株式会社シード(7743)
開催日:2024年12月8日(日)
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 浦壁 昌広 氏
1.会社概要・市場概況
・ 株式会社シードの代表取締役社長、浦壁昌広です。私は1985年に株式会社富士銀行(現・株式会社みずほ銀行)に入行、ロンドン支店調査役を経て、富士コーポレートアドバイザリー株式会社(現・みずほコーポレートアドバイザリー株式会社)でM&Aや事業再生、プロジェクトファイナンスなどを担いました。その後、当社に転じ2009年に副社長、2010年1月に社長に就任しました。
・ 2024年10月9日、当社は新パーパスを策定し、コーポレートロゴを一新しました。新パーパスの「まだみぬ、世界は、美しい」は、当社が作った新しいコンタクトレンズや関連分野の商品を通じて、今後ともより良いビジョンを世界の皆様に提供したいという想いが込められています。
・ 当社は多様な「見える」を提供するコンタクトレンズを中心とした目の総合専門メーカーを標榜しています。あまり拡大せず、見えることに関連した事業を展開しています。「みる」という言葉に多数の漢字があるように、単に英語のSeeで表す「見る」だけでなく、医者が病気を診る場合やものを読み取る意味もあります。人間の「見る」コンタクトレンズが主ですが、動物の目の病気を治すために用いるバンデージのコンタクトレンズや、人間用でも手術後に目の表面を保護するコンタクトレンズもあります。それらを海外でも作っており、多様な「見える」を活動領域としています。
・ 当社がパーパスを変えたのは、事業領域が広くなり、何を行おうとしているのかを伝えたるためです。また、当社製品を購入いただく方が一番のお客様ですが、様々な機械や材料を提供いただく方、当社へ就職を希望する学生も大きなステークホルダーになります。その方々に今、取り組んでいることをお伝えしたい思いでコーポレートロゴとともに変えました。
・ 当社は創業以来、東京都文京区本郷で業務を行っています。創業者の厚澤弘陳は、家業が義眼屋でした。戦争が終結した頃、戦時中も含めて目を傷病される方が多かったため、今とは比べ物にならないくらい義眼の需要があり、大学病院で義眼の製造や研究をしていました。義眼について教わっていた佐藤勉博士が順天堂大学の初代眼科教授に就任後、厚澤へコンタクトレンズの研究開発を持ちかけたことが当社の事業の始まりです。いわば大学発のベンチャー企業のようにスタートしました。5年ほど一緒に研究して事業化できそうな段階で、家業を兄弟に任せて、1957年に独立し専業としました。
・ 2024年3月31日現在、連結従業員数は1,337名、国内営業所は8か所で、札幌から福岡までカバーしています。
・ 当社の事業は、ハードのコンタクトレンズからスタートしました。柔らかいけれども長く使える、煮沸していたコンタクトレンズがあります。ちょうど日本万国博覧会(EXPO’70)の頃に出た商品です。その後、コンタクトレンズのみならず洗浄する消毒薬を代理店等を展開して販売し、一時期は売上高も200億円を超えていました。
・ 2000年前後にアメリカから使い捨てのコンタクトレンズが入ってきました。当時、使い捨てのものは必ずしも体に良くない、視力的にも一定期間使えるものが勝るということで、日本のメーカーはなかなか手を出しませんでした。しかし、瞬く間に世界のデファクトスタンダードが使い捨てになりました。洗浄液の消費量が減少するため、2007年頃から自社で1dayのコンタクトレンズを製造することへ、大きく方向転換をしました。
・ ケア用品の代理店ビジネスを大幅に削り、コンタクトレンズを自社製造するために2007〜2009年にかけて事業の転換を行いました。その後は98%近くの事業をコンタクトレンズの製造販売にあてる形で成長しています。
・ 2024年3月期の単体売上高は294億円、連結売上高は323億円で、ピーク時を超えた状態になりました。本年もそれを超える計画を立てています。製造業のメーカーとしては増収を重ねています。
・ 2020〜2021年にかけて、コロナ禍の影響を受けて売上高がマイナスになりました。コンタクトレンズは人々の活動量とほぼ比例して需要があります。在宅勤務が増え、学校のクラブ活動がなくなると、当然ながらその分使用量が減り、売上が落ちます。
