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[0198] 2003年11月7日 印刷専用はこちら
注目を集める「社会的‘無’責任投資ファンド」
〜「悪徳ファンド」は市場パフォーマンスを上回る〜
 2002年8月末、米テキサス州ダラスで設定された「悪徳ファンド」が、市場インデックスを上回る良好なパフォーマンスを示し、市場関係者から注目されている。今年8月には、同じアイデアが、大西洋を超えて英国シティに持ち込まれた。証券ブローカー、ウイリス・オウエンが同様のファンドを企画していると大きく報道された。

 中には、市場に道徳をもち込む運用を「愚かだ」とする悪徳ファンドは、SRI(社会的責任投資)が定着した現在を逆照射しているという議論も登場し、SRIファンドが理念ばかりでなく、運用パフォーマンスでも投資家を満足させなければならない時代を迎えたようだ。「悪徳ファンド」の登場と、その波紋を追う。

▼2002年8月、テキサス州ダラス「悪徳ファンド」の出発
 ⇒投資対象:アルコール、タバコ、ギャンブル、武器製造が主体
 ⇒「アメリカ資本主義を究極のプリズムで捉える」

 2002年8月30日、米国テキサス州ダラスの「悪徳ファンド(Vice Fund)」が設定された。それから2カ月後の10月3日、「強欲に悪徳ファンド」と題した記事(http://www.tompaine.com/feature2.cfm/ID/6482)がリポートする。「企業幹部の腐敗行為が毎日のように暴露される企業スキャンダルの時代にあって、この(ファンドの)目論見書には最悪の悪夢が一杯詰まっている」と始まった。

 「悪徳ファンド」の創設者ダン・S・アレンス氏が記事の中でコメントする。「政治的には多くの場合、間違いだと考えられますが、こうした弱小の業種や商品は景気の好不調に関係なく、少なからぬ儲けを出してきたし、今後も続くでしょう。私はこうした業種をほぼ'景気後退安全銘柄'だと考えています」。アルコール、タバコ、ギャンブル、武器製造の4分野が投資の対象だ。

【表1】悪徳ファンド(VICE FUND)の概要


 記事が続ける。「ファンドの証券コードはVicex。ウェブサイトもあります。もし知りたければ、どうぞご自分で見つけてください。ここには掲載しないことにします」。記事のトーンは冷めている。「頭の冴えたアレンス氏はアメリカ資本主義を――道徳とはまったく無関係の――究極のプリズムを通して観察し、もし投資家として成功したいなら、悪徳と死は行くべき道だという結論に達したのです」。

 アレンス氏がふたたび登場する。「過去5年間、悪徳の分野に投資していたならS&P500に投資した場合の5倍は儲かったでしょう」。運用対象はアンホイザー・ブッシュ、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)、ロッキード・マーティン、ハラーズ、アメリスター・カジノ、カンパニア・デ・ベディダスなど。記事は続ける。「アレンス氏は、最も富める人たちに最高の商品を用意するアメリカ資本主義の新しいマントラを追い求めているのだ。さほど金もない人が、ファンドの投資する悪徳には陥り、ホームレスとなり、貧乏になり、死亡しても、それは市場の効率の証明だというわけだ」。

 そして、こうも言う。「アレンス氏が設定したファンドの目論見書のどこにも、投資対象として売春に言及はない」「街角のヘロイン業者や、コロンビアの麻薬カルテルも市場に登場せず、不法な麻薬市場という新興部門もない」。これでは、このファンドはいちばん儲かる「悪徳分野」のチャンスを失っているのではないか、と。

▼米大手テレビABC放送:
 ⇒「悪徳株式が市場を上回る運用成果を挙げる」
  「市場に道徳はいらない」(アレンス氏)
  「金銭が投資家にとって唯一の目的であってはならない」(ドミニ氏)

