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株式会社キングジム(7962)

開催日:2023年12月10日(日)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:代表取締役社長 兼CEO  宮本 彰 氏

 

1. 会社紹介

・ フィットネスジムのような社名ですが、キングジムの「ジム」は、事務用品の「ジム」です。もともとは文具・事務用品の会社で、最近はいろいろなことをしています。社名には「事務用品の王様」という願いを込めています。本社は東京都千代田区東神田にあり、東証プライム上場。現在、資本金約19億円、従業員は約2,000名。国内外各地に拠点があります。

・ 国内の子会社はM&Aで取得。海外には工場や販売拠点があります。商品の歴史では、1927年に私の祖父の宮本英太郎が創業。まもなく創業100年を迎える、歴史の古い会社です。長い間、ファイルバインダーひと筋に取り組んできました。これらはキングジムのファイルでキングファイルと呼ばれています。どこにもキングファイルとは書いていないんですけどね。おかげさまでそのように呼ばれるようになり、多くの会社で長年使っていただいています。

キングファイルがずっと当社の主力商品でしたが、1988年にテプラというラベルライターを発売。最新のテプラはキーボードがなく、スマホで入力して、テプラで出力します。最近、販売が好調です。

 

2. 事業内容

・ 事業セグメントには、文具事務用品事業とインテリアライフスタイル事業があります。

文具事務用品事業は当社本来の事業で、キングジムをはじめとする会社があります。海外の生産工場や中国での販売、品質管理の会社があります。

  インテリアライフスタイル事業は、ファイル以外の事業に取り組む、当社としては比較的新しい分野。生活雑貨などの会社で、いずれもM&Aで取得しています。

・ 経営理念は「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」。祖父で創業者の宮本英太郎は、自称偉大なる発明家。ちょっと変わり者の町の発明家でした。とにかくモノ作りが大好きで、彼のDNAを今でもずっと持ち続けています。

絶対モノマネはしない。世の中にないものを作る。世界で初めてというモノを常に作りたい。この考え方をずっと続けている会社です。

・ 戦略は「新市場を狙え!」

新製品はどこの会社でもたくさん作ります。また、リニューアルやデザインの変更、サイズ拡大なども必要です。しかし、そのレベルではなく、世の中にまったくないモノを作ること。これは市場がないので、ヒットする確率は正直に言って低い。ヒットせずに外れることも多い。市場を自ら作るのは、非常に難しいことです。でも当社が狙うのはそこです。

私は「市場開拓型商品を作ろう」と言っています。メーカーでは「市場創造型」と言うところが多いのですが、私は創造よりも開拓の方が掘り起こすということで、より強いのではないかと考えます。

世の中にまったくない新しいモノを作ることは、簡単なことではありません。でもとにかくいろいろとやってみる。それでダメなら撤退すればいい。そういう意味では、打率1割でもいいから、ホームランを狙え!実際、テプラはホームランになった商品で、そういうところを狙っています。

・ 商品開発については、消費者の中のアタマの中を理解します。

人間はアタマの中に常に優先順位を持っています。ノドが乾けば、飲み物が欲しい。お腹がすくと、食べ物が欲しい。その時々の欲求により優先順位はしょっちゅう変わります。買い物なら、欲しいモノ順位の一番上から買います。

例えば、優先順位の10〜11番にあるモノは、1番から買い物をすると、そこにたどり着くまでにお金がなくなり、買えなくなる。「今日はやめておこう、また明日」と思うんですが、明日は明日で新たな欲しいモノ順位がある。すると常に10〜11番にあるモノは、結局買われることがない。つまり「あったらいいな」くらいではなかなか買ってもらうチャンスが低い。「何が何でもコレが欲しい!」という1〜2番になるような商品を作らないと、モノは売れません。

ただ、これだけ多様化している社会の中で、皆さんの1〜2番になる商品を創り出すことは、非常に難しい。だから10人に1人でも、「コレが私にはピッタリだ」「私はコレが欲しかった」と思う人がいれば、それは大ヒットの可能性があります。9人にとってはまったく必要のない商品でもいい。例えば、日本の人口は1億2,000万人。10人に1人であれば、1,200万個売れるかもしれない。それぐらい大ヒット商品になるという考え方です。支持してくれる人は少なくてもいいから、熱烈に欲しいと思われること。熱烈な支持者がいる商品を作ろうということです。

