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京阪神ビルディング株式会社(8818)

開催日:2024年9月21日(土)

場 所:札幌ビューホテル大通公園 地下2階『ピアリッジホール』 (札幌市中央区)

説明者:代表取締役社長  若林 常夫 氏

 

  • 会社概要

 

・ 当社の本社は大阪市中央区瓦町のメインストリートである御堂筋に面したビルに所在しています。

・ 資本金は現在約98億円で、従業員は本年6月末で60名と少人数で事業を運営しています。

・ 創立の翌年1949年に大阪証券取引所に上場、2003年3月からは東証1部に上場、2020年4月に東証プライム市場に移行しました。

・ 証券コードは8818、最低売買単位が100株で、直近の株価で16万円前後です。

・ 資料に創立以来の売上高の推移と部門別の売上高の割合を示していますが、当社が創立以来着実に成長を積み重ねてきたことがお分かりいただけると思います。

・ 各時代のニーズに合わせ、事業ポートフォリオを変化させてきました。

 

2. 京阪神ビルディングの強み

・ 当社は、「多様なアセットタイプ」「健全な財務バランス」「きめ細かいビル管理」「高効率の不動産賃貸事業」の4つを強みとしており、これらが価値ある事業空間を提供する柱です。

多様なアセットアイプ

・ 当社の物件数の約半分を占めるデータセンタービルやウインズビルはオフィスビル市況に左右されにくいこともあり、当社ビル全体の空室率は東京・大阪のビジネス地区の空室率を下回っています。

2024年6月末の当社の保有ビル全体の空室率は1.47%と低い水準を維持しています。引き続き、高い稼働率を維持すべく注力していきます。

健全な財務バランス

・ Net有利子負債/EBITDA倍率は、正味の有利子負債が年間の現金収入の何倍にあたるかを示したものです。当社は、新規投資に伴う資金調達により一時的に倍率が上昇しても、10倍程度までに抑える方針です。

・今後も財務バランスに留意しつつ、事業の拡大を通じて企業価値の向上に取り組みます。

・ 長年にわたり企業価値を着実に向上させてきた安定した経営方針が評価されて格付機関のR&Iから28年連続でA−の評価をいただいており、良好な格付と信用力を生かし、現在500億円の社債を発行しています。年間平均調達率は前期末で0.81%と低く抑えられています。

  • 今後もこの信用力を生かし、直接金融と間接金融のバランスや返済期日の長期分散化等に留意し、低い調達コストの維持に努めます。

きめ細かいビル管理

・ 大手ゼネコンでの現場経験豊富な技術スタッフは、高品質なビル作りや、建物・設備の管理運営面で気配りの行き届いたビルマネジメントを実現しています。

  • 営業スタッフはテナントさまと親密なコミュニケーションを取り、技術スタッフやパートナー企業さまと連携することで、お客さまのご要望にきめ細かく応える体制を敷いています。その結果、各テナント様から高い評価と信用をいただいています。

高効率の不動産賃貸事業

・ 当社はおよそ60名の従業員による少人数経営を特徴としていますが、専門性を有する人材を活用することで高効率の事業運営を実現しています。

  • 長期経営計画の実現のためには新規事業推進人材の確保が欠かせないため、事業戦略に沿った専門人材の採用・育成・人材配置に努め、少人数高効率経営を維持しつつ企業価値の向上を目指しています。

 

3. データセンタービル事業

・ データセンタービルはインターネット用のサーバやデータ通信のための装置を設置することに特化した建物です。データセンタービルでは、大切な情報やシステムを守るため通常の建物に比べて、立地や防災対策、電力供給、通信設備、セキュリティ対策が一層重視されます。

・ 当社のデータセンタービルは都心型データセンタービルに特化しており、通信インフラが密集した大阪の都心に所在しています。このため、当社の従業員による日頃から行き届いたメンテナンスが可能となり、緊急時にもすぐに駆けつけられる体制を敷いています。

  • 当社はビルをスケルトン状態で賃貸しているので、テナントさまのニーズに合った内装や機器の設置が可能です。
  • およそ30年にわたり培ってきたビルの企画・運営ノウハウとパートナー企業さまとの良好な関係が当社の最大の特徴であり、強みとなっています。