 4日後の10月7日、米大手テレビABC放送のニュース番組(http://printerfriendly.abcnews.com/printerfriendly/Print?fetchFromGLUE=true&GLUEService=ABCNewsComM)が「いわゆる悪徳株式が市場を上回る運用成果を挙げている」と報道した。ABC放送はこう切り出した。「投資家によっては、アルコール販売業者など悪徳株式に自分の資金を運用したくない投資家もいる。こうした投資家はいわゆる社会的に責任ある企業に投資したいとするだろう。しかし、市場の現実は、悪徳株式が十分に引き合うことを示している」。

 前出のアレンス氏の発言を交えながら、番組は「悪徳ファンド」の4つのセクターを紹介した。

@ギャンブル:経済の低迷にも関わらずカジノはブームが続いている。 
A防衛:「この世界にはいつも戦争が行われています。その戦争は主に米国製の兵器が使われています」(ダン・S・アレンス氏) 
Bアルコール:「世界史の記録を見る限り、人々は酒をいつも飲み続けています。飲酒には責任が伴うべきですが、投資をするには、もってこいの業界です」(同)Cタバコ:「タバコがいいと思うかと問われてもですね――。いいとは思いませんが、それを判断するのは私ではないので――。紙巻タバコやシガーを買い求める人がいても、その当否はその人の問題です」(同)

 ここで番組に、アレンス氏と対極に位置する人物が登場した。12億ドルの社会的責任投資ファンドを運用するエイミー・ドミニ氏だ。最も著名なSRI活動家の1人で、その主張は『社会的責任投資』(木鐸社2002年、原書は2001年に出版)に明らかだ。ドミニ氏は、社会的責任の基準を投資決定に活かすことがかえって投資のパフォーマンスを高めると説いた。その大まかなポイントは、次の4つにまとまるだろう。@SRI評価は、通常の証券アナリストの分析で見過ごしかねない企業の側面にアプローチできる。Aその指摘で投資リスクの問題を的確に把握できる。B企業が問題解決に示す対応は、経営力を市場に明示することに直結する。CSRIの視点とアプローチは、投資リスクを軽減することにつながる。

 そのドミニ氏が口を開く。「(資金運用で)利益を上げるのを拒むべき業種がいくつかあります」「3つの業種は自家中毒に関連しており、犠牲者は、多くの場合、乱用している当人ではなく、その家族なのです」。アレンス氏が反論する。こうした投資は「馬鹿げている」。ABC放送のコメントが入る。「アレンス氏が議論に持ち出すのは、過去5年間に『悪徳ファンド』は53%も運用成果が上がったのに対し、S&P500は12%、ドミニの社会的責任インデックスの上昇は5%しかないという数字です。しかし、ドミニ氏は金銭が投資家にとって唯一の目的であってはならないと断言しています。『社会的責任投資は、投資する方法が重要な問題で――、私たちの投資が、子どもたちがこれから成長する世界を決定するのです』とドミニ氏は語っています」。

 アレンス氏の反論が続く。「いわゆる社会的責任投資が必要と思う人なら、安心した気分で満足も味わえるでしょう。それはそれで、こうした人にとっては正しい投資ではあります」「私は投資は金もうけのためにするべきだと思うのです。もし(道義で投資を行う)金があるのなら、高邁な道義に寄付すべきです」「しかし、こういったからといって、私に道義が全然ないというわけではありません。実際、この悪徳ファンドの目論見書も――マティーニのグラスと紙巻タバコのロゴ入り――リサイクル・ペーパーに印刷しています」「投資決定の時は、ジンとベルモットのカクテル(マティーニ)をつくるように、モラルと金銭をミックスしたりしません」。

▼「悪徳ファンド」:2003年当初から13.02%の運用成績
 ⇒ダウ工業株30種平均(11.89%)を上回る

 「悪徳ファンド」のパフォーマンスに注目が集まった。「悪徳ファンド」は2003年当初から8月27日までの運用成績が13.02%。この数字は、ダウ工業株30種平均の11.89%を上回る(http://dallas.bizjournals.com/dallas/stories/2003/09/08/newscolumn6.html?t=printable)。手数料無し(ノーロード)の「悪徳ファンド」の総額は600万ドル(約6億6000万円、1ドル=約110円)。数千人の個人投資家が出資しているという。

