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日本製鉄株式会社(5401)

開催日:2024年12月1日(日)

説明者:常務執行役員  岩井 尚彦 氏

 

1.当社の経営戦略

【事業環境】

・ かつて「鉄は国家なり」と言われましたが、当社は世界の鋼材需要は今後も成長すると考え、「世界は鉄でできている。」のキャッチフレーズでPRをしています。圧倒的に安価で地球の3分の1は鉄でできていると言われるほど豊富な資源である鉄は、日常生活に使われ文化的な生活の基盤になっています。日本の鉄の年間使用料は中国に次いで2番目で、一人当たり約440キログラムです。欧州・アメリカはその次で約300キロです。

・ 鉄の需要は経済成長に比例し、経済成長国では最初はインフラを作るために鉄の需要が爆発的に増加します。日本のピークは1973年と、バブル期の1990年前後の2回で、それぞれ年間約800キロを使っていました。

・ 経済成長が落ち着くと、一人当たりの鋼材需要は300キロ程度になることが歴史的に繰り返されています。そういう意味では日本、欧州、アメリカは成熟した市場といえます。ただ実はアメリカは先進国の中で唯一、今後の人口増が見込まれている国で、統計では2080年まで人口は増え続けるそうです。一方、インドの需要は低く、一人当たり約80キロですが、他国と同じ道をたどれば、これからインドでは飛躍的な鋼材需要が期待できることになります。ASEANも今は停滞していますが、まだ人口のボーナスがあるため、いずれまた成長を始めると思います。当社がグローバル戦略の柱とする地域は、インド、ASEAN、アメリカの3つです。

・ 中国は最大の鋼材需要国です。2000年以降進めたインフラ整備は2020年にピークを迎え、その後は減少に転じています。一人っ子政策の影響で少子高齢化がこれから進みますので、今後は500キロ、400キロ、300キロと減るものと思われます。

・ 先進国が成熟すれば、鉄は新たに新興国での需要が高まるため、世界的に見ると鉄の需要は減ることはないと言われています。

・ 現在、日本国内の需要は大きな構造変化に直面しています。1990年はバブル期で、内需のピークでした。当時の国内向けの鋼材需要は9400万トン、約1億トンありました。一部能力余剰があった部分を輸出していましたが、主力は国内向けでした。しかし、2019年には内需は5,900万トンと30年前から大きく減少しました。その結果、鉄鋼メーカーは設備の稼働率を上げるために売り先を海外に求め、とにかく輸出を増やしました。そのため、輸出比率がかなり高くなりました。

・ 今後、国内需要は人口減少で縮小が予想されます。一方、世界各国は自国産化を進めているため、貿易市場が縮小して日本は海外輸出で稼ぐ環境ではなくなってきています。輸出立国である日本としては、非常に厳しい状況に直面しています。

・ 国内では社会の変革をとらえた新たなビジネスチャンスも生まれています。鉄も高付加価値の商品があります。気候変動問題に端を発したエネルギーの構造改革やコンビナートの脱炭素化、自動車等の電動化、国土強靭化では、先進技術を活かした新たな鋼材・ソリューションニーズがあると思います。さらに労働人口減少といった社会構造の変化や、AIに代表されるITの進化は、当社グループの最新技術による生産性の向上、DXの加速化につながるチャンスになると思っています。

・ 新たなビジネスチャンスのために幅と厚みのある事業構造の実現を考えています。国内の製鉄事業が中心であることは変わりません。幅では海外事業の進化・拡充を通じた鉄鋼事業の規模の拡大を志向していきます。厚みの方向では、川上の原料、川下の流通分野も当社の事業領域に取り込み、鉱山への投資、商社・二次加工の再編を進めます。こうした戦略を推進することで、幅と厚みを持つ強靭な事業構造へと進化を遂げ、将来的にはグローバルの粗鋼生産能力1億トン、実力ベースの事業利益1兆円ビジョンを実現し、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。

・ 1兆円ビジョンとは、戦略をベースとして数量に頼らないことです。外部環境に頼らず、安定的に実力ベースの事業利益を6,000億円以上確保することに取り組んできました。

