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住友金属鉱山株式会社(5713)

開催日:2023年12月17日(日)

場 所:大和コンファレンスホール (東京都千代田区)

説明者:執行役員  矢野 三保子 氏

 

住友金属鉱山を知る5つのキーワード

住友金属鉱山という会社をご理解いただくためのキーワードは以下の5つです。

@430年の歴史。住友グループの源流事業を受け継ぐ会社

430年という数字は、当社の事業運営がサステナブルであったことの何よりの証拠であると自負しています。だからといって、このままであり続ける保証ではないと考えており、この先もモノ作り企業としての社会的責任を果たすと共に、持続可能な社会や環境の実現に貢献したいと考えています。

A非鉄は成長産業。今後も需要は右肩上がり。私たちは成長産業の担い手です。

B資源×製錬×材料の三事業連携。世界でも類をみないユニークなビジネスモデル

C長期ビジョンは、世界の非鉄リーダー。サステナビリティを重視

D健全な財務体質を維持しつつ、配当性向、原則35%以上

 

1. 企業情報

・ 創業は1590年。安土桃山時代です。2022年度の売上高は1兆4,230億円、税引前当期純利益は2,299億円、親会社株主に帰属する当期利益は1,606億円でした。財務体質としては、総資産が約2兆7,000億円、自己資本比率は60.3%と、健全な財務体質となっています。連結従業員数は約7,300名。現在14の国と地域で事業を展開しており、権益を有している鉱山は国内に1つ、海外に6つの合計7つ。製錬所は国内に5か所、海外3か所、合計8か所で操業しています。

・ 当社は資源・製錬・材料の3つの事業をコアビジネスと位置づけています。資源事業では鉱山を開発し、鉱石を採掘しています。製錬事業では、資源事業で採掘した鉱石を溶かし、不純物を取り除き純度を上げることで、主に純度99%以上の金属を製造しています。材料事業では、製錬事業で生産した金属などを、ほかの金属や化学製品と組み合わせ、自動車の電動化やカーボンニュートラルの実現、デジタル社会の高度化に欠かせない高機能材料を生産しています。このような金属素材のバリューチェーンを一貫して手がける三事業連携のビジネスモデルをもっていることが当社の特徴です。

また、当社は、世界的な資源枯渇に対応する資源循環に貢献する、さまざまなリサイクルにも取り組んでいます。例えば銅は、電線などのスクラップを再度製錬し、リサイクルを進めています。他にも近年、自動車の電動化が急速に進展する中、車載用の使用済み電池からニッケルやコバルト、リチウムを回収し、再度電池材料にリサイクルする技術開発を進めています。

 

【住友金属鉱山の歴史】

・ 当社は1590年、京都で銅の製錬を始めたことを創業としています。それから100年余り経った1691年に、愛媛県にある別子銅山の操業を開始。別子銅山は1973年に閉山されるまでの283年間、住友が運営を続けてきました。当社は住友グループの源流である銅の事業を受け継ぐ会社ということになります。

・ 明治、大正、昭和を経て戦後の1960年代に入ると、国内鉱山の閉山が相次ぎます。閉山した国内鉱山の従業員の受け皿として、材料事業や原子力エンジニアリングといった新規事業に力を入れ、経営の多角化に取り組みました。

1999年9月、グループ会社である株式会社ジェー・シー・オーが臨界事故を起こし、社会に大変なご迷惑とご心配をおかけしました。この事故の反省と教訓から事業の多角化戦略を見直し、本業回帰、すなわち当社が強みを発揮できる事業に集中することに2000年以降、注力してきました。選択と集中が一段落した2004年頃からは成長戦略に舵を切り、以降現在に至るまで資源・製錬・材料のコアビジネスに経営資源を集中しています。2007年頃の資源バブルといわれる時期に株価が大きく上昇したことを別としても、時価総額は上昇傾向となっています。

当社はこれまで何度も激しい環境変化に遭遇しましたが、変革を進めることで荒波を乗り越えてきました。変革こそが当社グループの歴史と言えます。

 

