京阪神ビルディング株式会社(8818)
京阪神ビルディング株式会社(8818)
開催日:2024年12月8日(日)
場 所:ミッドランドスクエア オフィスタワー5階 『ミッドランドホール』
(愛知県名古屋市中村区)
説明者:代表取締役社長 若林 常夫 氏
1.会社概要
・ 本社は大阪市中央区瓦町、メインストリートである御堂筋に面したビルに所在しています。
・ 資本金は現在およそ98億円、従業員は2024年9月末で65名と少人数で事業を運営しています。
・ 会社設立は1948年、翌1949年に大阪証券取引所に上場、2003年3月からは東証1部に上場、2022年4月に東証プライム市場に移行しました。
・ 証券コードは8818、最低売買単位が100株で、直近の株価で16万円弱です。
・ 売上高は、創業以来、各時代のニーズに合わせて事業ポートフォリオを変化させながら
着実に成長を積み重ねてきました。
・ 不動産賃貸事業に特化してきた結果、非常に良質な不動産を保有し、安定したリターンを積み上げてきた会社として評価していただいております。
2.京阪神ビルディングの強み
・ 当社は、「多様なアセットタイプ」「健全な財務バランス」「きめ細かいビル管理」「高効率の不動産賃貸事業」の4つを強みとしており、これらが経営理念にも掲げている「価値ある事業空間の提供」を実現する柱です。
多様なアセットタイプ
・ 当社の物件数の約半分を占めるデータセンタービルやウィンズビルはオフィスビルの市況に左右されにくいこともあり、当社物件の空室率は、東京や大阪のビジネス地区の空室率を大きく下回っています。2024年9月末の当社の保有ビル全体での空室率は1.27%と地区の空室率より低い水準を維持し、今年度末には、さらに空室率が改善する見込みです。引き続き、安定した高い稼働率を維持していきます。
健全な財務バランス
・ Net有利子負債/EBITDA倍率は、正味の有利子負債が年間の現金収入の何倍にあたるかを示したものです。当社は、新規投資に伴う資金調達によって一時的に借り入れ等が上昇した場合でも10倍程度までに留め、財務の健全性を維持する方針です。
・ 長年にわたり企業価値を着実に向上させる安定した経営方針が評価され、格付機関のR&Iさまからは28年連続でA−の評価をいただいています。この良好な格付と信用力を生かし、現在500億円の社債を発行しています。
・ 年間平均調達金利も低く抑えられており、前期末時点では0.81%です。今後もこの信用力を生かし、直接金融と間接金融のバランスや返済期日の長期分散化に留意し、低い調達コストの維持に努めます。
きめ細かいビル管理
・ 大手ゼネコンでの現場経験豊富な技術スタッフを多く雇用し、高品質なビル造りや建物、設備の管理運営面で気配りの行き届いたビルマネジメントを実現しています。
・ 営業スタッフも技術スタッフやパートナー企業と連携し、テナントさまと親密なコミュニケーションを取ることを心がけ、お客さまのご要望にきめ細かく応える体制を敷いています。その結果、各テナントさま、とりわけデータセンターのお客さまから高い評価と信用をいただいています。
高効率の不動産賃貸事業
・ 65名という少人数経営でありながら専門性を有する人材を活用することで、高効率の事業運営を実現しています。長期経営計画を実現するには、新規事業を推進する人材の確保が欠かせないため、事業戦略に沿った専門人材の採用や育成、人材配置に努め、少人数の高効率経営を維持しつつ、さらなる企業価値の向上に取り組んでいます。
3.データセンタービル事業
・ データセンタービルとは、インターネット用のサーバやデータ通信のための装置を設置することに特化した建物です。データセンタービルでは、大切な情報やシステムを守るため、通常のオフィスビルに比べて、立地や防災対策、電力供給、通信設備、セキュリティ対策がより重要視されます。
・ 当社のデータセンタービルは都心型データセンタービルに特化しており、通信インフラが密集した大阪の都心に所在しています。このため、当社の従業員による行き届いたメンテナンスが可能となり、緊急時にもすぐに駆けつけられる体制を敷いています。
・ 当社はビルをスケルトンの状態で賃貸しているので、入居テナントさまのニーズに合った内装や機器の設置が可能です。
・ OBPビルは大阪ビジネスパーク内に位置し、地下1階地上16階建の都市型のデータセンタービルとして2021年に竣工しました。日本でも数少ない高層のデータセンタービルであり、当社のシンボル物件です。
・ 1988年からおよそ30年にわたり培ってきたデータセンタービルの企画・運営ノウハウ、パートナー企業さまとの良好な関係が当社の最大の特徴であり、強みです。
・ AIやIoTの発展、5G通信などに伴うデータ通信量の増大により、データセンターの市場規模は引き続き拡大が見込まれています。他方で、不動産価格や建築コストが上昇し、新たなデータセンタービルの開発には厳しい環境下においても、当社は引き続き当事業にも注力して時代のニーズに合わせた高品質なデータセンタービルを提供していきます。
4.長期経営計画
・ 計画の対象期間は、2024年3月期から2033年の3月期までの10カ年です。
