artience株式会社(4634)
開催日:2024年11月23日(土)
場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)
説明者:執行役員 グループ経営部長 長坪 正樹 氏
- 会社概要
【本日お伝えしたいこと】
・ 当社はこれまで東洋インキSCホールディングスという名前でしたが、今年1月からartience(アーティエンス)に社名を変更。これをきっかけに、会社を大きく変えていこうと取り組んでいます。
2つ目は、EV(電気自動車)向けのリチウムイオンバッテリー用の材料を開発し、生産が始まっています。これが今後の成長を担っていきます。
3つ目。これまでも安定配当を続けてきましたが、利益成長に合わせ、株主還元の水準も高めていく方針を掲げています。
・ 創業は1896年。100年以上の歴史がある会社です。元々はインキからスタートしていますが、いろいろな素材を提供する化学メーカーとして活動しています。昨年末の売上高が約3,200億円、社員はグローバルで約8,000人。東証プライムに上場しています。
・ 2024年1月から新しく社名が変わっています。東洋インキSCホールディングスからartienceに変わったということを、プロモーションを通じ、認知度を高めています。
・ なぜ社名を変えたのか。創業当初から印刷用のインキを提供する会社として活動し、今もインキを提供しています。その過程の中で、自動車用途やエレクトロニクス用途の素材も提供。2011年からはSC(スペシャリティケミカルメーカー)として活動してきました。一方、昨今、デジタル化の浸透により、新聞の数が減ったり、本を読まずにデジタル端末で見るなど、大きな市場変化が起きています。その中で、当社の事業成長もやや停滞気味になりました。
そこで、私たちも、世の中の変化に対して変わらなければならない。そのために今回、社名を変更するという決断に至りました。それにより、社内外に「私たちは新しく変わっていく」ことを示していきます。
「artience」という社名は、「art」と「science」を組み合わせた言葉です。「art」は人の心を動かすことや、ワクワクさせるといったことを象徴しています。「science」はこれまで培ってきた技術やテクノロジー、あるいは合理的な考え方を示しています。これまで培ってきた信頼は大切にしながら、人の心に届くような価値を提供する会社になりたいという思いを「artience」に込めています。
・ 当社の事業セグメント割合について。当社には4つの事業セグメントがあります。「印刷・情報」関連事業と「パッケージ」関連事業。これらがインキに関連する事業です。それから「色材・機能材」関連事業と「ポリマー・塗加工」関連事業。これらはそれぞれインキの原料となる顔料と樹脂を主体にしたビジネスです。
売上高の構成比は、4つのセグメントで4分の1ぐらいずつの構成で、非常にバランスの取れた事業構成です。一方、営業利益はインキ以外からの利益が多く上がっています。
・ 当社は現在、世界の24ヵ国以上で事業を展開しているグローバルカンパニーです。日本や韓国、中国の他、東南アジア各国やインドなどのアジア拠点を中心に、トルコやベルギー、フランスなどのヨーロッパ、アメリカやメキシコ、ブラジルなど。昨年末の海外売上高の比率は53.7%で、今では国内よりも海外事業比率が大きくなっています。
今年は第3四半期までで、海外事業比率は56%近くになっており、この傾向はますます高くなっていくと考えています。
・ 当社のビジネスについて。紙用のインキが、「印刷・情報」関連ビジネスです。ここには新聞や雑誌が含まれます。それから食品のパッケージやお菓子の袋にも印刷がされていますが、それらのインキを主体としたビジネスもインキ系のビジネスとなります。
インキの主な原料は、色の元になる顔料とくっつける役割をするポリマー(樹脂)があります。それらを当初は購入していましたが、自分たちで作るようになりました。顔料と樹脂をベースにそれぞれビジネスを展開しており、顔料系のビジネスと樹脂系のビジネスとして増えてきている状況です。
