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京阪神ビルディング株式会社(8818)

開催日:2024年11月23日(土)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:代表取締役社長  若林 常夫 氏

 

  1. 会社概要

・ 当社の本社は大阪市中央区瓦町のメインストリートである御堂筋に面したビルに所在しています。

  • 資本金は現在およそ98億円で、従業員は2024年9月末で65名と少人数で事業を運営しています。
  • 会社設立の翌年1949年に大阪証券取引所に上場、2003年3月からは東証1部に上場、2022年4月に東証プライム市場に移行しました。
  • 証券コードは8818、最低売買単位が100株で、直近の株価で16万円前後です。

・ 資料に当社の売上高の推移と部門別の売上高の割合をお示ししています。売上高の推移から、当社が創立以来着実に成長を積み重ねてきたことがお分かりいただけるかと思います。

・ 当社は各時代のニーズに合わせて事業ポートフォリオを変化させてきました。

 

  1. 京阪神ビルディングの強み

・ 当社は、「多様なアセットタイプ」「健全な財務バランス」「きめ細かいビル管理」「高効率の不動産賃貸事業」の4つを強みとしており、これらが価値ある事業空間の提供を実現する柱です。

多様なアセットタイプ

・ 当社物件の空室率の推移をみると、当社の物件数の約半分を占めるデータセンタービルやウィンズビルはオフィスビルの市況に左右されにくいこともあり、東京や大阪のビジネス地区の空室率を下回っています。また、2024年9月末の当社の保有ビル全体での空室率は1.27%と低い水準を維持しています。引き続き高い稼働率を維持していくべく注力していきます。

健全な財務バランス

・ Net有利子負債/EBITDA倍率は、正味の有利子負債が年間の現金収入の何倍にあたるかを示したものです。当社は、新規投資に伴う資金調達によって一時的に借り入れ等が上昇した場合でも10倍程度までに留める方針です。今後もこのバランスに留意しつつ、事業の拡大を通じて企業価値の向上に取り組みます。

・ 長年にわたり企業価値を着実に向上させてきた安定した経営方針が評価され、格付機関

のR&Iさまからは28年連続でA−の評価をいただいています。この良好な格付と信用力を活かし、現在500億円の社債を発行しています。また、年間平均調達金利も低く抑えられており、前期末時点では0.81%です。今後もこの信用力を生かし、直接金融と間接金融のバランスや返済期日の長期分散化等に留意し、低い調達コストの維持に努めます。

きめ細かいビル管理

  • 当社の大手ゼネコンでの現場経験豊富な技術スタッフは、高品質なビル作りや建物や設備の管理運営面での気配りの行き届いたビルマネジメントを実現しています。また、営業に携わるスタッフがテナントさまと親密なコミュニケーションを取り、技術スタッフやパートナー企業さまと連携することで、お客さまのご要望にきめ細かく応える体制を敷いており、その結果、各テナントさまからは高い評価と信用をいただいています。

高効率の不動産賃貸事業

・ 当社は65名という少人数の従業員による運営体制を敷いていますが、専門性を有する人材を活用することで、高効率の事業運営を実現しています。長期経営計画を実現するには、新規事業を推進する人材の確保が欠かせないため、事業戦略に沿った専門人材の採用や育成、人材配置に努め、少人数の高効率経営を維持しつつ、企業価値の向上に取り組んでいます。

 

3. データセンタービル事業

・ データセンタービルとは、インターネット用のサーバやデータ通信のための装置を設置することに特化した建物です。データセンタービルでは、大切な情報やシステムを守るため通常の建物に比べて、立地や防災対策、電力供給、通信設備、セキュリティ対策が一層重要視されています。

・ 当社のデータセンタービルは都心型データセンタービルに特化しており、通信インフラが密集した大阪の都心に所在しています。このため、当社の従業員による行き届いたメンテナンスが可能となり、緊急時にもすぐに駆けつけられる体制を敷いています。

