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電源開発株式会社(9513)

開催日:2023年12月2日(土)

説明者:代表取締役社長 社長執行役員  菅野 等 氏

 

1.J-POWERの概要

  • 本日ご参加の皆さんは当社をご存じでしょうか。当社は日本テレビ系列で「音のソノリティ」という番組を放映しています。今年放送20周年を迎え、10月1日には第1,000回目の放映がありました。その映像に映っているのが鳴子温泉郷です。私は2週間ほど前に、鳴子にある鬼首地熱発電所に行きました。鳴子は豊かな温泉が湧き出る街で、地熱発電所と共生していただいています。
  • J-POWER(電源開発)は1952年に政府出資の特殊法人として発足しました。その後、大規模な水力発電所を中心に開発を行い、いくつかの大きなプロジェクトを手がけてきました。日本の電力不足に対応するため大規模電源の開発を行うことが、日本政府から与えられた使命でした。また、大規模な電源を開発した上で、北海道から沖縄まで地域ごとに分かれている各地域の電力会社に卸売りをする役割もありました。政府の特殊法人改革の中で、当社は2004年に民営化しました。他の特殊法人と違うのは、政府が持っていた全ての株を民間に放出し、完全民営化したことです。民営化して、約20年が経ちました。
  • 連結従業員数は7,078名です。各地域の電力会社への卸売りが主な事業で、小規模ですが、いくつかの会社とアライアンスを組み、小売りにも進出しています。
  • 当社は、日本の電力会社の中でも特に海外事業に長く取り組んできました。これも特殊法人だったためですが、民営化の後も海外とは強い関わりがあります。これまで60カ国以上で海外事業の実績がございます。
  • 水力発電は国内で第2位の出力を誇っています。また、風力発電の持分出力も国内第2位の規模です。水力・風力を中心に、日本のリニューアブルエナジー(再生可能エネルギー)のリーディングカンパニーであることを目指しています。現在アラブ首長国連邦でCOP28が開かれていますが、近年は気候変動問題への対応が強く求められています。私どもも「BLUE MISSION 2050」という方針を策定しており、2050年までに国内発電事業のCO2大気排出をゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルを目指しています。
  • 当社の事業内容は、国内での電気事業と海外事業、その他事業に分かれます。国内での電気事業は、発電を行い、それを小売の電力会社に販売するものです。今、電気事業の小売は完全に自由化されていますので、当社の電気は東京電力や関西電力など以前からある大きな電力会社に加えて、新たに市場に参入した事業者にも販売しています。海外事業は、発電所を建設する発電事業や、コンサルティング事業を行っています。その他事業は、発電所の運営・保守や、バイオマスなどの燃料の製造、炭鉱への投資などを行っています。
  • 事業領域を円グラフにすると、2020-2022年度平均の経常利益は国内電気事業、海外事業、その他事業が3分の1ずつとなっています。設備出力は、国内が約7割、海外が3割となり、海外事業もかなり大きくなっています。

 