 

【文具事務用品事業】

・ そういう形で生まれたのが、ラベルライター・テプラ。累計販売台数1,000万台を突破。キングファイルは、2011年時点で累計販売数5億冊を突破。日本のオフィスのスタンダードになった商品です。

・ その他最近の商品では、自動手指消毒器・テッテ。接触することがよくないといわれていたので、手をかざすだけで、スッと消毒できることにこだわりました。今は同じような商品はいろいろとありますが、発売当初、電池式の簡単なモノでは当社だけでした。コロナ禍のおかげで売れたとは言いにくいですが、大ヒットとなりました。本来はインフルエンザ予防のために作った商品です。その他、CO2濃度モニターや飛沫キャッチャーなどの衛生関連用品も、時代に合わせてタイムリーに次々と発売しています。

・ タイムリーな商品といえば、アルコールチェッカーがあります。今年12月から会社の車の運転をする場合、アルコール検知器での確認が義務化されました。それに間に合わせて急遽開発したものです。

機敏にタイムリーな商品を開発できるのが、当社の特徴でもあります。

・ 文具メーカーなので、さまざまな文具を販売していますが、最近では女性向けのオシャレなスタイル文具にも注力し、シールやマスキングテープ類が非常によく売れています。

・ SNSに強いのも当社の特長の一つです。X(旧Twitter)のフォロワーが45万人いることが当社の自慢です。当社くらいの企業の中では非常に多いと言われています。

SNSの影響力は非常に大きく、Xのフォロワー45万人全員が当社の発信を必ず見ているわけではないにしても、たとえ半分でも20万人以上が常に見ていることになります。そのため、新製品の発表やキャンペーンなどをSNSで行うと、急に売上が伸びます。SNSのフォロワー数は財産になっていると感じています。

・ ウインセスは、作業用の手袋の製造販売をしている会社で、M&Aで取得しました。

  販売系の海外子会社では、上海の会社で中国向けの輸出入を取り扱っています。その他に香港や深圳に現地法人があります。当社は中国から仕入れるものが多く、中国製品の中には若干、品質的に難がある場合もあります。そのため厳しいクオリティチェックが必要。しかも日本に届いてからでは遅い。そこで深圳の現地法人が品質管理を担い、水際で徹底的なチェックをし、厳選された商品だけを日本へ出荷しています。

・ 生産系海外子会社のうちインドネシアは、海外工場としては一番古いものです。ここでは、クリアーファイルなどのポリプロピレン製の化成品の加工をしています。

しかし、キングファイルを含め、ファイル関連事業は、実は斜陽です。決していい状況ではなく、ピークの4割程度に市場は縮小しています。理由はペーパーレスの時代になっていること。これだけデジタル化が進むと、紙社会からデジタル社会に進行。その中でオフィスから書類が減っています。これはもうやむを得ないことだと考えています。

これを何とかカバーしなければならない。例えば工場では空いた場所が出るようになり、それを有効活用し、別のモノを作ることに今、努力しています。

インドネシアの工場では組立家具に取り組もうとしています。インドネシアは土地柄、木が多い。それらの木材を有効活用し、木工製品を生産。当社の子会社にぼん家具という家具のネット販売専門会社があり、ここで販売する家具の生産を準備しています。

・ 生産系海外子会社のマレーシアでは、キングファイル用の金属製のとじ具を製造しています。いわばファイルの心臓部に当たるもの。一番大事な部分です。マレーシアではいい鉄が取れます。それを利用し、金具を生産しています。

ここもファイル生産の減少に伴い、空きスペースを利用し、UFOキャッチャーのような大型ゲーム機を生産。すでに稼働済みで、順調に出荷しています。

・ 生産系海外子会社の中で一番規模が大きいのがベトナムです。ここではキングファイルそのものを作っています。ここもファイル生産の減少に伴い、ラドンナという子会社で好調なキッチン用品の生産を始めています。

