株式会社平和堂(8276)
開催日:2024年11月30日(土)
場 所:ミッドランドスクエア オフィスタワー5階 『ミッドランドホール』
(愛知県名古屋市中村区)
説明者:代表取締役 社長執行役員CEO 平松 正嗣 氏
1.会社概要
・ 概要をご紹介します。平和堂はハトのマークが象徴ですので、10年ほど前に「はとっぴー」というイメージキャラクターを作りました。「はとっぴー」は各地のイベントに参加し、お子さまだけではなく、皆さんに人気のあるキャラクターとなっています。
- 当社は67年前に滋賀県彦根市で生まれた企業で、今、全166店舗のうち80店舗が滋賀県にございます。JRの駅沿いから始まり、山間部を含めて展開し、県内企業の売上規模では一番です。また、滋賀県に本社を持つ企業は多数ありますが、事業所の規模としても一番大きいです。小売事業を中心にしていますので、日々の生活の中で平和堂をよくご利用いただいております。
- 皆さまの生活に浸透している例として、1年ほど前、「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」という映画に平和堂が登場しました。主人公が掲げる滋賀県解放戦線の御旗に平和堂のハトのマークが出てきます。また、この春、2024年の本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」は滋賀県大津市を中心とした本で、実名で固有名詞が出てくる中、平和堂も出てくる。第2弾「成瀬は信じた道をいく」の見開きでは、主人公の大学生・成瀬が平和堂のエプロンを身に付けバイトをする姿もあります。
- 平和堂のイメージソング「かけっことびっこ」は店内でも流れており、滋賀県の人だったら皆さん知っているというものになりました。先日、「県民ソング栄誉賞」というテレビ番組が全国放送されましたが、滋賀県の有名なロックアーティストとしては西川貴教さんが、歌としては「かけっことびっこ」がナンバーワンだと挙げておりました。近江高校吹奏学部はこの曲で甲子園に行ったり、今年1月に国立で行われたサッカーの決勝戦でも応援歌の一曲に入ったり、平和堂は滋賀県の一部として、いろいろな形で登場しています。
- 西川貴教さんにはこの2年ほど平和堂の特命GMをしていただいており、開店中は毎時24分と55分に、西川さんが歌う「かけっことびっこ」が流れます。
- 平和堂は、滋賀県を中心に福井・石川・富山の北陸3県、京阪では京都・大阪・兵庫、そして東海地区の岐阜・愛知の2府7県でショッピングセンター、スーパーマーケットを展開しております。
- 最近は小規模店舗に挑戦し、一番小さいお店は500平米(約150坪)、コンビニの3倍ぐらいの大きさです。一番大きな店は6万5,000平米、バンテリンドームの6倍ほどの広さを有したショッピングセンターで、さまざまなサイズの店舗があります。1カ月ほど前には愛知県知多市にオープンしております。平和堂としては166店舗、加えて、京都北部の総合スーパーで100%子会社のエール2店舗を含めて、合計168店舗を展開しています。
- 沿革です。創業は1957年、彦根市で「靴とカバンの店・平和堂」としてスタートしました。ほどなく化粧品や衣料、食料品と扱いを広げ、衣食住が合わさった総合小売となりました。まずは琵琶湖の周りを順番に、「琵琶湖ネックレスチェーン構想」と称して、JRの各駅に店を造っていきました。その周辺には小型のスーパーマーケットを出店し、面でエリアを捉えていく「ドミナント戦略」で拡大してきました。51年前に敦賀に出店してからは、福井・石川・富山の北陸へ、それから京阪へと展開していきました。東海地区は今年20周年を迎えます。2004年に当時のグランドタマコシと、その翌年にヤナゲンストアーと手を結び、平和堂東海のスタートとなりました。新店も徐々に増やし、東海地区は現在、20店舗、来年500億を超える規模になりました。
- われわれが大切にしている経営理念は、その地域、お客様にいかに寄り添うか。「商業を通じて豊かな暮らしと文化生活の向上に貢献し、より多くの消費者になくてはならない店になる」が社是でございます。お客様、取引先、従業員、地域のそれぞれに対してどういう形で寄り添っていくかを分かりやすく示した「5つのハトのお約束」は、今でも大切にしています。
- 「HOPカード」というポイントカードは1989年に誕生し、早い段階から平和堂の会員を増やすシステムを構築しております。
- 平和堂グループの中核は小売事業ですが、店舗を拡大するため、例えば食品なら、食品製造、加工までまとめて供給するできるような子会社をつくっています。また、店舗が増えると、ビルメンテナンスも重要ですから、ここも社内で対応できるよう、ビルメンテナンスの子会社をつくりました。店舗をさらに魅力的にするため、飲食やアミューズメントについても子会社を展開しており、今は路面店や、他のショッピングセンターにも出店しています。
