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コマツ(6301)

開催日:2024年3月21日(木)

説明者:取締役(兼)専務執行役員CFO  堀越 健 氏

 

1.コマツの概要

  • 当社は1921年5月に創業し、2021年に創業100周年を迎えました。創業者は竹内明太郎という実業家で、戦後、総理大臣を務めた吉田茂元首相の実の兄に当たり、早稲田大学理工学部の設立者でもあります。竹内明太郎は「工業は国を富ませる基本」と考え、全国で工業振興に尽力しました。その一環として、石川県小松市で銅山を経営し、そこで使用していた鉱山用機械を開発、メンテナンスしていた工場が独立して、それが現在のコマツになっています。竹内明太郎が唱えた創業の精神である「海外への雄飛」「品質第一」「技術革新」「人材の育成」は、現在にも受け継がれています。
  • 2023年3月期の連結売上高は3兆5,435億円、営業利益は4,907億円となりました。従業員数は約6万4,000人で、うち約7割が外国籍のグローバルな企業です。
  • 事業部門別の連結売上高は、9割以上を建設機械・車両部門が占めています。残り1割はリテールファイナンス部門と産業機械他で構成されています。建設機械・車両部門の売上高を地域別に見ると、日本国内が10%、海外が90%と、世界でバランスよくビジネスを行っています。
  • コマツが生産販売している建設機械は、土木工事や建設・建築工事などさまざまな分野で使用され、インフラ開発や都市化の促進を支えています。鉱山機械は現代社会に欠かせない鉱物資源の採掘に使われています。建設・鉱山機械の分野では、米国メーカーに次ぐ世界第2位の企業です。産業機械他の主な内訳は、半導体産業向けのエキシマレーザーや、自動車産業向けのプレス機械などです。
  • 鉱山の採掘工法には、鉱床が地表から近い場合に採用される「露天掘り」工法と、鉱床が地層深くにある場合に採用される「坑内掘り」工法があり、どの工法を採用するかで使用する機械が異なります。現在はグループ会社のコマツマイニング株式会社を中心に、坑内掘り工法の新商品開発に注力しています。
  • 現在、全世界に60カ所の生産拠点を持っており、生産の約6割を海外の工場で行っています。車両本体の組み立ては、需要の大きい地域で行い、世界各地のお客さまの要望に迅速に応える体制を敷いています。また、もう一つの特徴として、マザー工場制度があります。マザー工場とは、商品開発機能を持つ生産拠点のことで、生産と開発が一体となって、品質、コスト、納期の作り込みを行い、技術革新を進めています。マザー工場は、同一製品を生産するチャイルド工場の品質、コスト、納期に全責任を持つ体制を取っています。
  • コマツの強み1つ目は、「@キーコンポーネントの自社開発・自社生産」です。当社では機械の性能を決める重要な部品を、キーコンポーネントと呼び、自社で開発・生産しています。これにより独自の技術革新を開発時に織り込むことが可能になり、性能の差別化につながります。また、全世界に同じ品質のコンポーネントを安定して供給することも可能になっています。さらに、長期間稼働した建設・鉱山機械から取り外したエンジンなどを分解、洗浄して、新品同様に再生し、安価でお客さまに提供するコンポーネント再生ビジネスの、リマン事業も展開しています。
  • 昨年11月には、ハイブリッド油圧ショベル用のキーコンポーネントであるキャパシター(蓄電器)とインバーター(変換器)のリマンも開始しました。この事業にとって初となる、電気系統のリマンスキームがラインナップに加わっています。機械を販売した後の純正部品の販売や、定期メンテナンス、オーバーホールなど、本体販売以降のアフターマーケット事業にもつなげています。
  • 強みの2つ目は、サプライチェーンリスクを最小限に抑える「A環境変化に強い生産・調達体制」です。世界各地に組立工場を持っており、複数の工場で同じ製品を同じ仕様、品質で生産し、市場に供給することが可能です。このような生産体制をクロスソース体制と呼び、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、生産や販売への影響を最小限に抑えています。リスク対応の側面だけでなく、例えばある地域で急激に需要が増え、その地域の工場では生産が追いつかないという場合には、需要が落ちている地域の工場から供給することにより、販売機会を逃すことを防ぐなど、戦略的に対応しています。それに加え複数メーカーからの部品購入や現地調達の拡大など、調達のマルチソース比率を拡大し、環境変動に強いサプライチェーン構築を進めています。