【住友金属鉱山が生産する非鉄金属】

・ 非鉄金属とは読んで字のごとく「鉄ではない金属」で、そのうち当社では銅、金、ニッケル、コバルトなどを生産しています。銅には電気をよく通すという特徴があり、電線など多様な用途で広く使われています。金は、宝飾品をはじめ工業製品としても多く使われているほか、資産形成の対象にもなっています。ニッケルは錆びにくいという特徴があり、ステンレス製品に多く使われています。また、ニッケルとコバルトは、近年注目を浴びている電気自動車の電池にも使われています。

このように非鉄金属は社会にとってなくてはならない素材であり、社会のデジタル化や自動車の電動化が進む中、活躍の場がさらに拡大すると見込まれています。

「電気銅」「電気ニッケル」「電気コバルト」と記載することもあります。この「電気」とは、電気分解し、99.9%以上に純度を高めた金属という意味です。

フェロニッケルは、鉄とニッケルの合金でステンレスの材料として使われます。

・ 銅は金と並んで人類が初めて手に入れた金属と言われ、紀元前4000年頃からすでに使われていたそうです。日本でも弥生時代に中国から青銅が伝わり、古墳や住居跡などから銅鐸や銅矛、銅の鏡などが多数発掘されています。最近、日本でもキャッシュレス化が進み、小銭を持ち歩くことが少なくなりましたが、なじみ深いところでは10円玉は主に銅でできています。また、銅がもつ電気をよく伝えるという特性から、送電線や車の電気系統、家庭内の電気配線に多く使われています。また、熱をよく伝えるという特性から、エアコンや温水器の配管など生活に欠かせないさまざまな分野で使用されています。

・ ニッケルも、私たちの生活のなかで広く使われている金属のひとつです。さまざまな合金にして利用することが多く、身近なところでは50円玉と100円玉はニッケルと銅の合金です。現在のニッケルの主要な用途はステンレス鋼です。ステンレスは腐食や熱に強く摩耗しにくいという特徴があり、身近なところではキッチンや食器などに使われています。また、ハイブリッド自動車や電気自動車などに使われるニッケル水素電池やリチウムイオン電池の材料、携帯電話やパソコンなどさまざまな電子機器の中にあるコンデンサーの原料として、日常生活の幅広い分野で使用されています。

 

・ 資源×製錬×材料の3事業連携について。当社は、ニッケル鉱石を製錬して電池の正極材を作るという自社内での一貫したニッケルサプライチェーンをもっています。海外企業をはじめニッケルの同業他社は、鉱山開発や金属製錬だけを手がけているところが多い中、非常にユニークなビジネスモデルであり、当社の特徴です。この一貫した自社ニッケルサプライチェーンは、お客様に原料の安定調達や歴史に培われた金属に関する高度な知見と材料分野の高い技術力に裏打ちされた高品質な製品の提供、そしてトレーサビリティなどで安心感を提供できていると自負しており、この安心感こそが当社の大きな強みです。

また、車載用の使用済み電池から銅やニッケルやコバルト、リチウムを回収し、再度電池材料にリサイクルする技術開発も進めています。

・ 非鉄金属は何千年も前から使われ続けている古い産業というイメージが強いかもしれませんが、実は非鉄金属は将来的にも成長産業です。1960年の市場規模を1とした場合のニッケルと銅の市場成長率を見ると、経済成長に合わせ、右肩上がりで伸びています。特に近年のニッケルの需要は、GDPの伸びを大きく上回る成長を示しています。

なお、成長率ではニッケルのほうが高いのですが、需要が大きいのは銅です。銅の年間市場規模は約2,600万トン、ニッケルの年間市場規模は約320万トンとなっています。

・ 銅やニッケルを中心とした非鉄金属の需要が近年大きく伸びている理由の一つが、自動車の電動化です。電気自動車は従来のガソリン車と比べて約4倍の銅を使用するといわれています。また、ニッケルは電気自動車に搭載される電池の材料として使われており、近年使用量が大きく伸びています。自動車の電動化は世界の潮流であり、自動車本体以外、例えば電気自動車の充電ステーションや再生可能エネルギーのインフラなどでもたくさんの電線が使われるので、非鉄金属の需要は今後も堅調に推移するものとみています。