・ コロナ禍前の最高益は2014年の4,900億円で、以後は収益が低迷し、国内の鉄鋼事業は赤字に転落するなど厳しい状況にありました。しかし、2019年以降の構造対策によって、2021年度以降はV字型回復を果たし、高収益を継続しています。前社長の橋本英二が、安定的に6,000億円以上確保すると宣言しましたが、これを確保する収益構造の構築はすでに終わったと思っています。今後目指していくのは、1兆円規模にすることで、それに向けた新たなステージに入っています。

・ 利益の内訳をこの5分類で明示するようにしてきました。コアとなる国内製鉄事業は利益が一時の赤字から回復し、安定的に利益が出ています。海外製鉄事業の利益は、2014年には130億円でしたが、2023年には10倍以上の1,300億円規模に膨らんでいます。また、原料事業も利益を上げています。原料価格が上がると、国内の製鉄事業はコストアップの要因になりますが、一方で原料を事業として投資している分は、むしろ利益がプラスに効いてきます。原料事業も2014年は560億円でしたが、昨今の原料の高止まりにより1,300億円規模の利益となり、収益に貢献しています。

・ 鉄グループ会社と、それ以外の非鉄3社のセグメント会社も、親会社と戦略を共有化して構造対策を進めてきた結果、収益力を高めています。鉄鋼業のバリューチェーンの中で、事業領域を広げてさまざまな収益源を持つことで、安定的で強靭な事業構造を作り上げてきたと考えています。

 

【経営戦略@ 国内製鉄事業の再構築】

・ 当社事業の再構築のための戦略は4つあります。1つ目が「国内製鉄事業の再構築」で、生産設備構造対策、紐付きマージン改善、注文構成高度化の3段階を同時並行で進めてきました。

・ 生産設備構造対策では、15基あった高炉を現段階で11基まで減らし、今年度で鹿島製鉄所の第3高炉を止めることで10基まで削減します。高炉を5基落とし、粗鋼生産能力も5,000万トンから4,000万トンまで20%削減する計画が、今年度で完遂します。これにより固定費は大幅に削減されます。

・ 紐付き分野でのマージン改善も進めてきました。紐付き分野の取引は、自動車メーカーや家電メーカーといったお客様との間で数量や品質、価格を取り決めて直接販売しています。ある意味注文生産をしているお客様です。この紐付き分野の鉄鋼販売で、いわゆる安定供給できること、そしてお客様と一緒にプロジェクトや研究開発を進めてきたこと、当社製品とソリューションの価値をぜひ認めていただきたいということで、マージンの適正化、販売価格の改善で理解を得てきました。これはさまざまなニュースにも出ていた内容です。生産設備構造対策、紐付きマージン改善で収益基盤はかなり強くなりました。