 

2.中期経営計画 ―成長戦略とESG課題解決―

  • 2025年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画において、「イノベーションによる成長の加速価値」「稼ぐ力の最大化」「レジリエントな企業体質の構築」の成長戦略3本柱を掲げ、成長分野における重点投資の継続と、既存分野における収益性のさらなる向上、効率的で環境変動に強い経営基盤の構築を進めています。
  • 成長戦略3本柱の1つである「イノベーションによる成長の加速」では、将来の成長に向けて、戦略的に重要な技術や事業分野への重点投資を継続し、実用化、事業化への取り組みを進めています。具体的な重点活動4つを紹介します。
  • 具体的な重点活動の1つ目は、「電動化建設・鉱山機械の開発・導入」です。当社の建設・鉱山機械は小さなものから大きなものまで、出力サイズもさまざまです。また使用環境や稼働時間などさまざまな条件の中で、機種や地域によって最適なアプローチを取っていく必要があり、全方位的に開発を進める必要があります。既に実用化しているハイブリッドや、ディーゼルエレクトリック、有線電動、バッテリー電動に加え、燃料電池や水素エンジン、バイオディーゼルなども、カーボンニュートラル達成に向けてのステップとして強化しています。
  • 2023年度を電動化建機の市場導入元年と位置付けて、0.5トンから20トンクラス、計4機種の電動油圧ショベルを市場導入しました。また、水素関連の研究開発も促進しています。中型油圧ショベルでは水素燃料電池を搭載したコンセプトマシンを開発し、テストを進めています。
  • 具体的な重点活動の2つ目は、建設・鉱山機械の「自動化に向けた取り組み」です。建設機械自動化の取り組みとして、以前から作業機の自動制御機能を搭載したブルドーザーや油圧ショベルを開発してきました。2023年3月には、株式会社EARTHBRAINと、建設機械向けの遠隔操作システムを共同開発し、お客さまへの提供を開始しています。鉱山機械自動化の取り組みとして、2008年に業界で初めて無人ダンプトラック運行システム(AHS)を商用導入しました。その累計稼働台数は700台以上となりました。現在、大手鉱山会社の鉱山開発投資では、無人ダンプシステムが主流になっており、無人化オペレーションを実現するAHSの需要は、さらなる増加が見込まれています。また、昨年5月にはブラジルの鉱山で、遠隔操作仕様の大型ICTブルドーザーの商用稼働を開始しています。
  • 具体的な重点活動の3つ目は、「鉱山用オープンテクノロジープラットフォームによる事業促進」です。鉱山では建設・鉱山機械による積み込み、運搬以外にもさまざまな工程があり、別々のシステムで管理されています。各工程間のボトルネックを解消し、鉱山全体を最適化するには、鉱山現場の全ての工程がデータでつながり、合理化されるプラットフォームの導入が非常に重要になっています。鉱山機械の自動化、自律化、遠隔操作化の取り組みに加え、鉱山機械全体のフリート管理や、このプラットフォームの導入を進め、お客さまの現場の最適化に貢献していきます。プラットフォームの開発は昨年4月に完了し、順次、大手鉱山でのテスト導入を開始しています。
  • 具体的な重点活動の4つ目は、「DXスマートコンストラクションの促進」です。国内建設業界の深刻な労働力不足という社会的な課題を解決するため、2015年にスマートコンストラクションがスタートしました。従来施行の各プロセスをデジタル技術により見える化する「縦のデジタル化」からスタートして、現在ではデジタル化された全プロセスをつなぐ「横のデジタル化」により、お客さまの施工全体を最適化する、DXスマートコンストラクションへと進化しています。このDXスマートコンストラクションは国内市場に加え、北米、欧州、オーストラリア、東南アジアにおいても本格的に市場導入を進めています。
  • 当社はサステナビリティ基本方針に基づき、事業活動を通じて、社会に貢献していくことを目指しています。中期経営計画では、SDGsの17のゴールの中から、コマツグループのマテリアリティ(重要課題)と特に関連性の高い、10のゴールを選定しています。さらに、成長戦略を通じたESG課題解決を着実に遂行していくため、29個のKPIを設定、公表しています。昨年9月に発行した統合報告書で、2022年度の実績を開示しています。