2.J-POWERの事業

【電気事業】

  • 国内電気事業について、販売電力量のうち火力電源が67%、水力が13%、風力が1%です。設備出力で見ると、火力が49%、水力が48%で、3%が風力・地熱です。設備出力は水力と火力で半分ずつですが、販売電力量は火力のほうが大きくなります。それは火力のほうが稼働している時間帯が長いためです。水力は稼働している時間帯と稼動していない時間帯が半分ずつぐらいで、火力は年間を通じると7割ぐらい稼働しています。これらの他に現状、青森県大間町で原子力発電所の建設を行っています。これが完成すると、グラフに原子力が加わることになります。
  • 水力発電所は全国で61カ所あります。水力発電はCO2を排出しないリニューアブルエナジーです。高いところに貯めた水を低いところに落とすことで水車発電機を回すという仕組みで、水をコントロールすることで起動・停止が簡単であること、出力調整が容易であることが特徴です。同じリニューアブルエナジーの風力や太陽光が天候に左右されるのに対し、安定的かつ調整しやすいのが水力発電の特徴です。
  • 残念ながら今では、大規模に水力発電施設を開発できる適地は日本にはありません。今後は小規模な水力の開発と、既にある大規模な水力電源の設備更新やダムの補修などをして、この先何十年も使っていくことが求められています。既存の設備に最新技術を導入して再生し、さらに使っていくことをアップサイクルと呼んでいます。その代表的な事例の一つが、静岡県の天竜川上流にある佐久間発電所です。当社が手掛けた最初の大規模水力発電所で、老朽化が進んでいるため、大規模な設備更新を行う計画を「NEXUS佐久間計画」と名づけ現在進行中です。
  • 風力発電は、全国に21カ所の発電所を持っています。約50万kWの設備が運転中で、国内で第2位の設備出力になります。また、100万kWを超える発電所の開発を行っています。着々と建設が進んでいるため、続々と戦列に入ってくると考えています。
  • 地熱発電についてです。日本は火山列島で、地熱の資源に恵まれていますが、その一つ一つの規模はあまり大きくありません。開発にも地域の理解が不可欠です。特に温泉があるケースが多く、温泉事業者に理解をいただきながら進めるため、少し時間がかかります。旧鳴子町の鬼首地区にある鬼首地熱発電所は、今年4月に運転を開始しました。これに加え、岩手県や宮城県でも開発を進めています。
  • 火力発電は、7カ所の石炭火力発電所を保有しています。石炭はCO2を出す電源として世界的に批判がありますが、有利な面もあります。まず、石炭は全世界に幅広く分布しており、地政学的に安定した調達が可能です。また固体なのでLNGガスのように冷却して輸送する必要はなく、いわゆるばら積みで日本に移送し、貯めておくことができます。しかし、発電単位当たりのCO2排出が大きいのは事実ですので、これに対応する必要があります。
  • 送変電事業については特殊法人の時代から、北海道と本州、本州の中でも東日本の50Hzと西日本の60Hzといった周波数が異なる地域、本州と四国、本州と九州といったように、地域間を結ぶ大規模な送電線の事業を行っています。政府の規制により、送変電事業は発電事業や電力の小売り事業と分離することになっていますので、当社はJ-POWER送変電(電源開発送変電ネットワーク株式会社)という子会社を設立して、その会社が日本全国で送変電事業を行っています。今、喫緊の課題となっているのは、再生可能エネルギーのポテンシャルの大きい地域と、電力を大量消費する地域が離れているのをどう結んでいくかということです。日本の電力業界で重要な課題になっていますので、当社も役割を果たし、その問題に取り組みたいと考えています。
  • 当社が発電した電気の主な販売先は、東京電力や関西電力など旧一般電気事業者と呼ばれる、地域の大きな電力会社です。他にも小売事業者や、卸電力取引市場にも販売しています。市場は前日に翌日の24時間分の価格を決めます。またFIT制度という固定価格買取制度が2012年から始まっており、その制度にのっとり再生可能エネルギーを販売しています。これからも幅広い販売ルートを開拓し、旧一般電気事業者以外の、新規参入している新電力と呼ばれる事業者への販売も強化していきます。
  • 卸取引市場から電力を調達した上で、改めて小売事業者と一緒にアライアンスを組んで販売事業を行うケースもあります。アライアンスを組んでいる販売事業者には、KDDI株式会社、鈴与株式会社などがあります。
  • 送変電部門は、分社化をしたJ-POWER送変電が担っています。送配電料金は規制の料金があり、一般送配電事業者とともに規制の下で、収入を得ています。