 

2. 事業紹介

【資源事業】

・ 当社の資源事業の強みは、国内外に優良な資産を保有していることです。海外では現在、北米・南米・オーストラリアで6つの優良な銅鉱山の権益を保有しています。いずれも高いコスト競争力と豊富な資源量を持ち、経験豊富なオペレーターが操業しています。

特にアメリカ・アリゾナ州のモレンシー銅鉱山やペルーのセロベルデ銅鉱山は、生産量が毎年世界でトップ10にランクインする大規模な鉱山です。また、現在チリで推進しているケブラダ・ブランカ銅鉱山プロジェクトも、2024年からフル生産を開始する見込みです。

なお、当社が権益を100%もっているわけではなく、権益保有の割合は鉱山によって異なり、おおよそ20%前後といったところです。権益を保有するメリットはダイナミックに利益を獲得できることと権益を保有する割合に応じて銅鉱石を買い取る権利をもてることにあります。銅資源をもたない日本で、産業に欠かせない銅を安定的に供給することが私たちの使命です。

・ 国内では、当社は鹿児島県にある菱刈鉱山という金鉱山を100%保有しています。

現在日本国内で、商業規模で操業している金鉱山はこの菱刈鉱山のみです。鉱石に含まれる金の品位の高さは世界トップクラスであり、累計の金生産量は250トンを超え、国内第1位の金鉱山です。埋蔵量は2022年の12月末時点で155トンと、今後数十年にわたって当社の収益に貢献してくれる、まさに宝の山といえます。菱刈鉱山は人材育成の場としても重要な拠点であることから、2022年よりサステナビリティ重視の操業に転換しました。

 

【製錬事業】

・ かつて別子銅山があった愛媛県とその近隣に銅製錬とニッケル製錬の主要拠点があります。当社の源流事業でもある銅製錬は、西条市から新居浜市にまたがる東予工場で、年間約45万トンの銅を生産しています。製品である電気銅は、大きさがだいたい縦横1メートル、重さ約170キロの板で、現在の相場では1枚約20万円程度となります。

電気銅の原料は海外の銅鉱山から輸入した鉱石が中心で、東予工場では鉱石を自溶炉(じようろ)で溶かしています。1台の炉で年間45万トンの生産能力がある銅製錬の工場は、世界トップクラスで、これが高いコスト競争力の源泉となっています。また、東予工場では、銅だけでなく菱刈鉱山の金鉱石を製錬し、金も効率的に生産しています。加えて、リサイクル原料からの有価物の回収にも積極的に取り組んでおり、電気銅生産量の約4分の1はこれらの原料由来となっています。もちろん1971年の操業以来、環境にも充分配慮しており、クリーンな製錬所としてもトップランナーと自負しています。

・ 愛媛県新居浜市にあるニッケル工場では、日本で唯一電気ニッケルと電気コバルトを生産しているほか、主に電池材料向けに使われる硫酸ニッケルを生産しています。この工場はMCLE(マット塩素浸出電解採取)法という生産方式を採用しています。MCLE法はコスト競争力が非常に高い反面、操業は技術的に難しく、類似の技術で商業化に成功している生産者は、当社グループのほかには世界で数社しかありません。

また当社は、電気ニッケルと電気コバルトの原料確保でも高い技術力を発揮しています。2005年に当社は、フィリピンのコーラルベイニッケル社で世界に先駆けて HPAL(High Pressure Acid Leach)技術を用いて低品位のニッケル酸化鉱からのニッケル回収の商業生産に成功しました。また、フィリピンのもう一つのHPAL製錬所であるタガニートHPALニッケル社は2013年から操業しています。

ニッケル鉱石はフィリピンとインドネシアが世界の2大産出国で、アジアを中心に有力な鉱山が分布しています。しかし、地球上に存在するニッケル資源の多くは、低品位酸化鉱と呼ばれるニッケル含有量の極めて少ない鉱石であり、従来は活用できませんでした。これまで使われなかった低品位の酸化鉱から、高純度のニッケルやコバルトを回収するHPAL技術は、コスト競争力に優れるとともに、資源の有効活用という面からも非常に注目されています。HPAL技術で中間原料を生産し、愛媛県のニッケル工場に運び、MCLE法で電気ニッケルや電気コバルトを生産する流れです。

