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福井コンピュータホールディングス株式会社(9790)

開催日:2024年8月29日(木)

説明者:代表取締役グループCEO  佐藤 浩一 氏

 

1.会社概要

  • 当社の設立は1979年で、今期で46期目となります。本社所在地は福井県福井市で、北海道から沖縄まで全国に拠点展開しています。建設業界向け設計用ソフトウエア等を開発している、ITベンダー企業です。
  • 7月29日に「FUKUMACHI BLOCK OFFICE(福井駅前再開発事業)」に、新しく「Visionary Hub Fukui(ビジョナリー・ハブ・フクイ)」というオフィスを開業しました。福井駅前の再開発ビルに当社の本部機能を移転させ、「ここから多様な対応ができる体制を強化する」という思いを込めて、この拠点名にしました
  • 福井ブローウィンズは、B1リーグへ挑戦するプロバスケットボールチームです。挑戦に取り組む姿に感動し、今期はダイヤモンドパートナーとして、オフィシャルパートナーになりました。
  • 私たちはIT企業として、建設業向けのITツールを約半世紀、開発・販売を行っています。建設業界が重要パートナーです。マテリアリティ(重要課題)のうち、地域社会の領域では、「建設業のDX推進のサポート」と「防災・減災・災害復旧への取り組み」を重要視しています。
  • 皆さまもご存じだと思いますが、福井は有効求人倍率の高い県です。ここ数年は、常に国内トップの求人倍率です。われわれも求人や採用の充実を図る必要があります。以前のように、私どものようなIT企業を選んでもらえる時代ではなくなっています。人事部門でも、採用やエンゲージメントの向上に力を入れています。
  • 2024年1月1日に能登半島地震がありました。地震が起こると、当然次に来るのは、災害復旧です。災害復旧の際には、まず仮設道路、簡易的な道路を設計します。私どもはこの設計ツールを提供しています。復興事業の費用を出すための災害査定をするソフトウエア、仮設住宅の設計や施行、倒壊の危険度を探る応急危険度判定に使えるツールなども提供しています。風水害も含めいろいろな災害が起きます。それに対するツールを開発、販売しています。
  • 「住宅やビル、マンション等の建物の設計・施行」、「道路、橋梁(きょうりょう)などの設計・施工」、「防災・減災・災害復旧」が、建設業が関わる大きな内容です。私たちは、建設業向けにIT化して効率化するためのツールを広く提供しています。

 

