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| [0107] 2002年1月18日 |
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| エンロンの「スペース・オペラ」は続く(エンロン第3報)
問われる経営責任・監査責任⇒SEC「新たな開示」を模索
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「引き金を引いたこの簿外取引には、『スター・ウォーズ』のキャラクターを思わせる名前の法人が登場する」(ニューズウィーク02年1月23日)。米企業史上最大の破綻(はたん)を招いたエンロン。そのスペースオペラ劇も第4幕が見えてきた。第1幕は昨年10月のエンロン・スキャンダルの勃発からダイナジーによる買収劇、その放棄、そしてエンロンの破産法11条申請まで。第2幕は、申請で紙クズとなった株券、社債が巻き起こした投信MMFの元本割れで、解約が相次いだ。第3幕。エンロンの監査法人アンダーセンが展開の中心だ。米証券取引委員会(SEC)や司法省に加えて、米国議会が登場する。事件に関する調査委員会と8つの小委員会が設けられ、上院のある小委員会はすでに51通の召喚状を事件関係者に出した。第4幕、いよいよブッシュ米大統領の出番だ。インサイダー取引疑惑、関係書類のシュレッダー断裁、電子メールの抹消と劇中劇も飛び出し、登場人物も多彩だ。このエンロン・オペラの結末が企業統治の環境や市場関係者に大きく影響し、今後のIR活動を左右するのは間違いない。
11月2日の第1報(No97「エンロン『第3四半期・収益説明会』にみる『開示不明トラブル』」)、同16日の第2報(No99「全米IR協会理事長トンプソン氏が語る:エンロン事件で問われる『透明性の価値』と『FD後のIR潮流』」)に続いて、「その後の展開」を追ってみる。初めての読者のために第1幕の概略からはじめよう。
▼第1幕1場:01年10月16日エンロンの「開示トラブル」
10月16日(火)第3四半期決算の発表で、エンロンのレイ会長の説明に「12億ドルの株主資本の減少」に「軽く触れる」一節があった(「エンロンの価値はどこにあったか」ニューヨーク・タイムズ紙 01年10月23日)。そんな数字は決算発表のプレスリリースに載っていない。なぜ損益計算書にない数字に触れたのか。
「12億ドルの株主資本の減額」の原因は何か。翌日、簿外金融取引に伴う損失に起因することが明らかになった。金融取引の相手はエンロンの最高財務責任者(CFO)ファストゥ氏が運営する投資会社と判明、一気にその取引や情報開示の適正さに関して問い合わせが殺到した。週が変わった22日(月)エンロンは米証券取引委員会(SEC)が'非公式'調査に乗り出している事実を公表した。23日(火)に再び、投資家向け説明会を開催した。「ファストゥ氏がエンロンの最高財務責任者で、かつ同時に社外のパートナーシップの運営責任者だとは、利害関係者間取引になるのではないか」「取引の実態は」「誰が取引を許してきたのか」など多くの疑問に答える機会が用意された。
【表1】エンロンの主な動き

この説明会で、レイ会長は改めてファストゥ氏の行為は「利益相反していない」と断言。「こうした利益相反の問題が生じないために開示を行ってきた」と語った。「役員会、弁護士、監査人も、ここには利害相反に対処するための方法を事前に用意し」「エンロンと投資組合の間で取引する場合は、極めて厳しい手続きを用意し」「社内にチャイニーズ・ウォールを構築し、株主を守っている」「投資組合との取引は'エンロンの最良利益'の場合のみ、成約した」と言うのだ。しかし、翌日24日(水)、エンロンは渦中のファストゥ氏を解任した、と発表した。31日SECはエンロンに対する調査を'公式'に切り替えた。
▼第1幕2場:ダイナジーが解消条項付き買収