 当のアレンス氏は「手堅い運用成績だ」と胸を張る。ポートフォリオにアンホイザー・ブッシュ、アルトリア・グループ(フィリップ・モリスの別称)、ロッキード・マーティン、ハラズ・エンターテイメントが並ぶ。ファンドを設定した当初とほぼ変わらない。「投資対象の企業業績が第1で、ファンドは売買の回転率を低くしている。そのためポートフォリオから外したのは10社に満たない」(アレンス氏)。

 「悪徳ファンド」のモラルを問う質問に、アレンス氏がこう指摘している。「アンホイザー・ブッシュは世界最大のリサイクル業者の1つです。防衛産業は低公害燃料セルのような新たなテクノロジーの開発リーダーです。(私どものファンドは)何も悪事を行なっている企業に好んで投資をしようというのではありません。むしろ、その反対でしょう。こうした企業を社会的なモラルを理由に除外するのは偽善的だと思います」。

▼ロンドンに類似ファンドが登場か(2003年8月)!? ⇒英国で最初の「社会的無責任投資ファンド」
 ⇒FTSE4Goodに対する反対軸の可能性

 その頃、大西洋を越えたロンドンで「悪徳ファンド」の類似ファンドが企画されていた。もはや、事はテキサス州ダラスの小事で収まらない成り行きだ。

 8月26日、英BBC放送が「英国ブローカー、'悪徳'ファンド設定へ」(http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/3182365.stm)と報じた。「証券ブローカー、ウイリス・オウエンは、道徳的投資を推進する人たちが敬遠する企業に運用対象を絞った'悪徳'ファンドを設定する計画を明らかにした」というのだ。「このファンドは、賭け事、アルコール、タバコ製造など、景気後退時に業績が安定し、好景気時には上昇する企業の株式――'景気変動から明らかに独立した'株式に資金を集中投入します」。ウイリス・オウエンのクラヴァン氏は「政治的には正しくないのかもしれませんが、皆さんがご存知のように、セックスやドラッグ、ロックンロールの売れ行きはいいのです」と番組で語った。

 BBC放送は、「この悪徳ファンドは数週間後に設定され運用が始まる。すでに米国に小さなベンチャーがあり、これに倣ったものだ。このファンドは昨年設定されて以来、S&P500インデックスの投資リターンの2倍を記録した」と語り、こう続けた。「ファンドは、1980年代に人気があったカジノやアルコール、タバコなどに投資運用を特化した、いわゆる'レジャー・ファンド'の一面もある。レジャー・ファンドは、その後、健康や環境問題に対する懸念が高まり、その人気を失った」「実現すれば、このファンドは英国で最初の『社会的無責任投資ファンド』となる。いま流行のFTSE4Goodといった株式インデックスで道徳的投資を推進する人たちにとって、反対軸になる」と指摘した。

▼「悪徳ファンド」は「道徳ファンド」に対する報復(英国BBC放送)

 翌日、8月27日のラジオ放送BBC3の「7時のニュース」が、「私の経験では、悪徳のない人はまず美徳も持ち合わせていない」(http://www.bbc.co.uk/bbcthree/news/7oclocknews/features/vice_270803.shtml)と続ける。「ダラスのファンドマネジャー、ダン・アレンス氏が考案した「悪徳ファンド」は現在市場に出回っている多くの「道徳ファンド」に対する大胆な報復措置で、現行の道徳ファンドは投資としてはさほど優れた運用成果を収めていないと指摘した。「悪徳ファンド」を英国に持ち込もうとしているウイリス・オウエンの担当者が「株式市場が不明なときは、酒やカジノ、兵器関係に投資をシフトするのが得策だ」と語る。番組は、続けて「悪徳ファンド」のホームページの記載と対比し、各分野ごとに英国の実情をコメントした。

