石油資源開発株式会社(1662)
開催日:2024年9月13日(金)
場 所:JR博多シティ 9階 『JR九州ホール』(福岡県福岡市博多区)
説明者:取締役 常務執行役員 中島 俊朗 氏
1.会社紹介動画
- 石油資源開発株式会社は、「必要なエネルギーを必要な人へ」届けることを社会的使命とする会社です。
- 当社は1955年に石油・天然ガスの開発を行う会社として国により設立されました。現在では、化石資源の利用とカーボンニュートラルの両立を目指す企業として活躍の領域を広げています。
- 設立当初は国内油ガス田の開発に取り組み、後に活動の範囲を海外にも広げました。現在は石油・天然ガス以外のエネルギーや、カーボンニュートラル分野にも活躍の領域を広げています。
- 当社には3つの強みがあります。1つ目は、石油・天然ガスの探鉱、開発、生産から輸送・販売に関するJAPEXグループの総合技術力です。2つ目は、天然ガスの安定供給を支える強固な国内インフラです。そして3つ目は、当社事業の基盤となるステークホルダーとの信頼関係となります。これらは、労働安全衛生と環境保全を最優先課題とする当社の企業文化に支えられています。
- 当社では、これらの強みを生かしながら、さらなる成長に向けて3つの分野に取り組んでいます。その1つ目は、石油・天然ガスを開発するE&P分野です。地下の状況を適切に把握し、必要な施設を建設して石油・天然ガスを生産しています。
- 国内では北海道、秋田県、山形県、新潟県で油ガス田を操業しており、日本で唯一の海洋油ガス田も運営しています。生産された石油・天然ガスは、国内で利用されています。
- また海外では、北米および北海を中心に各国で油ガス田の権益を保有しており、現地パートナーと協力しながら運営しています。海外で生産された石油は、海を渡って日本に持ち込まれることもあります。
- 2つ目は、さまざまなエネルギーを供給するインフラ・ユーティリティ分野です。生産された天然ガスをお客さまに届けるために、国内に総延長800キロメートルを超えるパイプラインを敷設しました。現在は、このネットワークに国内最大級の貯留タンクを持つLNG基地も接続され、一体となって運用しています。また、パイプラインが整備されていない地域には、タンクローリーを利用してLNGを届ける事業も行っています。
- 電力は、当社が届けるエネルギーの中でも新しいものです。2014年の北海道における太陽光発電を皮切りに、2020年には天然ガス火力発電所を福島県で、2023年にはバイオマス発電所を北海道でそれぞれ運開しました。
- 3つ目は、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献するカーボンニュートラル分野です。カーボンニュートラル社会を実現する手段の一つとして、排出された二酸化炭素を集めて地下に貯留するCCSという技術があります。地下への二酸化炭素の圧入は、石油・天然ガスの増産に活用されている技術でもあり、当社の経験と非常に親和性が高いものです。当社は、国内にて2030年までの事業立ち上げを目指しており、海外においても、インドネシアやマレーシアで実現可能性調査を行っています。こうした取り組みを通じて、化石資源の利用とカーボンニュートラルの両立を目指していきます。
- E&P分野、インフラ・ユーティリティ分野、カーボンニュートラル分野を通じて、当社はSDGsの実現に向けた社会的課題の解決に取り組みます。
2.事業概要
- 会社紹介動画と重複する部分もありますが、私からさらに詳細に説明を加えたいと思います。
- まずは当社の概要についてです。社名は石油資源開発株式会社で、英文略称はJAPEXといいます。1955年に設立し、従業員数は1,600名余の会社です。グループ会社は、子会社22社と関連会社21社で構成されています。
- 当社は、石油・天然ガス、その他のエネルギー資源の探鉱、開発、生産、販売を行っている他、再生可能エネルギー資源の開発や電力の供給なども行っています。当期の売上高の予想は約3,500億円の規模となっています。