・ AIやIoTの発展、5G通信などに伴うデータ通信量の増大により、データセンターの市場規模の拡大が引き続き見込まれます。

  • 当社は引き続き時代のニーズに合わせた高品質のデータセンタービルを提供していきます。

 

4. 長期経営計画

・ 計画の対象期間は、2024年3月期から2033年3月期までの10ヵ年です。

・ 本経営計画では、当社がこれまで取り組んできた不動産賃貸事業に加え、新たな不動産の事業分野にも取り組むことを掲げています。

数値目標

・ 計画最終年度の2033年3月期の数値目標は、事業利益140億円、償却前事業利益180億円、財務規律に関する指標として、自己資本比率30%以上、Net有利子負債/EBITDA倍率10倍程度、資本効率に関する指標として、ROA 5%以上、ROE 8%以上です。

投資計画

・ 10年間で収益物件の取得に1,800億円、エクイティ投資や海外投資等に700億円と総額2,500億円規模の投資に加え、収益物件の売却により800億円の投資回収を行う計画です。

・    当社は償却前事業利益の拡大によりキャッシュフローを成長させ企業価値の向上を目指します。

 

不動産賃貸事業

・ 当社の主力事業の不動産賃貸事業については、引き続き中核事業と位置づけ、立地と収益性を重視した従来の方針に基づき、さらなる資産の拡充に努めます。

  • 関西圏での保有物件の集中を緩和すべく、首都圏をメインターゲットに立地の分散を図ります。計画最終年度の売上高の地域ポートフォリオについて、関西圏以外の比率を30%程度に引き上げることで地震をはじめとする自然災害などの地域集中リスクを低減し、バランスの取れたアセットポートフォリオを実現し、安定した収益基盤の確立を目指します。

資産回転型事業

・ 不動産のキャピタルゲインの獲得を目的とする資産回転型事業を新たに立ち上げます。資産の売却による獲得資金を成長分野へ再投資することで収益の最大化を図り、資本効率の向上を目指します。テナントの入れ替えや改修工事等により取得物件をバリューアップして売却することを軸に考えています。収益物件の売却により10年間で800億円を回収する計画です。

エクイティ投資

・ エクイティ投資とは、不動産そのものではなく、不動産を保有する会社の持ち分を取得するものです。他社との連携による物件の取得など、投資手法の多様化を進めることで10年間で累計160億円の投資を目標としています。

海外不動産投資

・ 日系企業とのアライアンスによる出資を足掛かりに、10年間で累計250億円の投資を目標としています。

新規投資の実績

・ 収益物件として、2023年6月に東京都台東区浅草の商業ビルを取得しました。本物件は東京メトロの浅草駅至近に位置しています。立地の良さと利便性の高さから将来資産価値の向上が期待できるため、資産回転型事業と不動産賃貸事業のいずれの戦略も検討可能な物件として位置付けています。

・ 2023年10月に東京都港区のオフィスビルに、2024年3月に兵庫県西宮市のヘルスケア施設にエクイティ投資を実施しました。

港区のオフィスビルは立地が非常に良く、将来再開発の可能性が見込めますし、それまで保有し続ける限り収益の獲得も可能です。ヘルスケア施設は、国内の高齢化に伴う需要の増加を見込んでおり、今回の投資を足がかりにこれまで経験していないヘルスケア施設のノウハウを集積し、次の投資に繋げたいと考えています。

  • 海外投資については、情報収集やノウハウの蓄積を目的に2023年10月にアメリカの不動産ファンドへ出資しました。アメリカは今後も経済成長が見込まれ、不動産マーケットの法的な透明性が確保されているため、最初の投資先として選定しました。
  • 本ファンドへの投資を足がかりに2024年5月に米国現地法人を設立し、8月にフロリダ州のマルチファミリータイプの賃貸レジデンスの開発案件へエクイティ投資を実施しました。本物件は、今後も人口の流入が見込まれ、住宅市場が好調で企業活動が活発なエリアに所在しています。現地デベロッパーとの関係構築を通じてアメリカでの事業展開の拡大を目指します。