【インテリアライフスタイル事業】

・ 当社はファイルバインダーが斜陽なので、それを何とか埋めなければならない。埋めるどころか、もっと成長しなければならない。もちろん、キングジム本体でもいろんなことにチャレンジしています。それだけでは充分なスピードに足りません。そのためM&Aによりスピードを買う施策を取り、積極的に進めています。

その一つがラドンナです。元々はフォトフレーム(写真立て)を作っていた会社ですが、かなり業態変化し、現在はキッチン家電をメイン商品にしています。オーブントースターやコーヒーメーカー、ホットサンドメーカーなど。売上では、2021〜2022年が上がっています。これはコロナ禍の巣ごもり需要です。外食ができなくなり、家で食事をするようになると、調理家電が気になり、いいモノやオシャレなモノを買おうという気運が高まり、特需となりました。今はコロナも5類になり、外食することが戻っているため、若干反動が来ています。ただ、全体的には成長産業なので、今後とも大いに有望な市場だと思います。

・ アスカ商会もM&Aした会社で、造花の会社です。今、造花はとても精巧でキレイ。触らないと生花との違いがわかりません。これだけ精巧だとアートだと私は考えます。

造花は実は欧米では大きな市場があります。日本の市場はあまり伸びていません。それは「造花」という名前がよくない。作り物・ニセモノというイメージがあります。日本人はホンモノ志向なので、生花には圧倒的にかなわないと思っている人が多い。しかしアメリカでは、アーティフィシャルフラワーなどと呼ばれ、大きな市場があります。いつか必ず日本にもそういう市場ができると思い、M&Aしました。

それが今来ています。右肩上がりの成長をしています。段々市場が拡大。モノがいいので、今、売れ始めています。これからが楽しみな市場です。

・ M&Aした子会社の中で一番規模が大きいのがぼん家具です。家庭用の家具をネット販売しています。

家具は大きな市場で、そこを勝ち切るにはどうすべきか。一番の売りは、価格の安さです。ネット専門で、店を持たないので、安くできます。店を持つと、従業員の人件費や維持費がかかり、それをカバーする利益率が必要なので、それに見合った価格になります。そこを当社は徹底的に合理化しています。商品は中国を中心としたアジアからの直輸入品で、ユーザーに直販しています。一切店舗を持ちません。しかも組立家具です。

売上は若干デコボコしています。2021年はコロナ禍特需で伸びました。コロナ禍でテレワークになると、家の中が気になる。新しい家具が欲しくなる。特に本棚や靴箱などの収納家具がよく売れました。その後、特需の反動はありましたが、全体的に右肩上がりです。これも大いに期待できる市場だと思っています。

・ 2021年11月にM&Aしたのが、ライフオンプロダクツです。ここも生活家電や雑貨の企画・販売をしています。メインは季節用品。夏は扇風機、冬は加湿器など。夏暑く、冬寒い方がよく売れます。オシャレな商品が多く、ネット販売等でよく売れています。

 

3. サステナビリティへの取り組み

・ 最近はお茶の伊藤園とのコラボレーションで、茶殻紙を使った紙製ホルダーも開発しています。

 

4 業績

・ いろいろとM&Aに取り組んでいることもあり、2023年6月期の売上高は前期比7.5%増と好調。2024年6月期は過去最高の売上高400億円を目指しています。

問題は利益面です。実は当社の商品は、キングジム本体も子会社もほとんどすべてが輸入品です。3つの自社工場もすべて海外です。販売はほとんどが国内。海外はごくわずかです。そのため、今の円安が非常に困った状況になっています。当社の試算では、1円円安になると、年間の利益が1億円減少する。円高になれば1円当たり1億円の利益が出る。想定以上の円安で非常に苦しんでいます。価格改定もしていますが、正直なところまったく追いついていません。価格改定は10%くらいしかできず、10%を3回しても30%。以前は108円程度だったドル円が、今は150円近くなので、3回値上げしてもまったく追いつきません。今は我慢の時期だと思っています。