【海外事業】

  • 海外事業では、当社が特殊法人だった時代から取り組みを積み上げてきました。民営化後、各国との関係を基に、取り組みを一段と強化しました。
  • 英国ではトライトン・ノール洋上風力発電所を運転しています。イギリスの事業ですがメインスポンサーはドイツ企業で、当社はそのプロジェクトに25%の出資をし、建設段階から加わっていました。
  • アメリカのジャクソン火力発電所は、イリノイ州シカゴの近郊にあり、アメリカで採掘されたシェールガスを活用したガス火力発電所です。当社が100%の持分で開発をした上で、タイの事業者に権益を一部譲渡しましたが、今も当社がメインで運転しています。
  • フィリピンのレイクマイニット水力発電所は、最近、運転を開始しました。これからの東南アジアでの水力開発は大きな可能性があり、今後は、アジアパシフィックが大きな市場になると思っています。アメリカ、オーストラリア、東南アジアといった国々でのリニューアブルエナジーを中心とした開発は、大きな開発の余地があると考えています。
  • 当社の海外事業は、もともと技術力があると自負していますが、それに加えてポートフォリオの管理の強化に取り組んでいます。どの国にどの程度の出資を行うか。ガス火力、水力、風力といった電源タイプをどう組み合わせるか。また、アメリカなどがそうですが、国によって発電事業資産の売却、発電資産の流動化が進んでいるところがあります。当社としては開発した段階で、一定のマージン込みでの売却が可能だと思えば売却を行う等、海外事業にはフレキシブルに取り組んでいきたいと考えています。
  • また、海外事業で得られたノウハウを日本に持ち帰り、国内の事業に生かしていきます。例えば先ほどご紹介したトライトン・ノール洋上風力ですが、洋上風力技術はヨーロッパが一番進んでいます。その技術を建設段階のノウハウも含めて、当社の技術者が日本に持って帰り、洋上風力事業に活用しています。さらに電力市場については、アメリカが先進的でいろいろなことに取り組んでいます。アメリカの電力市場で行われている制度・枠組みを学び、これを日本市場に当てはめたうえで対応していきたいと考えています。

【その他事業】

  • その他事業で規模が一番大きいものは、当社の石炭火力発電所の燃料でもある、炭鉱への投資です。オーストラリアの炭鉱で一部の権益を有しています。そのため、一昨年のウクライナ情勢による資源価格の高騰に伴い、当社の炭鉱投資事業での利益が大きくなりました。これが2022年度の利益を大きく押し上げた要因です。ただ、今期は落ち着いており、昨年あった一過性の利益は、今期は減少する見込みです。

 