  • 注文構成の高度化も行っています。例えば電磁鋼板という使用時のエネルギー効率の良い鋼板がありますが、能力増強対策として2,000億円を投入して工事を進め、順次立ち上がってきています。能力増強工事などを含め、国内は高付加価値商品の比率を高め、これらの拡販を進めていくことで、内容的には非常に強靭な収益構造になっています。・ ステンレス事業は、本体の鉄の事業と同じく、人口減少や自動車の電動化による部品点数の削減等により、国内の需要減少に直面しています。加えて、脱炭素化も進めていかなければならない状況下では、ステンレスを取り扱う企業を単体で運営するのではなく、親会社と連携する必要性があると考え、完全に統合する決定をしました。グローバル展開、戦略的な品質展開、電炉プロセスへの転換を本体と一緒に進めていきます。 ・ 海外事業については、国内を体質強化しながら、需要の伸びが確実に期待できる地域、当社の技術力や商品力を活かせる、いわゆる高級鋼の需要が伸びる分野をポイントに、生産拠点を拡大しています。・ U. S. Steelの拡大もありますが、需要が爆発的に伸びてくるインドへの成長投資を着々と進めています。インドも近い将来、1億トンが見えてくると思っています。・ U. S. Steelの本社所在地はアメリカのペンシルバニア州ピッツバーグです。同社は自動車用鋼板、薄板を中心とした米国有数の高炉・電気炉一貫メーカーです。アメリカのアーカンソー州にU. S. Steel の製造拠点であるBig River Steelがありますが、2024年10月、新たに電気炉2基が稼働を開始しました。これは非常に競争力を持った最新鋭の電炉ミニミルです。さらに鉄鉱石の鉱山を持ち100%自給しています。原料事業も共に備えて、高炉や電気炉に向けた型銑、銑鉄を自給できることは、非常に高い競争力を持っていると言えます。・ U. S. Steel買収の進捗状況は、新聞情報で出ている以上のことはなかなかコメントできませんが、2024年4月、U. S. Steel本体の株主総会の承認がありました。賛成比率99%、圧倒的多数が当社の買収に賛成したということです。これが最初にクリアした課題で、残るのは競争法とCFIUSという国家安全保障の審査になります。・ CFIUSの審査は非常に機密性が高いためコメントできませんが、粛々と審査が進められていると認識しています。・ U. S. Steel 買収にあたり、当社はUSW(United Steelworkers:全米鉄鋼労働組合)に対し買収後のUSWとの重要な約束事項を提案し、合意に向けた努力を続けています。USWは鉄鋼業界だけの組合ではありません。製紙や林業等、さまざまな業界の組合員85万人による団体で大きな政治的圧力を持っていますが、当社はこの組合への非常に強いコミットメントを表明しています。・ 森副会長は買収の件で6回ほど渡米し、1,000人ほどの関係者とすでに会っています。上院・下院の議員や州知事、カウンティーのヘッド、ビジネスリーダー、コミュニティーのリーダー、U. S. Steelの従業員、USWの組合員など、さまざま方と会う機会を持ち、当社の買収の意図、発言を正しく伝えることに努めています。・ 大統領選の真っ只中、ハリス氏やトランプ氏がペンシルバニアというスイング・ステートを訪れたとき、U. S. Steelの従業員の皆さんが当社の買収に対して「私たちは買収に賛成しています」というデモをされたようです。これは当社が頼んだわけではなく、彼らの意思を表明してくれた結果ということです。・ これに加え、U. S. Steelクロージング後は、ブリッジローンを最適な手段でパーマネントファイナンスで整え、今年度内にはD/Eレシオは再び0.7台に持っていけるのではないか、引き続き利益を出すことで可能な限り早く0.7以下にする、これは一つの財務規律と考えていますので、そこまで早期に引き下げを図っていきたいと思います。・インドでの取り組みとしてAM/NSインディアを紹介します。インド西部のハジラに一貫製鉄所があり、すでに900万トン規模の能力を保有しています。ここでは2026年までに600万トン増やして1,500万トン体制を確立するため、着々と投資を進めています。ハジラはまだ土地に余裕がありますので、さらなる能力増強という展開も考えています。ただ一方で、次はインドの東部地域に新たな一貫製鉄所の建設に向けた検討も進めています。土地の候補はいくつもあり、どこが良いかを今考えている最中です。いずれにしても、インドはこれから爆発的に鉄鋼の需要が伸びますので、これに遅れることなく、能力増強を進めます。経済成長期は、初期のインフラ整備的なところでは、いわゆる低級グレードの鋼材を使用しますが、そのうち高級鋼材に変わっていきます。そうした高付加価値化、そしてコスト削減のための投資も併せて進めているところです。 ・ 原料事業では昨年来、カナダのEVR(Elk Valley Resources)、豪州のBlackwaterという鉱山2案件に大きな出資をしています。20%ずつの投資で、それぞれ2,000億円、1,080億円となります。出資の狙いは、1つは高い品質であることです。非常に品質の良い山で、高品質の原料炭の安定確保ができます。原料炭は燃料ではなく、鉄鉱石の還元材に使います。当社は脱炭素化を目指してはいますが、必ず一定程度の原料炭は使いますので、これをしっかり抑えておくことは非常に重要です。 ・ 鉄鋼取引に関わる業務を当社が一貫して担う力を強化するため、日鉄物産の子会社化ならびに上場廃止、非公開化を行いました。このことで商社機能も備えることになり、今後大きなシナジーが期待できると考えています。2.2024年度見通し・2025年度展望・ 2025年度も厳しい環境はしばらく続くと思われます。当社は自力改善や成長戦略投資等、いろいろな弾込めをすでに行っています。これらの効果の発揮により9,000億円以上を目指していきたいと思います。これにU. S. Steelの買収が完了すれば、いわゆる1兆円規模が視野に入ってくると考えています。・ 当社の利益はここ3年で6,900億円、7,340億円、9,350億円と上がってきました。今年度は端境期ということで7,800億円を堅持する予定ですが、来年以降は9,000億円から1兆円という次のステージに進めていきたいと思っています。・ 当期利益の見通しですが、今回は個別開示項目で1,300億円の損失ということで、鹿島地区の鉄源一系列に伴う休止影響があり、昨年より大幅に当期利益は減益となり3,100億円です。ただ、本年度で一旦構造改革は終わりますので、来年度以降は大きな特別損失は想定していません。当期利益が大幅に減ることで、今年度の配当性向は結果的に52%程度となりますが、原則は30%程度を目安としており、来年度以降の手応えがあることも含めています。また、安定配当の継続を期待される株主の皆様は多いと思いますので、今年度は1株160円を堅持したいと考えています。3.カーボンニュートラルビジョン2050・ 当社はカーボンニュートラル実現のために3つの課題があると考えています。まず「技術課題」として、超革新技術の開発が必要だということです。次に「投資回収の予見性」です。投資の経済性が確保できなければ、投資ができません。そして「インフラの整備」です。これは、仮にカーボンニュートラルという技術が当社にあったとしても、グリーン水素やグリーン電力をしっかり供給できるインフラ整備は、国でやっていただかなければいけません。これらをクリアするためには官民一体で進めていく必要がありますので、現在話し合いを進めているところです。 Q1.U. S. Steel買収はうまくいくのでしょうか。 A2. 競合他社では業績予想を大幅に下方修正する会社が多いと思います。鉄鋼業は特にそうですが、当社は2024年の実力利益で7,800億円を堅持できる見通しです。この内容は、これまで行ってきた生産設備構造対策等による固定費の大幅圧縮、それに加えて最適生産体制の構築、また営業面での商慣習の見直しも含めた抜本的な価格改善、これらの合わせ技で大幅に損益分岐点を引き下げ、まさに数量に頼らない収益構造を確立したことが大きな要因だと思っています。加えて、大きいのは海外のウェイトです。海外事業の進化・拡充、原料事業の利益貢献、流通分野へも進出し、いわゆる消費者の利益も取り込んでいます。鉄グループ会社の再編を行い、それぞれ体質強化を進め、本体と同じようなマージン改善、損益分岐点の改善を実行するという、かなり幅と厚みを増すような施策によって強靭な収益体制を構築できたことで、非常にボラタイルだったところが安定的になってきたと実感しています。これは従前からの強みでしたが、世界トップクラスの省エネ技術は、当社が誇れることだと思っています。また、高級鋼の製造技術をベースに、団塊の世代からの世代交代もありました。それもようやく乗り切り、足元は非常に安定生産、安定創業を継続できているということで、これによるコストが下げられたのも大きな要因ではないかと思います。 
  • 分析としては、これらが当社の強みだと考えていますが、個人的には昨今の収益力の格差の本質的な要因は、当社のトップ層の先読みの力、実行力にあると考えています。今、日本や世界で起こっていること、具体的には少子高齢化による内需の減少、中国の経済停滞、各国における保護主義の発動、自国産化の流れ、関税の強化といった課題については、当社の中ではコロナ禍前から深刻な課題として認識していました。したがって、環境変化への対応では先読みに基づき、これまで行ってきたさまざまな構造改革、事業の選択と集中、また多くの成長投資も矢継ぎ早に実行してきました。これらを、他社に先駆けてスピード感を持っていち早く着手したことが、結果的に今これだけの利益を確保できているという最大の要因だと思っています。やや手前味噌でありますが、これが当社の強みであると自負しています。