2.当社の沿革と事業について

  • 当社は建設業において、3つの事業会社をつくっています。1つ目が、測量、土木、建設インフラのセグメントを担当している福井コンピュータ株式会社。2つ目が、福井コンピュータアーキテクト株式会社で、住宅、ビル、マンション等の建物を主に設計・施工する分野を担当しています。3つ目が、福井コンピュータスマート株式会社で、他の2社以外の建設ITや、幅広くユーザーをサポートする事業を行っています。3社合わせて、約150億弱の売り上げを維持しています。
  • 建設業界には、調査(測量)、設計、施工、維持管理の4つの工程があります。光波カメラで測量し、それを登記する測量事業、測量業務。測量で実測したデータをもとに、住宅やビル、道路、橋などを設計。その設計図をもとに施工。建てたものを長く使用するための維持管理。当社は建設業の全ての工程を網羅しています。
  • 今、高速道路リニューアルプロジェクトにより、全面的に国内の高速道路で維持管理の工事がされていますが、定期的にメンテナンスをすることにより、強靱(きょうじん)なインフラが整備されます。
  • 測量・土木セグメントについて。1つ目の測量事業は、土地を測る事業です。測量会社や、境界線を認定して登記する土地家屋調査士が行います。2つ目の土木事業は、道路や橋梁を設計、施工する事業です。それを維持管理する建設インフラ事業が3つ目です。この3つが、福井コンピュータ株式会社が担当している測量・土木セグメントになります。
  • 建築セグメントは福井コンピュータアーキテクト株式会社が担当しています。1つ目の住宅事業は、当社の一番大きなセグメントになります。最近では、耐震性や省エネ性の高いハイスペック住宅の細かい技術計算を簡単に行うソフトウエアを開発・販売しています。2つ目の建材事業では、家庭にあるキッチンやユニットバス、トイレ、窓のサッシなど、実際に使われている建材のデータベースサービスに取り組んでいます。3つ目がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)事業です。多くの人が携わる大規模建築を効率的に行うためのアシストを行っています。
  • 製品提供ゾーンは、調査(測量)、設計、施工、維持管理のサイクルを一通り網羅しています。
  • ITソリューション事業の中で、選挙の出口調査を行うシステムの開発・販売も行っています。皆さんも国政選挙や首長の選挙で、出口調査を受けた経験があるかもしれません。そのアンケート調査をするための基盤や、解析するロジックを担当しています。NHKの選挙特番が始まると、すぐに当確が出ます。実は裏で私どものシステムが走っているのです。
  • 連結売上高は測量土木システム事業が50.7%、建築システム事業が46.7%、ITソリューション事業が2.6%を占めています。ITソリューション事業は、選挙があれば伸びる事業で、固定的な数字ではありません。
  • 当社のターゲットユーザーについて。毎年継続的に取引がある会社は、全国に約4万5,000社あります。ビルダーやゼネコンなどの大手企業から、個人の設計事務所まで、幅広く取引があります。それらのユーザーが毎年私どものソフトウエアを購入したり、保守サービスを更新したりしていただいています。
  • 当社のソフトウエアの特徴は、パッケージソフトを開発・販売を行っている点です。パッケージソフトの対義語は受託開発です。多くのIT企業は顧客からオーダーを受けて、受託開発で提供しますが、私たちはそうではなく、決まったパッケージの販売が大半を占めています。パッケージソフトウエア開発の利点は、大きな要望をまとめてパッケージ化することにより、1つを開発すれば、大量販売が可能になることです。当社の高い利益率は、パッケージソフトを販売しているためでもあります。
  • 今はIT化やDX化が進み、ユーザー個々のニーズも変わってきています。受託開発を求められるケースも出てきています。次の段階として、効率よく受託開発ができる開発体制を考えているところです。
  • 当社の強みは、顧客基盤、コスト、お客さまの声です。建設業界という強固な顧客基盤を持ち、業績が安定しています。コストの面では、パッケージ販売を主にしていることで、突発的なコストが発生することはあまりなく、安定的な経営ができます。CAD分野で当社製品のシェアが高く、多くの顧客から寄せられる声を製品に反映することができます。サポートを専門で行っている福井コンピュータスマートは、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)でユーザーの声を吸い上げる体制を強化しています。「niche, small but strong」、ニッチでスモールでありながら、しかし強いのが、私たちの強みです。

 

