株式会社ツムラ(4540)
開催日:2017年11月18日
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:代表取締役社長 加藤 照和 氏

 

1.会社概要
・2018(平成30)年4月10日に当社は創業125周年を迎えます。旧社名は津村順天堂でしたが、現在は漢方の会社となり社名は株式会社ツムラです。
・当社は1893(明治26)年に津村順天堂として創業しました。創業者は津村重(じゅう)舎(しゃ)(初代,1871〜1941)です。故郷の奈良県から婦人薬の中(チュウ)将(ジョウ)湯(トウ)を持って東京に出てきて、日本橋で事業を始めました。信念は、「良薬は必ず売れる」です。中将湯を近所に配ったところ評判が良かったため、「もっと世の中の多くの人に使ってもらいたい。良薬は必ず人の役に立ち、結果として売れる」という信念で事業を開始しました。
・伝統薬であった漢方の排斥など、明治、大正、昭和とさまざまな困難を乗り越え、1967(昭和42)年に厚生省が医療用漢方製剤を初めて医療用薬品として薬価収載され、1976年には多くの医療用漢方製剤が保険適用となりました。それ以降、保険適用の漢方製剤は多くの患者様に服用されています。
・当社の資本金は194億8,700万円(2017年3月末現在)、売上高は1,149億5,400万円(2017年3月期)です。なお入浴剤バスクリンは、2008年に独立し、別会社となっています。
・私は2012年に社長に就任して以来、当社の基本的な考え方、理念に基づく経営を実現しています。経営理念は「自然と健康を科学する」で、ツムラグループが追い求めていくべき不変の基本的価値観です。自然も健康も科学で全てを解明できてはいませんが、漢方を有効かつ安全に使うため、できるかぎり解明をしていこうと考えています。
・企業使命は「漢方医学と西洋医学の融合により、世界で類のない最高の医療提供に貢献します」です。日本は、伝統医学である漢方医学と西洋医学を同じ医師が1つのライセンスを併用して使える唯一の国です。日本の国民は両方の良いところ取りができる環境にあります。当社はその一角でしっかりと役割を果たしていきたいと考えています。経営理念と企業使命を基本に経営上の意思決定をし、事業を行う拠りどころにしています。
・現在、当社は、薬価基準に収載され健康保険に適用されている漢方製剤を129品目販売しています。その129品目を製造するために119種類の生薬を取り扱っています。
・売上比率の95.4%が医療用漢方製剤です。基本的には医師が診断して、その患者様に合う漢方薬の処方箋を書き、それを調剤薬局で調剤する形で使われる処方箋薬となります。
・2017年3月期の売上高は1,149億円です。一般用医薬品は売上全体の2.3%と少ないのですが、ここ数年は売上は増えており、増加傾向にあります。当社は一般用の医薬品を販売するよりも、薬剤師に相談できる薬局を中心に展開し、拡大をしています。

 

2.漢方について
・中国起源の医学が奈良時代に日本へ入り、江戸時代に集大成されたのが漢方医学です。また、江戸時代にオランダから入った蘭学のうち、医学は「蘭(らん)方(ぽう)」と呼ばれ、これと区別するため、伝統医学を「漢方」と呼んだのがその名の由来と言われています。
・漢方は古典に則り生薬を配合しています。約1800年前に後(ご)漢(かん)で編纂された『傷(しょう)寒(かん)論(ろん)』は中国医学の古典です。当社は現代の製造技術と品質管理レベルで、その記述通りにエキス顆粒にしています。
・合成薬は有効成分を抽出し単一成分を合成してつくる薬です。一方、漢方薬は自然界にある植物が原料です。葛根湯は7つの生薬が入り、多くの成分が含まれています。合成薬は単一成分、漢方薬は混合成分かつ多成分であることが特徴です。
・漢方薬には、葛根湯以外にも多くの風邪薬があります。漢方は体質や症状に合わせて使用します。体調や胃の丈夫さ等を考えながら医師が患者様に合ったものを処方します。「同病異治」、「異病同治」と言い、同じ病気であっても人によって違う薬を使う場合があります。

 