- 次に、沿革についてです。当社は1955年に、石油資源開発株式会社法に基づく特殊法人として設立されました。その後1970年には、現在の会社法である商法に基づいて通常の株式会社として再発足し、今に至っています。当時は石油公団が当社株式の65%強を保有していましたが、2003年にはその一部を売り出す形で東証一部に上場しました。なお、現在は経済産業大臣が株式の約37%を保有しています。
- 創立当初は、日本国内で石油・天然ガスの探鉱開発を中心に事業を展開していましたが、1965年以降は海外にも活動の場を広げ、海外での石油・天然ガスのプロジェクトをはじめとして、事業地域の拡大や多角化を進めています。
- 現在は総合エネルギー企業としての成長を目指すため、E&P分野、インフラ・ユーティリティ分野、カーボンニュートラル分野の三本柱で事業展開を行っています。
- E&P分野は、石油・天然ガスの探鉱、開発、生産を行う事業です。この活動を英語でExploration and Productionと称しており、頭文字のEとPを取ってE&P事業としています。この分野は当社の祖業であり、現在でも収益の屋台骨を支えています。
- インフラ・ユーティリティ分野は、天然ガスと電力の供給という2つの事業が組み合わさっています。液化天然ガス(LNG)を海外から運んでくるタンカー船を陸上の基地タンクで受け入れ、それをタンクローリーに積み替え、液体のままお客さまに届けています。あるいは、気化したガスをパイプラインによって都市ガス事業者等に供給しています。
- また、天然ガスの供給という意味では、火力発電所を運営しており、そこでつくられた電気を需要家に提供しています。電力の供給に関しては火力発電だけでなく、バイオマス発電や太陽光発電にも取り組んでいます。
- カーボンニュートラル分野は、これから実際に事業化していくことを考えています。現時点では収益に直接的に貢献できていませんが、当社では地球温暖化対策等を含めて脱炭素に関わる事業を追求しており、CCSや、次世代エネルギーとしてアンモニア供給インフラの構築などに取り組んでいます。
- 次に、当社の強みについてです。まずJAPEXグループは、総合的な技術力を有しているとともに、これまで構築してきた国内の強固なインフラがあるため、この経験を生かしながら、国内外でE&P事業やカーボンニュートラル事業に取り組んでいきます。
- さらには、エネルギーの供給事業にて大がかりな設備を設けているため、各ステークホルダー、特に地元関係者の皆さまと長年にわたって信頼関係を築いています。今後の事業活動においても、地域社会との信頼関係を重視していきたいと思っています。
3.3つの事業分野について
- ここからは各事業分野について、より詳細に説明したいと思います。
- まずはE&P分野についてです。当社は9月末現在で、国内10カ所と海外6カ所にE&Pの事業拠点を設けています。
- 石油・天然ガスの探鉱、開発、生産の全般にわたる当社の幅広い技術と知見が、この分野における強みとなっています。業績においてもE&P事業の利益貢献は大きく、昨年度の営業利益の約7割を占めています。
- 最近の主な動きとしては、国内での生産能力の増強を目的とした新潟県片貝ガス田の追加開発が挙げられます。
- 海外では、米国においてタイトオイルの一種であるシェールオイルの開発があり、追加権益を取得しました。また、イラクでは「ガラフプロジェクト」に参画し、日量生産量の拡大のための追加投資を継続しています。そして今年7月には、ノルウェーにおいて探鉱開発を行う現地法人を100%子会社化しました。今後はノルウェーでの事業展開をさらに進めたいと考えています。
- 次に、インフラ・ユーティリティ分野についてです。当社が現時点で参画する発電所は国内に8拠点あり、そのうち7カ所が再生可能エネルギーの発電所です。福島県相馬の天然ガス火力発電所が、発電出力としては最も大きな軸となっています。
- そして、ガス発電所と再エネ発電所に加えたもう一つの基盤として、天然ガスを供給するネットワークがあります。当社は新潟から仙台にかけて天然ガスの高圧ガス導管を敷設し、総延長800キロメートルを超えるパイプラインを保有しています。
- また、海外から運んできたLNGをこのネットワークに投入するための基地として、新潟側では日本海エル・エヌ・ジー株式会社の新潟基地に事業参画し、福島側では当社単独で設立した相馬LNG基地を運営しています。