  • 当社はビルをスケルトンの状態で賃貸しているので、入居テナントさまのニーズに合った内装や機器の設置が可能です。
  • およそ30年にわたり培ってきたデータセンタービルの企画や運営ノウハウと、パートナー企業さまとの良好な関係が当社の最大の特徴であり強みといえます。

・ AIやIoTの発展、5G通信などに伴うデータ通信量の増大により、データセンターの市場規模は引き続き拡大が見込まれています。他方で、不動産価格や建築コストが上昇し、新たにデータセンタービルを開発するのは厳しい状況です。このような環境下でも、当社は引き続き時代のニーズに合わせた高品質なデータセンタービルを提供していきます。

 

4. 長期経営計画

・ 計画の対象期間は、2024年3月期から2033年の3月期までの10ヵ年です。

  • 本経営計画では、当社がこれまでに取り組んできた主力である不動産賃貸事業に加え、新たな不動産の事業分野にも取り組むことを掲げています。

数値目標

  • 計画の最終年度の2033年3月期の数値目標は、事業利益140億円、償却前事業利益180億円、自己資本比率30%以上、Net有利子負債/EBITDA倍率10倍程度、資本効率を示す指標として、ROA5%以上、ROE8%以上です。なお、東京証券取引所が掲げる資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、本年9月に長期経営計画の数値目標を一部見直しました。長期経営目標を前倒しで達成すべく、新規事業の立ち上げや収益化の前倒しに注力し、資産回転型事業への取り組みを通じて資本効率の早期向上を目指します。

・ 今回の見直しにあたり、政策保有株式の縮減目標も新たに掲げました。政策保有株式の連結純資産に対する割合をフェーズTの最終年度である2028年3月期までに10%以下に縮減します。現在の16%強から10%まで縮減することで資産効率を向上させます。

投資計画

・ 長期経営計画の10年間で収益物件の取得に1,800億円、エクイティ投資や海外投資に700億円と総額2,500億円規模の投資に加え、収益物件の売却により800億円の投資回収を行う計画です。

  • 当社は償却前事業利益の拡大によりキャッシュフローを成長させ、企業価値の向上を目指します。

不動産賃貸事業

・ 当社は主力事業である不動産賃貸事業を引き続き中核事業と位置づけ、立地と収益性を重視した従来の方針に基づきさらなる資産の拡充に努めます。

  • 売上の地域ポートフォリオについては、関西圏に保有物件が集中していることから、首都圏をメインターゲットに立地の分散を図ります。計画の最終年度の売上高の地域ポートフォリオについて、2033年3月期には関西圏以外の比率を30%程度に引き上げることで、地震をはじめとする自然災害などの地域集中リスクを低減しバランスの取れたアセットポートフォリオを実現し、安定した収益基盤の確立を目指します。

資産回転型事業

・ 不動産のキャピタルゲインの獲得を目的とする資産回転型事業を新たに立ち上げます。テナントの入れ替えや改修工事等により、取得物件をバリューアップして売却し、それによって獲得した資金を成長分野へ再投資します。それを繰り返すことにより収益の最大化を図り、併せて資本効率の向上を目指します。投資計画でも示しているように、10年間で800億円を回収する計画です。

エクイティ投資

・ エクイティ投資とは、不動産そのものではなく、不動産を保有する会社の持分を取得するものです。他社との提携による物件の取得など投資手法の多様化を進めることで、10年間で累計160億円の投資を目標としています。

海外不動産投資

・ 日系企業とのアライアンスによる出資を足掛かりに、10年間で累計250億円の投資を目標としています。

新規投資の実績

・ 収益物件として、2023年6月に東京都台東区浅草の商業ビルを取得しました。本物件は東京メトロの浅草駅至近に位置しています。立地の良さと利便性の高さから、将来的な資産価値の向上が期待できるため、資産回転型事業と不動産賃貸事業のいずれの戦略も検討可能な物件として位置付けています。