・ 顔料は色の素で、インキやプラスチックに着色する素材を届けるのが顔料系のビジネスです。紙以外にも、例えばプラスチック製のシャンプーのボトルやペットボトルのキャップ、プリンターなどに色がついています。そうしたものに色をつけるのが着色剤です。顔料には印刷インキや自動車の塗料用のものもあります。
それ以外にディスプレイ用のカラーレジストがあります。これは、コンピュータの画面(パネル)やテレビ、スマートフォンの画面などに使われるインキです。
顔料系はさらにEV(電気自動車)用のリチウムイオンバッテリーにも製品が使われており、当社が今一番注力しています。
樹脂系ビジネスは、ポリマーを中心にしています。ポリマーは色をくっつける役割がありますが、色を抜くとコーティング剤や接着剤ということになります。それらを使ったビジネスです。
例えば、飲料缶や缶詰の内面や外面には、保護するためにコーティング剤が使われています。それが缶コーティング剤です。その他にも、包装用・パッケージ用のラベル用の粘着剤。エレクトロニクスの部材も貼り合わせているので、そうしたものに使う粘着剤や接着剤。そして、そうしたものをフイルム状にして機能性を付加したものを機能性フイルムとして提供しています。スマートフォンには、電磁波をシールドするようなフイルムや導電性を付加するフイルムが使われています。
インキ系のビジネスでは、本や新聞などの紙の印刷用のインキをはじめ、ラベルやフイルム包装用のインキがあります。また、住宅の内装用として、壁紙や木目が印刷されているドアやテーブルなど。それらの製造のためにインキを提供しています。
・ 当社はインキからスタートしてますが、いろいろな事業を展開しています。それがなぜ可能なのか。その理由に当社の技術力があります。
印刷インキに必要な顔料と樹脂を自社で作るようになりましたが、そこでは素材を合成する技術が養われました。いろいろな素材を生み出して組み合わせることが、さまざまなビジネスに使われています。特にご紹介したいのは「分散技術」です。
印刷インキは、色の素である顔料と樹脂を混ぜ合わせる技術です。顔料はナノサイズの非常に細かい粉です。樹脂は粘度が高くて非常にベタベタしてるものです。例えば、小麦粉を蜂蜜で均一に混ぜることを考えると、ちょっと難しそうだと想像がつくと思いますが、そういったことをナノサイズで磨いてきたのが分散の技術です。
それを色の代わりに機能を持った素材を混ぜる。例えば導電性を持った素材を混ぜ合わせてフイルム状にしたものが機能性フイルムで、スマートフォンやタブレットに使われています。また、分散を非常に細かくすると色の透明度が上がってきます。それをコントロールすることで光の制御が可能になり、例えばテレビやパソコンの画面のレジストインキに生きています。
分散技術は電気自動車用のリチウムイオンバッテリー向け製品にも応用しています。
・ 当社は消費者の皆様に直接モノをお届けすることがなかなかないので、馴染みがないと思う方もいらっしゃると思います。実は、皆様のご家庭にあるものにたくさん使われています。例えば、本などの紙用の印刷インキは日本でトップシェアです。それ以外に、お菓子の袋やシャンプーの詰め替え包材などの袋のインキ、あるいはプラスチックのフイルムを貼り合わせる接着剤も日本ではシェアNo.1です。さらに缶ビールや缶コーヒーの印刷に使われている金属インキは、90%ほどの日本シェアがあります。
世界シェアがトップクラスのものでは、ディスプレイ用のレジストインキやエレクトロニクス用の機能性のフイルムがあります。機能性フイルムの中でも導電接着シートはスマートフォンに幅広く使われており、大体50%ぐらいのシェアがあります。本日、ご自宅にお戻りの際は、当社のものがないか見ていただければ幸いです。
・ 実はアサヒビールの「生ジョッキ缶」にも、当社のコーティング剤が使われています。これはアサヒビールさんと共同で開発したものです。皆様ご存知だと思いますが、蓋を開けると生ビールのような泡がシュワシュワっと出てくるものです。元々は泡が出過ぎてしまう失敗作でした。それを逆転の発想で、泡をコントロールし、生ビールのようなビールを缶ビールで再現したのがこの製品です。
蓋を開けた時にシュワシュワっと泡が出ることで、皆が驚いたりワクワクする。感性に響く価値を実現している事例だと思います。今後、このような製品開発をもっと増やしていきたいと考えています。