すでに10月24日、米エネルギー大手ダイナジーのワトソン会長がエンロンのレイ会長に電話でコンタクトを始め、2週間のうちに買収交渉が決着した。11月9日、新会社名はダイナジーで、エンロン株1株に対し、ダイナジー株0.2685株の株式交換方式。この株式交換比率のエンロン算定基準株価は11.40ドルで、総額90億ドル。同時に、ダイナジーの大株主で石油大手のシェブロン・テキサコが全体で25億ドルの資本注入を行うスキームだった。さらに合計40億ドル超の銀行融資枠も設定され、融資幹事行のJPモルガン・チェースは「買収実現に向け、エンロンの財務強化に協力する」と表明した。
11月8日エンロンはSECに対して「97年から01年前半にかけての収益を訂正」する財務諸表をファイリングした。97−2000年の純利益を約6億ドル減額し、債務を25億9000万ドル上積みした。これをAP通信は「エンロン、収益の誇大表現」と報じた。翌日ニューヨーク・タイムズ紙は「エンロンは自社の数字を信用しているか」と書いた。ともあれ、SECに訂正ファイルにダイナジーの買収、これでエンロンの事態は収まるかに見えた。
しかし、株価の急落、債券格付けの下落の淵にエンロンは立たされていた。株価が一定水準を下回り、長期財務格付けが「投資不適格」になれば、金融取引で新たな債務返済の義務が生まれる可能性を決して否定できなかったからだ。ダイナジーはエンロンの追加損失が35億ドルを上回る場合、契約を解消できる条項を盛り込んだ。買収の実現に万が一の疑問を抱く向きに用意した保険だった。
株価は足速く動いた。00年12月29日83.125ドルで引けていた株価は、01年7月31日に45.35ドル、8月31日には34.99ドル、9月28日27.33ドルと、大きく反発することなく低落チャートを示した。第3四半期業績を発表した10月16日の引値は33.17ドル。それが24日に16.41ドル。一週間で半値に満たない水準に落ち込んだ。ダイナジー買収発表の前日11月8日の株価は8.41ドル。株式交換の算定基準株価11.40ドルを大きく下回っていた。3週間でほぼ75%近い下げを演じたのだから、この解消条項は当然だった。
▼第1幕3場:エンロン格下げ・株価急落⇒揺れるダイナジー買収契約
市場がエンロンの行く末に見切りをつけ始めていたのだろうか。関係者の不安が胸をよぎる。11月19日SECに提出したエンロン資料が、9月時点で、02年末までに返済期限を迎える長短債務の合計金額は約91億ドル、手元資金は20億ドルを割り込んでいると明らかにした。「株価」「格下げ」の2つの引き金をひく。エンロンはまさに窮地に立った。長期債務格付けが一段下の投資不適格に下がれば、新たに39億ドルの返済義務が発生する。
【表2】エンロンの株価(終値)― 上段:月日 下段:株価(j)

市場の力学は売りが圧倒した。「空売り」で儲ける投資家もいる。投資顧問会社「キニコス・アソシエイツ」を率いるジェームズ・シャノー社長もその1人だ。12月6日付中日新聞がウォールストリート紙の報道を次のように伝えた。
2000年12月。(略)エンロンの年間経営報告書をめくり始めた。
「当社役員が取引相手の関連投資会社の経営陣に入り…」。不正な簿外取引の可能性も示唆する一節にシャノー氏はアンダーラインを引いた。
「何かおかしなことをやっているのでは」。それでも多くの投資家は「着実に予想利益を達成してくる」エンロン株を買い上げ、株価は当時、80ドル超の高値に張り付いていた。
シャノー氏はエンロン株を推奨する何人かの同業者に次々電話をかけ、その理由を問いただした。返ってきた答えは皆同じで、「広帯域(ブロードバンド)通信ネットワークづくりへの積極的な取引戦略」だった。
しかし、シャノー氏は「エンロンのブロードバンド関連の設備が既に過剰投資状態にあり、今後の収益増は見込めない」と分析。将来性を見切った上で今年初めから、株価が下がるほどもうけが大きくなる「空売り」攻勢をエンロン株にかけた。
結局、エンロンの株価は1年で1ドル割れまで急降下。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、シャノー氏がこうして「まんまと巨利を手にした」と報じた。
(「核心 破綻の米エンロン 時価評価方式−簿外取引横行−損失が膨大に」01年12月6日中日新聞)
▼第1幕4場:長期債務の格付けを「投資不適格」に引き下げ
⇒ダイナジーのエンロン買収破棄・エンロン破綻
