参天製薬株式会社(4536)
開催日:2017年12月6日(水)
場 所:ホテル阪神 大阪市福島区
説明者:コーポレート・コミュニケーショングループ
    IRチーム マネージャー 櫻井 基雄 氏

 

1.  会社概要と事業内容
・ 「天機に参与する」を基本理念としています。人間は天や自然から与えられたものを使って生活したり、あるいは事業を展開したりしています。当社は、天や自然の意図をきちんと理解して、それを最大限に活用することで世の中に貢献していくように努力しています。「天機に参与する」は、社名の「参天」の由来でもあります。
・ 企業が事業展開していく上で、お金や人などの経営資源は無限ではありません。限られた状況で当社の力を最大限に発揮して世の中に貢献できる道を、当社は長い歴史の中で考え続けてきました。その中で当社は目という特定の分野に持てる力を集中させるのが一番いいという結論に至り、現在では世界でも珍しい目に特化した企業としての道を歩んでいます。
・ 1890年(明治23年)に大阪の道修町で創業して、本年(2017年)で127年になります。1899年に大学目薬を発売しました。大学目薬は時代に合わせて中身の処方を変えていますが、日本で販売されている一番古い目薬です。1899年以降は目薬以外の薬も作っていましたが、1960年代に医療用点眼薬、つまり病院で使われる目薬の製造販売を始めたことを契機に、その後は目の病気に特化した事業を展開してきました。
・ 1990年代以降は海外への進出も始め、現在は中国、韓国、ASEANなどのアジア地域、ドイツ、イタリア、フランス、ロシア、北欧などのヨーロッパ地域にも事業を展開しています。当社の製品は世界60カ国以上で販売されています。近い将来にはアメリカの市場に参入すべく、2017年度より準備を始めています。
・ 当社は製薬企業の中でもスペシャリティファーマに分類されます。製薬企業は医療用の薬を中心に扱う会社と、一般用の薬を中心に扱う会社(OTCファーマ)に分けることができます。医療用の薬を中心とする企業の中で、全身の病気に関する薬を総合的に開発しているのがメガファーマです。当社のように特定の分野に特化して薬を開発しているのがスペシャリティファーマです。メガファーマとスペシャリティファーマは新薬開発を中心に行っていますが、他社で特許が切れた製品の製造・販売を中心に事業を展開しているのがジェネリックファーマです。
・ 参天製薬という社名で一番にイメージされるのが、サンテシリーズだと思います。サンテシリーズは、サンテFX、サンテ40、アンチエイジングに着目したサンテボーティエなど、目のさまざまな症状に効果のある製品を取りそろえています。一般用眼科薬、つまり薬局やドラッグストアで販売されている目薬の市場ではシェア第2位です。
・ 一般にはサンテシリーズの知名度が高いのですが、実は当社は病院で処方される目薬、医療用医薬品を主力事業としています。当社グループの売上高の90%以上を医療用眼科薬が占めています。サンテシリーズなどの一般用医薬品は6%に過ぎません。日本の医療用眼科薬市場で、当社はシェア1位を長らく独占しています。病院で処方される目薬の約半分は当社製品です。
・ 国内医療用眼科薬として当社が展開している製品は、40種類100製品以上あります。眼科薬における主要な疾患領域である、緑内障、角膜(ドライアイ)、網膜、抗菌、アレルギー、白内障をカバーすると同時に、眼科医が検査や手術の際に使う瞳孔を開く薬や麻酔の目薬も手掛けています。国内医療用眼科薬市場における当社のシェアは45.5%です。目の主な疾患領域全てでナンバーワンの地位を占めています。
・ 当社の海外売上比率は2017年3月末で27%、2017年9月末で29.6%です。2013年度末には16%でしたから、約2倍に成長していることが分かると思います。製品は世界60カ国以上のそれぞれの地域に向けて、日本(能登、滋賀)、中国(蘇州)、フィンランド(タンペレ)の工場で製造しています。石川県能登半島の工場は世界最大の目薬工場です。
・ 総従業員数は約3,700人です(2017年3月末)。日本と海外の比率は、国内約1,900名、海外約1,800名で半々です。

 