- その他、最近では米国テキサス州において「フリーポートLNGプロジェクト」に参画しました。
- さらに当社は、バイオマス発電プロジェクトにも取り組んでいます。愛媛県の大洲バイオマス発電所は、今年8月に営業運転を開始しました。現在は、山口県の長府バイオマス発電所の建設作業を進めており、2025年1月に営業運転を開始する予定です。
- バイオマス発電所の燃料に関しては、木質ペレットを海外から輸入しています。このような燃料調達の部分においても、当社は事業参画を行い、収益を上げる一つの機会として位置付けています。
- 次に、カーボンニュートラル分野についてです。日本は国家として、2050年カーボンニュートラル宣言を行っていますが、これに対応する形で、当社もカーボンニュートラルの方針「JAPEX2050」を公表しています。
- 「JAPEX2050」では、二酸化炭素を地下に貯留することで地球温暖化対策に貢献していくCCSやCCUSを、長期の重点取り組み課題として位置付けています。
- 国内では、国による「先進的CCS事業」を、昨年度から苫小牧エリアと新潟エリアで受託しています。さらに今年度には、マレーシアのサラワク州における事業構想を加えたこれら3事業が、国の支援対象候補として選定されました。
- 海外では、米国ワイオミング州にてBSO社と事業を行っている他、カナダのアルバータ州でも事業創出機会を模索しています。
- またアジアでは、インドネシアで2つの事業を展開しています。そのうち南スマトラ州では、バイオマス発電所での燃焼による排気ガスからCO2を回収して地下に埋める「BECCSスタディ」というプロジェクトに挑戦しています。植物が大気中から吸収したCO2を地下に埋めるため、大気中のCO2濃度を減らすことになり、「ネガティブエミッション」という呼び方もされています。
4.CCSおよびCCUSについて
- CCSおよびCCUSとは、二酸化炭素の分離回収、利用、地中への貯留の頭文字をつなげて呼んでいる技術となります。
- 日本を含めて、国際的に2050年のカーボンニュートラルを目指す方向で取り組まれていますが、省エネルギー、あるいは太陽光や風力といった再生可能エネルギーだけでは全エネルギーを賄うことが難しく、これは有識者の一致した見解となっています。
- そこで、石炭や石油・天然ガスを総称した化石資源、あるいは化石燃料をある程度使用しながら、その利用に際して排出されるCO2を回収して再利用し、再利用できない分については地下深くに貯留しようということで、現在CCSおよびCCUSに対する国際的な期待が非常に高まっている状況です。
- また、燃焼時にCO2が排出されない水素をエネルギーとする水素社会においても、CCSを活用することができます。
- 水素を作る方法の一つとして、再生可能エネルギーで作られた電力によって水を電気分解する「グリーン水素」の技術があります。しかし、これは作ることができる水素量が限られており、日本全体を水素社会にするには到底足りません。
- それに対して、分子式CH3のメタン(天然ガス)を原料にして水素ガスを取り出す「ブルー水素」という技術があります。この方法ではどうしてもCO2が発生してしまいますが、排出されたCO2を地下に埋めることができれば、カーボンニュートラルな水素を安価に大量生産できる可能性があります。このような取り組みにおいても、CCSは非常に重要な役割を担うことになります。
- その他には、大気中から二酸化炭素を直接回収する「ダイレクト・エア・キャプチャー」という技術もあり、少しずつ開発が進んでいます。まだ未来の技術だと言える状況ですが、この技術においても、回収したCO2をCCSおよびCCUSによって地下に貯留することで、大気中のCO2濃度の低下に貢献できます。
- CO2を地下に貯留する行為は、石油・天然ガスの産出や、地下に眠る石油・天然ガスの探査技術に応用することができます。そのため、これまで当社がE&P事業で培ってきた技術を、CCSの特に貯留部分に適用することが可能であり、そのような技術をJAPEXグループが保有していることは大きな強みとなっています。
- 脱炭素社会は脱化石燃料社会ではなく、排出されるCO2にどのように対応していくかが重要です。当社は化石燃料、石油・天然ガスを今後も用いながら、その一方でCCSによって対策を講じていき、カーボンニュートラル社会の実現に貢献したいと考えています。