・ 当社のPureシリーズは、国内で原材料から最終製品まで一貫生産しています。ハードコンタクトレンズやシリコーンも国内で作っています。一部台湾に製造委託しているのはカラーコンタクトレンズです。大体10〜20代、最近では30〜40代の女性によく使用されています。日本のマーケットでは2割ほどがカラーコンタクトレンズに類する商品構成です。消毒薬などは現在も販売しています。
・ コンタクトレンズの市場規模は拡大しています。それは近視が増えているからです。WHO(世界保健機関)は、2050年には世界の人口の半分は近視になると予測しています。世界の近視率上昇は、東南アジアの国々、インド、アフリカ、中近東など、今まで近視率が5割に満たなかった地域で大きく増加したことが要因です。当社では、2023〜2032年の間、コンタクトレンズの世界市場規模は、北米の比率は35%で変わりませんが、欧州が少し減少してアジアの近視率が大きく上がると予想しています。この約10年間だけを見ても全体で1.8倍となっています。その後も10数年間で北米の比率がやや減少、欧州が減少して、アジアとアフリカが上がると予想しています。
・ 今、皆様はスマートフォンやタブレットなどの情報機器をお使いだと思います。そのような生活が高校生でも増え、1日6〜7時間もタブレットを見ていることが大きな問題だと報道されています。近視の人口自体は日本も上がっており、現在は小学校入学時に検診を行うと、34%のお子様は黒板が見えない状態と言われています。近視が量として増えているのではなく、低年齢化しているのが大きな問題です。
・ 物を近くで見る習慣がつくとピントが合う場所が徐々に目の奥の脳側に押される形になります。球体であった眼球が、楕円形に成長してラグビーボールのように伸びてしまうことが近視の原因です。近視の度数の上がり方は概ね、身長の伸びが止まるのと同時に止まります。そのため早い時期から近視になると症状の進む期間が長くなり、度が上がっていきます。
・ メガネの度数を測定する際は近視・遠視・乱視について屈折率を表すディオプターと呼ばれる単位で測ります。これが6や8になると強度近視になり、8は病的近視と呼ばれる病気のカテゴリーとなり、白内障や緑内障になる確率が高くなります。加齢黄斑変性症や網膜剥離など、最終的には失明につながる病気にもなります。近視のコントロールは、単に運動時に困るなどの問題だけではなく、大きな疫学上の社会問題の一つです。
・ コンタクトレンズは、眼鏡よりも広い範囲で近視のコントロールと矯正が可能です。眼鏡は目の上に掛けますが、コンタクトレンズは目の上に直接乗せるため、それだけ矯正力が強くなります。近視・遠視の矯正をカバーできることがコンタクトレンズの良さです。コンタクトレンズが高度管理医療機器として医療機器の指定を受けている理由もそこにあると考えています。
・ 日本市場における当社のメーカー出荷額は、1993年の452億円から2023年には3,018億円となり、30年間で約6倍に伸びています。これは単純に日本人の近視人口が6倍になったわけではないと考えています。今までは、1年や2年使えるコンタクトレンズを使用される方がいました。現在は70%を超える方が1日で使い捨てるコンタクトレンズを使用しているため、消費量が大きく上昇したと考えています。1日使い捨てタイプの普及率は、イギリスやイタリアなどの北欧では90%近くまで上がっており、日本もあと10ポイント程度の上昇を想定しています。近視の増加に加えて1dayのコンタクトレンズを使う方が増えることで、消費枚数が上がります。1年に1回交換するものに対して、毎日使い捨てにすると枚数が365倍となるため、市場は近視の数や率だけではなく、どのタイプを使用されるかによっても大きく拡大すると考えています。
2.2025年3月期 第2四半期決算概要
・ 2025年3月期第2四半期のサマリーは、売上高約168億円、売上総利益約73億円です。営業利益は8億7,000万円台で増収ですが、若干の減益です。市場では商品を出せば十分に売れる状況です。2年程前からは当社に限らず世界的に大規模メーカーは欠品しています。十分な数の商品を市場に提供できず、配送が一部遅れることも散発的に続いています。製造設備の拡充はすぐには難しく、どうしても階段状にしか上がりません。