3.J-POWERの未来

  • 経常利益は700億円規模で推移していましたが、昨年は、国際的な資源価格の高騰と、日本の電力市場の価格が高値で推移したことにより、利益を押し上げました。これが2022年度の利益増の要因です。今年度は国内の販売電力量が少し減っていることと、電力市場での価格が少し低位になっていること、国際的な資源価格も落ち着き炭鉱投資の利益が減少していることなどにより、昨年に比べて利益は減少する見込みです。経営計画の目標である今年度経常利益900億円は、達成する見通しです。
  • 今後、カーボンニュートラルと電力の安定供給の両立が必要となります。その具体的な取り組みとして「J-POWER BLUE MISSION 2050」を策定しました。この3つのポイントをご説明します。
  • 第1に「CO2フリー電源」です。水力や風力、太陽光などのリニューアブルエナジーを十分に開発します。加えて、CO2フリー電源である大間原子力発電所の建設に取り組んでいます。
  • 第2に「電源のゼロエミッション化」です。一部の火力発電所は規模を縮小したり、或いは既存の設備を利用しアップサイクルを行うことで、CO2を大気中に出さない発電所へのトランジションを進めます。まずは、バイオマスやアンモニアなどCO2を含まない燃料の混焼に取り組み、最終的には水素発電をメインにすることで、CO2の大気への放出ゼロを目指します。
  • 第3のポイントは「電力ネットワーク」です。日本は、リニューアブルエナジーが生産される場所と、電力が大量消費される地域とのネットワークがまだまだ十分ではなく、再生可能エネルギーを日本中で効率よく利用するためには今後電力ネットワークを充実させる必要があります。
  • 私どものCO2削減目標は、2030年までに、2013年度と比較して46%の削減を目指すものです。これは日本政府が国際的に公約している目標と同じものです。
  • 「BLUE MISSION 2050」は持続可能社会実現の為のみならず、当社の成長・収益性向上の原動力になると考えています。その理由として第1に、「BLUE MISSION 2050」と日本の政策との重点分野が一致しています。日本はエネルギー基本計画を数年単位で定めています。また「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」や、水素社会を目指すための「水素基本戦略」、再生可能エネルギーを日本全体で効率的に利用するための「マスタープラン(広域系統長期方針)」などが定められています。こうした日本政府の政策と、「BLUE MISSION 2050」の方向性は一致しています。
  • 第2に、当社が発電や送電に関して幅広く豊富な知見と技術を持ち合わせていることです。カーボンニュートラルを実現するために、基本になるのは技術です。技術をどのようにして社会実装していくかが一番のポイントです。リニューアブルエナジー、火力、原子力、送変電などあらゆる電気事業に関わる分野で、当社の技術者が優れた技術をなるべく早く、広く、安く、社会実装につなげるよう取り組んでいます。
  • 第3に、当社が資本効率や収益性の向上施策に取り組んでいることです。発電資産を流動化させる中で、長期的に発電を続けるだけではなく、事業の売却についてもこれから進めていきます。例えば金融機関などのファイナンシャルプレーヤーは、開発後にタックスメリットを享受することに強い意欲を持っています。そのため、例えば太陽光発電の開発までを引き受けて、その後プレミアムをつけて事業全体を売却することが可能だと考えます。
  • さまざまな取り組みに加えて、資本効率、成長の加速にも取り組みたいと思っています。当社はここ数年、PBRが0.5倍に到達しない水準で推移しています。これは気候変動問題の対応の中で、火力電源の将来の不確実性の高まりに加え、青森県の大間原子力計画の不確実性も高いと資本市場で認識されているためだと考えています。これらのリスクに対応しながら、資本効率を上げていくことが一番求められていることだと考えています。
  • 今年度は進行中の中期経営計画の最終年度です。来年度、新たな経営計画を発表する予定です。その中には、今の資本市場で不確実視されている当社のプロジェクトの確実度を上げていくよう、今、議論をしているところです。
  • 「BLUE MISSION 2050」の具体的な取り組みを少し紹介します。
  • 再生可能エネルギーの新規開発は、2017年度から2025年度までの間に150万kW以上の開発を目指し、順調に進捗しています。既に水力や火力で既存の設備を生かしたアップサイクルに取り組んでいますが、風力でも老朽化したウインドファームの建て替えを行っています。風車を建て替えて規模を大きくするという、スケールメリットを織り込んだ風力発電のアップサイクルです。その1つの実例が、北海道の新苫前ウィンビラ発電所です。2000年代初頭に開発された発電所で、2023年10月に運転を再開しました。
  • 大間原子力発電所は建設の途上で2011年の東日本大震災と福島第一原発事故を迎え、新たな規制基準への対応についての審査が行われています。なるべく早期に審査を完了させた上で、工事を再開し、運転開始につなげたいと考えています。
  • 火力電源は、長崎県に松島火力発電所という長い歴史を持った発電所があり、これをアップサイクルする「GENESIS松島計画」があります。これまでに広島で石炭ガス化プロジェクトに取り組んできましたが、これと同じ設備を松島火力発電所に加えることで、石炭におけるコンバインドサイクル発電(蒸気での発電とガスの燃焼発電のコンバインド)を行います。またそれに併せて、CO2を分離回収するところまで踏み込んでいこうと考えています。将来的にはCO2フリー火力電源の実現を目指します。CO2を分離回収した後、そのCO2をどうするのかという問題がありますが、その問題に対してはCCS(二酸化炭素回収・貯留)の技術を磨いているところです。ENEOSグループとともに新たな会社をつくり、日本近海での国内CCS貯留事業調査を始めました。
  • 再生可能エネルギーを効率的に日本全国で活用するために、電力ネットワークの整備は不可欠です。当社は既に約2,400キロの送電線を有していますが、今後も日本の送変電ネットワークの充実に尽力したいと思っています。現状、東日本が50Hz、西日本が60Hzという異なる周波数間の電力融通を強化するために、新佐久間周波数変換所と関連送電線の増強工事を行っているところです。
  • ここまでご説明した内容のまとめをいたします。当社の事業は、国内の事業と海外の事業があります。国内の事業で培った技術を海外事業に活かし、また海外事業で得た知見を国内事業で活かしていく、インターアクションを起こしながら進んでいくというのが大きな考え方です。当然、海外でもカーボンニュートラルが求められています。それぞれの国情に応じて、日本で培った技術を生かして貢献できると考えています。電力事業は、かつては安定した事業と見られていましたが、現状は国際資源価格の動向や気候変動問題における規制対応、各国での政策の違いなど、不確実性が増してきています。当社はこの不確実性の中でも、自分たちの見通しを持って安定した事業になるように取り組んでいきます。