  • Q2. ライバル会社と比較した御社の強みを教えてください。
  • A1. 買収のクロージングに向けては独禁当局、CFIUSに対し、対応できることは全力で適時適切に実行してきたつもりです。たまたま大統領選挙イヤーと重なりましたが、当社としては時期を選べなかったわけです。政治的な問題で非常に複雑化してしまいましたが、本案件は当社は無論、U. S. Steelの成長も実現し、すべての関係するステークホルダー、ひいてはアメリカのサプライチェーンの強化、日米同盟の強化など、日米両国にとって非常に有益なものであると考えています。大統領選が終わって冷静な判断ができる環境になったことで、まもなくクロージングできるだろうと期待している状況で、今は待つのみということになります。当社は米国において、公正かつプロフェッショナルな審査が行われ、この取引がアメリカ合衆国の競争力と国家の安全保障に貢献できることが示されることを、引き続き大きく期待をしているところです。ぜひ見守っていただければと思います。
  • 4.質疑応答
  • ・ CO₂の30%削減のため、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換を進めています。当社のすべての高炉を電気炉にする予定ではありませんが、九州製鉄所の八幡地区は高炉を電気炉化し、瀬戸内製鉄所の広畑地区は電気炉を増設します。日鉄ステンレス株式会社の周南エリアでは、休止中の電炉を改造して再稼働させます。また、GX推進法に基づく政府支援への応募をしました。これらの案件を進めていきたいと考えています。
  • ・ カーボンニュートラルの実現には非常に時間がかかりますが、来年GX(グリーントランスフォーメーション)説明会を開催予定です。ターゲットは従前から変わらず、2030年に30%削減、2050年にはカーボンニュートラルを目指します。
  •  
  • ・ 具体的な戦略として、まず生産設備構造対策ですが、2025年度に400億円の対策効果が出てきます。東日本製鉄所鹿島地区の鉄源一系列を含む複数工場を休止します。注文構成高度化では、電磁鋼板の能力品質向上対策があり、今着々と立ち上がっています。また名古屋では、モンスターミルと言って良い次世代型の熱延工場の新設を2,700億円かけて行い、2026年初頭には立ち上がる予定です。海外ではU. S. Steel、インドの工場の能力拡張を行っています。原料ではカナダのEVR、豪州のBlackwaterがあり、即利益に直結してきます。今年はEVRの利益を連結化しましたが、来年はBlackwaterの炭鉱の権益が連結化される見通しです。
  • ・ 現在、原料が上がっているにも拘らず製品市況が上がらないことが課題になっています。大きくは中国の状況が原因です。中国は年間10億トン以上の生産量がありますが、粗鋼生産と中国国内の鉄鋼需要とのギャップが1億トンあります。これは日本の全粗鋼生産量を上回ります。この1億トンが海外市場に流出していることから世界の鉄鋼の市況を押し下げていますが、これが非常に深刻な状況です。
  • ・ 今年度の事業の見通しは、すでに決算公表されていますが、極めて厳しい環境です。世界の多くの鉄鋼他社が減益となっていますが、当社は実力ベースの数字が一番重要だと思っており、これについては前回公表値の7,800億円は堅持することを公表しています。
  •  
  • 【経営戦略C 流通も自らの事業領域へ】
  • ・ 出資の狙いの2つ目は、連結収益構造の安定化です。当社は原料コストが上がっても原料事業の利益で相殺できますので、これが連結の収益の安定化につながります。
  • 【経営戦略B 原料事業「調達」から「事業」へ】
  • ・ タイのG/GJ Steelにも、品質・コスト競争力向上のための投資をしています。ASEANは今、非常に厳しい状況です。大きくは中国鉄鋼メーカーの生産過剰問題があります。
  • ・ 仮にエクイティファイナンスを実行する場合ですが、1株あたりの利益を希薄化させない範囲での調達が一つの目安になると考えています。ただ、現段階では何も決めていません。クロージング後にさまざまな可能性を考えていきたいと思います。
  • ・ 財務体質、資金調達についてですが、U. S. Steelは2兆円を超える買収になります。2024年9月末のD/Eレシオは0.4で、鉄鋼業としては非常に健全な財務体質を実現できています。これはひとえに利益を蓄積してきた結果です。ただ、U. S. Steel買収後は、一旦2兆円の投資をブリッジローン(つなぎ融資)で賄うため、D/Eレシオは一時的に0.9まで悪化することになります。しかし、並行してハイブリッド資金の先行調達、転換社債の早期償還、さらには韓国のポスコホールディングス株の売却など2,000億円以上の資産圧縮での追加の積み増しを今年度中に行います。これらの合わせ技で、クロージング後のD/Eレシオは0.9から0.8くらいまで改善できる目処がついています。