 

【材料事業】

・ 当社材料事業の成長へのキーワードは「カーボンニュートラル」と「デジタル社会の高度化」です。主な製品は自動車向けの電池材料のほか、スマートフォンの部品に使用される結晶材料、赤外線を吸収し温度上昇を抑制する機能性インク、積層セラミックコンデンサ向けの金属ペーストなどで、顧客は国内外の電子部品メーカーなどです。自動車の電動化やデジタル社会の高度化は今後もますます進むとみられています。それに伴い当社が手がける高機能材料の活躍の場も拡大しています。

・ 当社の電池材料は、電気自動車などの電池で使われる正極材の材料として、高いシェアがあります。正極材は電池のプラス極になる材料で、ニッケルが使われる正極材が世界市場で多く使われています。リチウムイオン電池向けでは、パナソニック株式会社が製造する車載用リチウムイオン電池に採用され、電気自動車メーカーに販売されています。また、トヨタ自動車株式会社の電動車向けにも、正極材を供給しています。

電気自動車で重要なのは「1回の充電でどれだけ長い距離を走れるか」です。これを左右するのは正極材の品質だと言われています。また、正極材に占めるニッケル含有率をどれだけ高められるかで、電池の性能が決まるという側面もあります。当社にはニッケル含有率の高い正極材を安定した品質で大量生産できる技術力と品質管理体制があり、これも当社の大きな強みです。

ニッケルを使ったリチウムイオン電池は火災が発生する可能性があり、危険ではないかという意見があります。当社はEV車の普及に当たり、生産管理には細心の注意を払い、異物混入のない品質管理を徹底し、安全に生産しています。

・ カーボンニュートラルに貢献する製品として、CWO®(近赤外線吸収材料)「SOLAMENT™」があります。「SOLAMENT™」は、国内外で特許を持ち、太陽光などに含まれる近赤外線を吸収する特徴がある当社オリジナル商品です。これまでは車のウィンドウフィルムとして車内温度の上昇を防ぐ役割を担っていましたが、その特性を生かし、アパレルや建材、農業、医療分野などへの進出を図っています。

この技術のコンセプトをわかりやすく伝えるために、羽毛レスの透明ダウンジャケットをJAPAN MOBILITY SHOW 2023に出展しました。太陽光を吸収し、羽毛を使わなくても充分な温かさを得ることができると、大きな反響を得ました。

 

3. 成長戦略

・ 当社は「『世界の非鉄リーダー』を目指す」という長期ビジョンを掲げています。「非鉄リーダー」というのは当社が作った言葉で、@資源権益やメタル生産量において、グローバルでの存在感があること、A資源メジャーでも容易に模倣できない、卓越した技術や独自のビジネスモデルを有していること、B持続的成長を実現し、安定して一定規模の利益をあげていること、CSDGs等の社会課題に積極的に取り組んでいること、D従業員がいきいきと働いていることを「非鉄リーダー」の要件と考えています。

・ 長期ビジョンのターゲットは、「ニッケル」「銅」「金」「材料」「利益」の5点あります。

・ ターゲットの達成状況について。銅の鉱山権益分生産量の最新予想では21万トンですが、開発中のケブラダ・ブランカ2プロジェクトがフル生産すれば、28万トン前後まで増えるとみており、長期ビジョン目標の年間30万トンにもう一歩まで迫ります。

ニッケルの最新年間生産量は8万2,000トンで、目標の15万トンには少し遠い状況ですが、現在新たなニッケル資源の獲得に向け、調査を加速しています。

材料事業と当期利益目標は2021年度に一度達成していますが、最大瞬間風速的なものでなく、数年間平均して利益計上ができる姿を当面のゴールとしています。

・ 長期ビジョンの達成に向け、当社は2024年度を最終年度とする2021年中期経営計画で「4つの挑戦」を推進しています。

 