 

4.投資家様へのご案内

  • ここで株主様から頂いた声をご紹介します。配当や、当社のビジネスモデルに関心を寄せているとのご意見などがあります。私どもは2004年に上場後、2005年から配当を開始しました。それ以来減配はなく、安定的に配当金額を増額しています。現在の配当利回りは4%程度です。
  • 当社は、株主様にJ-POWERのことを知っていただくための企画を考案しています。「J-POWER Shares」という株主様限定の登録制のWebサイトがあり、発電所で働く社員の紹介や、私も含めた役員のインタビューなどを配信しています。
  • また施設見学会として、当社設備やそこで働く従業員を見学いただく機会を設けており、ご好評をいただいています。ここ数年はコロナ禍により、施設見学会の機会が減っていましたが、既に再開しています。さらに今年はバーチャル見学会も実施し、フィリピンの水力発電所の見学会を開催しました。
  • 100株以上をお持ちで、当社からのアンケートにお答えいただいた株主様に対しては、毎年作成しているオリジナルカレンダーを進呈しています。
  • 今日の説明会を機会に、当社にご関心を寄せていただければ幸いです。

 

5.質疑応答

Q1. 今後、貴社が国内で注力する電源を教えてください。

A1. これから国内で、人員、設備投資の面でも一番力を入れていくのは、風力発電事業です。現状、100万kWサイズの開発が進行中です。それを一つずつ確実に完成させたいと思っています。風力には、陸上風力に加えて洋上風力の取り組みがあります。洋上風力の具体的な取り組みは、九州電力グループとともに、北九州市の洋上で22万kWの洋上風力を建設中です。日本で最大級の風車が、来春から立ち始める予定です。この他洋上風力には前向きに取り組んでいますが、国のルールがあるため、具体的なコメントはできません。陸上、洋上ともに、風力発電が国内の取り組みの一番大きな部分です。

 

Q2. 貴社は、ROEが2023年3月期に11%と高水準ですが、将来的なROEの目標はありますか。

A2. 将来的なROEの目標は、現状、経営の中でいろいろな議論を重ねているところです。今年3月末に、東京証券取引所から上場企業に対して、資本効率をどう考えているか会社の見解を出すようにという要請がありました。PBRは低迷していることを認識しています。大きなプロジェクトの不確実性をなるべく確実なものに変えていくための取り組みや、ROEの目標をどう考えるかは、現在、議論中です。来年春に公表する次の経営計画でご説明させていただきたいと思います。

 

Q3. 貴社のビジネスモデルの強みはどのようなことですか。

A3. 日本の電力会社が各地域に根付いていたのに対し、当社は全国を対象とし、かつグローバルな企業としてスタートしました。そのため、どこへでも行き仕事ができるという機動力があります。加えて、技術力もあります。技術力をベースとして、どこにでも行き事業を展開する機動性が当社の強みだと考えています。