3.漢方薬の市場について
・日本の医療用医薬品は薬価ベースで約10兆円規模です。漢方製剤は1,481億円規模で、全体の1.3%程度です。その中で当社は8割以上のシェアを占めています。
・当社の医療用漢方製剤の出荷本数は1999年度(2000年3月期)から伸長し、2016年度はその3倍以上の量を出荷・販売しました。
・現在、医師の9割近くの方が漢方を処方した経験があるという調査結果があります。医師が漢方を使う理由の上位は、「西洋薬では効果のない症例で漢方が有効」(56.6%)、「患者の要望」(42.8%)、「エビデンス(科学的根拠)が学会などで報告された」(34.1%)となっています。
・大学生のうちに漢方医学教育を受け、研修医の臨床研修指定病院でも漢方を処方する経験をし、さらに勤務医・開業医になった後も必要に応じて漢方を勉強する機会が提供されています。当社も漢方医学教育を支援し、文部科学省も「医学教育モデル・コア・カリキュラム」を作成しています。漢方の勉強を学生時代から行ってきた医師が増えてきた影響もあり、多くの患者様に漢方が使用される機会が増えています。

 

4.成長戦略
・当社は長期経営ビジョン(2021年ビジョン)に基づき経営しています。現在、第2期中期経営計画(2016-2018年度)の2年目となり、「“漢方”のイノベーションによる新たな価値の創造」をテーマとして取り組んでいます。
・戦略課題の1つ目は、「漢方市場の拡大と安定成長」です。漢方は多成分なので、新薬と同じ方法でエビデンスを創出することが困難です。当社は、高齢者、がん支持療法、女性の3つの領域でエビデンスを集積しています。がん支持療法の領域では、抗がん剤の副作用軽減や、術後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めるために漢方薬が使われています。また女性疾患に特有な病気に対しても使われる傾向があります。
・3つの領域のなかで「育薬」(医療ニーズの高い領域において新薬治療で難渋している疾患で、医療用漢方製剤が特異的に効果を発揮する疾患に的を絞り、エビデンスを確立すること) 5処方と「Growing」(育薬に続く戦略処方として、治療満足度や薬剤貢献度の低い領域でのエビデンス構築〈安全性・有効性データ等〉により診療ガイドライン掲載を目指すもの)5処方、合計10処方を成長ドライバーとしています。
・戦略課題の2つ目は、「収益力の継続強化とキャッシュ・フローの最大化」です。原価をいかに下げるか、原料の生薬の値上がりをいかにコントロールするかが課題です。
・生薬の調達地は、現在中国が約80%、日本は約15%ですが、国内でも栽培拠点を拡大強化しています。当社はいかに安全なもの、有効なものを調達するかを考えています。また、トレーサビリティについては、いま飲んでいる漢方薬がどこでどのような管理のもとで作られたかがわかる仕組みを取り入れています。
・当社管理のもと、品質・数量・価格において安定的・計画的に調達できる栽培拠点である「自社管理圃場」を少しずつ増やしています。
・漢方製剤の製造プラントは、近代的な大規模設備であり、ロボットなどの最新技術も導入されています。
・戦略課題の3つ目は「中国における新規ビジネスへの挑戦」です。当社は原料生薬の約80%を中国に依存しています。当然、日本と同じ最新鋭の分析機器あるいは品質管理システムで、合格品のみを使用して調達をしています。中国からの調達はすでに40年近く行っていて、現在、中国の社員は約900名です。今後、当社技術を活用して、中国におけるニーズに応じた医薬品を製造することも考えています。
・中国は日本のように伝統薬が排斥された歴史がなく、生薬を細かく刻んだものを合わせて土瓶や鍋で煮出して飲む習慣があります。当社は飲片(刻み生薬)事業にも参入しています。

 

5.配当政策および株主還元策
・当社の株主還元の基本方針は安定配当です。2017年度(2018年3月期)第2四半期の決算発表を11月8日に行いました。
・2017年度中間配当は1株あたり32円で実施しています。期末配当も32円、年間では64円配当を予想しています。計画通りの利益であれば、配当性向は36.4%です。
・当社は株主優待制度を導入しています。保有株式・保有年数に応じて「くすり湯バスハーブ」を贈呈しています。くすり湯は、生薬のエキスを100%抽出したもので、他の入浴剤に比べて、体の温まり具合、湯冷めのしにくさを体感できる根強い人気商品です。
 