3.当社を取り巻く環境と業績について

  • 現在、建設業界では高齢化と人手不足が大きな課題となっています。能登半島地震の災害復旧に建設作業者が必要となれば、大阪万博の作業者が足りなくなってしまう、まさにゼロサムゲームとなる状況です。
  • 人手不足、担い手不足、高齢化は今後、解決していくのでしょうか。日本で少子化が進む中、建設業の従事者が増えることは考えづらいです。合理化や生産性向上を図らなければ、今現在、確定している施工量を今後、永続的に担保することができなくなります。根本的な問題が解決できないからこそ、IT化やDX化などITに頼らざるを得ないのです。そうしなければ、家を建てること、橋を架けること、道路を維持することができません。近い将来、破綻が起きてしまいます。これが建設業界の取り巻く環境と問題です。
  • 業界の課題に対して、国内でさまざまな動きが起こっています。2016年に「i-Construction」が実施されました。これは国が推進する建設現場の合理化、生産性アップを目指す取り組みです。IT化を進め、建設施工の効率化を進めることで、人材不足や人手不足の解消を図ります。
  • 2017年には、経済産業省と中小企業庁が所管して行った「IT導入補助金」があります。これは現在も継続しています。建設業に限らず、中小企業・小規模事業者がIT化、DX化を進めるための補助を行う事業です。これは建設業にとって大きな補助金制度でした。
  • 2019年には、「2025年までに全直轄事業でBIM/CIMの原則適用化」がありました。BIM/CIMとは、建築物やインフラの設計、建設、管理において、3次元のデジタルモデルを使用し、そのモデルを工事業者で共有して、建設を効率的に進めるプロセスです。国の直轄工事はBIM/CIMが必須となりました。これが拡大し、2020年に「2023年度までに全公共工事でBIM/CIMの原則適用」を目指す方針が出されました。BIM/CIM領域で、当社のアプリやCADが広く使われています。そのため、このような国策が追い風になっています。
  • 2023年、「全ての詳細設計・工事でBIM/CIM原則適用開始」となりました。当社のBIM/CIM関係の商品は、今後も広く普及するだろうと考えています。
  • 売り上げの推移と外部環境の変化について。設立して45年が経過する中で、いろいろなことがありました。いいことばかりではありません。バブル崩壊以降、リーマン・ショックなどであおりを受け、建設業界の景気に左右されてきました。今は安定的で自立的な経営基盤になっており、安定的な売り上げと利益確保が可能となっています。
  • 売り上げ・ビジネスモデルは、「製品」と「保守・使用権」とで分けています。製品とは、私たちの主力商品であるCAD(Computer Aided Design:コンピュータ・エイデッド・デザイン)ソフトの物販での売り上げです。CADは、コンピュータを使って図面を描くソフトです。製品は物販として、購入していただく販売方法をとっています。製品の売り上げ45.9%とは、主にCADの物販での売り上げになります。 保守・使用権の51.6%、71億3,100万円は、リカーリングのレベニューで、年間で継続的に売り上げが維持できる、継続使用の保守料金・使用権の売り上げです。連結売上高の半分以上が安定的な売り上げで、大きく変動することなく、順調に伸びるビジネスモデルです。
  • 2022年度と2023年度の売上高、ARR、営業利益、経常利益、当期純利益、ROSを比較する中で、私たちが一番重視している指標はARRです。ARRとはストック売り上げ(使用権、保守サービス売り上げ)における年間定期収益となります。2023年度のARRは71億2,600万円でした。これがリカーリングレベニューで、継続的な売り上げになるわれわれの基盤の数字です。今期もストックビジネスを増やすことで、より安定性を増して、未来投資をして、新しい製品開発をし、新しいビジネスを立ち上げる考えです。営業利益、経常利益、当期純利益も、前期まで順調です。
  • 当社の営業経費は、人件費が7割を占めています。私たちはソフトウエア会社です。人が企画・開発して、人が販売します。人手が必要です。そのため、採用やエンゲージメントの向上などが大きな要素になります。また、社員が新技術を学ぶことも大きな要素です。人が全てといってもいい。昨年、大幅なベースアップを行い、初任給の引き上げやエンゲージメント強化を図っています。
  • 当社の直近の売り上げと足元業績について、当期のARRも第1クオーターまでの進捗(しんちょく)は順調に推移しています。売り上げは、選挙ビジネスのITソリューション事業で少しばらつきがあったため、全体の売上高は少しマイナスになっています。しかし、メインのシステム販売は順調です。
  • 中期経営戦略について。当社は建設業向けのシステム開発・販売が主となっており、建設業の調査、設計、施工、維持管理の全てのライフサイクルを網羅しています。しかし、建設業は人手不足や担い手不足、高齢化の問題があり、これを新たなIT技術で補う必要があります。今、毎日、新聞で、AIやメタバース、クラウドなどの用語を見かけると思います。私たちもそれらに新たに取り組み、それを建設業者向けにアレンジして提供する、新しいソリューションを身に付ける必要があると思っています。第2期 中期経営計画は今年度で終了し、来年から第3期に入ります。
  • 第3期中期経営計画では、将来投資に大きなウエートを置いています。そのため、昨年、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を組成しました。「IFAC合同会社」という社名です。ここで建設テックやスタートアップに投資を行い、共同開発などでシナジーを起こすことに取り組んでいます。私たちが自前で開発すると時間がかかります。また、建設テックやスタートアップには新しいアイデア、新しい技術がありますが、彼らには顧客基盤がないことや資本的な悩みがあります。それを双方で補い合いながら、建設業に新たにDXを提供します。当社のCVC活動により、こうした流れをつくることを考えています。
  • イノベーティブ挑戦や事業持続性に向けた人材への投資を行います。給与面、待遇面だけではなく、挑戦志向や新たな教育、人材投資・人的投資にも取り組みます。これを計画の大きなテーマにしています。
  • 事業拡大を先導するためのR&D投資をして、利益水準の5%程度を許容しています。IT企業として、例えばメタバースやAI、クラウドなど新しい技術に対して、利益水準の5%程度を目安にして、投資を行います。今後は、さらに増やす予定です。大きく投資をしながら、新しい技術に積極的に取り組む方針です。
  • IFAC合同会社では、既に何社かの企業支援の実績があります。当社の事業とシナジーがある会社ばかりです。
  • 今期の業績は、底堅く予想しています。今、建設業は、住宅の着工戸数のブレーキがかかっています。また、人手不足により、施工量が担保できず、建設の完工売上高がなかなか伸びない状況があります。その中で、われわれは微増ながら成長計画を立てていますが、外的環境が厳しいことを受け、堅めの業績予測としています。
  • 配当は投資家の皆さま方にアピールしたい点です。配当政策、利益還元姿勢は、配当性向30〜40%程度と考えています。建設業は斜陽産業といわれていたりいろいろな問題を抱えていたりします。しかし、それに左右されることなく、安定的かつ継続的な配当を実施することで、長期にわたって私たちとお付き合いいただければと思い、計画的な配当、還元姿勢を打ち出しています。2022年は60円、2023年は65円、2024年は70円の予定です。このように積み増しする政策を重視しています。
  • 資料の付論は、専門的な言葉の補足となる内容です。お時間あればご覧いただけますと幸いです。