2.  眼科領域に特化することで獲得してきた強み
・ 当社は目の病気に特化して、目の病気で苦しんでいる患者とその生活の向上を目指して努力してきました。その中で生まれた当社の強みは4つあります。
・ 強みの1つ目は、各疾患領域における豊富な製品のラインナップです。当社製品の中で一番大きな売上高を持つアイリーアの年間売上高は約460億円です。アイリーアは加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等に効果があります。アイリーアとアレルギーのアレジオンは日本国内のみの販売となっていますが、緑内障のタプロス、コソプト、ドライアイのヒアレイン、ジクアス、抗菌のクラビットはアジアやヨーロッパでも展開しています。主要な疾患領域においてそれぞれに大きな売上高を持つ製品を持ち、世界中で医療現場のニーズに応えています。
・ 強みの2つ目は、専門性と組織力を生かしたトップクラスの販売力です。日本国内で当社の営業部隊がお会いしたことのない眼科医はいません。日本全国の全ての眼科医をカバーして営業活動を進めています。眼科医や患者の生の声をお聞きして、病気の早期発見につながる情報の提供や、より効果的な治療法の提案を行っています。また、一般の方々に病気を知っていただく疾患啓発活動を眼科医とともに行っています。このような活動を通じて眼科医と患者からの顧客満足度を向上させています。日本国内製薬企業の中でMR1人当たりの販売高は当社が1位です。
  アジアには医療水準が低い国がまだあります。そのような国では、眼科医の育成や研究活動支援にも力を入れています。日本以外の国においても眼科医との信頼関係を築きつつあり、製品を提供することだけでなく、治療そのものの改善にも貢献しています。
・ 強みの3つ目は開発力です。目薬はほかの錠剤と違い、薬の成分だけでなく、きれいな水を確保して、そのきれいな水に成分を安定的に溶かし込んで、それをボトルに詰めるという複雑な工程から成っています。当社は、それぞれの水、溶かす技術、ボトルなどに関して長年にわたる研究開発を続け、点眼薬そのものの発展や向上に貢献してきました。少しでも差しやすいボトルを目指してモデルチェンジを繰り返した結果、現在のディンプルボトルに至りました。ディンプルボトルは、あまり力を入れずに目薬を差すことができますし、転がりにくく、キャップが大きく色もはっきりしているので間違えにくいという特徴を持っています。
  緑内障などの領域では複数の目薬を同時に差していただく必要があります。当社は、複数の成分を溶かし込んで一つの目薬にすることで患者の利便性を高めることにも注力しています。
  目薬を目の表面にとどめて効き目を持続させる技術(ノバソーブ技術)の開発も進めています。この技術によって、点眼回数を減らすことができます。
  目の負担を軽くするために防腐剤を使用しない目薬を開発して、一回使い切りタイプを増やしています。防腐剤を使わないことによって、コンタクトレンズをお使いの方がレンズを外さずに目薬を差すことができます。特にヨーロッパの眼科医は、目薬に防腐剤を使わないことを重要視しています。そのようなリクエストにいち早く応えたのが当社です。ヨーロッパの防腐剤フリー点眼薬の分野では当社が大きな先駆けになりました。
・ 目薬は、薬の領域の中では小さな分野です。日本の医療用医薬品市場で目薬が占める割合は3.5%程度です。ほかの会社が参入しようとしても、技術を開発するために多くのお金がかかりますから採算が取れません。当社の持つ技術は、昔から目に特化してきた会社だからこそ手に入れることができたものです。
・ 強みの4つ目は、世界の研究機関や企業との連携です。目に関することなら参天と一緒に研究しよう、参天に任せようということで、世界中の研究機関や企業から声がかかる機会が増えています。目に特化してきたことで手に入れた強みを、さらに強化できるビジネスチャンスが着実に当社に集まる仕組みができつつあります。それによって当社の研究開発は効率的に進められています。

 