6.質疑応答
Q1.シェアが高いですが、他社が漢方薬に新たに参入する可能性はありますか。また同業他社と比較し、貴社が優位に立つとお考えになる点を教えてください。
A1.現行の承認申請のルールでは、新しい漢方製剤の承認は難しい状況であり、参入障壁となっています。当社が有利な点は、健康保険が適用されている漢方製剤148品目のうち129品目が承認されていることです。医療用漢方製剤の市場で当社は8割以上のシェアがあり、販売している処方数の多さも当社の特長です。生薬の調達ルートがしっかりしている点も強みで、約40年前から中国と良好な関係を維持しています。また、効率の高い生産設備、製剤技術も自社で開発しています。さらにMR(Medical Representive=医薬情報担当者)の人数、充実した臨床データの情報量なども、当社の強みになっています。

 

Q2.OTC(一般用医薬品)のシェアが低いですが、OTCの販売には力を入れないのですか。OTCやサプリメント(食品)のような形で展開したほうが早く販売できるし、広く受け入れられるのではないですか。
A2.日本の漢方を未来永劫発展させていくためには、科学的な解明とエビデンスの構築を行っていかなければなりません。これは、医療用医薬品として医師が処方し、その後、情報を蓄積していかなければ構築することができません。基本的には、医療用漢方製剤を中心に発展させて、一般用医薬品は相談薬局、相談漢方で患者様に合ったものを相談しながら推奨して購入をすすめていく方針です。ここ数年は一般用医薬品市場が拡大して2割程度伸びています。OTCを行わないわけではありませんが、当社が求められる使命や優先順位、当社の考え方に合致した施策の中で、着実に拡大していきたいと考えています。

 

Q3.貴社にとって現状で考えられるリスクは何だとお考えですか。
A3.リスクは生薬、薬価、為替の3つです。
1つ目は原料となる生薬の調達です。調達できなくなることはないと思いますが、地震や洪水・旱魃等の天災、または価格が上昇することで調達が悪化する可能性があります。これらに対しては、収穫率が悪くても困らないように約2年分の在庫を持っています。さらに中国でも日本でも収穫できるよう産地を複線化しています。例えば、柴(サイ)胡(コ)は、熊本の他、高知や群馬でも栽培し、台風等である地域の生薬が収穫できなくても別のところから調達できるようにしています。
2つ目は薬価です。薬価は2年に1回、下がっていく傾向にあります。1日の薬価が平均100円ですので、ジェネリックと比較しても高い水準にはありません。薬の価値としてこれ以上安くする必要性があるのかを議論し、業界団体としては「漢方の将来ビジョン研究会」を立ち上げ、手を打っていきたいと考えています。
3つ目は為替です。生薬のエキスは中国からの輸入が多く、基本的に輸出はないため、輸入型産業です。円安になれば、結果として購入価格に反映される傾向にあります。為替に関しては、会計上認められている方法で為替予約を実施したり、あるいは生薬の価格が安い時に在庫を蓄え、高い時は少し見送るなどタイミングをみてヘッジしています。その他のリスクとしては、漢方も薬ですから副作用が出るという問題もあります。

 

Q4.生薬調達は中国が8割を占めているとのことですが、そのリスクはありませんか。国産化にも取り組んでいますか。
A4.現在国産化に取り組みは、北海道から九州まで拠点があり、それぞれで栽培面積を拡大しています。緯度から考えても全てを日本で栽培することは困難です。土壌・気候が合って日本国内で栽培できるものは、できれば日本で調達したいと考えています。生薬の川(セン)芎(キュウ)は、北海道や岩手等で生産し100%日本産になりました。また、当(トウ)帰(キ)は大和当帰、柴胡は三島柴胡、川芎は和川芎があり、日本古来の生薬です。中国とは40年近く、信頼関係をもって取引を行っています。今後も良好な関係の中で、中国と取引をしながら国産品を増やしていきたいと考えています。

 