・ 資本効率の向上、ROE8.0%という指数が求められる中、本経営計画では、主力の安定的な不動産賃貸事業を維持しつつ、加えて資本効率の向上に資する新たな不動産の事業分野にも取り組むことを掲げています。
数値目標
・ 計画の最終年度の2033年3月期の数値目標は、事業利益140億円、償却前事業利益180億円、財務規律として自己資本比率30%以上、Net有利子負債/EBITDA倍率10倍程度、資本効率を示す指標としてROA5.0%以上、ROE8.0%以上です。
・ なお、東京証券取引所が掲げる資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、本年9月に長期経営計画の数値目標を一部見直しました。本計画の順調な立ち上がりから長期経営目標を前倒しで達成すべく、新規事業の立ち上げや収益化の前倒しに注力し、資産回転型事業への取り組みを通じて資本効率の早期向上を目指します。
・ 今回の見直しにあたり、政策保有株式の縮減目標を新たに掲げました。当社は少人数経営のため、経営戦略上重要な事業パートナーさまの株式を保有してきましたが、事業連携は強化しつつ資本効率の向上のために株式の売却等も検討し、政策保有株式の連結純資産に対する割合をフェーズTの最終年度である2028年3月期までに、現在の16%強から10%以下に縮減します。
投資計画
・ 長期経営計画の10年間で収益物件の取得に1,800億円、エクイティ投資や海外投資等に700億円と総額2,500億円規模の投資に加え、収益物件の売却により800億円の投資回収を行う計画です。その結果、ネット投資額は1,700億円となります。
不動産賃貸事業
・ 当社は主力の不動産賃貸事業を引き続き基盤事業と位置づけ、立地と収益性を重視した従来の方針に基づき、さらなる資産の拡充に努め、安定利益の確保を維持します。
・ 売上の地域ポートフォリオについては、関西圏に保有物件が集中していることから、首都圏をメインターゲットに立地の分散を図ります。計画の最終年度には関西圏以外の売上比率を30%程度に引き上げることで、地震をはじめとする自然災害などの地域集中リスクを低減し、バランスの取れたアセットポートフォリオを実現し、安定した収益基盤の確立を目指します。
資産回転型事業
・ 不動産のキャピタルゲインの獲得を目的とする資産回転型事業を新たに立ち上げます。テナントの入れ替えや改修工事等により、取得物件をバリューアップして売却し、それによって獲得した資金を成長分野へ再投資します。それを繰り返すことにより収益の最大化を図り、併せて資本効率の向上を目指します。なお、バリューアップした収益物件の売却により、10年間で800億円を回収する計画です。
エクイティ投資
・ エクイティ投資とは、不動産そのものではなく不動産を保有する会社の持分を取得するものです。他社との提携による物件の取得など投資手法の多様化を進めることで、10年間で累計160億円の投資を目標としています。
海外不動産投資
・ 日系企業とのアライアンスによる出資を足掛かりに、10年間で累計250億円の投資を目標としています。
新規投資の実績
・ 収益物件として、2023年6月に東京都台東区浅草の商業ビルを取得しました。本物件は東京メトロの浅草駅至近に位置する立地の良さと利便性の高さから、将来的な資産価値の向上が期待できるため、資産回転型事業と不動産賃貸事業のいずれの戦略も検討可能な物件として位置付けています。
・ 2023年10月には東京都港区のオフィスビルに、2024年3月には兵庫県西宮市のヘルスケア施設にエクイティ投資を実施しました。港区のオフィスビルは立地が非常に良く、将来的に再開発の可能性が見込めますし、保有し続ける限り、収益の獲得も可能な物件です。ヘルスケア施設は日本国内の高齢化に伴う需要の増加を見込んでおり、当社にとっては新たなポートフォリオですが、今回の投資を足がかりに、これまで経験のなかったヘルスケア施設のノウハウを蓄積し、次の投資につなげたいと考えています。
・ 海外投資については、情報収集やノウハウの蓄積を目的に2023年10月にアメリカの不動産ファンドに出資しました。アメリカは今後も経済成長が見込まれ、不動産マーケットでの法的な透明性が確保されているため、海外の最初の投資先として選定しました。
・ 本ファンドへの投資を機に2024年5月にはアメリカ現地法人を設立し、8月にフロリダ州のマルチファミリータイプの賃貸レジデンスの開発案件にエクイティ投資も行いました。今後はアメリカを中心に海外投資をしていきます。
財務戦略
・ 直接金融と間接金融のバランスに留意し、安定的かつ低金利での資金調達に取り組みます。
・ 資産回転型事業への取り組み等によりROAの向上を目指し、その結果としてROEの改善・向上を図ります。
5.サステナビリティ戦略
・ 長期経営計画では基本方針として、サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値の向上を図ることを掲げています。
環境投資
・ 「気候変動への対策を通じ事業のレジリエンスを強化すること」、「グリーンビル認証の取得を推進して環境性能が高い不動産への需要の高まりを収益の機会につなげること」を重点施策としています。