3.  成長戦略
・ 目というのは、年齢が進むにつれて確実に弱ってくる器官です。社会の高齢化に伴い目の病気で苦しんでおられる患者数は確実に増えています。何らかの目の病によって視力に異常が発生している方の人数は、世界中で約2億8,500万人、世界人口の約4%です。その内、完全に失明されている方が3,900万人もいます。
・ 世界の眼科薬市場は、2013年は約2兆円でしたが、2020年には3兆円になると予測されています。この拡大傾向は今後も続いていくものと考えられます。地域別には、西欧、アメリカ、日本などの医療の先進国での成長は比較的穏やかになりますが、アジア、ロシア、東欧などでは毎年10%程度の市場の拡大が見込まれます。疾患領域別では、2013年は感染症が大きなウエートを占めていましたが、2020年に向けて緑内障や網膜領域の疾患の割合が大きくなることが予測され、より高度な医療が求められます。
・ 当社は2020年度までの長期経営ビジョンとして、「世界で存在感のあるスペシャリティ・カンパニーの実現」を掲げています。眼科医や患者が望んでいることを今まで以上に深く考えてそれに応えていくこと、当社の強みをさらに伸ばすことで競争力を高めていくこと、そしてビジネスの基盤を海外に広げていくことを目指します。
・ 2020年度までの長期経営ビジョンの実現に向けて、現在(2017年度)は、真ん中の第2ステップに当たります。アジアやヨーロッパでの事業基盤の整備と強化によって海外事業から収益が十分に上がるようになりました。売上高における海外比率は2017年9月末で29.6%、目標の30%達成に近づいています。また、今期からアメリカ市場への参入準備も開始しています。ですから、2020年に向けた第2ステップは順調に進んでいるものと考えています。2020年には全売上高の40%が海外から上がるように努力します。
・ 当社グループの連結決算は、売上高、利益ともに2013年度から2017年度(予想)まで年平均で約10%成長を続けています。同期間の眼科薬市場の拡大率は年平均約6%といわれていますので、それを上回る率で成長しています。
・ 2017年度の業績は、売上高は初の2,000万円超えの2,180億円を予想しています。営業利益は前期比10%増の440億円を目指しています。
・ 主力の国内医療用医薬品事業では、薬価改定などの影響を受けにくい新薬を継続して上市していきます。また、早期発見や治療を継続していく方法をご提案することによって市場そのものを広げていく努力を続けます。一般用医薬品事業は、中国をはじめとするアジアからの海外旅行客のお土産として評判になったことから急成長を遂げています。高価格帯製品のサンテメディカルシリーズは、海外だけでなく国内でも高い人気を得ています。海外からの需要と国内からの需要を確実に取り込むことで継続的な成長につなげます。
・ アジアでの事業は、中国、韓国、ベトナムが中心です。中国には当社がカバーできていない地域がまだ広く存在します。今後は現在の中国沿岸部から内陸部へ営業地域を拡大していきます。中国やアジアでは、日本で既に効果が確かめられた薬を投入することで、研究開発費をかけずに事業を展開することができるメリットがあります。
・ EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)では、2014年にアメリカのメルク社から買収した緑内障製品や、当社が開発して、ヨーロッパ初のドライアイ治療薬となったアイケルビス(Ikervis)を販売しています。EMEAにおける当社の知名度は低いのですが、販売体制を強化して参天ブランドと製品の知名度を高める努力を続けた結果、順調に売上と利益を上げることができるようになりました。アイケルビスのさらなる浸透と、ロシア、東欧地域への進出を本格化することで成長を図ります。
・ 研究開発については、将来の成長を支えるために開発パイプライン(新薬候補)を一層強化しています。2014年度以降の開発品は全てグローバル展開を前提にしています。アジア向けに既存の製品を改良した開発品もそろえています。

 

4.  株主還元について
・ 株価は短期的に見ると上がり下がりがありますが、2013年からの4年間で見ると約2.5倍に値上がりしています。2013年1月4日の株価を100とした場合、2017年11月24日の株価が1,710円ですから指数は253になります。同期間の東証医薬品指数は197、東京株価指数(TOPICS)は200ですから、約2.0倍です。当社は2.5倍ですので、長期的には市場を上回るパフォーマンスを上げています。
・ 株主還元は、安定的かつ継続的配当を第一に考え、配当性向40%を基本方針としています。2017年度は通期26円の配当を予定しています。

 

5. 質疑応答
Q1. 貴社の国内医療用眼科薬市場におけるシェアは昨年度45%まで上昇していますが、今後どこまでシェアを上げられますか。眼科薬の市場は伸びていますか。
A1. 2017年度3月末は45%でした。ここから劇的に伸びることは難しいかもしれませんが、今後もシェアを上げる努力を続けます。
  市場そのものを拡大する努力も続けます。目の病気は自覚症状が少ないという特徴があります。片目に異常があっても、もう一方の目が補助しますので異常に気づきにくく、その間に病気が進んでしまいます。当社は早めに眼科に行っていただく啓発活動を続けていますから、市場は徐々に拡大しています。その中でトップの地位を維持していきたいと考えています。