 

3.業績および株主還元について

  • 2001年度から2007年度は、中国などの新興国市場が大きく拡大した時期で、当社の売上高も、それまでの1兆円レベルから2兆円を超すレベルまで伸びました。2009年のリーマン・ショックの際は、一時的に業績を落としましたが、2010年度以降は回復し、売上高は2兆円弱、営業利益率は12%前後で推移しました。2017年度はアメリカのジョイ・グローバル社をグループに加え、売上高と営業利益を大きく伸ばしました。2020年度はコロナウイルスの影響で業績を落としましたが、翌年には回復し、2022年度は連結売上高が3兆5,435億円の過去最高売り上げを記録しました。ここから次のステージに入ったと認識しています。
  • 1月末に2023年度第3四半期(4〜12月の9カ月)を発表しました。売上高は前年同期比+10.1%増収の2兆7,950億円、営業利益は+30.8%増益の4,534億円、売上高営業利益率は+2.6ポイント上昇し、16.2%となりました。純利益は+31.2%増益の3,043億円です。販売価格の改善や為替のプラス影響等により増収増益となり、売上高、営業利益、営業利益率、純利益ともに、第3四半期累計で過去最高となりました。
  • 2023年度の業績見通しは、10月に発表してから変更していません。2023年度の業績見通しは、連結売上高は3兆6,600億円、営業利益は5,480億円、純利益は3,400億円を見込んでおり、売上高、営業利益、営業利益率、純利益ともに、昨年度業績を更新し、過去最高となる見込みです。ROEは13.0%になる見通しです。年間の1株当たり配当金は144円で、配当性向は40.1%となる見込みです。
  • 各セグメントの売上高と利益の見通しです。建設機械・車両の売上高は、前年比+3.3%増収の3兆4,040億円、セグメント利益は+17.9%増益の5,230億円、セグメント利益率は1.9ポイント上昇し、15.4%となる見通しです。リテールファイナンスの売上高は前年比+10.9%増収の950億円、セグメント利益は−23.0%減益の210億円となる見通しです。産業機械他の売上高は、前年比+5.3%増収の2,010億円、セグメント利益は−24.7%減益の170億円となる見通しです。
  • 建設機械・車両部門の地域別売上高は、2023年度はCIS、アジアなどで減少するものの、北米、中南米などで増加し、+994億円増収の3兆3,861億円となる見通しです。当社では日本、北米、欧州の市場を伝統市場、新興国を中心とした市場を戦略市場と呼んでいますが、伝統市場の比率は47%、戦略市場の比率は53%となる見通しです。
  • 建設機械・車両部門の売上高とセグメント利益の増減要因の見通しです。売上高は為替および販売価格のプラス影響により、前年比+1,074億円の増収となる見通しです。セグメント利益は原価や固定費の増加を、為替および販売価格のプラス影響により吸収し、前年比+794億円の増益となる見通しです。セグメント利益率は+1.9ポイント上昇し、15.4%となる見通しです。
  • 建設機械・車両部門のセグメント利益を「為替影響」と「販売価格アップと原価上昇」の切り口で分析しました。「為替影響」は、世界的なインフレ、金利引き上げによる円安の進行が業績にプラスの影響を及ぼしています。エンジンなどのキーコンポーネントは日本で生産し、世界の工場に出荷しているため、「国内生産・海外売り上げ」の部分で為替変動の影響を受けます。米ドルの場合、1円変動すると、年間で48億円程度のセグメント利益が変動すると見積もっています。