- 今後の事業展開
・ 直近の業績について。過去数年間の売上は、大体2,800億円ぐらいで推移していたものが、昨年は3,200億円程度になりました。一方、営業利益は130億円ぐらいで推移していました。ただ、2022年度は69億円ということで、かなり減少しました。これは、ウクライナ紛争などにより原材料のサプライチェーンが混乱してしまったこと、エネルギーコストが非常に高くなったこと、そうしたコスト高の影響に対して当社がすぐに対応ができなかったことが要因です。その後昨年は、134億円にまで回復しています。
今年(2024年度)は、新しい中計に基づき活動を推進しています。第3四半期が終わった段階で、営業利益は158億円。昨年の通期の結果を超えるところまで来ています。通期予想は営業利益で200億円を目標としており、今、順調に進んでいます。
中計最終年度の2026年末には、売上は4,000億円、営業利益は250億円を目指そうと、今、活動をしています。
・ 社名変更に伴い、今年から新しい中期経営計画を発表し行っています。2030年を目指した計画です。
目指す姿は、感性に響く価値を提供し、心豊かな社会や持続可能な社会に貢献していきたい。と同時に、企業価値も最大化したい。2029年12月期にはROEを10%以上にしたいと考えています。
残念ながら、昨年のROEは4.2%と低迷しています。それを10%以上に目指すには、最初の3年間となる2026年12月期に7.0%以上までに引き上げようという計画です。現在、ROEも徐々に上昇しており、今年は6%以上になるのではないかと考えています。
目指す2026年の売上高は4,000億円、営業利益は250億円です。大幅な業績の改善を成し遂げるために、基本方針を掲げています。
1つは、事業ポートフォリオの変革。事業ポートフォリオを変えていくものです。そして、資本効率とキャッシュフローを最大化。それを支える企業基盤を作ります。また、サステナビリティ経営も実践していく必要があると考えています。
【基本方針】
・ まず、事業ポートフォリオの変革。そのための基本方針の(1)として、高収益既存事業群への変革に取り組みます。これは既存事業を変えていくものです。ただ、既存事業の中にも、成長する事業や収益を確保する事業と戦略を変える必要がある再構築事業があります。中身を精査し、それぞれに応じた戦略で収益を拡大します。
基本方針の(2)は、(1)に加えて新しい収益の柱を加えていく戦略的重点事業群の創出です。特にモビリティ・バッテリー関連やディスプレイ・先端エレクトロニクス関連に投資や開発の資源を投入して創っていきます。
それにより売上と営業利益を拡大。特に営業利益は、2023年度の134億円を2026年度は250億円にしていきます。このうち40%超の部分は、新しい収益の柱となる戦略的重点事業群で増やしていきます。また、既存事業分でも、成長事業での収益を特に海外で伸ばすことを目指しており、2023年度の65億円を2026年度には90億円にする。そうしたことで、事業のあり方を大きく変えていこうという考えです。
・ 高収益既存事業群で特に成長が期待できる既存事業に、パッケージ関連事業があります。関連製品としては、粘着剤やラミネート用の接着剤、グラビアのインキなど。これらは前中計から特に海外で設備投資しています。
パッケージの需要動向は、人口が増えたり、経済が成長することに関連します。例えばスーパーで買い物をするようになると食品包材が増えていく。人口が増え、経済成長が今後も見込める東南アジアやインド、トルコあるいは北米で、粘着剤やラミネート用の接着剤、グラビアのインキに関連する設備を増強してきました。それが今年、花が咲き、海外での数量がかなり伸び、業績も上がっています。
・ 基本方針の(2)に基づく新しい収益の柱として、2つの重点分野を掲げています。モビリティ・バッテリー関連事業とディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業です。
モビリティ・バッテリー関連事業は、リチウムイオンバッテリー用のCNT(カーボンナノチューブ)を混ぜた分散体や、さらにバッテリーに使う接着剤やその先の全固体電池用の素材にも資源を割いて開発をしています。
ディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業では、今あるLCD用のレジストインキに加え、パネルを貼り合わせるのに使う粘着剤やスマートフォンに搭載されるカメラのセンサー用のレジスト、半導体材料も開発しています。半導体の部材は今年から一部製品化しているので、徐々に大きくなるかと思います。
・ リチウムイオンバッテリー用のCNT分散体について。これはカーボンナノチューブを混ぜた黒い液体のようなものです。これがリチウムイオンバッテリーの正極材向けの材料として使われています。正極材の中には活物質という、ニッケルやコバルト、マンガンなど電気の容量を大きく左右する素材があります。それを繋げるのがカーボンナノチューブの分散体で、当社の製品が使われています。
電池の容量を決める活物質を繋げることで導電のパスを作る。これが電池の容量を上げることや効率を上げることに寄与しています。そして、最終製品の電気自動車の走れる距離が長くなることに貢献します。
また、充電のスピードを速くするために電池を薄くする時、電池の効率を上げるためにもCNT分散体の需要が高まっています。既存品からの置き換えも進んでいます。
・ カーボンナノチューブは細い繊維状のものです。これをただ混ぜると簡単に壊れてしまう。そうすると活物質同士を繋げることができなくなります。それをいかに崩れずにほぐして分散させるかに当社の技術が生きています。
当社もその技術がすぐにできたわけではありません。混ぜにくい素材である自動車用のカーボンを混ぜたものを提供し、2015年ぐらいからはカーボンを混ぜた分散体をハイブリッド用に提供。それをカーボンナノチューブに変えてきたことで商業生産が始まっています。
・ カーボンナノチューブは、売上が立ち始めた2021年が11億円、2022年が32億円、2023年は52億円と順調に拡大しています。今年も拡大の見通しで計画していましたが、EVの市況は今、停滞傾向にあります。そのため残念ながら今年は34億円ほどになる見込みです。ただ、2025年、26年は売上を伸ばしていく計画で、2028年にはこの事業だけで400億円の売上を計上するべく、今開発と設備投資を行っています。
売上増加については、SKオンという韓国系のバッテリーメーカーと日本のトヨタバッテリーの2社への採用が決まり、今年から少しずつ始まっています。その他、アメリカで数社、ヨーロッパでも新規採用が決まっています。中国の大手バッテリーメーカーでも今年から採用が少しずつ始まっており、それらが増えていくことで2027年には200億円、2028年には400億円という事業計画をしています。
今は残念ながらEV市場が停滞していますが、 カーボンニュートラルあるいは自動運転は今後ますます求められていくと思います。EVは中長期的に広まっていくと当社は考え、設備投資しています。そして当社は、自動車市場の大きい欧州や北米、中国、日本にいち早く拠点を構えて設備投資をしている唯一のCNT分散体メーカーになります。
・ こうした事業を支えていくべく、基本方針の(3)として、経営基盤の刷新にも取り組んでいます。
ESGの観点でみると、「E」では化学メーカーとして、サステナビリティの経営を実践することが重要だと考えます。そこで当社は「artienceサステナビリティビジョン asv2050/2030」を掲げて活動。2050年にはカーボンニュートラル、2030年には2020年度比でCO2を35%削減するために、毎年目標を掲げ、削減に努めています。
「S」では、ヒト/風土/組織の変革にも重きを置いています。会社を変えていく/事業を推進していくことを成し遂げるのは人です。当社は社名は変えましたが、経営哲学である「人間尊重の経営」は変えていません。人が心地よく働けてチャレンジできることを実現するために、人事制度を刷新。幹部社員は今年から、組合員の方々にも来年から新しい人事制度を導入することになっています。
その他、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進として、さまざまな方々が平等に働ける職場づくりを目指し、推進室を設けて活動をしています。