  • ・ 深く知れば知るほど本ディールは非常に合理的で理にかなったものだと思っています。アメリカのためにもなるということでサポートも日々増えてきているようです。日本にいる私にも毎日海外からの記事がたくさん送られてきますが、アメリカ国内では非常に話題になっている案件です。賛成の声が多く、特に投資家や経済界の方々からは、反対する理由が見当たらないという論調が多いです。また、森副会長はポッドキャストの番組にU. S. SteelのCEOと一緒に出演していますが、ポンペオ元国務長官が当社のディールに賛成してくれていることから、アドバイザーとして招聘しています。
  • ・ 投資についても、買収時には27億ドル以上の追加投資を行う予定です。これは競争力を高めるためにU. S. Steelの高炉設備等の存続を約束するものです。今後、何世代にもわたってUSWの組合員の皆さんが働くことになる高炉で鉄鋼生産を続けていくという、当社の強い意思、決意の表れです。
  • ・ これらの承認が達成できれば、今月中には交渉が山場を迎え、本年中に本買収が完了になると大きく期待しています。アメリカ大統領選も終わり、冷静な議論がなされる環境になったことから、もうすぐ完了できるのではないかと思います。当社の副会長・森高弘がアメリカを何度も訪問し、ステークホルダー、さまざまな方々との対話、理解活動を現在展開しています。
  • ・ 競争法とはいわゆる独占禁止法で、当社はさまざまな審査に応じてきました。アメリカのアラバマにあるAM/NS Calvertという当社が出資する薄板のJV(ジョイントベンチャー)は自動車用の鋼板を作っていますので、U. S. Steelを買収した場合は競合関係になる可能性があります。これを問題視する意見を取り除くため、10月にAM/NS Calvert社の全持ち分をパートナーであるアルセロール・ミッタルに譲渡する契約を締結しました。当社はAM/NS Calvert社を手放しますが、U. S. Steelはその何十倍ものポテンシャルを秘めています。U. S. Steelの買収が実現しなかった場合は、AM/NS Calvert社の譲渡も実行しないという条件付きの契約です。これにより独占禁止法の対応に、問題は残されていないと考えています。
  • ・ U. S. Steelの利益は2023年は10億ドルほどです。今の為替で1,500億円相当の利益を出していますので、当社はこれをさらに成長させられるのではないかと思っています。
  • ・ 昨今、買収の件でお騒がせしているU. S. Steelは、鉱山、高炉、電気炉といった幅広い事業資産と、米国内の幅広い顧客基盤を持っています。1901年創立ですが、官営八幡製鉄所がまさに1901年に出来上がり、ここから日本は明治の高度成長に入っていきました。そうした意味では歴史観も共有化した、非常に伝統的でブランド価値のある会社だと思っています。今後は当社のさまざまな最先端技術をU. S. Steelと全面的に共有できることになります。これは100%買収だからであり、それ以外のJV(ジョイントベンチャー)には、当社が開放していない技術もあります。U. S. Steelを100%で買収できれば、研究開発を含めてすべて技術共有しますので、米国市場でさらに競争力を持ち成長できると期待をしています。
  • ・ 海外の粗鋼生産能力は、10年前の2014年は600万トン程度でした。その後、インドのエッサールという会社をアルセロール・ミッタルと共同買収し、AM/NS Indiaを設立しました。次にタイの電炉・熱延の一貫メーカーであるG/GJ Steelを買収しました。こうしたことで、2024年には2,100万トンまでの能力を備えるに至っています。この後、U.S.Steelの買収が成立すれば、海外の能力は4,100万トンになります。グローバル粗鋼能力は、8,500万トンとなります。ほぼ国内と海外が似たような数字になり、グローバル展開を進めていることが理解できると思います。
  • 【経営戦略A 海外事業の深化・拡充】
  • ・ 水素やアンモニアといった新エネルギー分野では、ステンレスが非常に多く使われます。錆びない、寿命が長いといった特性があることに加え、高圧の水素やアンモニアを利用するには非常に強い配管が求められるため、大きな成長機会と考えています。当社の総合的な開発力や製品対応力を活かして、この分野での強力な取り組みを一層進めていきます。
  • ・ 2024年、日鉄ステンレス株式会社の吸収合併を公表しました。日鉄ステンレスは100%子会社ですが、これも国内の製鉄事業再編の一環です。

以上

 

 

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