○タバコ。「好景気でも不景気でも、テロや企業スキャンダルの不安、それに健康の不安があっても、そんなことに関係なく人はタバコをすい続けている」(vicefund.com)。「紙巻タバコは受け入れられる悪徳です。景気に関係なく利益が上がっています。若干のリスクがあるとすれば、米国での訴訟リスクです」(ウイリス・オウエンのリチャード・クラヴァン氏)。道徳的な問題はどうか。英国では5分間ごとに喫煙に関係した病気で死亡者が出ている。

○アルコール。「景気に関係なく人は酒を飲む」(vicefund.com)。「景気の後退時でも、こうした企業の財務上の問題は見られない」(株式ブローカーのジャスティン・スチュワート氏)。道徳的な問題はどうか。英国では年間2万8000人がアルコールが原因で死亡し、世界では200万人に達する。酒造会社や種類販売業者は英国の青年や若年層に行きすぎた飲酒を勧めていると非難の対象になっている。

【表2】「悪徳ファンド」(vicefund.com)のコメントと英国の現状


○ギャンブル。「ギャンブルは避けられない。ギャンブルを擁護する人、反対する人の言動は問題ではない。ギャンブルは多くの人が行なう現実の行為であり、認められている」(vicefund.com)。道徳的な問題点。おそらく飲酒や喫煙ほど悪くはない。が、世界各地にカジノで借金を負った人々が増大している事実もある。

○ポルノ。vicefund.comに言及はない。財務上の業績は、ウイリス・オウエンのリチャード・クラヴァンによると最も大きな業界だろうという。道徳的な問題点は何か。地元の新聞販売ショップの一番上の棚を見れば、英国の可能性はすぐ分かる。(注:英国の新聞販売ショップで、ポルノ雑誌は通例いちばん上の棚に置かれている)。

○兵器。「アフガニスタン、イラク、北朝鮮。これで防衛関連株式を信じるに十分です。完璧な世界なら、こうした産業が存在する必要はないかもしれませんが、完璧な世界が実現するまでは、こうした株式を保有したいと思います」(vicefund.com)。財務的な業績で言うと、兵器関連業界は株式市場の変動を乗り切る、いい投資だ。防衛関連の支出は今後も確実だし、継続にある。道徳的な問題については、戦争や人の死から利益を得ることになるのか、それとも正直な人が祖国を守るのを助けることになるか。判断は皆さんの手にある。

▼欧州のSRI:セルサイドに浸透 SRIベスト証券会社:
 HSBC証券、ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン

 閑話休題。調査会社トムソン・エクステルと英国社会投資フォーラム(UKSIF)は、今年3月24日から5月24日の2カ月をかけて、SRIに関する調査を行った。欧州の主要な資産運用会社105社から得た回答(http://www.uksif.org/Z/Z/Z/lib/2003/07/11-press-awards/index.shtml)は、@SRI関連の情報に対する市場関係者の関心が高いこと、A90%の資産運用会社が今後SRI市場に対する需要は拡大するという見通しを明らかにした。

 UKSIFは「すべての重要な社会・環境・道徳の問題は標準的な投資実践の全体の一部として考えられなければならない、また個人投資家は投資に自らの価値観を反映することが可能であるべきだ」という主張の下に1991年に発足した。現在、SRIに関心のある個人投資家、機関投資家のファンドマネジャー、年金基金、フィナンシャル・アドバイザー、SRIリサーチの関係者、労働組合、NGO、個人など250あまりが会員を構成する。

 調査結果と同時に、UKSIF は「SRI分析リポートに関するベストブローカー証券会社」としてHSBC証券とドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン(DKBW)を選出した。UKSIFのヘレン・ワイルドスミス氏が言う。「SRIに関連したニュースや分析に対する証券ブローカーの分野でHSBCやドレスナー・クラインオート・ワッサースタインが占めるリーダー的な立場は誰の目にも明らかで、投資家の求めによく応じ、変化する市場のニーズに密着している」。同時にSRI総合分析に関するベストセルサイド・アナリストを、薬品、資本財、金属・鉱業の3部門から選出した。SRI関係でこうした表彰は初めての試みだった。