Q5.西洋薬に比べて漢方薬のメリットはどのようなものがありますか。
A5.西洋薬・漢方薬ともに良い点があります。西洋薬は効き目がシャープな点、若干副作用もあります。漢方は原料が生薬であり、ほとんど植物からできていて合成物ではありません。漢方医学は、病気の一面、原因部分だけではなく、人間全体を見ながら全人的な医療を行います。できるだけ人間本来が持っている力を引き出し、もとの良い状態に戻しながら治療をします。漢方は慢性的な疾患等にゆっくり効くイメージがあるかもしれませんが、『傷寒論』は急性期のものが多いです。足がつった時、こむら返りの時に飲む芍(シャク)薬(ヤク)甘(カン)草(ゾウ)湯(トウ)は即効性のある漢方薬の一つです。早く効くものとゆっくり慢性的な疾患に使うものと両方があります。複数の成分が入り、様々なところに作用しながら体全体を良い方向に持っていく考え方が、漢方の最大の特長だと思います。もう1つは、病態の捉え方の違いです。西洋医学は病名投与ですから、病気病名が決まらないと薬を出せません。ところが、漢方は症状で見ます。典型的なものは未病と言われるものです。まだ病名がつけられないけれども、体の不調を訴える事態がある、病気の一歩手前かもしれない状態も治療範囲になります。漢方的な診断をすることで病状を捉え、症状に対して薬を出して治療をすることができます。これが漢方の大きな特長です。西洋医学では病気そのものに効き目のある薬を出しますが、その薬で胃腸が荒れてしまうときには胃薬を出します。どうしても薬を追加していく方向になりますが、漢方の場合は多成分のため比較的少ない薬剤数で治療できる場合がある点も特長だと思います。いずれにしても一長一短があるため、最終的には医師の判断で適切に治療していただくことになります。最近、西洋薬・漢方薬の両方の良いところ取りで併用して使い、治療効果を上げる方法が出てきています。これは、患者様の立場からもメリットがあるのではないかと思います。

 

Q6.漢方薬によるがんなどの治療について、どのくらい浸透していますか。免疫療法や代替治療、代替の療法など漢方の道は広いと思いますが、病院での使用範囲は広まっていますか。
A6.がんは深刻な病気なので、基本的に漢方だけでがんそのものを治療することは、現在の時点ではありません。抗がん剤治療は大変な副作用が出て、末梢神経がしびれ、口内炎がたくさんできて物も食べられなくなることもあります。漢方薬で抗がん剤の副作用を軽減するものがあります。末梢神経のしびれには牛(ゴ)車(シャ)腎(ジン)気(キ)丸(ガン)、口内炎治療には半(ハン)夏(ゲ)瀉(シャ)心(シン)湯(トウ)が使われています。また、漢方独特の考え方ですが、補剤といって人間が持つ免疫力を上げていく、気力を充実させていくものもあります。補(ホ)中(チュウ)益(エッ)気(キ)湯(トウ)や十(ジュウ)全(ゼン)大(タイ)補(ホ)湯(トウ)、人(ニン)参(ジン)養(ヨウ)栄(エイ)湯(トウ)は、体のもともとのベースを少し上げていく薬で、体力をつけて治療を継続することもできます。抗がん剤治療や化学療法では食欲が全くなくなるケースがありますが、食欲亢進ホルモンを出す六(リッ)君(クン)子(シ)湯(トウ)を使って、食事ができるようにして体力をつけて治療を継続します。漢方薬は、がんの領域では支持療法で副作用の軽減、並びに術後の予後の回復を早くする補剤を中心に使われています。

 

Q7.売上は順調だが配当が固定されている。いま株価が高いので配当性向が悪いのではないですか。配当性向については数値目標を設定していますか。
A7.基本的には安定配当を行うことを考えています。配当性向を固定して配当を上げたり下げたりする考えは持っていません。むしろ安定的な配当をして、配当性向30%は超えたいという目標はありますが、標準的な数値として配当性向は設定していません。中長期の利益水準、キャッシュ・フローも考えなければなりません。漢方はまだ成長できる余知がありますので、成長投資、設備投資と研究開発投資、それから生薬で一部野生品を栽培品に切り替える研究もしています。それらに投資をする流れの中で、できるだけ株主還元は安定的にしていきたいと考えています。2016年は自社株買いを行いました。株価が少し上がったので配当利回りとキャピタルゲインの両方を見ていただくことになると思います。

 

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