・ コロナウィルスが収束した時期に需要が大きく増え、近視が増えて供給が追いつかなくなったことが理由ではないかと考えています。また、スマートフォンの影響も大きく、画面を見る時の目との距離の近さはテレビの比ではなく、乱視になりやすくなります。国内ではこれまでは、1dayタイプの乱視用コンタクトレンズ比率は出荷額の15%ほどでしたが、今は20%まで増えています。
・ 使用される方も高齢化し、コンタクトレンズを使い続ける方が増えています。60〜70代でも女性も含めてかなりの方が使用され、遠近両用や乱視用製品の出荷量が増えました。ただ、遠近両用や乱視のコンタクトレンズは通常の近視・遠視に比べて製品の製造が難しく、時間もかかります。そのため同じ時間で機械を動かしていても金額ベースでは増収になりますが、枚数ベースでは多く作ることができません。当社も含めて、遠近両用や乱視用の比率が増えたことが、欠品の大きな原因ではないかと考えています。
・ 当社も現在、国内では乱視と遠近両用の一部は注文から14日後の納品で、需要が逼迫しています。その意味では通常と比較して1ヶ月分ほど売上的にマイナスですが、下期で挽回しようと考えています。製造の限界イコール販売の限界となることが上期の状態であり、生産力を如何に上げるかが大きな課題です。
・ 生産棟の2号棟別館の延伸や、新しい4号棟建築に着工し、先行投資の費用が相当嵩んでいます。そのため、上期はあまり営業利益が芳しくない状態でした。本社も上期に新築移転し償却に伴う一過性のコストも1億円程度入っていますが、それはアドホックな経費かと思います。全体の決算と横並びに見ると2025年3月期第2四半期の売上高168億円は、2024年3月期対比で8億8,100万円増(5.5%増)、売上総利益で2.4%増となります。粗利率は43.4%ですが、2024年3月期は44.7%でしたので1.5ポイント弱ほど減少し、これが大きなポイントと考えています。営業利益が4億3,200万減のマイナスで前年同期比33.1%減、営業利益率は5.2%です。経常利益は7億6,400万円、中間純利益は5億4,800万円です。
・ 事業別売上高は、コンタクトレンズの製造販売がほとんどを占めています。売上高約168億円のうち165億円近くがコンタクトレンズで、残りがケア用品です。増えているのは主力の「シード1dayPure」、「シード2weekPure」やオルソケラトロジーレンズです。オルソケラトロジーレンズは夜、寝るときにハードのコンタクトレンズを装着して、昼間は裸眼で過ごすものです。当社はこのカテゴリーにおいて日本でナンバーワンです。使用する7〜8割程を小学生のお子様が占める状態で、近視の進行を抑制する効果の期待もあり、多くの臨床研究が行われています。
・ 販管費は64億2,800万円で、2024年3月期対比で1割増となっています。内訳は主に人件費の増加です。工場も増設し、人材の増員も行っています。人材の確保は短期的にも長期経営にも大切なことなので一生懸命取り組んでいます。
・ 現在、治験関係を多数実施しています。前期・今期ともに10億円を超える金額を半期の研究開発関係で使っています。近視進行の抑制効果があるレンズの研究で3品目の治験を行っています。他には薬剤の融合、新しいシリコーンのレンズ、そしてスマートコンタクトレンズの一部小規模治験を行っています。治験関係の費用が研究開発で大きなウェイトを占めています。その他では本社の新築移転に伴う費用の発生やコーポレートブランディングの変更、その周知活動によって一部増えています。
・ キャッシュフローは、半期ではEBITDAが25億5,300万円です。前期が27億5,900万円で、2億円程減少した分は営業利益に起因しています。EBITDAは償却前利益ですが、それに対する借入金の比率は約2.8倍で財務の健全性は保たれていると考えています。当社の仕事は投資先行型の装置産業です。箱物を建築して、機械を入れて量産を始める先行投資が長い産業なので、その意味で現在は投資フェーズです。その前の3年間ほどは回収フェーズでしたが、去年から始まり再来年の前半頃までは投資フェーズとしてお金を投資して、その数年後にまた回収を行いたいと考えています。