 

Q4. 岸田首相はCOP28で、排出対策がない石炭火力発電所は新設しないと宣言していますが、御社の業績に影響はありませんか。

A4. 排出抑制策が施されていない石炭火力は、英語で「unabated coal(アンアベイティドコール)」といい、昨年来、この表現が使われています。当社は、一部の火力発電所は規模を縮小したり、或いは既存の設備を利用しアップサイクルを行うことで、最終的にはCO2排出をゼロにする火力電源を目指します。当社の発電所は全て、CO2排出削減策が施された発電所にトランジションしていきます。その最初の試みが、「GENESIS松島計画」です。 長崎県にある100万kWの松島火力発電所を停止し、アップサイクルをして、50万kWの次世代火力に再生させます。その後は、効率を高めてCO2を減らすと同時に、アンモニアやバイオマス燃料の導入、さらにはCO2を分離回収して日本の近海で貯留し、大気中にCO2を排出しない火力電源を目指します。「GENESIS松島計画」により当社の事業はさらなる成長が見込めると思っています。 ただ、今の状況では、これらの取り組みを行うと一定のコストが増すという課題もあります。そのコストは電気料金に反映されるわけですが、コストの増加を極力抑制することが、私どもJ-POWERも含めてエネルギー供給事業者に課せられた役割だと思っています。

 

Q5. 自社株買いの考えがあれば教えてください。

A5. 自社株買いは株主還元の手段の一つであり、当社としても引き続き検討していきます。現在は、将来に向けた大きなプロジェクトの計画が進行中です。一定の自己資本が必要だと考えて今まで蓄積してきたという経緯があります。自己資本は目標としていた30%を超える段階まで到達し、これからROEをどう考えるか、どの程度の自己資本が必要か、株主還元をどの程度まで行えるかなどを検討していきます。株主還元の中に、配当と合わせて自己株買いがあるということで、さらに検討したいと思っています。

 

Q6. 大間原発建設の見通しは明るいのでしょうか。

A6. 大間原子力発電所は、新しい規制基準に対応すべく、現在、審査を受けているところです。公表済みのことですが、本年は、大間で起こる地震動をシミュレーションするためのデータに入力ミスがありました。入力ミスを防ぐ取り組みを構築し、規制当局に説明をすることにほぼ半年を費やしました。それで時間がかかってしまったという実情がありますが、現状審査は本筋に戻り、確実に進捗を見せています。なるべく早く審査を終えて、工事を行い、運転開始できるように今取り組んでいるところです。大間原子力計画の確実度を上げることは、私どもに求められている大きなテーマだと認識しています。

 

Q7. 日本の火力発電効率は世界一と聞いていますが、発展途上国にとっては現実的な電源として最も有力だと思います。この事業を海外で伸ばしていくことは、世界のCO2削減に貢献できると考えられますが、どのように考えていますか。

A7. 日本の火力電源の発電効率は、ガス火力でも石炭火力でも世界最高効率を達成しています。それは、元々日本は自国で資源が採れず、輸入に頼らざるを得なかったということに起因します。自国で資源が採れる国は、資源を効率化する必要はありませんが、輸入に頼っている以上、なるべく効率よく使おうということで、最高効率の発電が実現しました。 この技術を移転することで、効率が例えば10%良くなれば、それだけCO2の排出も減ります。安価でCO2の排出を抑える発電所が実現できます。タイやインドネシアなど、これまで既にいくつかの国でそうした発電事業に取り組んでいます。ただ、今後は途上国においても気候変動への対応、CO2排出規制がより一層強まってくることになります。まずは日本で社会実装できているCO2低排出の技術を、海外に持ち込んでいくことで、特に東南アジアの諸国で大きな市場があるだろうと考えています。

 

以上

 

 

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