  • 「販売価アップと原価上昇」は、2021年度後半から、資材価格の高騰による原価上昇が業績にマイナスの影響を与えることが、顕著になってきました。これを受け、2022年度から販売価格の改善を行い、2022年度後半から販売価格上昇分が原価上昇分を上回るようになりました。しかし、2021年度、2022年度累計では全ての原価上昇分を吸収することができなかったため、2023年度も2022年度と同レベルの販売価格の改善を継続し、2021年度から2023年度の3年間累計でも販売価アップが原価上昇分を上回ることになりました。
  • 主要7建機の需要推移と見通しです。2023年度の需要台数は前年比−10%〜−15%、中国を除く地域でも同様に前年比−10%〜−15%で、10月時点の見通しから変更していません。地域別に見ると、伝統市場では北米や日本の需要は堅調ですが、欧州は前年同期比マイナスの見通しとなっています。戦略市場では、中国では不動産市況低迷などに起因した経済の停滞、CISではロシアのウクライナ侵攻による影響で、ともに大幅な需要のマイナスが継続しています。一方、鉱山機械は全般的に堅調なものの、一般建機では中国経済停滞の影響や、多くの地域でのインフレや金利上昇から、需要は前年比マイナスの見通しとなっています。
  • 鉱山機械の需要見通しは、前年比0〜+10%と見ています。4月時点の見通しから変更していません。大手の鉱山会社は、資源高に加えて、安定した投資を継続している流れにあります。このため、鉱山機械の需要は引き続き堅調に推移すると見ています。2023年度の売上高は前年比+11%増収の1兆5,759億円の見込みです。これは建機セグメントの売り上げの約46%を占め、建機セグメントのほぼ半分が鉱山機械の売り上げとなっています。
  • 需要変動の大きい建設・鉱山機械マーケットで、外部環境に左右されない収益体制を構築するため、部品サービスなどのアフターマーケット事業に力を入れています。自動車と比較すると、建設・鉱山機械は稼動時間が非常に長く、新車購入後のメンテナンスや修理費にかかるコストが大きくなります。また、需要変動が大きい建設・鉱山機械本体と比べて、メンテナンスや修理費、純正部品の販売は需要変動が少なく、安定した販売ボリュームが期待できます。「部品その他」の売上高は、2010年度と比べ、建設機械・車両部門のおよそ半分を占めるようになりました。
  • 原資となる営業キャッシュフローは、@設備投資、A借入金の削減、B株主への還元にバランスよく配分する必要があります。安定的な株主還元を継続していくためには、成長投資が最も重要と考え、営業キャッシュフローの約50%を設備投資に充当し、成長分野への投資や研究開発など、将来への種まきを着実に進めています。株主還元には25〜35%、残りを財務体質の改善に充当しています。また、迅速な成長戦略の推進のため、技術革新や技術提携、M&Aといった外部リソースの活用も常に検討しています。
  • 配当金は、連結業績に加え、将来の投資計画やキャッシュフローなどを総合的に勘案し、引き続き安定的な配当の継続に努めていく方針です。具体的には連結配当を40%以上とする方針です。2023年度の年間配当金は、第2四半期までの業績ならびに今後の事業展開を勘案し、前期実績から5円増配の1株当たり144円、連結配当性向は40.1%となる見込みです。
  • 社会貢献として、2008年からNPO「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」と提携し、対人地雷の被害に苦しむ地域で、地雷処理とその跡地の復興事業を支援してきました。地雷を除去した安全な土地では、建設機械により、道路や橋梁(きょうりょう)、ため池などの造成や、小学校の建設を進め、昨年11月には10校目の小学校を開校しました。さらに2020年から農業支援活動も展開し、地域全体の自立的な復興に寄与する活動を進めています。