【推進中の大型プロジェクト】

・ 大型プロジェクトは現在3つあり、1つ目が電池材料(正極材)の生産能力増強です。愛媛県と兵庫県で年間2万4,000トンの増産に向けた投資総額470億円の工事を進めています。将来的にはさらに規模を増やしていきたいと考えており、2030年度には現在の3倍の規模となる年間18万トン体制を構築する計画を立てています。

・ 2つ目はチリで推進中のケブラダ・ブランカ2(QB2)という銅鉱山のプロジェクトです。この鉱山は標高約4,000メートル以上の非常に高い場所にあり、周辺には水がないので、操業に必要な水は海水を淡水にして運んでいきます。立地条件の良い場所にある未開発鉱山は地球上には残っておらず、新しい鉱山はこのように厳しい立地条件が前提となります。QB2は生産設備の立ち上げ中で、間もなくフル生産を始める見込みです。フル生産時には、厳しい立地条件にもかかわらず、世界トップクラスの生産量をもつ競争力の高い銅鉱山になるとみています。

鉱山の寿命であるマインライフ(操業可能年数)は約28年です。これは現在確認できている埋蔵量から計算したものですが、このプロジェクトは将来の拡張に向けたポテンシャルも大きく、マインライフ延長の余地は大いにあるものと期待しています。

・ 3つ目はカナダで推進しているコテ金開発プロジェクトです。このプロジェクトはカナダの森林地帯にあり、先住民の方々や周辺環境などに十分配慮しながら建設を進めています。2024年1〜3月に生産開始を予定しており、初年度の生産金量は13トンで、近年開発された金鉱山のなかでは上位にあります。コスト競争力もトップクラスの鉱山になるとみており、計画通りに戦力化を進めます。

マインライフは18年ですが、このプロジェクトも将来の拡張に向けたポテンシャルが大きく、新たな資源を見つけマインライフを延長できることを期待しています。

 

【カーボンニュートラルに貢献する製品・新技術・プロセスの開発推進】

・ SiC(シリコンカーバイド)について。自動車の電化に伴い、高い電圧や大きな電流に対応するパワー半導体は、今後の需要増加が見込まれています。SiC基板は従来のシリコン基板に比べ、エネルギー損失が少ないので、需要が急激に高まっています。

当社は高価な単結晶と比較的安価に製造できる多結晶基板を貼り合わせる独自の技術を有しており、一部販売が始まっています。現在は将来の主流となることが見込まれる直径8インチサイズの開発ラインを構築中で、2024年度第1四半期より試作開始予定です。また、供給拡大要請に応えるため、一部のお客様に貼り合せ技術のライセンス供与も開始しています。

塩湖からリチウムを回収する技術について。当社と北九州市立大学が共同開発した吸着剤(マンガン系)を使った直接リチウム抽出法の試験をチリで始めています。吸着剤に直接リチウムを吸着させ、天日乾燥プロセスを不要とし、リチウム回収期間や水資源利用に伴う地域環境への影響、温室効果ガス排出の改善を見込んでいます。

当社は今後もカーボンニュートラルに貢献する製品・新技術・プロセス開発を推進していきます。

 

4. サステナビリティ

・ 目先の利益を追わず、信用を重んじ、確実を旨とするという経営姿勢は住友の事業精神の神髄です。

当社グループは1590年からの長きにわたり営まれて来た住友の源流事業である鉱山運営や製錬事業を受け継ぐ企業であり、住友の事業精神を企業行動の中心に据えています。住友の事業精神の第一条には、社会的な信用や相互の信頼関係を大切にし、何事も誠意をもって確実に対応することが定められています。

・ 住友金属鉱山グループの経営理念・サステナビリティ方針について。住友の事業精神に基づき定められた当社グループの経営理念は、地球および社会との共存を謳っており、明るく活力ある企業の実現と人間尊重を掲げています。

地球および社会との共存と人間尊重を通じて目指すサステナビリティへの取り組み姿勢を定めたものが、住友金属鉱山グループサステナビリティ方針です。社会の持続的発展への貢献を経営課題とし、貢献の持続性の担保と貢献度の向上を目的とし、自社の持続的な成長も併せて定めています。