【表3】2003 年SRIのベスト証券会社/ベストアナリスト


 7月10日ロンドンで開催されたUKSIFのサマー・レセプションの席で、ベスト証券会社/ベストアナリスト賞はアスリア(ASrIA)会長テッサ・テナント氏から関係者に手渡された。テナント氏は「これほどまでにSRIはセルサイドの調査・分析に浸透し、過去10年間での英国の達成を示すものです」とコメントした。

 思い起こす読者もいるだろう。すでに英国では、2000年7月、企業年金に関して「社会的、環境的、倫理的な投資事項」に関する方針の提示が義務付けられている。それまでの「投資形態」「投資残高」「リスクおよびリターン」に加えて、新たに「議決権行使」と「SRIに関する方針」を記載することになったのだ。1988年に英国の投資顧問で同国初のエコファンドを立ち上げ、英政府の環境パネル委員や国連環境計画(UNEP)保険業界担当アドバイザーなどの役職を歴任したテナントASrIA会長が、この背景に3つの要因があるとする指摘(「英国エコファンド生みの親・テッサ・テナント氏語る・・SRI普及のNGO」日本証券新聞01年3月15日)を再録しよう。

 「1つは政府が"ソーシャル・マーケット"を興すために役立つメカニズムであるとして、SRIをサポートしていること。ブレア政権にはコーポレート・ガバナンスを推し進める活動家が政策ブレーンとして数多く入っている」「2つ目は、年金基金の受託者責任がSRIに関する方針を受容するものであることが明確になったこと」「法制化の前にはSRIが、収益の極大化のみを目的とする伝統的な受託者責任のあり方に抵触するとの意見もあり、混乱をきたしていた。ただ、英国には法制度が整う以前にも、ノッティンガム・カウンティー・カウンシル年金のように、銘柄選定のすべてをSRIで行う例がすでにあった」「3つ目は、長期運用という年金基金の性質にある」。今後34、5年にわたって年金の原資を積み立てる新規加入者の多くは「そもそも、将来の年金給付開始時に地球が現状のまま存続しているのだろうか」と考えるというわけだ。

 01年10月、英保険協会はSRIに関して、投資先企業に求める情報開示の指針を発表した。「同協会には英国だけでなくロンドンで活動する欧米の有力保険会社を含め約400社が所属」(「英保険協会、社会的責任投資で指針、開示要求項目を明示」日経金融新聞01年10月25日 )し、「英国株式市場の時価総額の2割強を支配するなど市場への発言力が大きい」(同)。

 こうしたSRIの歴史と展開を示す英国市場に、テキサス州発の「悪徳ファンド」が持ち込まれるというのだ。当然のこと、ロンドンの金融街シティを超える関心が集まった。

▼「悪徳ファンド」(テキサス州ダラス)
 ⇒年初来の運用成績で、S&Pやダウ工業株30種平均を上回る

 話をテキサス州ダラスに戻そう。10月7日、「悪徳ファンド」を設定し、運用しているミューチュアルズ・ドット・コム(MUTUALS.com, Inc.)が、9月30日現在の数字を引用して、「悪徳ファンドは引き合う。年初来の運用成績でS&P500とダウ工業株30種平均を上回った」と発表した(http://www.vicefund.com/docs/PressRelease10-7-03.pdf)。「年初来の運用成績は17.18%、S&Pの14.72%やダウジョーンズ工業30種の13.13%を上回りました」「この'社会的無責任'ファンドはアルコール、ゲーム、防衛産業といった悪徳株式に特化しています」。共同運用担当者のエリック・マクドナルドが言う。「景気に関係なく、人は酒を飲み、タバコを吸い、ギャンブルに興ずるニーズはあります。また常に防衛産業へのニーズも存在します。私どもの保有する株式の多くは2000年、2001年を通じて、ポジティブな投資リターンをもたらしてきました。とくに2002年は市場全体が下落した年でしたが――。私どもが2003年のS&Pやダウ工業株30種平均を上回る運用成績を残している事実は、このような業種が景気に左右されず、いかに底固いかをよく示しています」。