- 基本は2府7県のエリアを中心に事業を展開しておりますが、国外では1店舗だけ、中国とビジネスをしております。中国の湖南省が滋賀県と姉妹関係にあるのですが、創業者が内陸部の湖南省に経済振興で訪れた際、国営の百貨店しかなく、非常にぞんざいな扱いを受けたそうです。「いらっしゃいませ」の言葉もなかった。その様子を見た創業者がここに貢献したいということで、百貨店事業を展開しています。4店舗まで展開しましたが、この3年ほどで中国状況が大きく変わってまいりましたので、現在は1店舗に集約しております。
- 飲食店は、フランチャイジーとしてケンタッキーフライドチキンやサーティーワンアイスクリーム、ファミリーレストランCOCO’Sなどをエリアごとに運営しております。
- 平和堂グループの価値創造です。われわれの仕事は人が一番大切ですので、まずは人。そしてさまざまな資源を投下して地域との連携を強め、小売事業を中心にさまざまなサービスをアウトプットしていく。当社には「全従業員の物心両面の幸福(しあわせ)を追求するとともに、お客様と地域社会に貢献し続ける企業となる」という平和堂グループ憲章がありますが、2015年、経営的な視点から、社是や5つのハトのお約束の考え方をベースにし、グループ全体の考え方として改めて、グループ憲章を制定、「全従業員の」という文言を入れました。従業員が物心両面で幸せでないと、われわれの事業活動は前に進まない。お客様、さらには地域へ貢献するのも難しいということで、明確に整理しました。
- 中長期ビジョンとして、平和堂ならではの「地域密着ライフスタイル総合(創造)企業」を目指します。現時点で、全国展開は考えておりません。ショッピングセンター、スーパーが出店している2府7県の他、飲食店を展開する奈良県、コスメショップを展開する三重県を加えた2府9県で、しっかり地域を深掘りし、なくてはならない存在になっていきたいと考えています。
- ビジョンの中では「地域の健康」という言葉を使っています。全国的に人口減少が進んでおり、愛知県の減少スピードは緩いですけれども、岐阜県、北陸は7〜8%、大阪も4〜5%の減少率です。滋賀県は今のところ2〜3%ですが、人口減少、つまり少子高齢化が進むからといって、単純にその地域の経済が縮小していくというわけではない。人の健康には、平均寿命と健康寿命があります。平均寿命は約80歳、健康寿命は70歳前後ですので、10歳以上のギャップがあります。地域にお住まいの方々は高齢者が増えてきますが、70〜80代が元気な地域が増えれば増えるほど、地域も活性化する。全体の人口は減るかもしれませんが、それで経済が小さくなるとは考えておりません。そういう考え方の下、人と地域の健康に関して、お客様、あるいは行政と一緒にさまざまな取り組みをしていきます。
- また、人が動き始めると、地域経済が活性化され、地域も健康になる。その上に、平和堂の理念があるということで、その地域のライフスタイル全体に目を向けるという意味で「総合企業」としています。地域の人たちと一緒になってその地域の未来をつくっていきたい。これが当社の存在意義です。
- われわれが実現したい世界は「その地域が住みやすく、健康的で活気があり、助け合いの精神が息づいている。そのため、高齢者にとっても不自由の少ない、将来を担うお子様にとっても伸び伸びと育ち、子育て苦労も軽減されるような環境、雰囲気がある地域の文化を大切にし、環境の保全の意識も高く、生活の質が高い。それらの状況は、活発な地域交流と心地よい人と人の繋がりがもたらす」というもので、地域の皆さまと一緒にそんな世界を目指したいと思っています。
2.業績の推移
・ 業績の推移です。連結営業収益を2015年から見ていくと、安定的に伸びています。2022年に会計基準が変更になり、収益の認識の仕方が変わったことで約200億の減となりましたが、事業内容は変わっておらず、実質的な減ではありません。それ以降も少しずつ上昇し、営業利益率は、過去15年の平均は約3.2%、環境が大きく変わる中でも、さまざまな取り組みの結果として、安定的に3%はあります。利益を一定の形で出すことで、資本構成の安定基盤を築いてきました。
3.第5次中期経営計画
・ 当社の会計期間は2月21日から翌年2月20日までで、今、第5次中期経営計画が進んでいます。今まで中期計画というものは、内部的にはやっておりましたが、外部に発表したことはありませんでした。今年度初めて、当社はどこに向かっているのか、そして2030年のありたい姿として、定量目標を設定しました。業績的な数字だけではなく、女性管理職比率やCO2排出量、食品廃棄額など、事業を進めるにあたり重要な要素についても目標を持って進み始めております。