10月29日ムーディーズはエンロンの長期債格付けを「Baa1」から「Baa2」に格下げし、短期債務格付け「P2」とともに、今後の追加格下げの検討を発表した。株価が急落すると、とたんに簿外金融取引に伴う追加損失が発生した。その1つ投資ファンド「ホワイトウィング」との取引は、担保価値が下がるとエンロンがその分を損失処理するスキーム。すでに11月中旬までの株価下落で、10−12月期に一時損失が7億ドル(税引き前)の見込みだった。
【表3】S&P:エンロン長期自貨建発行体格付

11月9日、米格付け大手S&Pによる長期債務格付けも一段階(ノッチ)下げ、「トリプルBマイナス」となった。11月1日に続く1ノッチの下げだ。これで投資組合との契約上、早期返済義務が生じたと報道された。28日、S&Pはエンロンの長期債務の格付けを「投資不適格」Bマイナスと6ノッチも引き下げた。英系格付け会社フィッチもエンロン債の格付けを「BBBマイナス」から「CC」と、一気に10ノッチの格下げを発表した。
この日、ダイナジーは買収を破棄した。前日4.11ドルだった同社の株価はこの日0.61ドル。2日後の日曜日、12月2日エンロンは、ニューヨークの連邦破産裁判所に米連邦破産法11条(日本の会社更生法に相当する)の適用を申請した。経営破綻だ。売上高全米7位の巨大企業エンロングループ14社の総資産は約500億ドル、87年に同条の適用を申請した石油大手旧テキサコを上回った。
申請書によると、14社の負債合計額は310億ドル。デリバティブ(金融派生商品)取引などに伴う簿外債務を含めると400億ドルを超えると市場関係者は推測した。破綻後、エンロンが債権者集会で示した10月16日時点のグループ負債は帳簿上220億ドル、簿外を含め397億ドルだった。
▼第2幕1場: 破綻で紙くずのエンロン株式
エンロンの破産法11条の申請で1つ分かったことがあった。それは類例をみない関係者の広がりだ。裁判所に対する提出資料に添付された債権者の名簿リストは54ページに及んでいた。その中にこんな例もあった。12月2日、ニューヨーク・タイムズ紙は、エンロンとの契約を明らかにした。現在、エンロンの破産でこの契約にどんな影響が出るか試算中。契約は用紙・印刷コストの変動リスクを回避するのが目的だった、というのだ。
01年6月30日現在のデータ検索でも、エンロン株式の保有者上位には主な米国ファンドの運用者の名前がズラリ並んでいる。中には今年になって購入したファンドも少なくない。売り抜けるファンドは実に例外だ。4200万を超す株数を保有するファンド、2000万株、1000万株を上回る株数のファンドも多い。
00年12月29日の終値は83.125ドルだから、仮に1,000万株保有していると8億3,125万ドルになる計算だ。1080億円(1ドル=約130円)。これが雲散霧消してしまった計算だ。こうしたファンドが破綻までエンロン株を保有しつづけたかどうかは、いまのところ不明だ。
【表4】エンロンの主要な米国株主(ABC順、01年6月30日現在 大和IR作成)

エンロンの幹部たちも、これまでの米国各地で起こっている株主集団訴訟に加えて、今後は、確定拠出年金401kに同社株を組み込んでいた同社の社員から訴えられると見られる。
▼第2幕2場:資金流出するMMF
事は株券だけではない。債券も同様だ。社債が紙くずになって、エンロン債を組み入れていたMMFが基準価格を割り込んで解約ラッシュになったのは昨年12月。記憶に新しい。日興MMFは昨年10月末で3兆9681億円が年末には2106億円と83.5%が流出してしまった。一番エンロン債を組み込んだスミセイMMFは、同じく1350億円が95億円、実に83%が解約し、資金は流出した。UFJパートナーズMMFも5068億円が248億円に。95%超が解約だった。
【表5】MMFの元本割れ

【表6】主要企業・銀行のエンロン向け債権額

▼第3幕1場:アンダーセン:エンロン監査への疑問