・ 当社は430年の歴史のなかで、住友の事業精神に基づき、事業を通じた社会課題の解決に取り組んできました。当社のような鉱山開発や金属製錬を手掛ける企業は、資源のあるところでしか仕事ができません。また製錬所のような大きな工場を作ると、土地や地域との関係性が非常に重要な要素となります。そのための社会的操業許可(ソーシャルライセンス)は、事業を行うための大前提となります。

明治時代の別子銅山は、山の木々が伐採され、一面荒れ果てていました。しかし1894年から植林を本格的に開始。100年経った現在、別子銅山は緑豊かな山に甦っています。

サステナビリティ経営が謳われて久しい昨今ですが、当社は明治時代から事業を通じた社会課題の解決に取り組んできた歴史があり、こういった精神や取り組みが当社の DNAになっています。

・ 別子銅山で培われた地域社会と真摯に向き合うという事業精神は、日本だけではなく、海外でも受け継がれています。当社のフィリピンの拠点では、ニッケルなどの有価金属を回収した残渣を無害化して堆積しておく場所である尾鉱(びこう)ダムに植物を植えて緑に戻す活動に取り組んでいます。土壌の改良活動も含め、医療や福祉、教育などの分野に関する地域開発プログラムも実施しており、実施にあたっては、地域住民や行政、NGOなどのステークホルダーの皆さんと対話し、取り組み内容を毎年決定しています。これからも私たちは地域との対話を欠かさず、理解と信頼を得ることを第一に考えて事業活動を行っていきます。

・ 他にも、当社のサステナビリティに対する取り組みとして、九州の西海市の洋上風力発電のコンソーシアムにも参画しています。

 

5. 業績・株主還元

・ 2023年度の業績予想を11月に発表しています。2021年度は、海外銅鉱山の権益売却に伴う一時的な利益が含まれていることで3,574億円という過去最高益を計上。一方、2021年度の一時的な損益の剥落や金属価格の下落が影響し、2022年度は減益。2023年度予想も減益方向で見ています。

・ 2023年度は、金属価格の下落により市況要因で約800億円の減益を予想。また、材料事業を取り巻く市場環境の低迷、これに加え、プロジェクトの進行に伴い発生する一次的な費用の下振れ要因などから、損益全体は860億円と見込んでいます。

当社が事業を行っている非鉄金属は、ロンドン金属取引所(LME)に代表される取引市場で価格が決まります。そのため、当社の損益は経済動向を含めたマーケット環境に大きく左右される特性があります。加えて非鉄金属の価格上昇局面では、売り買いの値決め時期の差により、一時的に本来の水準以上に損益が上振れる一方、価格下落局面では、一時的に本来の水準以上に損益が下振れる特徴があります。そのため、投資家の皆様からは、一時的な要因を除いた実力ベースの損益がどのくらいか知りたいという要望が寄せられます。このような背景から2023年度の事業環境から算出した実力損益は、1,100〜1,200億円になると考えています。今後も継続して実力損益を開示しますので、この動きに注目していただければ、と思います。

・ 当社は業績連動に基づく配当を配当方針とし、連結配当性向は原則35%以上としています。2023年度は、11月時点での業績予想に基づき、71円の配当を予想しています。配当額が年度ごとに上下に変動するのは、金属価格や為替相場によって、配当のベースとなる業績が大きく変動する業態だからです。大きく儲けた時は大きく増配しますが、その逆のこともあります。

金属価格は一定期間で循環的に上下する傾向があります。また、資源開発や製錬所の建設など当社が手がける事業は、投資の意思決定から利益が出るまでの期間が10年以上かかるケースもあります。ぜひ長い目で当社をご覧になり、応援していただければ幸いです。

ただ、安定的な配当を望む声があることも理解しています。現在当社が進める成長戦略と、バランスの取れた株主還元の実現可能性について、検討しています。

・ 当社の業績には金属価格と為替が大きく影響します。金属価格は原油同様に国際価格と して日々動いています。例えば銅の価格がトン当たり100ドル上がると、当社の業績は27億円上がる=好転することになります。逆に価格が下がれば当社の業績は悪化します。また、為替の影響も大きく、1円の変動で、利益は12億円変化します。