 

4.質疑応答

Q1. 2023年度の業績見通しは過去最高になるとのことですが、一方で需要が下がっているとのお話もありました。今後の見通しは、どのように見ていますか。

A1. 一般建機の需要は、全体的に下がってきていると思います。堅調に推移しているのは、北米と日本です。そもそも日本のマーケットは、公共工事、民間工事ともに堅調で、今年の需要は前年並みと見ています。日本のマーケットは非常に特殊で、コロナの時も需要は全く減りませんでした。しかし、その代わり、良い時もなく、ずっとフラットです。北米は、住宅建設向けの需要は下がってきていたのですが、最近では底を打って、上昇に転じているのではないかと思っています。レンタルやインフラ、エネルギー関係の需要は、堅調に推移していると思っています。見込みでは0〜−10%と考えていますが、今の実態はそれよりも少しいいのではないかと思っています。欧州は需要の減は厳しく、金利の上昇やインフレの影響で、需要が低迷しています。中南米は経済の先行きの不透明感、東南アジアはインドネシア、タイ、ベトナムなどの公共投資の予算執行の遅れ、経済の先行き・不透明感もあり、需要が低迷していると思います。 鉱山機械は、北米、中南米、インドネシア、オセアニア、アフリカなどの地域で需要がありますが、非常に好調です。資源価格も比較的高いレベルで推移していることや、自動車のEV化に伴う銅やニッケルなどの需要の底堅さもあり、大手の鉱山会社は安定した投資を継続していくという流れになるのではないかと思います。 今後、一般建機の需要は減少傾向で、2022年度第2四半期ぐらいからマイナスに転じていますが、この傾向が続くのではないかと考えています。鉱山機械の需要は引き続き堅調に推移すると見ています。

 

Q2. 2023年度は、電動化元年として、さまざまな機種を投入されたようですが、今後の電動化開発はどのように進んでいきますか。

A2. 製品使用で排出されるCO2は、建機の場合はお客さまのところで使用される部分が全体のCO2排出量の約90%を占めます。このCO2を2030年までに対2010年度比で50%削減することを、コミットメントとして経営目標に挙げています。一方、チャレンジ目標として、2050年にカーボンニュートラルを達成することをうたっています。これに向けて、電動化機械の開発と市場導入を進めています。 2023年度の今年を、電動化建機の市場導入元年と位置付けて、0.5トンから20トンの4機種を市場導入しました。ただ、自動車と違い、建機の世界ではまだ電動化の市場はできていないのが実態です。まずは、開始した電動化機械をレンタル市場でお客さまにご利用いただくことで、フィードバックをいただいて、それを反映することによって、次の開発につなげていく。これを今やっている状態です。 建設・鉱山機械は、機種や大きさの種類が多くあります。また、使われる用途や現場環境もバラエティーに富んでいます。そのため、それぞれに適したアプローチを取っていく必要があり、今は全方位的に開発を進めている状況です。水素燃料電池や水素エンジン車など、次世代の動力源を搭載したモデルも、研究開発を進めています。また今後、電動化が進むと、技術的に知見のないバッテリー関係のコンポーネントを自社で開発・生産することが困難になります。今後、自社に知見を蓄積していくためにも、パートナーとの協業やM&Aを活用する必要があると考えています。昨年11月にはアメリカのバッテリーメーカー、American Battery Solutions, Inc(ABS社)を買収しました。また、アメリカの自動車大手メーカーであるゼネラルモーターズ社と、コマツの超大型ダンプトラック「930E」向けの水素エンジン電池モジュールを共同開発していく契約を締結しました。