問われたのは経営幹部ばかりではない。監査法人アンダーセンの仕事に目が行く。都合の悪いことに、このところ、アンダーセンは失点続きだった。まず廃棄物処理のウェイスト・マネジメントに対する監査に問題があったとしてSECから指摘され、700万ドルの民事制裁金の支払い命令に応じた。次いで、01年2月に連邦破産法11条の適用を申請し、利益を決算操作していた嫌疑がかかった電気製品の大手企業サンビーム。その監査担当もアンダーセンだった。そしてエンロンだ。同社の財務諸表を適切に監査したか否か、これが焦点になる。
疑問はいくらでもある。「エンロンが2000年初めから、普通株と引き換えに受け取った取引相手発行の手形を株主資本に入れるなどの処理を見逃した監査に、専門家は『現金が手に入るまで株主資本に組み込めないのは会計学の基本なのに』(リン・ターナー元SEC主任会計士)と、首をひねる」(「核心 破綻の米エンロン 時価評価方式−簿外取引横行−損失が膨大に」01年12月6日中日新聞)。
▼第3幕2場:アンダーセン・ベラルディーノ最高経営責任者(CEO)の証言
「過失の認知」「高額な報酬」
12月12日エンロンの経営が破綻した問題で、米下院の金融サービス委員会による公聴会が開かれた。レイ会長は出席しなかった。昨年、エンロンから通常の報酬として2500万ドル、特別報酬2700万ドルを得たアーサーアンダーセンのCEOジョセフ・ベラルディーノ氏が、「適切な会計処理が行われたと判断したが間違いだった。不正を見ぬけなかった」と証言し「過失を認めた」。
ベラルディーノ証言によると破綻の道はこうなる。エンロンは社外に特別目的事業体(SPE)をつくった。「このSPEは会計上、エンロンの帳簿外で処理されており、1997年以降、6億ドルの利益隠しにも利用されてきたという。べラルディーノ氏は、『エンロンがSPEの存在を報告していれば、SPEも同時に監査することが可能だった』として、SPEの情報開示にも問題があったとの認識を示した」(「破綻エンロンの会計事務所 監査の不備認める」01年12月13日 産経新聞)
この証言に対し、エンロンは「情報は開示していた」と反論する声明を出した。10月23日のレイ会長の発言が頭に浮かんでくる。「役員会、弁護士、監査人も、ここには利害相反に対処するための方法を事前に用意し」「エンロンと投資組合の間で取引する場合は、極めて厳しい手続きを用意し」「社内にチャイ二−ズ・ウォールを構築し、株主を守っている」。
「双方の言い分は対立、真相は不明だ」が、「特別目的会社を使った取引自体はバランスシート圧縮などのため多くの企業が活用している。エンロンのケースは、そうした一般的な財務手法が決算操作に利用される危険性を印象付けた」(「エンロン破綻、広がる波紋、米財務情報信頼揺らぐ−会計監査にも不信感」01年12月19日 日経金融新聞)
もう1つの争点があった。報酬金額だ。12月上旬、モルガン・スタンレーのストラテジスト、バイロン・ウィーン氏のレポートはこういっている。「エンロンは同社の会計事務所にとって2番目に(受け取っている報酬が)大きな顧客だった。2000年に支払った手数料は計5200万ドルで、うち2700万ドルはコンサルティング料だ。会計事務所が、自分たちの収入にとって非常に重要な顧客に対し、少し甘くなった可能性もあったのではないかと疑わずにはいられない」(同)と。KPMGの監査報酬にゼネラル・エレクトリック(GE)が2390万ドル、シティグループは2613万ドル支払い、エンロンだけの問題ではない。
この点について、アンダーセンのベラディーノ氏は、「エンロンは長大なパイプラインや光通信網を保有、世界最大の電子商取引システムを抱えて多数の取引を扱っていたうえ、高度な金融取引も手掛けていただけに、監査が簡単な会社ではなかった」と業務内容を指摘した。「『受け取った報酬のために、われわれの独立性が損なわれたとは思わない』と自社の立場を弁護した」(同)。
▼第4幕1場:企業情報開示の強化に向かう
⇒ブッシュ大統領がSECに指示
こうした動きの中、SECは企業の情報開示義務を強化する方向で踏み出した。「市場環境によって損失や利益が大きく変動する可能性を持つ複雑な金融取引などについて、投資家に『利益変動の可能性』の判断材料を提供することを検討する」(「米SEC、企業の開示義務を強化、エンロン破綻受け−「将来の損失」など」01年12月20日日本経済新聞)と報じられた。
