株式会社光通信(9435)
開催日:2024年12月2日(月)
説明者:執行役員 財務戦略・広報IR担当 末吉 章寛 氏
1.会社概要
・ 株式会社光通信は1988年に設立され、現在は東証プライム市場に上場しています。資本金は540億円です。本社は池袋にあり、従業員は約5000名です。
・ 売上高推移として、まず2000年には設立12年ほどで売上高3000億円突破と、勢いよく成長をしました。ITバブル崩壊とともに業績を落としましたが、その後に再起し、現在に至るまでおおむね右肩上がりで推移しています。
・ 営業利益も同様の推移です。2000年頃は80億円ほどでしたが、2025年3月期の業績予想は1000億円に達する見通しです。
・ 上場以来の株主総利回りについて、当社が上場した1996年にTOPIXへ投資した場合は年平均成長率約4%、総成長率280%ですが、光通信へ投資していた場合は年平均成長率9%、総成長率1,148%と、大きくアウトパフォームしています。経営陣一同、引き続き株主さまのリターンの最大化を目指して尽力していきます。
・ 当社の三つの柱を紹介します。一つ目は事業です。ストック利益で1620億円、営業利益で1000億円を生み出す事業を有します。二つ目は純投資です。上場株式を中心として、投資簿価は約6000億円、保有時価約1兆円の規模の投資を行っています。三つ目はM&Aです。これまで数多くの企業を子会社化してきました。以上の三つの柱が有機的に結び付いて会社全体が伸びています。税引き前の数字で言うと、事業の直近5年間IRRは約30%、純投資の直近7年間IRRは約17%と、極めて高い資本効率が実現できています。
・ 事業内容としては、業種の垣根なく、安定収益であるストック事業を行っています。電力、宅配水、通信回線、保険などさまざまに手掛けており、多角化していると言われることもありますが、われわれの軸は一つであり、それがストック事業です。
・ 当社の強みは三つあります。一つ目は、強固な販売体制です。国内有数の販売網と顧客基盤を持ちます。法人顧客約130万、個人顧客が約400万人を抱え、極めて効率の良い営業ができています。何か新しい商品を始める際には一気に伸ばせます。 二つ目は高い手元流動性です。競合他社と比較しても潤沢な資金を保有しており、M&Aや顧客獲得等へ投下し顧客拡大に注力が可能です。三つ目は企業文化です。株主さまから預かるお金を大切に使うことを肝に銘じ、質素倹約、変化対応、資本効率の追求を念頭に、競合がまねできない水準で取り組んでいます。
・ 純投資方針を紹介します。われわれはウォーレン・バフェット氏の投資方針を参考にしてバリュー投資を実施しています。安定した事業、強固な財務基盤、割安という三つの要素を併せ持つ企業がわれわれの投資先です。
2.直近業績
・ われわれが年平均10%、15%成長などと言う際は、単利ではなく全て複利の話です。30年で考えると、同じ10%の成長でも、単利では4倍にしかなりませんが、複利では17倍の規模になります。15%であれば、5倍対66倍と極めて大きな差です。複利の力が非常に重要な考え方であるため、冒頭に紹介しました。
・ 5期平均成長率では、当社が特に注力しているストック利益や営業利益の中での自社商材の成長率が12%、営業利益の成長率が15%と好調な伸びを見せています。
・ バランスシートの指標を示します。純現金資産(有利子負債を除く)の金額は、5年前に約1900億円だったものが、現状は約8000億円になっており、直近5期年平均成長率は33%、自己資本は23%成長を見せています。
・ 直近業績を紹介します。上期決算の売上高、ストック利益、営業利益ともに、過去最高となりました。9月には為替の影響を多少受けて、為替込みでは税引き前利益は過去最高ではありませんでしたが、為替差損を除く数字は過去最高となり、順調に推移していると言えます。業績予想に対する進捗率は各指標とも50%以上と同じく順調です。
・ 事業別損益を紹介します。主力の電気・ガスの数値を見ると、上期は3256億円の全体売上高に対して1345億円、営業利益も574億円のうち174億円と最も大きな比率です。
・ 直近上期の獲得件数で言うと、飲料事業の対前期比369%成長をはじめ、電気・ガス、通信、保険事業も全て販売が好調であり、順調な推移を見せています。
・ 税引き前利益は、為替差損益を除く数値にて前期比30%増でした。9月のドル円は142円近辺でしたが、足元では150円程度になっており、為替差損については資料に示す数値から戻ってきていると理解ください。