- 日本においても、先の通常国会で「CCS事業法」が可決されています。制度的に手当てを行うことでCCSを推進しながら、当社のような事業者に対する支援も強化していく方向が出されています。
- 現在、CCS事業化に向けた先進的取り組みとして、日本全体で9つのプロジェクトが「先進的CCS事業」として国に選定されています。その中で当社のプロジェクトが3件選ばれており、われわれの取り組みが国からも高く評価されている証だと思っています。
- その一つであるマレーシアのサラワク州におけるプロジェクトは、瀬戸内海沿岸の工業地帯で排出されるCO2を集めて液体にし、船で輸送してマレーシアの地中に埋める構想となっています。貯留地点が海外か日本かによって、3つのプロジェクトを進めているところです。
- 国によるCCSの実証事業も長きにわたって行われてきました。JAPEXグループとしても、CCS事業に長期間コミットしながら主導的な役割を果たし、技術開発に取り組んできた経緯があります。なお、私は国による実証事業等を行ってきた日本CCS調査株式会社の社長も務めています。
5.成長戦略
- 「JAPEX経営計画2022-2030」では、収益力の強化と、2030年以降を見据えた事業基盤の構築を基本方針としています。
- この春先から油価が下がってきていますが、足元は好調な状況が続いています。これが50ドルまで下落した場合においても、2030年度の達成目標を事業利益500億円、ROE 8%としています。また、2026年度の中間目標としては、事業利益300億円、ROE 5%の達成を目指しています。
- さらに、E&P事業以外の収益基盤を強化して、E&Pに偏っている現在の状態を是正し、カーボンニュートラル事業やインフラ・ユーティリティ事業でも稼げる会社になるという目標を掲げています。
- 資金配分の方針については、計画を作成した当時の想定において、2030年までの9年間の累計キャッシュインフローを5,000億円とし、成長投資に4,500億円、株主還元に500億円を配分します。
- 成長投資に関しては、E&P分野に2,300億円、インフラ・ユーティリティ分野に1,700億円、カーボンニュートラル分野に500億円という配分で投資していく計画となっています。
- 進捗としては、キャッシュインフローを大幅な前倒しで取得しており、2026年までの5年間で達成予定としていた営業キャッシュフローを、2024年までの3年間で達成する見通しです。
- また、成長投資もほぼ計画通りに進捗しています。株主還元についても、2026年度までの5年間で実施予定だった水準を、2024年度までの3年間で計画を2.5倍以上を上回るペースで還元しています。
- このような状況の中、昨年度末までに取得した事業資産によって、今後新たな積み増しを勘定に入れなくとも、2026年度の事業利益300億円を達成できる見込みとなっています。
- 想定以上の油価の推移によって足元の業績が好調であるため、今後2020年代後半から2030年代を見据えて、さらに中長期的に利益貢献が期待できる資産を獲得していきたいと考えています。
6.業績・株主還元
- 連結業績の推移として、2023年度の実績は、当期純利益が過去2番目となる536億円となりました。2024年度は、原油・天然ガスの販売価格の下落に伴う減益を勘案して、当期純利益は過去3番目の440億円を見込んでいます。
- 想定している原油価格は7月以降で80ドル、為替は145円となります。油価や為替の営業利益への感応度として、原油価格が1ドル上昇すると、当社の営業利益が2億9,000万円上振れする効果があります。また、当社は円安の状況で業績が好転し、1円の円安によって営業利益が3億8,000万円上振れする効果があります。
- 次に、株主還元方針についてです。当社では、30%を目安とする連結配当性向を配当算定に導入しています。一時的に業績が悪化した場合も、過去の長期安定配当水準にあった50円の配当は努力したいと考えています。
- また、株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図るため、今年10月1日を効力発生日として、1株あたり5株の割合で株式分割を実施します。