・ 借入金の比率は約37%で、ほぼ一定しています。ある程度レバレッジをかけた形で装置産業として投資を行い、償却で回収するモデルです。自己資本比率は34%前後で、ROEは前期が13.4%です。
・ 当社は海外向けの販売を強化しています。2030年ぐらいまで日本の人口は減少しますが、近視の数は増えていきます。当社にとっては純粋にお客様の数が増える状況が、国内であと6〜7年は残っています。その後は人口減が大きく影響してきますので、近視が増えると思われる東南アジア、インド、中国、中近東のほか、1day化があまり進んでいないヨーロッパも大きな市場と見込んでいます。当社は日本国内とヨーロッパにある子会社からそれぞれの地域に出荷をすることで、国際化を進めようと考えています。
・ 昨年の海外売上高は約48億円でしたが、今期は60億円を目標にしています。第2四半期までで約26億円なので、昨年対比2割増で推移しています。下期にもう少し生産量を拡大して出荷を上げていきたいと考えています。ヨーロッパや東南アジアは堅調ですが、中国は昨年対比よりもさらに悪くなると思っています。中国は与信も含めて様々な問題があります。当社は現地法人自体に販売していますが、その先の販売も慎重に進めたいと考えています。中国の消費動向が良くないのは、特に若い方々の職場の安定に不安があるためであると考えています。これはマーケットの状況を見て慎重に対処したいと思っています。
・ 当社の輸出先は、イギリスも含むヨーロッパが65%、中国(香港、マカオを含む)が24%、東南アジアが10%で推移しています。東南アジアの部分とヨーロッパの部分が増えています。ヨーロッパの子会社に一旦入れたものを、中近東、アフリカの一部も含めて再出荷をする形になっています。そのためヨーロッパには、南ヨーロッパから東ヨーロッパ等々の部分を含む形になっています。
・ オルソケラトロジーは、寝ている間に視力矯正ができるレンズです。当社は日本で50%のマーケットシェアを持ち、前年同期比で21%ぐらい増えています。アジアについては当社で作ったものをアジアに販売し、また中国のオルソケラトロジーのメーカーに原材料を供給することで中国マーケットに参加しています。中国マーケットは5年間ぐらいブームでしたが、去年あたりから非常に厳しい状態になっています。長期的な意味でどのような参画の仕方が良いかを、よく見なければいけないと考えています。ヨーロッパは、当社のドイツ法人のものをドイツ国内とオーストリア等で販売しています。また、その他のヨーロッパ諸国にも拡大したいと考えています。
・ 当社は遠視と乱視の方など一人ひとりのニーズに応えたいと考えています。今後の成長に向けた取り組みとして、近視の進行抑制についてオルソケラトロジーレンズと、EDOFレンズの治験や臨床研究などを実施しています。また、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズやスマートコンタクトレンズの開発、薬とコンタクトレンズの融合を次世代商品として開発を進めています。
3.中期経営計画
・ 中期経営計画は今年から再来年にかけて、生産力を増大させて連結売上高500億円を超える供給力を持つことが最大のポイントです。今年と来年で生産の拡充を行い、500億円規模の生産量を持って世界のマーケットシェアで現在の2〜3%から5%まで規模を拡大し、一定のパーセンテージを占められるように計画を進めています。また、アジアではトップ3になりたいと考えています。
・ この3年間を中途の期間に位置づけ、今期の連結売上高360億円から410億円まで、営業利益は22億円から28億円へのアップを目標としています。本年と来年は減価償却負担など先行投資の部分が重いため、利益に影響が出ているところもありますが、それは2027年度からは回収されると考えています。
・ キャッシュフローは、EBITDAで最終年度に60億円へ達するように、ROEは基本的に10%前後から11%を担保したいと考えています。生産力を抜本的に上げて細かなニーズに応えるものづくりと、それを推進する内部基盤の強化を行って社会への協調性や調和を推進し、SDGsの各項目についての充足を図りながら、安定した配当と安定した株価を、株主の皆様に提供することが中期経営計画の大きな柱です。