エンロンの例に見られる「情報開示の抜け穴」を防ぎ、「基準に従った会計処理とは別に特定の損失などを『特殊要因』と見なし、これらを除外して企業が独自に計算する『実質利益』は混乱を招くとして制限する」(同)意向だというのだ。当然、これに見合ったセーフハーバー(安全港)ルールの見直しが必要になるだろう。
新年に入り、1月10日、ブッシュ米大統領が「米エネルギー大手エンロンの経営破綻に関連して米証券取引委員会(SEC)や商品先物取引委員会(CFTC)などに情報開示見直しの検討を指示したことを明らかにした」(「エンロン破綻−米大統領、SECなどに、情報開示見直し指示」02年1月11 日本経済新聞)。「『投資家を保護するための情報開示のあり方を十分に再考することが大事だ』と言明。エンロン破綻によって従業員の年金に被害が及ぶかも調査する考えを示した」(同)。
▼第4幕2場:新たな事件2つ
アンダーセン「シュレッダー断裁、電子メール抹消」エンロン「01年8月レター」
1月14日アンダーセンが会計操作の証拠を隠滅する工作疑惑が浮上した。米誌タイムが14日付最新号で、「アンダーセン幹部がエンロンの監査を担当していた職員に関係書類を破棄するよう命じた」と報じたからだ。同誌によると、この指示は、エンロンが10月16日第3四半期決算発表をする4日前に当たる10月12日に出された。SECがアンダーセンにエンロン関連書類の提出を命じた11月8日まで、関係文書の断裁が続いたという。
翌日15日、同社は、エンロンを担当していたデビッド・ダンカン氏を解雇すると発表した。数千の電子メールと、大量の書類の破棄を指示したと言うのが理由だ。SECが調査を始めたとエンロンが公表した翌日、10月23日、同氏はミーティングで破棄の指示を発した、という。関連文書の意図的な断裁が明らかになり、アンダーセンが不正な会計処理に加担していた疑惑が出てきた。同氏の弁護士は「アンダーセンの社内弁護士の指示に従って文書を扱った。何も悪いことはしていない」との声明を出した。新たな劇中劇の始まりだ。
折から、アンダーセンはデロイトによる審査を受けている最中だ。監査の質向上と信頼維持のため、同業他社から業務内容についてチェックを受けるピアレビューを米国の大手会計事務所は3年ごとに受け入れている。そのデロイトの審査対象に「エンロンの会計監査を担当していたアンダーセンのヒューストン事務所などが新たに加えられるという。今年のアンダーセンに対するピアレビューは、米国で監査を手掛けるパートナーの4割超を網羅する30拠点を対象に実施していた」(「米アンダーセン、同業者からの審査範囲、エンロン問題受け拡大」01年12月6日 日経金融新聞)。
さらに、15日、昨年8月エンロン職員から、経理処理に疑問を呈し、案じるレターがレイ会長に届けられていたと報じられるなど、この場面で急展開を示した。これに破綻にいたる1年間、エンロン幹部が大量に自社株を売却していた事実に着目し、インサイダー取引を問う論調も目立ってきた。
▼スペースオペラ劇はさらに続く
近く、上院の政府活動委員会、下院の金融サービス委員会も公聴会を開催する予定だ。議会による調査の焦点は(1)エンロン幹部のインサイダー取引疑惑(2)アンダーセンの監査の不備(3)ブッシュ政権とエンロンの不透明な関係(4)エンロン従業員や一般投資家の保護策−がそれぞれ論点になるとみられている。
ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、レビット元SEC委員長は話している。「今回の一連の事件は会計検査基準や企業と会計検査会社の関係、それに産業界の監視メカニズムの見直しをわれわれに迫っている」(「地球村から:謎残るエンロン破綻 資料の破棄問題で紛糾 まず会計検査の実態解明を」02年1月16日日本工業新聞)と。
1月17日、エンロンはアンダーセンを同社の監査人から外すと発表。新たな監査人をこれから求めるという。■
米山徹幸 tetsu.yoneyama@daiwair.co.jp
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