- 2024年度の年間配当は、中間125円、期末25円を予定しています。なお、株式分割を考慮しない場合の2024年度の期末配当金は、1株当たりの125円です。
- 中長期的には、財務体質の健全化、あるいは成長投資による企業価値の向上を通じて、さらなる株主還元の改善向上を目指していきます。
7.おわりに
- 当社はB to Bの企業であるため、あまり知名度が高くありません。また、国内の事業基盤が北海道や東北方面に偏っていることもあり、九州の皆さまにはなじみがない会社だと思います。
- 当社はかつて九州地方において、日本製鉄と共同で、筑紫ガスや直方ガスにLNGをタンクローリーにて供給していました。また、指宿で地熱発電も行っていました。
- 現在は、九州ガスおよび鹿児島の日本ガスと共同で、熊本の八代市にてLNGの受け入れ貯蔵販売を行う熊本みらいエル・エヌ・ジー株式会社に事業参画しています。さらに、子会社のJAPEXエネルギーは、九州エリアでも石油製品の買い入れ販売を行っています。
- 今後は再エネ事業やカーボンニュートラル事業の拠点を増やしたいと考えており、九州にて新事業が始まる可能性もあります。そのため、もしJAPEXの名前を聞いた際は、ぜひ応援していただければ大変ありがたいと思います。
8.質疑応答
Q1. 本日の説明会で最も伝えたかったことは何でしょうか。
A1. 社名が石油資源開発であるため、脱炭素の流れの中で化石燃料を扱っていることに対し、環境団体などから批判を受けることもよくあります。当社では、本日の資料の最後にも記載している「いつも、いつまでもこの町にエネルギー」や、冒頭でも紹介した「必要なエネルギーを必要な人へ」をキャッチフレーズとして掲げています。われわれの現在の生活や活動は、石油・天然ガス、あるいは石炭に多分に依存しており、この安定供給を損なう形で急激に脱炭素化を進めると、さまざまな混乱が生じると思います。一時期、ウクライナ侵攻によって天然ガスのマーケットが大混乱しました。当社は、そのようなことがないように、しっかりとエネルギーの安定供給を続けながら脱炭素社会に貢献したいと考えています。また、CCSも一つの大きな方策となり得ます。 従って、「化石燃料を扱う会社は悪い」と考えてほしくない気持ちが非常に強く、本日ご来場された皆さまには、そのことを受け止めて帰っていただければ大変うれしく思います。
Q2. カーボンニュートラルに向けた取り組み状況を教えてください。また、天然ガスは今後の取り組みの中でどのような役割を果たすのでしょうか。
A2. カーボンニュートラルに向けては、再エネを重視しており、燃料の調達を含めたバイオマス発電の取り組みを特に推進しています。 太陽光発電に関しては、場所が飽和しているとともに、傾斜地に無理やり作ることで土砂崩れが発生するといった問題が提起されているため、新規よりも既存の発電所において取り組みを進めています。現在運用されているFITも、制度自体が今後変わっていくため、ポストFITにて再生可能エネルギーをうまく提供していく事業をしっかりと展開したいと考えています。 中長期的な取り組みとしては、CCSを非常に重視しており、国から選定された3つの先進的CCS事業に注力しています。「先進的CCS事業の実施に係る設計作業等」は、将来的なモデル事業になるような先進性を持っている、あるいは横展開が可能であることを基準として採択されています。まずは現在開始している3つのプロジェクトを事業化につなげていくとともに、国からの大きな支援も必要になるため、政府と連携しながら取り組んでいきたいと思っています。 次に、天然ガスの役割についてです。天然ガスは、化石燃料の中で相対的に最もクリーンな燃料となります。従って、石炭や石油系の燃料を燃やしている発電所を天然ガスに切り替えることで、CO2の排出が削減できます。特に海外の新興国では、石油や石炭への依存が非常に高いため、将来的に天然ガスに切り替えていくことで、途上国の経済成長を支えながら排出量を削減していく効果が期待できます。そして、そこにCCSが将来的に組み合わさると、さらにカーボンニュートラルにつながると考えています。 中には「天然ガスも結局は化石であるため、使用をやめるべきだ」という議論もあります。しかし当社では、2050年においても天然ガスの利用がなくなることはなく、むしろ国際的に天然ガスの需要量は現在より増えていくと見ています。長期的には、およそ2100年まで天然ガスの時代は続くと考えています。