4.トピックス・参考資料
・ 生産力増強を行っています。当社の鴻巣研究所(埼玉県鴻巣市)には1〜3号棟の生産棟があります。2号棟の延伸部分の別館も2024年4月に竣工しています。それに加えて資材棟、製品倉庫棟、研究棟、保育園があります。また、4号棟の建築を行います。173億円をかけて最終的には2,400万枚分の生産が可能な建屋を作る計画です。最初の第1期分で月間1,400万枚の生産量を備えるために173億円の投資を行います。2026年1月の引き渡しで3月から稼働を始めたいと思っています。その後の別枠投資で建設し、月間2,400万枚の生産量まで増やすことができます。現在の月間最大生産枚数である6,500万枚に、まず1,400万枚を足した7,900万枚となり、その次に8,900万枚まで増やすことができます。
・ 建設予定の4号棟の脇に空き地部分があり、フロア数によりますが、およそ3.000万〜3,500万枚までの生産量が見込めると思います。この土地における当社の生産力の上限は1億1,000万〜1億1.500万枚ぐらいになると思います。一つのサイトで1億枚を超える月産の生産量ができるのは、世界におけるファーストティアの一つだと思っています。これを実現して世界に供給する力を増やすことが、供給量イコール販売上限になっている当社の現状打破につながると考えています。2号棟の別館は既に2024年4月に竣工し、10月の段階で機械搬入をして工事は全て終わり、完全に稼働している状態になっています。
・ 減価償却と投資の割合についてですが、償却は期間が短いものから11年を超えるものまであり、投資と償却のタイミングがそれぞれ来る流れで進むと思います。現在は2024年3月期が終わって2025年3月期を迎えるところですが、EBITDAが約52億円です。償却は、本年から来年の数値が28億円ほどで推移し、ほぼ横ばい状態です。今年と来年を通した分が2027年度から32億円と、4億円弱償却の負担は上がります。一方で売上高が430億円まで上がることを見込んでおり、EBITDAの回収金額も6億円であるため、十分投資が回収できる大きな流れの中で動く形になっています。
・ 当社は投資先行型の産業であるため、投下した総資産を如何に効率よく動かすかが課題であり、工場の稼働率と歩留まりを上げる生産、品質にも起因します。一方で付加価値の高い製品を作ることで、価格を上げていくことも大きなポイントだと考えています。
・ 資産効率と利益率の向上は、如何に回転を上げて付加価値の高い商品を作れるかが重要だと考えています。それをエクイティ(Equity)だけでなく、借入金やリースを活用してレバレッジを効かせることだと思っています。あとはタイミング良く投資を行って回収フェーズを作りたいと考えています。こうした安全性を担保することでPBR改善、ROE上昇とPER向上という要素に分解されていくと思っています。このように成長戦略、財務戦略、IR・ガバナンス強化を実現したいと考えています。
・ 業績推移および今後の業績見込についてですが、投資期間は27年ぐらいまでで、27年半ばから回収期間に移行すると考えています。以降3年間は主に回収期間と投資期間が相半ばする状態で進むのではないかと考えています。最終段階ではEBITDAが80億円前後で進めると思っており、営業利益は40億円後半から50億円近くを実現できるように目算しています。
・ 当社の資本コストは8%前後と考えており、これを上回るように資本効率を上げた投資が必要だと考えています。それに伴って市場評価や資本効率は10%を超える段階へROEを上げて、できれば12〜13%まで上げることで資本コストを上回る経営を行いたいと考えています。利益回転率、財務レバレッジを考慮して新しい生産設備を作ることは量のみならず、新製品を出すためのラインを空けることにもなります。新製品でないと高価格を設定できないので、良い値段をつけるためには生産力拡大が必要だと考えています。
・ PBRは2024年3月期まで1.0倍以上を維持していましたが、前期に1.0倍を割っており、これを何とか改善したいと考えています。基本的には現在の施策を正しくご理解いただくこと、今後出てくる商品についても理解を持っていただくことが将来的な期待値になってくると思います。