 

Q2. 2020年までに海外売上比率40〜50%を目指されていますが、成長が見込まれる市場を教えてください。
A2. 一番成長が見込まれるのはアジア、特に中国です。中国は人口が多いこともありますし、目の病に対する関心も高まっています。ですから、中国で売上を増やすことができます。次にロシアです。国が広くて、ほかの製薬会社があまり参入していない状況もありますので、その中でシェアを築きたいと思っています。
  2020年までに売上に貢献することは難しいかもしれませんが、アメリカ市場に参入して少しでも売上を伸ばし、次の2025年に向けて大きく貢献できる事業にしていきたいと考えています。

 

Q3. 研究開発の基本方針や、研究開発における貴社の強みを教えてください。
A3. 研究開発における基本方針は、目の分野における未充足のニーズに応えていく製品を作っていくことです。
  目に特化したことから来る知名度が、研究開発における強みになっていると考えています。長らく目に専念してきた結果、「目に関することなら参天に任せたほうが早い」と、当社に声をかけていただくことが多くあります。特にアメリカのベンチャー企業から声がかかることが多いです。ベンチャー企業は、製品が出来上がったときに販売する力がありません。その中で日本、アジア、ヨーロッパで販売力を持っている当社に、研究と製品の販売を任せようと考えてくださる企業が増えています。

 

Q4. アイリーアやアレジオンは、なぜ海外で展開しないのですか。
A4. アイリーアの全世界における販売権はバイエル薬品が持っています。その中で日本に関しては特別に当社に任せていただいている状況です。当社が、例えば中国で売りたいと思っても、契約上の問題で売ることができません。
  アレジオンは、海外展開の可能性はあると思います。現在アレジオンの濃度を高めて、点眼回数を減らし、効き目を長持ちさせる製品を研究しています。それが出来上がりましたら世界展開も考える可能性もあります。

 

Q5. ヨーロッパの生産拠点がフィンランドにあるのはなぜですか。
A5. 今から20年ぐらい前に、当社がヨーロッパで事業展開を始めようとしたときに、工場を持つ目薬の会社が売りに出ました。それがたまたまフィンランドでした。物流を考えますと、フィンランドは地理的にメリットがあるわけではないのですが、ちょうどいい売り物があったというのが理由です。

 

Q6. 海外展開について、アメリカの展開が後回しになったのはなぜですか。
A6. 実を申しますと、今から10年前に一度アメリカ市場に参入したことがあります。しかし、ライバルが多い領域における製品だった上に、参天の知名度がなかったために失敗をしまして、撤退しています。ですから、ヨーロッパやアジアと同じようなタイミングでアメリカへの展開を図っていたのが実情です。
  本年度(2017年度)はアメリカ市場への参入の準備を始めていますが、その足がかりとなるのが、パイプライン(新薬候補)のDE-109とDE-128です。
  DE-109のシロリムスは、ぶどう膜炎のための注射剤です。ぶどう膜炎はアメリカでも約5万人しか患者がいない、非常に珍しい病気です。大きな会社にとって利益にならず、ライバルがいない領域です。ニッチな病気で足がかりを作って徐々に知名度を上げていこうと考えています。
  DE-128のマイクロシャント(MicroShunt)は、緑内障用のデバイスです。目に小さな管を差し込み、目にたまった水を外に出す治療に使われるものです。それを扱う眼科医はアメリカでも2,000人しかいません。非常に狭い領域であり、当社の知名度がなくても、30〜40人という小さな規模でも直接販売できる製品です。それが当社の手元にありますので、ここからアメリカ市場への参入をしていきたいと考えています。

 

Q7. 緑内障は目薬で治りますか。
A7. 緑内障は進行を遅らせることしかできません。放っておくと眼圧が上がりすぎますので、それを目薬で下げます。眼圧が上がったことで傷ついた視神経は、今の目薬では治すことができません。長い間、目薬を差していただくしかないというのが現在のお答えです。

 

Q8. 特に大きな売上が期待される新薬候補を教えてください。
A8. パイプラインのDE-117のEP2受容体作動薬です。この製品は、今まで緑内障の治療に使われていた目薬とは成分が違います。ですから、今までの目薬で現れていた副作用が出ません。2017年11月末に日本で申請しましたから、1年後ぐらいに日本で販売が始まると思います。その後、グローバル展開を考えます。

 

以上

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