【表4】「悪徳ファンド」(VICE FUND)のポートフォリオ


 さらに10月末日現在の数字をみると(http://www.vicefund.com/fundfacts.html)、直近3カ月11.43% 、直近の6カ月25.98%年初来23.57%、直近の1年31.37% 、設定(2002年8月30日)以来13.66%だった。

 こうしたパフォーマンス数字を昨年12月31日の引け値を100として、ブルームバーグでトレースしてみる。【図1】が示している。数字に若干の差があってもたいした問題ではない。ポイントは、パフォーマンスが市場のインデックスを上回ると注目される「悪徳ファンド」が、必ずしもそうではないという点だ。

【図1】「悪徳ファンド」(VICE FUND)のパフォーマンス


【表5】「悪徳ファンド」(VICE FUND)のパフォーマンス


 英国エコノミスト誌(2003年11月1〜7日号)(http://www.economist.com/finance/displayStory.cfm?story_id=2177890)が、この「社会的無責任投資」を「政治的に間違って企業に行う投資の報酬」と取り上げ、その中で、「悪徳ファンド」を「道徳ファンド」に比較した。まずは好調なファンドを紹介する。「環境に健全な企業に投資するウインスロー・グリーン・グロース・ファンドは年初来のパフォーマンスは80.6%、カルバート・グループで最大の時価総額を誇るファンドは24.7%を記録している」。しかし、すべてこういう例ではない。「多くの道徳ファンドは市場に劣後している。環境や動物の権利にフレンドリーな企業に投資するIPS・ミレニアム・ファンドの年初来のパフォーマンスは9.2%にすぎない」「すぐれた運用成績を収めたSRIファンドには、ITテクノロジーやヘルス・ケアといったブームにのった株式に大きく依存して大きなリスクを取ったものもみられる」と指摘した。

 そしてこう続ける。「悪徳株式がリスクフリーというわけではない。米国ではタバコは集団訴訟に陥るかもしれず、そのためにR・J・レイノルズとブリティッシュ・アメリカン・タバコの米国事業は合併したし、紙巻タバコには重い税金が課せられているし、公共空間では喫煙が禁止される傾向が強い。ただ、ギャンブルは米国の一部の州では合法にはちがいない」。

 こんな事態を前にしても、アレンス氏は楽天的だ。この悪徳ファンドの考案者が発言する。「発展途上国での紙巻タバコの需要は大きく、米国のギャンブル事業も広く受け入れられている」と。「州が主催する宝くじもギャンブルでしょう。ラスベガスは、今ではファミリー・トリップの観光目的地です」「悪徳ファンドのポートフォリオで一番のアンホイザー・ブッシュは、世界最大の酒造会社だがたんなる飲料会社ではなく、世界最大のアルミニウム容器のリサイクル業者です。防衛産業は水素燃料テクノロジーの開発で先端を切っています」。

 結局、こうした論調は、道徳や倫理を投資ユニバースに採用するだけで市場の投資家を満足させる時代から、運用パフォーマンスがもっともっと求められる局面に到達したと言いたいのだろう。

▼ダン・アレンス氏「悪徳に投資する」出版へ(2004年2月)

 英エコノミストに登場した「悪徳ファンド」は、さらにもう1つの地点に到達する。2004年2月、ダン・アレンス氏が「悪徳に投資する:酒、賭け、爆弾、タバコで、不況乗り切りのポートフォリオ」というタイトルの書籍を出版する予定なのだ。すでにアマゾン・ドット・コムが予約を受け付けている(http://www.amazon.com/exec/obidos/search-handle-form/ref=s_sf_b_as/102-4026223-7490563)。

 ところで、証券ブローカー、ウイリス・オウエンが企画した英国版の「悪徳ファンド」はどうなったか。メールで問うてみた。同社の担当者が答えた。「残念ながら、その後の進展はありません」と。果たして、あれは「ひと夏のあらし」だったのだろうか――。


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米山徹幸 tetsu.yoneyama@daiwair.co.jp
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