 

Q3. 値上げが浸透しているとのことですが、今後も値上げの予定はありますか。

A3. 2021年度の後半から、原材料価格の高騰や、サプライチェーン問題であるコンテナ船の運賃上昇などで、コストアップが急速に進みました。それを2022年度、2023年度の販売価格の改善により、累計で販売価のアップが上昇分を上回るようになりました。特に2021年度、2022年度は、サプライチェーンの混乱や生産能力の問題があり、需要に対して供給が追いつかないという状態が続き、本体の販売価アップが進みました。また、われわれのマーケットリーダーであるキャタピラー社(CAT社)は、コストが上がるとその分値上げを行い、彼らの主戦場である北米マーケットもそれを受け入れたということもあり、われわれも比較的販売価格の改善がしやすい環境でした。 2023年度は、原価アップは一段落し、サプライチェーンも落ち着いてきましたが、値上げは収益を確保するために非常に重要なことと考えています。こういった定期的な値上げはかなり浸透してきているのではないかと思っています。現在でも、鉱山機械の高稼動が続いており、部品の値上げは比較的しやすい事業環境が継続しています。来期も継続して値上げを実施していきたいと考えています。

 

Q4. 株主還元の取り組み姿勢を教えてください。自社株買いの計画はないのでしょうか。

A4. 当社のキャッシュアロケーションの考え方は、持続的な成長を実現するためには、営業キャッシュフローを、成長のための投資に約50%、株主還元に25〜30%、残りを財務体質の改善に当て、バランスよく配分することに努めています。株主還元はこれまで配当を中心に、連結配当性向を40%以上にすることでコミットして、営業キャッシュフローの25〜30%を使ってきました。今年の2023年度の配当金は、前期実績よりも5円増配して144円、連結配当性向は40.1%を見込んでいます。 コマツの事業は、マーケットのアップダウンが非常に激しく、重要な販売ツールとしてリテールファイナンスも実施しています。会社の信用度(格付け)が下がると、調達金利が上がり、特にリテールファイナンス事業に影響する恐れがあります。リテールファイナンス事業があまり使えなくなると、建設機械自体の販売に支障が出ることもあり、財務体質は格付けシングルAの上位を維持することを必要条件としています。 自己株買いは過去3回、2008年、2011年、2014年にそれぞれ300億円ずつ実施しています。社内に具体的な自己株買いの基準を持っており、これをクリアすれば実施することとし、これを基本的な方針にしています。基準をクリアすれば、淡々と自己株買いを行います。

 

Q5. コマツではどのようなAI活用を考えていますか。

A5. AIは最近いろいろと話題になっていますが、良い製品を作ることや業務効率の向上などに積極的に活用していくべきと考えています。まず、製品の側面では、大型のホイールローダー向けに、バケットの先にある爪(ツース)の脱落を検出するプログラムで使っています。また、採掘現場で積み込み中に落下した岩石を自動検知する部分に、AIによる画像解析を用いた支援システムを開発しています。ツースという爪が落ちると、危険です。また、下に転がっている石に乗り上げると、タイヤがパンクし、損傷します。こういった現場の課題解決につなげるために、これを開発しました。2025年度の量産開始を目指しています。 AIは技術進歩が非常に速く、先進技術を保有する社外との連携も不可欠と考えています。一方、社内でも社外の連携ができるような人材を養成すべく、2019年よりAIの人材教育を開始して、キーパーソンの育成を進めています。生成AIの活用は大幅な業務改善が期待されますが、その一方で、情報漏えいや誤情報、権利侵害のリスクなどの懸念があります。これを防ぐために、社内のガイドラインを制定して、今後のビジネスの活用も慎重に検討を進めています。積極的に人材育成するとともに、適用は慎重に進めていく。この2つの側面で取り組んでいます。

 

以上

 

 

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