・ 2015年からの当社の株価推移について。銅価格、金価格、ニッケル価格の金属価格は、短期的には上げ下げがありますが、長期的にはゆるやかな右肩上がりで推移しています。当社株価、銅価格、ニッケル価格の3つは概ね似たような動きをしており、特に銅価格と当社の株価が連動しています。

・ 本日は住友金属鉱山を知る5つのキーワードをぜひ覚えていただければ、と思います。

 

6. 質疑応答

Q1. 国内、海外を含めた同業他社と比較した御社の特徴と強みを教えてください。

A1. 当社の競合他社について。当社には資源×製錬×材料の三事業連携という独自のビジネスモデルがあります。国内外を含め非鉄金属を扱うメーカーとは、ビジネスモデルが異なるので、競合他社という表現は難しいです。

当社の強みには、ニッケルの精錬事業であるMCLEやHPALに代表される長い歴史の中ではぐくんできた技術や、非鉄金属の資源×製錬×材料の三分野を結びつける三事業連携があります。

製錬事業の強みは技術力。資源事業では国内の菱刈鉱山を運営していることや、海外鉱山で有力なパートナーが運営する鉱山の権益を有することなど、限りある非鉄金属資源を安定して調達できることが強みです。材料事業では、1960年代以降、このビジネスに携わっており、お客様との長いお付き合いがあります。お客様の近くでニーズを知り、研究開発できることに加え、材料事業に使われる非鉄金属を自ら製錬できることが強みです。中でも電池材料事業については、国内でも数少ないニッケル生産者であり、原料から電池材料までの一貫生産は世界でも極めてユニークなビジネスモデルです。

当社は自動車メーカーや電池メーカーとすでに長いお付き合いがあり、ニッケル系正極材のトップサプライヤーである自負しており、自動車に求められる品質の作り込みが可能です。この強みを生かし、事業を伸ばしたいと考えています。

 

Q2. 最近の実力損益が下がっているのはなぜですか。今後どうやって伸ばしていきますか。

A2. 実力損益について。当社が事業をしている非鉄金属は、ロンドン金属取引所に代表される取引市場で価格が決まり、当社の損益は経済動向を含めたマーケット環境に大きく左右されます。加えて非鉄金属の価格上昇局面では、売り買いの値決め時期の差があるので、一時的に本来の水準以上に損益が上振れる一方、価格下落局面では、一時的に本来の水準以上に損益が下振れる特徴があります。特に昨今のように為替を含めた市況が大きく動く時には、当社の短期の損益は、本来の水準よりも大きく上振れたり、下振れることが起こります。そこで該当年度の業績予想から市況の変動局面で一時的に発生する損益や当該期間の特殊要因の影響を除いたものを実力損益としています。

実力損益の変化について。11月の業績予想での実力損益は1,100〜1,200億円。5月予想時点では1,300〜1,400億円だったので、11月は200億円程度の下方修正となりました。その一番の要因は、前提となる金属価格が当時と比べ下落していることです。加えて、海外銅鉱山での販売量減少に伴う管理コストの上昇や設備保守のメンテナンス費用が予想よりも多く発生したことによるコスト単価の上昇も主な要因の一つです。ただ、コスト単価の上昇は一過性のものであり、当社のモノ作り力が大きく低下したということではありません。

実力損益の伸ばし方について。銅やニッケルなどの非鉄金属の販売価格は、当社が決めるのではなく、商品市場で決まるので、値上げで利益を確保したり、値下げで販売量を拡大するといった一般的な手段は取れません。そのため収益力を向上させるには、モノ作り企業としてこれまで通り生産性改善やコストダウンを進めます。それに加え事業の幹を太くするためにも、長期ビジョン実現に向けた成長戦略の着実な成功が必要です。まず現在取り組んでいる大型プロジェクトを、早期に稼働し戦力化し、加えて新たな鉱山権益を獲得。当社が持つ高度な技術力をもとに時代が求める新たな高機能材料の開発にも取り組みます。

以上

 

 

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