・ 当社のメインの文具事務用品事業では、ファイルの売上が厳しく、手指消毒器のテッテも、コロナ禍が5類になってから販売が落ち、反動減があり、全体的には横ばいです。

利益は前述の通り、円安の影響を大きく受けています。

・ 子会社3社によるインテリアライフスタイル事業は、M&Aの成果もあり、売上高は非常に好調です。しかし仕入れは海外からなので、利益水準は厳しいものがあります。

 

5. 第10次中期経営計画

・ 中期経営計画は3ヵ年の計画です。ちょうど今年は3年目です。3年前に立てた計画ですが、このような状況なので未達成となりそうです。

一番のポイントは、ファイル依存の構造から脱却です。どうやって新しい事業にチャレンジするか。その意味では、子会社が順調なので、想定以上の円安さえなければ、極めて成長したことと思います。利益面では厳しいですが、ファイル依存体質からの脱却は、順調に進んでいると考えます。

当社の強みは、柔軟な開発体制で独創的な商品を次々と開発すること。販売チャネルも多様です。多方面の商品があり、いろんな分野にチャレンジできます。文具事務用品にこだわらずに、さまざまな経営資源を相互活用し、成長していきたいと考えています。

利益拡大のためには、為替を嘆いていても始まらないので、円安でも利益が取れるような体質への改革を今進めています。ご期待いただければ、と思います。

・ 今年3年目の中期経営計画。今期2024年6月期の売上目標は400億円を予定しています。経常利益2.8億円、利益率は低いものになりそうです。今は我慢の時期だと考えています。

 

6. 株主還元

・ 配当性向の基準は40%で、安定配当を目指します。2021年6月期までは40%前後で推移していますが、2022年以降の配当性向は大きく変化しています。安定配当の考え方ですが、中間配当で7円、期末で7円、年間で14円という時期が長く続いていました。そのため利益水準がデコボコしても14円は死守したい。2021年は期末配当が大きく増え、年間で27円配当になりましたが、配当性向は39.1%でした。為替相場がドル円で110円くらいであったことの結果です。今は為替相場が厳しく、配当性向153.6%と異例なものになっていますが、14円配当を続けたいと考えています。

・ 株主優待制度は、おかげさまでとても人気があります。現在は300株以上1,000株未満所有の株主様には、キングジム公式オンラインストアで使える6,000円の株主優待クーポン1枚を進呈。皆さんがお好きな商品をお選びいただけます。どの方もお好みがあるので、一番欲しい商品を選んでいただき、お受け取りいただければ、と思います。この仕組みが今とても好評です。

・ 利益はデコボコしていますが、株価の動向は、あまり変化がありません。業績に連動していないのが、ちょっと不思議です。安定した株ということは言えると思います。

一方、売買高は大きくデコボコしています。毎年6月にポンッと増えるのは、当社が6月末決算であること。3〜4月が事務用品の一番の需要期になるので6月決算にしています。株主優待が人気があるので、そのための権利取りで6月が増えるのではないかと思います。

・ 最後に「FIRST PENGUIN(ファーストペンギン)」について。最近、流行語のように広まり、ドラマの題名にもなっているそうですが、私は10年以上前から使っています。

いろいろな解釈がありますが、私なりの解釈では、ペンギンたちは氷の上で群れを成し、ワイワイガヤガヤと過ごしています。お腹がすくと、海の中に入り、魚を獲りに行かなければなりません。でも海にはシャチやトド、アザラシなど、敵がいっぱいいます。だから海に入るのはリスクも高い。多くのペンギンは逡巡し、なかなか海に出ようとしない。その中で1羽が勇気を出して、最初に海に出ると、他のペンギンも一斉にその後に続きます。これがファーストペンギンです。

一番最初に海に出るペンギンは、どんなペンギンなのか。空腹に耐えかねた愚かなペンギンだ、と見る人もいますが、私はそうは考えません。勇気があり、最初に飛び込むからこそ、他のペンギンには取れない大きな獲物や美味しい獲物にもありつける。ブルーオーシャン戦略という言葉の解釈にも似ています。

この話は私が商品開発でよく使います。まだ誰もやっていないことをやろう。一番始めにやることが大事。会社としても常にファーストペンギンを目指していこう。これを今日の締めくくりとさせていただきます。

 

以上

 

 

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