
・ 2つ目はライフスタイル分野の拡大です。文具からもっと幅広く、いろいろなジャンルのものをグループ会社と一緒になり、シナジーを強化して広げていきます。
・ そのためにグループマネジメントコミッティを来年1月に設立します。グループ会社の社長が全員集まり、場合によってはコラボレーションして新しい価値を生む。キッチン家電や家具などを個々で強くするのではなく、グループ全体でライフスタイル分野を拡大していきます。
・ 3つ目は海外事業の強化です。今まではキングジムの国内で作った商品を海外で売っていました。しかしそれではお客様志向ではない。そこで、例えば上海では、上海のコンサルティング会社が入り、ターゲットを30〜40代の働く女性たちとするコンセプトを策定。日本の開発部隊も現地に常駐し、川上から川下まで中国の上海のお客様に向けた商品を販売していきます。ベトナムではベトナムの工場なども活用。ベトナムのお客様に合った商品などを作り、海外売上を増やしていきます。
現在の海外売上比率は全体の4%しかありません。これを3年後(2027年6月期)には10%(構成比率の基準は2024年6月期の連結売上高)まで増やそうと考えています。そのためにお客様に近づいて物を作り、新しい価値を生み出します。必要に応じてM&Aも行います。それが円安に対するヘッジになると考えています。
【資源】
・ 骨太の方針を支えるのが4つの資源です。具体的には、「海外工場の活用」、強みである「ファンとのコミュニケーション展開」、「人的資本経営」、そして「サステナビリティ」。
・ 海外工場の活用について。ファイル工場からライフスタイル用品の工場への変換をスタートしています。ベトナムでは、ライフスタイル用品に強みを持つ子会社ラドンナと組んでキッチン雑貨製品を開発し始めました。インドネシアは元々、木工が強い。そこで通販に強いぼん家具と組み、木製家具を作り始ました。ファイル生産で培った品質の高い工場でキッチン雑貨や木製家具を作り始めています。
・ ファンとのコミュニケーションの展開について。SNSを使いお客様の声を聞き、その声を商品に生かして開発し、そして我々のECや外部販売に商品を提供しています。
・ その一例が、代官山の蔦屋書店があるT-SITEで4月に行った「HITOTOKI」のイベントです。女性に人気のブランドで、SNSを通じたファンが多い。そこでお客様を集めてイベントを開催しました。
・ 「HITOTOKI」のアーティストの作品を並べ、これまでの商品や新製品を紹介。ワークショップも行っていろいろと体験していただきました。開店前から多くのお客様が来場され、皆さんがSNSでお友だちなどに拡散してくださる。家族連れも多く、大賑わいのイベントができました。
こういったことを「HITOTOKI」以外でも行い、さらにファンを広げていく。これがキングジムの魅力に繋がると考えています。
・ 人的資本経営について。キングジムの強みの1つが人/社員だと私はとても実感しています。社員がしっかりと成長でき、そしてそれが会社の成長に繋がるように。さらにそれが社会にも役に立つように。ダイバーシティインクルージョンやDE&Iなどの新しい人事制度や働き方などを工夫し、人的資本経営を行っていきます。
・ サステナビリティについて。独創的な商品を開発し、商品で環境対応していきます。
・ 第11次中期経営計画では投資も積極的に行います。成長分野への戦略投資の拡大では、積極的なM&A、海外展開、販売チャネルの拡大、新製品開発と生産設備の投資、新規サービス事業の開始など。さらに効率化のためのDXにも力を入れ、そこにも投資します。株主還元に関しては、企業価値を向上させ、配当性向40%を継続します。
・ 2027年6月期の経営数値目標は、売上高は520億円。売上高でポイントになるのは、既存事業では海外事業やEC事業、サービス事業から50億円の加算を目指すこと。子会社によるライフスタイル用品事業では、マネジメントコミッティで子会社をしっかり連携し、1+1=3になるようにしたい。さらにM&Aで40億円の売上を得て、合計で520億円を目指します。
・ 利益での目標値は経常利益率5.4%、経常利益28億円、ROEを8.0%。2021年度は8.6%を達成した実績があるので、もう1回できると、目標値にしています。
・ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について。ROEは8%超。PBRは現在1倍を超えているので、これを必ず維持していきます。そのための取組方針は、中期経営計画の実行、戦略的な投資、株主還元とIRです。こうやって皆様にお話しすることはとても大切です。私の口から正しく、分かりやすく、情報をオープンにし、皆様にご理解いただき、応援していただけるIRをしていきたいと思います。
4. 株主還元
・ キングジムの株価は割と安定しています。ただ、これでいいとは全然思いません。しっかりと業績を上げ、株価もその結果として上がるようにしていきます。
・ 配当性向の基準を40%とし、安定配当を目指します。今、年間配当は14円。配当利回りは直近の計算で1.6%です。これを維持していきます。
・ 株主優待制度はとても人気があります。キングジムの公式オンラインストアでお使いいただける株主優待クーポンを、300株から1,000株未満で6,000円分、1,000株以上なら1万2,000円分進呈しています。文房具以外にもたくさんライフスタイル用品があり、こちらと交換していただけます。株主の皆様に、私たちが心を込めて作った商品を使っていただきたいという気持ちを示した優待です。優待利回り2.3%です。
・ キングジムは約100年前にできた会社ですが、時代の変化とともに、人名簿からパイプ式ファイル、電子文具、オフィス環境商品、文房具から脱皮してライフスタイル用品まで広げています。そして日本だけでなくて海外まで大きくなっていこうとしています。時代の変化をチャンスと捉え、独創的でユニークなクリエイティブ集団であり続けたい。皆様にもキングジムを注目していただけるように頑張りたい。これが私の思いです。
・ そして我々は、驚きや快適、仕事と暮らしを考え、しっかりと満足していただけるよう、社員一同、そして私もリーダーシップを持って進めたいと思います。
以上
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