・ キャッシュフローでは、年間で約1000億円のキャッシュを出すのが光通信です。受取配当金・受取利息は2023年度上期で178億円ですが、2024年度上期は242億円であり、前期比35%と順調に増えています。
・ 自己資本については、前期末から391億円増えており、計8296億円です。
・ 純投資の主要指標について紹介します。2024年度上期終わりでは、投資簿価が6694億円、時価が約1.1兆円、含み益が4000億円という状況です。投資先の持ち分営業利益は967億円であり、投資簿価に対して約15%の利回りです。PERにすると10倍程度で取得できているイメージとお考えください。配当利回りは対簿価で4.3%です。直近7年のIRR(税引き前)は17%です。
・ 保有銘柄の配当利回りについては、フルキャストHDの34.4%を筆頭に、高利回り銘柄が多くあります。含み益・評価損益率で言うと、バークシャー・ハサウェイを筆頭に多くの成長銘柄を抱えています。
・ 上場持分法適用会社は2024年9月末時点で34社あります。詳細は資料の一覧表を参照ください。
3.成長戦略
・ 成長戦略を紹介します。ストック利益は直近10期で年平均成長率10%にて推移してきました。今後も10%成長をさせていきます。今期の予想ストック利益は1620億円ですが、2035年3月期には4000億円を超えるところを目指しています。
・ 新規事業成長の推進力として当社が持つ商材、顧客基盤、販売網が挙げられます。創業はOA機器販売から始まり、さまざまな事業を展開してきました。現在、最も高い売上高・利益を生み出すのは電力ですが、事業を始めたのは7年前です。比較的新しい事業でも短期間で高い成長を実現できているのは、顧客基盤、販売網のなせるわざかと考えています。この強みを生かして取り組んでいきます。
・ 新規事業のLPガスを紹介します。マーケット規模は約2.2兆円、販売事業者数は1万6,000社存在します。2年ほど前から参入した後発の当社ですが、順調な伸びを見せています。現時点では関東地方のみの供給ですが、2025年4月以降は名阪エリアにも拡大していきます。
・ 新規事業としてビールサーバーも取り扱っています。日本各地の200銘柄以上のクラフトビールを自宅で味わえるのがポイントです。想定以上に順調な推移をしており、サーバー生産が追い付いていませんが、来期辺りからまた伸ばせると見ています。
4.株主還元
・ 株主還元方針の説明をします。配当は累進配当を意識しています。減配せず、配当金を維持または増加させていきます。前期まで13期連続増配、21期連続減配なしで来ています。自己株式取得については、株価に応じて機動的に実施します。
・ 1株当たり配当金は10年間で平均16%成長です。今期の配当予想は639円です。このとおりに推移すれば14期連続増配、22期連続減配なしになります。四半期配当をしている点も当社の特徴であり、安定感を持って配当金を得られると理解ください。
・ 総還元性向は直近10年間累計で約40%、今期についても44%の見込みです。
5.おわりに
・ 市場からの評価について考えてみます。当社の時価総額は約1.4兆円であり、そこから純現金資産の約0.8兆円を引くと、事業価値は約0.6兆円と評価されます。直近5年間を振り返ると、純利益は年平均で16.3%、自己資本は20.4%であり、東証平均を大きくアウトパフォームしてきましたが、PER一つ見ても、東証平均に及ばない状況です。 事業平均で見ても6.8倍であり、少し割安すぎるのではないかとわれわれは考えています。
・ 光通信の企業価値を独自計算で出すと、事業キャッシュフローの20倍としても、約1.8兆円の事業価値があり、純現金資産の約0.8兆円を合わせて、約2.6兆円、適正株価6万円が当社の価値なのではないかと考えています。業績向上やIR強化、さらなる株主還元により、この適正株価を目指します。
6.質疑応答
Q1.光通信の女性幹部社員および女性役員登用の割合を教えてください。
A1.2024年3月期時点の情報では、正社員の従業員数4000名のうち女性比率は38%、管理職700名のうち女性比率は20%です。当社の考え方として、性別によって何かを変えるなどはしておらず、実力主義に即して男性・女性問わず優秀な方に仕事を任せていく環境づくりをしています。この比率を何%にしていくといった目標はないのですが、皆さまからいただくご質問として認識しているため、数字を開示しています。