「G」のガバナンスでは、今日のような説明会など、IRも積極的に行っています。当社のことをお伝えし、透明性を上げることでガバナンスを強化しています。また、先日もリリースを出しましたが、独立社外取締役の比率を上げることも進めています。ガバナンス体制を強化し、皆様に安心して投資していただける環境づくりを目指しています。
保有株式の削減は、前中計からも取り組んでいます。前中計では131億円の保有株式を削減しています。今年は8月にリリースを公開。売却益で大体34億円ぐらいの保有株式の売却を予定しており、第3四半期まで22億円。半分ぐらい終わったところです。保有株式の削減をこれからも続けていく方針を掲げています。
- 株主還元
・ 当社は株主優待制度を2019年度から導入しています。
株主還元の方針は、安定配当。ここ数年は90円の配当を毎年実現しています。2022年度は営業利益が非常に落ち込みましたが、その際も90円の安定配当を行っています。
今年は業績の結果を見ながら10円増配。1株当たり100円配当の予定です。また、この中計期間では、総還元性向を50%以上。稼いだ当期利益の半分は株主の皆様に還元していく方針を出しています。これは配当と自己株買いを組み合わせて実現予定です。8月にリリースを出していますが、今年の8月から来年の8月までの1年間をかけて100億円の自己株買いを行っています。年内に大体37億円分ぐらい自己株買いが実施できると見込んでいます。これらを通じ、株主の皆様への還元もしっかり行いたい考えています。
・ 2021年11月、約3年前からの株価の推移をTOPIXと比べると、当初は2,000円に届くかどうかでしたが、昨日の11月13日時点では3,080円。今のところTOPIXを上回る株価上昇を実現しています。
今年はEV市況の低迷があり、株価も一時大きく下落しましたが、中長期的には伸びていくと考えています。PBRは0.63倍で、まだまだ割安です。いち早く1倍以上を目指し、事業を推進していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。
・ 改めて、本日お伝えしたいことは3つです。
1つ目は、東洋インキSCホールディングスからartienceに社名が変わっています。名前を変えただけではなく、事業ややり方も変えていく、会社を変えていくというつもりでやっています。
2つ目、今は低迷していますが、中長期的に成長が期待できるEV向けのリチウムイオン電池用材料に積極的に投資し、成長を成し遂げていこうと考えています。
3つ目に安定配当に加え、利益成長に合わせた株主還元を実現していく方針です。
以上が本日お伝えしたいことです。本日の説明により、当社artienceへの関心を持っていただければ幸いです。
4. 質疑応答
Q1. 経営陣が大切にしていること、信念は何でしょうか。
A1. 人間尊重の経営という経営哲学を掲げています。社名変更に合わせて、経営理念等も変えましたが、経営哲学だけは変えていません。人間を大切にしていくという信念があります。そして、会社が変わっていくには、個人が変わっていくことを非常に大切に考えています。
Q2. 御社事業のうち、業績を一番伸ばしていきたい分野は何でしょうか。
A2. 新しい収益の柱を作っていくのが当社にとって重要だと考えています。そうした意味で、既存事業も大切ですが、戦略的重点事業で挙げているモビリティ・バッテリー関連事業とディスプレイ・先端エレクトロニクス関連事業に注力し、伸ばしていきたいと考えています。
Q3. 取引先としてartienceの商品や技術が利用されている業界や分野はどのようなところですか。また、今後の拡大が見込まれる業界・分野はどこになりますか。
A3. シェアが高いものがたくさんあります。特にパッケージ分野に当社のインキや接着剤が使われています。皆様がスーパーやコンビニエンスストアで目にするようなものです。それ以外に、粘着剤や接着剤、着色剤が自動車や電化製品に使われています。
Q4. 初めてお聞きする社名だと思ったら、東洋インキさんでした。社名変更を知りませんでした。御社は世界中に分散して拠点がありますが、完全に地産地消なのでしょうか。
A4. 当社の新しい社名を浸透させる活動も行っていますが、十分ではなく、申し訳ありません。今後も力を入れてやっていきたいと思います。