 

4.質疑応答

Q1. 昨年あたりから、建設業の2024年問題が大きくクローズアップされていますが、御社に何か影響はありましたか。

A1. 建設業の2024年問題とは、簡単に言うと、残業規制、働き方改革です。「時間外労働の上限規制」の猶予期間が終了し、建設業も週休2日を目指し、残業が制限されることになります。この影響で、昨年、駆け込みで、例えばCADのライセンスを増設する商談が多く発生しました。つまり、建設業者は就業時間内の生産性を上げるために、システム投資など必要な投資を昨年のうちに行い、2024年から国が主導する残業時間をしっかり守る体制にしたのだと思います。大手になればなるほど、公共工事の入札等でペナルティーが課せられることがあるため、スムーズに取り組む姿勢になり、それがわれわれにとって追い風になりました。

 

Q2. 2024年中に衆議院議員選挙が行われる可能性があります。今期の業績予想は、この点を見込んだ数字になっているのでしょうか。

A2. 今、総裁選が話題になっていますが、その後には解散総選挙があるといわれています。私どもは、参議院議員選挙や統一地方選などの固定されている選挙は、考慮していますが、解散総選挙は予定が読みにくいため、今期の業績予測には入れていません。

 

Q3. 2025年4月から始まる「4号特例の見直し」は、御社にどのような影響があるのでしょうか。

A3. 「4号特例」とは、建築士が設計する建物は信頼性があるため、検査を免除する制度です。しかし、ここ最近の耐震性の問題から、より厳格に確認することになるのが、「4号特例の見直し」で、2025年4月から施行予定です。建築確認申請する際に、必要な添付書類や計算が増えることになります。これは当社にとって追い風になっています。今期第1クオーターの売り上げの中でも、建築確認申請で必要になる計算書に関するオプションソフトの売り上げの伸びが大きいです。この4号特例の見直しは、耐震性や省エネ性を細かく技術計算するオプションの売り上げの増加につながっています。

 

Q4. IT業界はどこもエンジニアの採用に苦慮していると聞きます。貴社の採用状況はどうですか。

A4. 最近は、当社のようなITベンダーだけではなく、一般的な企業もIT人材を求めています。例えば新しく情報システムの部署を新設するために、IT人材を大量採用することもあり、国内外で、IT人材が取り合いになっています。幸いにも、私ども福井コンピュータグループでは、主に東京や関西方面からのUターンの学生、特に理系の学生の中でIT志望の方は、ほとんどと言っていいくらい、選考の対象に私どもを入れていただいています。非常にありがたいことです。しかし、この2〜3年は、一部内定の辞退があり、厳しくなってきていると実感しています。 採用強化のために、駅前オフィスのVisionary Hub Fukuiでインターンや会社説明を実施予定です。魅力ある企業であることを、多く、分かりやすく発信し、人材の採用にプラスになるようにしていきたいと考えています。われわれもIT人材の取り合いの渦中にいます。一人勝ちしているわけではないですが、おかげさまで今のところ順調に採用できています。

 

Q5. 株式購入に当たっては、安定配当を重視しているので、貴社の配当維持および配当性向に対する考え方、方針を教えてください。

A5. 私どもは安定的かつ継続的な配当を実施するため、今までは配当性向30%程度の配当を毎年実施していました。ここ3年ぐらいは、配当政策のとおりに安定的に配当を出せています。30%程度という目安は、30〜40%の配当性向で、売り上げや利益によりある程度、幅を持たせたいと思っています。 しかし、建設業界は課題が大きく、斜陽産業ともいわれています。その中でわれわれは安定した成長をし、長期にわたって、私たちとお付き合いしていただくため、ボラタイルな形ではなく、安定的に配当することにより、投資家の皆さまに安心いただきたいと思っています。この方針は、今後も守っていきたいと考えています。また、配当性向30%程度は、多少上振れすることも、今後は考えていきたいと思っています。

 

以上

 

 

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