Q2.事業の多角化を図っていますが、新たに取り組む事業としてどのような分野・広報を考えていますか。
A2.当社の認識では、ストック事業という一つの事業を行っている感覚です。ストック事業であれば分野を問わずどのようなものでもチャレンジします。現在は10程度の新規事業を進めています。先述のLPガスやビールサーバー等もありますが、誰かが思いつけばまずスモールスタートでチャレンジし、首尾よくいけば拡大していき、逆であれば撤退してまた次のチャレンジを探します。その判定基準は利回り、IRRであり、一定以上の結果を出し続けることが当社にとって重要なKPIです。
Q3.事業内容および今後の事業展開を詳しく教えてください。
A3.事業内容は先ほど説明したため割愛します。今後、電力を主力とした現在のようなポートフォリオになるとはといった感覚もあります。今後も予想は当たらないと割り切り、さまざまな事業にチャレンジし、結果が出れば強みである販売チャンネルを生かしてさらに拡大していきます。それが成長確率の最も高い方法だと考えているため、今後もその方針で事業展開していきます。
Q4.人材の育成方針を教えてください。
A4.人材の育成方針としては、年齢・国籍・性別にかかわらず、さまざまなことにチャレンジしてもらう点を重視しています。任せることも大事です。任せてみて良い結果を出してくれた従業員にはより大きな権限を与え、より重要な職責を任せていきます。うまくいかない社員であっても、必ずうまくいく他の領域もあるはずと信じ、別の形でチャレンジをしてもらいます。意外な人物が意外な成績を出すなど、適材適所はわれわれにも分からないものです。多様な人材に対していろいろな所でチャレンジできる環境を与え続け、その人の伸びる領域で頑張ってもらうのが人材育成の方針です。
Q5.光通信は証券運用がビジネスの大きな柱となっています。上場企業の持分法適用会社から連結子会社へと変わることはないのでしょうか。また、投資先をどのようにして探しますか。投資先が買収防衛策を実施している企業を買うことはありますか。
A5.一つずつ回答します。最初に持分法適用会社に関するご質問です。M&Aを行ったプレミアムウオーターホールディングス、エフティグループ、シック・ホールディングス等は上場会社であり、もともと当社の純投資先でした。純投資から始め、発行体との距離が近づく中でタイミングが合い、連結子会社になりました。従って、現在の持分法適用会社が連結子会社になる可能性もあります。それを最初から意図しているわけではありません。純投資方針で示したとおり割安に取得することがポイントであり、高いプレミアムを払ってでも連結子会社にするのかというとそうではなく、またそれが目的ではありません。逆の観点から言えば、株価・条件次第でいつでも売却する用意はあります。 投資先をどのようにして探すのかという質問については、投資額と持分営業利益の割り算から出されるEYで15%程度を目指して取得しています。その他に細かい指標も見ていますが、主にEYをポイントとしてさまざまな銘柄を吟味しています。 投資先が買収防衛策を実施している企業を買うことはあるのかというご質問については、ケース・バイ・ケースであり、一概には申し上げにくいところです。発行体との友好的な関係を築くことが投資方針の原則の一つであり、そのようなところに資するか否かを判断軸として考えていくことになります。
Q6.光通信の事業を推進していく上での最大のリスクは何だと考えていますか。
A6.有価証券報告書に記載しているようなリスクには対処できているつもりですが、それ以外にも、われわれが想定できていないリスクが常にあるのではないかと考えています。内需関連事業が多く、日本に有事が起きた際のリスクもさまざまに考えられます。
Q7.業績に影響を与えるリスクを教えてください。
A7.一つはヘッジやリスク分散の観点から保有している、ドル建て資産による為替差損益の発生です。為替差損益のボラティリティーは今後も発生していくものと受け止めています。営業利益上のリスクで言うと、当社主力事業は電力、ガス、水、通信、保険など、人々の生活を支える不可欠な領域が多く、大崩れする確率は低いのではないかと見ています。安定した事業が行えていると捉えていただいて問題ありません。
Q8.親子上場に関してどのように考えていますか。
A8.一概に親子上場だから良い・悪いということではないと思います。各会社は株主価値の最大化を目指しているため、そこを軸に、それぞれの会社の株主にとってプラスが大きければ親子上場はしてもよいはずであり、逆に大株主との利益相反が生じるようなケースであれば親子上場は控えたほうがよいだろうという話です。一つ一つの会社の状況を踏まえて判断していくべきだと考えています。