  • 2023年10月には東京都港区のオフィスビルに、2024年3月には兵庫県西宮市のヘルスケア施設にエクイティ投資を行いました。港区のオフィスビルは立地が非常に良く、将来的に再開発の可能性が見込めますし、保有し続ける限り収益の獲得も可能な物件です。ヘルスケア施設は、当社にとっては新たなアセットタイプですが、日本国内の高齢化に伴う需要の増加を見込んでおり、今回の投資を足がかりに、これまで経験のなかったヘルスケア施設のノウハウを蓄積し、次の投資に繋げたいと考えています。

・ 海外投資については、まず情報収集やノウハウの蓄積を目的に2023年10月にアメリカの不動産ファンドに出資しました。アメリカは今後も経済成長が見込まれ、人口の増加が期待できる不動産マーケットで、法的な透明性が確保されているため、この点を評価し海外の最初の投資先として選定しました。

  • 本ファンドへの投資を機に2024年5月には米国現地法人を設立し、8月にフロリダ州のマルチファミリータイプの賃貸レジデンスの開発案件にエクイティ投資を実施しました。本物件は、今後も人口の流入が見込まれ、住宅市場が好調で企業活動が活発なエリアに所在しています。 現地のデベロッパー企業との関係構築を通じてアメリカでの事業展開の拡大を目指します。

財務戦略

・ 直接金融と間接金融のバランスに留意し、安定的かつ低金利での資金調達に取り組みます。今後も財務の健全性を維持すべく、自己資本比率やNet有利子負債/EBITDA倍率などの財務規律を堅持していきます。

  • 資産回転型事業への取り組みなどを通じてROAを向上させ、その結果としてROEの改善、向上を図ります。

 

5. サステナビリティ戦略

・ 長期経営計画では基本方針として、サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値の向上を図ることを掲げています。

・ 「気候変動への対策を通じ事業のレジリエンスを強化すること」と「グリーンビル認証の取得を推進して環境性能が高い不動産への需要の高まりを収益の機会につなげること」を重点施策として掲げています。

  • この方針のもと、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標として、2031年3月期までにScope1+Scope2を46%削減(2020年3月期比)、2051年3月期までにGHG排出量(Scope1+2+3)のネットゼロ達成を掲げています。GHG排出量の削減に向けて保有物件に再生可能エネルギー由来の電力を導入し、太陽光パネルを設置しています。また、これらの取り組みを客観的に評価するために、グリーンビル認証の取得も進めています。

・ 人材投資については、外部人材の登用と内部人材の育成をバランスよく組み合わせることで、少人数経営による事業の効率性を維持しつつ不足するリソースを補完し、今後の持続的な成長の実現に向けて企業風土の根幹をなす人材を育成していきます。

  • 人材育成については、幹部候補生の育成や自発的なキャリア形成の後押し、事業戦略に沿った専門人材の採用・育成・人材配置に努めています。

・ 多様な価値観を組織内に内在化させることが多様化・複雑化する社会における当社の発展に繋がるとの考えのもと、経験者やシニア人材等を積極的に活用するとともに、女性活躍の推進に向けた目標を設定しています。

  • 働きやすい環境づくりや業務効率、生産性向上の仕組みづくりにも取り組んでいます。

 

6. 今期の業績予想

・ 2025年3月期の業績は、データセンタービルの稼働向上、オフィスビルのテナントの入居、浅草駅前ビルの通期寄与を主因とし、売上高は197億円と、前期比3億8,900万円、2.0%の増収を見込んでいます。また、修繕費や減価償却費などの減少を主因に、営業利益は56億円と前期比5億1,600万円、10.2%の増益、経常利益は55億円と前期比6億5,700万円、13.6%の増益となる予定です。当期純利益は38億円と前期比600万円、0.2%と若干の増益に留まる見込みです。これは特別利益が前期よりも減少することによるもので、事業が影響しているわけではありません。なお、売上高営業利益率は、28.4%と高い水準を維持しています。