・ この方針の下、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標として、2031年3月期までにScope1+Scope2を46%削減(2020年3月期比)、2051年3月期までにGHG排出量(Scope1+2+3)のネットゼロ達成を掲げています。
・ 保有物件に再生可能エネルギー由来の電力を導入し、太陽光パネルを設置しています。また、これらの取り組みを客観的に評価していただくために、グリーンビル認証の取得も進めています。
人的投資
・ 外部人材の登用と内部人材の育成をバランスよく組み合わせることで、少人数経営による事業の効率性を維持しつつ不足するリソースを補完し、今後の持続的な成長の実現に向けて企業風土の根幹をなす人材育成に取り組んでいます。
・ 多様な価値観を組織内に内在化させることが、多様化・複雑化する社会における当社の発展につながるとの認識のもと、経験者やシニア人材等を積極的に活用するとともに、女性活躍の推進にも力を入れています。
・ 働きやすい環境をつくるために業務効率・生産性向上の仕組みづくりにも取り組んでいます。
6.今期の業績予想
・ 2025年3月期の業績は、データセンタービルの稼働向上、オフィスビルのテナントの入居、浅草駅前ビルの通期寄与を主因に、売上高は197億円と、前期比3億8,900万円、2.0%の増収を見込んでいます。また、修繕費や減価償却費の減少を主因に、営業利益は56億円と前期比5億1,600万円、10.2%の増益、経常利益は55億円と前期比6億5,700万円、13.6%の増益となる予定です。当期純利益は38億円と前期比600万円、0.2%と若干の増益に留まる見込みですが、事業とは関係のない特別利益が前期よりも減少することによるものです。なお、売上高営業利益率は、28.4%と高い水準を維持しています。
・ また、当社が長期経営計画で重要な経営指標として掲げている償却前事業利益は98億円と、前期比6億7,100万円、7.4%の増益を見込んでいます。
7.株主還元
・ 今回の長期経営計画の見直しにより、1株当たりの利益を重視した累進配当とすることを新たな方針として掲げました。また、配当性向の目標は、前中期経営計画の35〜40%から45%程度に引き上げています。
・ 2025年3月期は1株当たりの年間配当額を37円とする予定です。
・ 直近では40万株を上限とする自己株式の取得を実施しました。今後も経済情勢や自社の株価等を総合的に勘案し、自己株式の取得等の資本効率を意識した株主還元を検討していきます。
8.まとめ
・ 当社は不動産会社として安定した収益と健全な財務体質をベースに新たに資産を積み上げるとともに、新規事業にも取り組むことにより資本効率の向上を図り、さらなる企業価値の向上に努めていきます。
9.質疑応答
Q1.出社回帰に伴いオフィス需要が堅調に推移すると思われるが、貴社の空室率が低い要因を他社と比較して教えてください。
A1.当社の保有物件でもテナントさまの入れ替えが発生していますが、テナントさまとの緊密なコミュニケーションを通じて退去情報を早期に察知し、すぐに次のリーシングにつなげる営業活動をしています。また、大阪の梅田地区を中心に大型物件の供給が増えているものの、当社は大型物件と需要が異なる中規模のオフィスビルを好立地に保有することで、当社の空室率をマーケット平均より低く抑えています。
Q2.海外投資は、今後どの程度貴社の業績へ貢献できるようになりますか。また、主なターゲットはどこですか。
A2.リスクヘッジとして、東南アジアなどのように経済が成長しているものの法律が十分に整備されていない国ではなく、不動産マーケットでの法的な透明性が確保されており、今後の経済成長を見込めるアメリカを主な投資先としています。アメリカで実績を積むことにより海外で事業展開が可能な組織体制と人員を強化した上で、アメリカ以外の国への挑戦も考えています。また、日本国内においては人口減少に伴い今後のマーケットの成長は期待できず、競争のさらなる激化が見込まれるため海外投資は必須だと考えていますが、無理することなく徐々に利益を拡大していきます。
Q3.若林社長が目指す10年後の会社の姿、展望を教えてください。
A3.長期経営計画にて、「社員一人一人が創意工夫と挑戦を通じて成長し、時代のニーズに応える価値ある事業空間を提供することにより、サステナブルな社会に貢献し続ける会社」を10年後の目指す姿として掲げています。
また、10年の時間軸の長さに対するご指摘を投資家さまから頂戴してきたため、長期経営計画をできるだけ早く実現することを目標としています。これまで長年にわたり、不動産賃貸事業を通じた安定的な経営を基盤に投資家さまから安心して投資をしていただく経営を実現してきました。今後は、資本効率の向上をはじめとする投資家さまからの期待に応えつつ、社会の発展およびサステナブルな社会に貢献し、事業に携わるステークホルダーの皆さまがそれぞれに成長し続けられるような事業を展開することで、引き続き皆さまに必要とされる会社を目指していきます。
以上
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