- 先ほど営業利益率は過去15年で平均約3%と申しました。3%ちょっとというのは、小売業界では決して悪くない数字ですが、今後も成長し、トップラインを確保して事業展開していくためには、4.5%以上は必要だと考えております。
- 2030年に向けてありたい姿について。まず、皆さんの暮らしを支える大型店舗(旗艦店)を地域の中核に展開させていただき、その周辺に食品スーパーを配置することで衣食住を支えたい。平日はお近くの食品スーパーでお買い物をしていただき、週末や特別な日には大型店舗に行っていただく。そういった流れで総合的にさまざまなお客様のニーズにお応えしたいと考えております。
- グループ全体で言えば、テナントや専門店、地域のガソリンスタンドなど、皆さんと連携しながら、平和堂の会員であることによってさまざまなお買い物のニーズやシーンに応えていけるようにする。これがわれわれの基本的な考え方でございます。
- 中核である小売事業を強化する重点戦略は、課題を踏まえて三つあります。一つ目の課題は、30〜40代のお客様のご来店が少ないということです。現在、平和堂は50歳以上のお客様を中心にご利用いただいておりますが、特に子育て世代は地域の人口動態よりも4.5%ほど低く、平和堂以外の周辺のお店に行かれている状況があります。子育てには費用もかかりますから、価格に対して敏感になられている中、価格に対する提示が弱かったことを反省し、中期計画では、ディスカウントストアや、食品が充実してきたドラッグストアに対抗できるよう、価格対応を強化しています。実際、ここ7〜8カ月で、子育て世代の客数、客単価は上がってきておりますので、引き続き進めてまいります。
- 二つ目は、ドミナント戦略をベースに、複数フォーマットによる重点エリアへの出店拡大、地域密着取り組みによる顧客基盤の盤石化、小型店舗・ネットスーパーなどの新規チャネルの拡大をさらに進めていくこと。三つ目は、これらを進めるために生産性を向上し、業務プロセスの見直しを通じた賃金アップ・働きがい向上と人件費のコントロール、物流化改革の推進、仕様見直し等による各種コストの最適化を進めていくことです。
- 近年、さまざまな業界で話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)についても推進します。今までアナログ的にやっていた部分はデジタルの力を活用するということで、平和堂はCX、EX、LXの三つのXを目指します。平和堂のXはエクスペリエンス、体験です。CXはCustomer Experience(顧客体験)、EXはEmployee Experience(従業員体験)、LXはLocal Experience(地域体験)です。LXはあまり聞かれたことはないと思いますが、地域に密着していくということで、地域社会生活の向上に向けて、デジタルの力を使ってさまざまな課題を解決していきます。
4.サステナビリティに関する取り組み
・ サステナビリティに関する取り組みでは、地域社会の課題解決と地球規模の課題解決、この二つを推進します。
- 地域社会の課題解決では、地域の健康を実現するために、まず「地域住民の健康推進」「地域の子どもたちが笑顔に」「高齢者が安心して暮らせる」の三つの取り組みがあります。例えば、ホーム・サポートサービスは現在、滋賀県全域と岐阜県・福井県の一部で提供していますが、電話一本で商品をお届けします。「電球を変えてほしい」「庭の掃除してほしい」など、さまざまなお困りごとを解決していくサービスで、移動スーパーやネットスーパーも併せて対応いたします。
- 加えて、「地域生産者が輝く」「地域プレイヤーと協力」「地域経済を大切に」にも取り組みます。地域生産者が直接おいしさや食べ方を伝える取り組みをしたり、スポーツや芸術の分野で活躍している地域のプレイヤーと協力しながら地域を盛り上げていく。また、新規就農者を増やす目的で平和堂ファームという実験農場を展開しています。
- 地球規模の課題では、プラスチックや食品ロスの削減も進めています。電気に関してはCO2排出量削減を目指し、脱炭素社会に貢献します。
- 商品を長距離で運ぶとその分トラックがCO2を排出しますので、環境に配慮して地場の商品を提供する取り組みもしています。
- それから、平和堂として人が非常に重要です。いろいろな取り組みをしておりますけれども、従業員の健康がしっかりつくられていないと、地域の健康につながっていかないということで、健康経営を推進しています。