Q3. カーボンニュートラル分野におけるCO2貯留調査の最新動向を教えてください。
A3. 私が別途担当している日本CCS調査株式会社では、北海道苫小牧市にて、分離回収から貯留までの一貫した実証試験を行っています。ただ、排出元と貯留地が非常に近接していたため、CO2の輸送技術が確立できていませんでした。 現在は、国からの委託を受けて、CO2を液化して船で輸送する実証試験に取り組んでおり、パイプラインよりも効率的に運べる船舶輸送技術を開発しています。これが実現できると、日本国内において排出源が集中している太平洋側の産業集積地等から、貯留が見込まれる日本海側へ輸送することが可能になります。 CO2は非常に身近な物質ですが、さまざまな特徴を有しています。普段の生活でもドライアイスを使用する機会がありますが、CO2はマイナス五十数度で固体化します。液化する領域はマイナス30度から50度の間で、それ以前は気体、あるいは超臨界状態となります。このように、気体・液体・個体という相変化が非常に狭い温度帯の中で発生するため、液体のCO2を冷やし過ぎると固まって動かなくなり、圧力の条件が変わると、ドライアイスと気体の状態を行き来することになります。従って、大量の液体CO2を安定的に輸送する技術が必要であり、2026年までの確立を目指して取り組んでいる状況です。 貯留地に関しては、日本国内でCO2を安定的に埋められる場所を長期間探査していますが、まだ十分に探査できていない場所もあります。さらに、実際に井戸を掘って確認することもできていません。これについては、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)という国の機関が今後さらなる探査を行っていくため、その結果を見ながら先進的事業に取り組んでいきます。 また、政府からの支援として新しい法律も制定されています。ただ、CO2を地下に埋めることで電気や有価物が生まれるわけではないため、その費用をどのように負担して資金を回していくかという経済的な枠組みを作る必要があります。現在、国を挙げてGX推進に取り組んでおり、「GX移行債」という一種の国債が発行されていますが、最終的な償還原資をどのように集めるかが政府側で検討されています。 このように、制度面の充実と、実際に実行する事業者側の取り組みを両輪にして、取り組みを進めている現状だと認識しています。
Q4. 石油・天然ガス開発のE&P分野が中核事業になりますが、2030年以降の成長を見据えて、中核事業やその他事業の成長戦略についてどのように考えていますか。
A4. まずE&P事業は、今後も当社の中核事業であり続けると位置付けています。その中で、現在は地域を絞った集中的な取り組みを行っており、米国およびノルウェーに注力しています。インドネシア等の東南アジアも視野に入れていますが、主には米国とノルウェーにおいて、E&P事業の新たな事業参画機会を模索しています。 石油・天然ガスの探鉱は掘ってみなければ分からず、当たった場合も、実際に商業開発できる量を確保できるかは非常に長いスパンで見る必要があります。リスクが極めて高い事業であるため、どのようにリスクを軽減するかに留意しながら、米国およびノルウェーでの活動を広げていきたいと思っています。 その他の事業分野としては、再エネ事業に注力しています。なお、本日説明した内容以外では、洋上風力への取り組みも考えていましたが、レッドオーシャン化した厳しい事業環境であるため、洋上風力への進出は様子を見ている状況です。 再エネ事業では主にバイオマスや太陽光、あるいは蓄電池事業に取り組んでいます。蓄電池事業は、系統用蓄電池を置くことで、時間帯や天候に左右される再エネの電気に対応し、電気が足りない時に放出する仕組みです。安い時に電気を購入し、高くなった際に売るというビジネス展開ができないかと考えています。
以上
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