Q9.株式分割は考えていますか。
A9.株式分割をすることが株主にとってのリターンを最大化させるのか否かという視点が重要なポイントと考えています。株式分割をしても株主価値に変動はありません。ただ、このご質問は個人投資家さまからもしばしばいただきます。金輪際分割をしないという話では一切なく、そのときの状況によって判断していきます。1株であっても、100株であっても当社にとって株主は株主です。各証券会社の単元株未満取引制度等も活用いただき、1株でもぜひ光通信を購入いただきたいと考えています。
Q10.純投資先の出口戦略について教えてください。
A10.特に定めているものではありません。基本的には非常に良いビジネスをしている企業の株式を保有しており、出口なくバイ・アンド・ホールドでいきたいという方針です。ただ、投資先の事情によってはその限りではありません。例えばMBO等でわれわれがEXITをするケースもあります。または、当社の投資先に対する評価から乖離し、株価が著しく高値になる場合は売却も選択肢です。別の会社から取得の打診があれば提示額を検討して売却する可能性もあります。柔軟な対応をベースに、当社が考える投資先の本質的価値を軸にして、購入・売却の判断をします。
Q11.多数の関連会社、グループ会社を持ち、独自のスタートアップビジネスを展開されていますが、この狙いは何ですか。
A11.狙いは株主価値を最大化させることです。当社の場合は事業の他に純投資やM&A、スタートアップビジネス等のチャレンジも行っており、このような複合的な形で株主価値を高めていこうとしている会社は少なく、ユニークな特徴と言えます。何が当たるか分からないため、いろいろなチャレンジをしていき、大きな芽になりそうなものがあれば注力し、株主価値を最大化させていきます。その数ある手法の一つ一つがそれぞれの取り組みであるとご理解ください。
Q12.株式運用の専門家はいますか。
A12.株主運用は10人のチーム体制で行っており、常務取締役の煖エ正人が投資本部長を務めます。彼は2000年に新卒入社し、当社の財務部門で当社事業の数値分析をしてきており、そのスキルは投資先の事業分析にも生きています。また、多くの著名な投資家の知見を参考にし、再現性があり首尾よくいく考え方を模索し、われわれ独自の道を進みながら現在に至っています。
Q13.事業エリア拡大の状況を海外・国内に分けて教えてください。
A13.海外では金融事業を展開しています。具体的にはカンボジアやマレーシア等でマイクロファイナンス事業を行っており、順調に推移しています。上期は営業利益で85億円ほど上げており、営業利益全体の15%強を金融事業が占めます。海外比率では10%程度かと思います。
Q14.具体的にどのようなことを実施しているのか、世の中的に出ているサービスを教えてください。
A14.例としては先述のビールサーバー事業が挙げられます。電力で言うと、個人消費者向けに新電力の形で供給しています。連結子会社のプレミアムウオーターホールディングスでは、ウオーターサーバーの提供をしています。保険では、家財保険や、スマートフォンやタブレット、ゲーム機等が故障した際の修理代をサポートするモバイル保険を提供しています。
Q15.純投資とM&Aの違いは何ですか。
A15.持分法が適用されない保有割合の会社や持分法への投資が純投資です。M&Aは連結子会社になります。
Q16.創業者はどの程度、経営に関与されていますか。
A16.創業者の重田康光は会長職に就いており、本社へ週に一度来て、経営幹部とミーティングを実施しています。重田が事業の細かいところまでの指示を出すことはなく、代表取締役社長の和田英明が全て権限を持ち事業を行っています。投資領域は常務取締役の煖エ正人が担っています。重田は、例えばコスト削減の徹底や従業員のチャンスをつくる環境の醸成、資本効率の追求などのビッグピクチャーを示す役割が大きいと考えています。
Q17.純投資の対象として、ベンチャーや海外企業への投資は行っていますか。
A17.バークシャー・ハサウェイやアルファベット等への投資は行っています。ベンチャーへの投資はほぼありません。ポートフォリオの大半は上場有価証券が占めます。
以上
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