財務戦略

・ 直接金融と間接金融のバランスに留意し、安定的かつ低金利の資金調達に取り組みます。今後も財務の健全性は維持すべく、自己資本比率やNet有利子負債/EBITDA倍率などの財務規律を堅持していきます。

  • 資産回転型事業への取り組みなどによりROAの向上を目指し、その結果としてROEの改善・向上を図ります。

 

5. サステナビリティ戦略

・ 長期経営計画では基本方針として、サステナブル経営を実現し、持続可能な企業価値の向上を図ることを掲げています。

・ 気候変動への対策を通じて事業のレジリエンス(回復力・耐久力)を強化することと、グリーンビル認証の取得を推進して環境性能が高い不動産への需要の高まりを収益機会に繋げることを重点施策に掲げています。

・ この方針のもと、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標として、2031年3月期までにScope1+Scope2を46%削減(2020年3月期比)、2051年3月期までにGHG排出量(Scope1+2+3)のネットゼロ達成を掲げています。

・ GHG排出量の削減に向けて保有物件に再生可能エネルギー由来の電力を導入し、太陽光パネルを設置しつつ、これらの取り組みを客観的に評価するために、グリーンビル認証の取得も進めています。

・ 人材投資については、外部人材の登用と内部人材の育成をバランスよく組み合わせることで、少人数による事業の効率性を維持しつつ不足するリソースを補完し、今後の持続的な成長の実現に向けて企業風土の根幹をなす人材の育成を目指していきます。

  • 人材育成については、幹部候補生の育成や自発的なキャリア形成の後押し、事業戦略に沿った専門人材の採用・育成・人材配置に努めています。

・ 多様な価値観を内在させることで多様化・複雑化する社会で当社の発展に繋がるとの考えのもと、経験者やシニア人材を積極的に活用し、女性活躍の推進に向けた目標を設定しています。

  • 働きやすい環境づくりや業務効率・生産性向上の仕組みにも取り組んでいます。

 

6. 今期の業績予想

・ 2025年3月期の業績は、データセンタービルの稼働向上やオフィスでのテナントの入居、浅草駅前ビルの通期寄与を主因として、売上高は197億円と前期比3億8,900万円、2.0%の増収を見込んでいます。また、修繕費や減価償却費などの減少を主因に、営業利益は56億円と前期比5億1,600万円、10.2%の増益、経常利益は55億円と前期比6億5,700万円、13.6%の増益となる予定です。一方、当期純利益は38億円と前期比600万円、0.2%と若干の増益を見込んでいます。これは、投資有価証券の売却による特別利益が前期よりも減少することによるものです。なお、売上高営業利益率は28.4%で、同業他社に比べても高い水準を維持しています。

また、長期経営計画で当社が重要な指標として掲げている償却前事業利益は98億円と前期比6億7,100万円、7.4%の増益を見込んでいます。償却前事業利益とは、営業利益に投資事業組合運用損益、つまり営業利益とエクイティ出資等による投資先から得られる収益を合算したものに減価償却費を足し戻したものです。いわゆる長期経営計画に基づく事業から生ずるキャッシュフローの合計を指します。この償却前事業利益の拡大によりキャッシュフローを成長させてそれにより企業価値の向上を目指します。

 

7. 株主還元

・ 株主還元は、1株あたりの利益を重視した安定的な配当・増配を継続します。配当性向目標は、前中期経営計画の35〜40%を今計画で45%程度に引き上げています。経済情勢及び自社の株価を総合的に勘案して、自己株の取得等の資本効率を意識した株主還元についても検討していきます。

・ 2025年3月期は、年間配当を37円とする予定です。

 

8. まとめ

・ 当社は不動産会社として、安定した収益や健全な財務体質をベースに、さらなる資産を積み上げるとともに、新たな事業にも取り組むことで資本効率の向上と事業の成長に努めています。

・ これをもとに、近年株主還元を着実に積み上げており、今後も安定性・継続性を重視した配当方針を堅持し、株主の皆様への一層の利益還元を経営の重要課題として位置づけ、さらなる企業価値の向上に努めますので何卒ご理解を賜りますようお願い申しあげます。