・ キャピタルアロケーション・株主還元の方針ですが、キャッシュフローのおよそ30%台を新しい生産投資や技術開発投資、研究開発投資に向けています。3〜4割を将来に対する投資に割り当てていることが、成長投資だとご理解いただきたいと思っています。
・ 配当性向は30%後半〜40%前後を目標にしており、昨年は32.4%でした。配当性向は上下していますが、年間配当金額は一旦上げたらなるべく下げずに安定させたいと思っています。現在は1株につき15円配当です。
・ 優待制度は利便性も考えてQUOカードの贈呈等を行っています。皆様の声も反映しながら優待制度を拡充することを考えています。株主優待の対象は通常100株以上を1年以上継続保有していることが条件ですが、現在制度変更を行っており、2025年3月末日の株主名簿に記載された株主様については、これを条件としない形で今期は運営しています。洗浄液等をお使いの方は、当社の商品券が一番お得なパターンかと思います。その他に寄付、各種名産品も取り揃えています。被災地支援として熊本や能登、東北地方の名産品などを優待品に取り入れています。
・ サステナビリティ・ESGに関しては、「BLUE SEED PROJECT 〜海に愛(Eye)を〜」に取り組んでいます。プラスチックを回収して資源としてリサイクルしています。こうした面でも当社を好きになっていただけるように、お客様を増やしていきたいと考えています。
5.質疑応答
Q1. 競合他社と比較してどのような強みがあって、今後、国内・海外の競合他社にどのように打ち勝っていく計画でしょうか。
A1. 競合をどこまで配慮するかですが、世界の中で基本的に自社ブランド中心の使い捨てコンタクトレンズを販売しているのは6〜7社だと考えています。その中で当社は原材料から最終製品まで一貫して作ることができ、ハードコンタクトレンズ、オルソケラトロジーも含めて幅広く網羅し、メディカル系の投資も行っています。向こう5〜10年で、スマートコンタクトレンズで眼圧そのものを測ることができるレンズ、あるいは薬と融合できるアレルギー薬が入ったコンタクトレンズなど、ユニークなものが出せることが当社の強みだと考えています。また、アジアではかなり浸透し、一番近視率の上昇が見込まれる地域で当社商品の認知が高いのは一つのメリットだと考えています。
Q2. 一箇所に生産拠点を集中するリスクはありませんでしょうか。
A2. リスクはあります。ただ、集約のメリットとリスクを考えた場合、埼玉県鴻巣市のサイト自体は工業地域であり、地盤調査もして水害や地震も含めて安定した場所です。まずはここで集約のメリットを取ることを考えています。加えて、台湾のメーカーが月産で3,000万枚、当社では5,000万〜6,000万枚を生産しており、両方合わせると9,000万枚前後の生産ラインになります。3,000万枚程度のラインを確保していますので、うまく協力しながら調達を行っていくことで、全体のリスクを縮小する形になります。今のサイトが満杯になった時には、分散化していくこともあるかと思います。人材をどう集めるかも非常に大きな問題ですので、国内で工場を拡張するのか、あるいは消費地に近い東南アジアに持っていくのかは、次の段階での考えどころかと思います。
Q3. 海外子会社のチェック体制について教えてください。
A3. 海外子会社は東南アジアに5社ありますが、全て販売会社で、メーカー的な機能を持っていません。当社の製品あるいはOEM先から直接納品された製品を販売していますので、あまり大きなリスクは取っていないと考えています。ヨーロッパにも子会社が3社ありますが、それぞれがメーカーで原料から作っている会社もあります。こちらはリスクの幅は広いですが、日本人2名を1名は社長、1名はリエゾンオフィサーとして駐在させて全体を見ており、毎月1回ずつ必ずレビュー等も行います。また3ヶ月に1回は必ず日本から訪問して現状調査を行っていますので、十分ガバナンスは取れていると考えています。
以上
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