地産地消については、地産地消で行うものとそうでないものに区別して事業を展開しています。カスタマイズや危険品で輸送が難しいものは地産地消を基本としています。まとめて生産した方が効率がいいものは地産地消ではなく、ある特定のところで作って提供、運んでいくということになります。
Q5. グローバルに生産拠点をお持ちですが、エリアを分散して海外に持つメリットはどのようなところにありますか。
A5. エリアによって求められるニーズが異なる場合があります。その場合は、その地で合うものを作って提供する。その土地に生産拠点を持つことがメリットになります。
具体例では、例えば東南アジアは結構キラキラしたようなパッケージが多いと思います。そこで、そうしたニーズに合うインキを開発して提供しています。
Q6. 中国のバブル経済やトランプ大統領就任の経営への影響は小さく抑えられていますか。
A6. 中国での事業は大体400億円ぐらいの売上があり、小さくはない金額の事業を展開しています。今はインキのビジネスが多く、比較的安定しています。食品包装は不況に強いと言われてます。ただ、中国でもEV自動車向けの素材を提供し始めており、市況が早く回復してほしいと考えています。
トランプ大統領になるのは来年からですが、例えば関税が高くなることがとても懸念されます。また、EVにかかる補助金を廃止するという話もあり、当社も注視しています。ただ、テスラのオーナーが関与しており、EVが全くダメになることはないのではないかと考えています。
Q7. 上半期において増収増益となった背景について教えてください。重要な施策や取り組みについて具体的に教えてください。
A7. 今年の業績が良かったのは、海外の事業が非常に伸びたということがあります。パッケージ用製品に関する設備を、インドや東南アジアのマレーシア、中国、トルコで増強したところ、それらの稼働により数量が伸びて収益が上がりました。また、数年前からの原材料の高騰が海外では安定し、収益をきちんと稼いだことが大きいと思います。
重要な施策では、海外を伸ばすために、去年、タイの缶コーティングの会社を買収。その土地にあった技術を手に入れ、そこから東南アジアや東欧、トルコに展開しています。このような海外で伸びる取り組みが重要だと考えています。
Q8. 印刷・情報関連事業における現在のトレンドや事業環境の見通しを教えてください。また、通期の収益予想についてもお聞かせください。
A8. 非常に当社のことを研究されているご質問だと感じます。印刷・情報関連事業は、当社の祖業にあたります。新聞やチラシ、書籍などの紙用のインキをメインに製造・販売している事業です。
これが残念ながら日本国内では市場が縮小。新聞の数も減っている。読者はタブレットで紙面を読み、ここ数年、業績的には非常に苦しい展開になっていました。
それが、構造改革に取り組み、固定費の削減や生産のアライアンス、販売拠点の統合を進めたところ、実を結び、今年はかなりの利益を出すようになっています。
それに加え、この事業の中でも伸びる製品があります。それが機能性インキです。例えば紙のパッケージにフイルムで貼っていたものを、プラスチックをなくすことを可能にするコーティング剤が採用され、収益が伸びています。UVインキも、既存の油性のオフセットインキを切り替え、非常に伸びています。今年の通期予想では、この事業で大体50億円の営業利益を稼いでおり、非常に重要な事業になっています。
また、日本国内は市場が縮小していますが、インドではまだまだ既存のインキも市場が拡大しており、今後の成長は可能だと考えています。
Q9. 長坪執行役員がこれまでの御社での勤務経験から感じる御社の魅力はどんなところにありますか。
A9. ちょっと個人的な話になりますが、私は中途入社で、タイのTOYO INK (THAILAND)に入社。その後、アメリカに赴任したり、日本に来たりという経験をしています。人を大切にすると言いますか、私個人が希望するところをできるだけ叶えてくれる。それができる会社であり、いい会社だと思います。よろしくお願いします。
以上
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