  • また、当社が長期経営計画で重要な経営指標として掲げている償却前事業利益は98億円と、前期比6億7,100万円、7.4%の増益を見込んでいます。償却前事業利益とは、営業利益に投資事業組合運用損益、すなわち営業利益にエクイティ投資による投資先から得られる収益を合算し、それに減価償却費を足し戻したものです。事業から生ずるキャッシュフローの合計を指します。この償却前事業利益の拡大によりキャッシュフローを成長させ、企業価値の向上を目指します。

 

7. 株主還元

・ 今回の長期経営計画の見直しにより、1株当たりの利益を重視した累進配当とすることを新たな方針として掲げました。また、配当性向の目標は、前中期経営計画では35〜40%としていましたが、今回の計画では45%程度に引き上げています。

  • 直近では40万株を上限とする自己株式の取得を実施しました。今後も経済情勢や自社の株価等を総合的に勘案し、自己株式の取得等の資本効率を意識した株主還元を検討していきます。
  • 2025年3月期は、年間配当を37円とする予定です。

 

8. まとめ

  • 当社は不動産会社として、安定した収益と健全な財務体質をベースに新たに資産を積み上げるとともに新規事業にも取り組むことで、資本効率の向上と事業の成長に努めています。
  • これをもとに、近年株主還元を着実に積み上げており、今後も1株当たりの利益を重視した累進配当を堅持し、株主の皆様への一層の利益還元を経営の重要課題として位置づけ、さらなる企業価値の向上に努めますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 

9. 質疑応答

Q1. 賃料全般の値上げはできていますか。

A1. 当社は不動産賃貸事業が主なので、賃料収入が直接利益に結びついています。大阪地区・東京地区の平均空室率と比べて、当社の空室率は低く抑えられている一方、双方のエリアでは今後もビルの大量供給が予定されており、テナントさまに入居し続けていただくことが重要になってきます。

また、昨今では業務委託費や人件費等のコストが上昇しています。それらのコストの増加を賃料に反映できれば理想的ですが、現在の厳しい競争環境を踏まえると賃料への転嫁は難しい状況です。しかし、当社は経済状況が悪い時には賃料のご相談に乗った実績があり、テナントさまと親密な信頼関係を築いてきたため、昨今のコストの増加の内容をテナントさまにご説明し、オフィス等を維持するために必要な費用が上がった分を共益費としてご負担いただくことを理解していただいています。

今後も引き続きテナントさまとの親密な信頼関係を維持し、経済状況に応じた対話を進め、収益性の向上に取り組んでいきます。

 

Q2. 少人数でこの規模の物件をうまく管理できる秘訣はなんでしょうか。

A2. 当社の従業員は不動産の価値を向上させる業務に特化しつつ、パートナー企業さまとの親密な関係を維持し、業務委託を活用することで効率的な事業運営を行っています。その結果、売上高営業利益率は30%近くの高水準で推移しています。今後、新規事業を推進していくにあたっても、すでにノウハウを持つ他社への業務委託等を活用し、効率性を重視して取り組んでいきます。

 

Q3. 海外の状況を教えてください。海外の不動産事業はバブルとのこと。日系企業は軒並み損失を出していますが、貴社は大丈夫でしょうか。

A3. 当社が新たに海外事業に取り組む背景には、日本国内における人口減少の問題や働き方改革等によるオフィスビル需要の変化があります。国内の不動産事業がこれまでのように右肩上がりで成長できる環境ではなくなってきています。安定した高効率な不動産賃貸事業に特化する当社が、さらに収益を上げるためには、今後成長が見込める海外への投資は不可欠です。

最初の投資先としては、今後安定した成長が見込めるうえに、法的な透明性が確保されているアメリカを選定しました。今後は、アメリカとオーストラリアを中心とした投資を検討しています。

海外投資はリスクも大きいですが、海外投資経験や海外物件所有経験がある他社とアライアンスを組んでリスク分散を図るとともに、知識やノウハウを蓄積し、無理せず安定的に成長していきます。

以上

 

 

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