5.株主還元
・ 最後に、株主還元です。これまでは年間、配当性向20%以上を意識していましたが、30%以上を株主に還元することを目指し、今回は年間60円としました。現中期計画の3年間については累進配当を導入します。
- 株主優待制度です。平和堂のお店があるところであれば、優待券を活用いただく。そうでない場合には、どこでも使えるギフト券もございます。
6.質疑応答
Q1.御社は小売事業を中心に複数の事業に携わっておられます。各事業間の関わりやシナジーについて教えてください。
A1.現時点では小売事業が中核で、小売事業を支えているのは、食品加工やビルメンテナンスの子会社と、飲食テナントやエニタイムフィットネスなど、地域のお客様との接点を増やしてくれる店舗です。接点を増やすことによって平和堂との関わりを広げていきたい。結果、何かあったら平和堂に来ていただける、なくてはならない存在になれるよう事業を展開しています。
Q2.御社はプライベートブランドをお持ちでしょうか。持っているのであれば、人気商品や特徴について教えてください。
A2.平和堂が開発した商品は大きく二つございます。まず、くらしモアという商品群です。これは日本流通産業株式会社として開発したものです。日本流通産業株式会社は、平和堂やその地域の会社の売上規模が500億ぐらいのときに、当時のダイエーなどに対抗するため、オークワやライフコーポレーションなど7社で集まって設立した会社で、くらしモアはそこで開発したものです。実際に一緒に開発しておりますので、自社開発ブランドのことで、日常よく使う商品をできるだけお得にという商品群です。
もう一つはE-WA!(イーワ)です。E-WA!というロゴマークの付いた商品で、衣食住、全ての商品を開発しています。E-WA!は、ちょっといいものというコンセプトで開発をしています。、食品であれば添加物を入れない、塩分濃度に気をつけながら、おいしく食べられる。価格的には少し高い部分がありますけれども、皆さんにお手に取っていただけるような開発をしています。
Q3.ネットスーパーを運営されていますが、インターネット経由の売上高はどのくらいの規模感でしょうか。今後の成長余地についても教えてください。
A3.ネットスーパーはまだ経験が浅く、3年前に京阪エリアの京都府宇治市内の1店舗で始めました。この春から京阪エリアで2店舗増やしています。まだ3店舗で、月商1000万くらい、規模的には大きくありませんので、この分野の知見を広げている状況です。
Q4.25年2期、そこから27年2期の配当政策については累進配当を導入していますが、中長期的な株主還元方針のお考えについて、あらためて教えてください。
A4.株主還元については、配当という部分と、私どものお店で優待券を使ってお買い物を楽しんでいただく部分の両方の観点で今後も進めていきたいと考えております。配当の規模については、30%以上を進めると同時に、現在60%ほどある自己資本比率を70〜80%にしようということではなく、きちんと投資をし、成長し続ける。非常に厳しい小売業界ですけれども、投資をすることによって利益を生み出す基盤を固めていく。2030年へと進む中で、配当をどうしていくのがベストなのか考えていきたいと思っておりますが、現時点では、30%以上をベースに進めるということでございます。
Q5.スーパーマーケット平和堂の売り場面積、品揃えなど、店舗の特徴や強みを教えてください。例えば、食品関連の売上割合は何割くらいあるのでしょうか。
A5.全体として今、食品比率は8割ぐらいです。20年前は6割ぐらいだったと思います。もともと食品以外からスタートしたという流れもあり、衣住の比率が非常に高かったのですが、食品の重要性も高まり、最近は食品の店舗が増えました。
われわれの特徴は、基本は衣食住・サービスの提供です。サービスには、保険や旅行代理店、電力など、いろいろありますが、総合的に提供するということ。食品についてはこだわりを持っていて、さまざまなお客様の生活ニーズにおいて、ハレの日にも対応できることが強みです。
ただ、30〜40代のお客様に対しては、日常の価格や品ぞろえも重要視されているということで、生鮮全般、総菜の強化を進めています。生鮮は、青果・精肉・鮮魚など全般です。また、今はタイムパフォーマンスも求められていますので、デリカ・惣菜にも力を入れております。1年前にデリカセンターを新設し、今までの倍の規模となり、よりおいしいものが作れるようにもなりました。センターを活用することで、よりいいものをお届けできるよう、商品開発を進めております。
以上
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