 

9. 質疑応答

Q1. リートとの違いとリート事業への関心について教えてください。

A1. リートでは不動産を事業用資産ではなく金融商品として取り扱い、そこから計上される収益を配当するビジネスモデルです。一般的に配当重視の観点から修繕費等の費用を抑えて収益の全てを配当しています。

一方で、不動産賃貸事業では事業用資産の不動産を長期間保有する前提で更新・修繕等を行うことで資産価値を高めて事業を成長させて、株主さまへ還元しています。

私どもは不動産賃貸事業を中心に展開し、事業を通じて社会に貢献しつつお客様の期待に応えていきたいと考えているので、リート事業に参入する考えはございませんが、新規事業の資産回転型事業に取り組むにあたり、現在所有している物件や新たに取得する物件の売却が必要なので、リートではなく、私募ファンド等を受け皿とするAM(アセットマネジメント)機能を今後構築していきたいと考えています。

 

Q2. サステナビリティ戦略の人材投資に関する質問ですが、従業員数が60名程の少数精鋭企業であれば、ユニークな人材登用や採用の基準があるはずです。ぜひご紹介ください。

A2. 当社は不動産賃貸事業に特化することで最小限の人材から成る組織を維持してきました。事業資産の価値を高めることが必要なので、大手ゼネコン等で経験とノウハウを積んだ技術スタッフを外部から採用することで、資産価値を毀損せずさらに高められる体制を敷いています。

一方で、長い目で考えると会社の将来を担う人材を育成する必要もございますので、新卒だけに限りませんが若い人材も毎年2名程採用しています。

このように、事業推進のために必要なノウハウを持った人材をフレキシブルに採用するとともに、経験者と若手社員間のコミュニケーションを促進することで若手人材の育成も図り、効率性を考えつつ効果的な社内体制整備に取り組んでいきます。

 

Q3. 株主優待を再開する計画はありますか。

A3. 申し訳ございませんが、2020年度に株主優待を廃止しました。株主優待ではなく、安定的な配当を株主還元方針として掲げており、ここ7、8年程で配当額を倍以上に引き上げました。本方針にご理解賜りますようお願い申し上げます。

なお、今後も、多少業績のブレがあっても現行の配当額を維持していきます。さらに新規事業の推進を通じた成長を目指したいと考えていますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

Q4. 若林社長の経歴について、どのような職務を経験されてきたのか、気になります。

A4. 私は昭和34年生まれで、現在65歳です。関西の鉄道会社の阪急電鉄(株)に入社して鉄道事業に従事した後、12〜13年間不動産事業に従事しました。その間、阪急ホールディングス(株)と阪神電気鉄道(株)が経営統合し、現在の阪急阪神ホールディングスが誕生しました。そのグループ内で阪急電鉄(株)の不動産部門・阪神電気鉄道(株)の不動産部門・阪急不動産(株)のマンション事業を統合し、阪急阪神不動産(株)の立ち上げと社長への就任を経験しました。その後、2022年6月に当社の社長に就任し、2年3ヵ月が経過しました。

当社ではSMBCの出身者が歴代の社長として就任してきましたが、指名・報酬委員会を設置してガバナンス体制も整えた上で、新たな不動産事業を展開することを期待されて、私にお声がかかったのではないかと考えています。なお、2023年5月に長期経営計画を打ち出し、現在推進しているところです。

 

Q5. 貴社はこれまでゆっくりと着実に成長してきましたが、今後はスピードアップも必要ではないですか。

A5. 2023年5月に公表した長期経営計画にて、10年間の計画期間の内の前半の5年間で新規事業の立ち上げ、後半の5年間で立ち上げた事業で利益を上げるという計画にしています。一方で、投資家の方から「最初の5年間の時間軸が非常に長すぎるのではないか」というご意見をいただきました。

当社は長年不動産賃貸事業に特化して安定的に事業を運営してきた実績がありますので、これを毀損してまで新規事業の立ち上げをいたずらに急ぐつもりはございません。

一方で、投資家の皆さまの期待に応えるために、焦らずとも積極的にスピード感を持って早期の立ち上げを目指します。どうかご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

以上

 

 

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