株式会社三菱ケミカルホールディングス(4188)
開催日:2017年12月10日
場 所:エルガーラホール8階 大ホール(福岡市中央区)
説明者:理事役 広報・IR室長 高阪 肇 氏

 

1. 会社概要と事業領域・業績
・ 2017年3月期現在、当社は資本金500億円、連結売上高3兆3,761億円です。業界内のポジションは売上高ベースで国内第1位、世界第5位です。連結コア営業利益は3,075億円、連結従業員数は6万9,291人、関係会社数は731社に及びます。海外売上高比率は39.5%で、日本・アジアが非常に多いものの、欧州、北米、中南米、アフリカと全世界で事業を展開しています。
・ 当社は純粋持ち株会社で、グループ全体の事業戦略などを司っています。当社の下に4つの事業会社を置き、さらに事業会社の下にグループ会社があります。
・ 三菱ケミカルは化学品、化学品を用いた加工製品を主体にした会社です。2017年4月、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンを統合して発足しました。
・ 田辺三菱製薬は医療用医薬品の製造販売会社です。
・ 生命科学インスティテュートは医療用医薬品以外のヘルスケア分野で事業を展開しています。2020年東京オリンピック・パラリンピックでは国内唯一のドーピング検査認定機関となりました。
・ 大陽日酸は産業ガスの会社ですが、半導体向けの特殊ガス、水筒で有名なサーモスも傘下に置いています。
・ 当社の商品はほとんどが産業向けの中間素材的な商品ですが、大きく機能商品、素材、ヘルスケアの3つに分けることができます。
・ 機能商品はスマートフォンや有機ELテレビに使う光学系フィルム、炭素繊維、リチウムイオンバッテリーの材料など付加価値が高いもので、当社の売上高全体の32%を占めています。素材は石油化学製品や産業ガスなどで、売上高は46%。ヘルスケアは医療用医薬品やライフサイエンスで、売上高は16%です。
・ 2011年度の営業利益は1,305億円で、素材も大きな利益を生み出していました。しかし、2012年度から円高と中国での過剰生産が原因で、プラスチック類などの汎用的な素材の利益が急速に減少した結果、利益の大半は医療用医薬品となりました。
・ このような状況を受け、石油化学や肥料など収益率が低い分野、赤字の分野からは2016年までに撤退しました。売上高にして4,500億円ほどが減少しました。一方で、その間に日本合成化学工業、エンジニアプラスチックを手掛けるクオドラント、産業ガスの大陽日酸などを子会社化しました。このように機能商品を中心としてM&Aを実施し、産業ガスなどで素材の中身を入れ替えることで、安定的な収益源を得ました。
・ 安倍政権が発足し、為替が70〜80円/ドルの時代から110〜120円/ドルに戻ったことで、当社の構造改革の効き目が現れました。素材が復活し、機能商品も伸びて、ヘルスケアを合わせた3つのバランスが良くなり、2016年度は過去最高の営業利益3,075億円を生み出すことができました。この5年間で構造改革が大幅に進みました。
・ 2017年度の予想はコア営業利益が3,650億円、当期純利益1,800億円です。上半期はコア営業利益1,923億円、当期純利益1,005億円で、順調に推移しています。今期も機能商品を中心に利益を伸ばしていけると考えています。

 

2.中期経営計画とアクションプランの進捗
・ 過去5年間で、大きな特別損失を出すような構造改革は、やり終えたと認識しています。2016年度から2020年度までの5年間、中期経営計画「APTSIS 20(アプトシス20)」を実行し、高成長、高収益、財務基盤強化の3つを主眼に経営のかじ取りに臨みます。
・ 2020年度目標として、コア営業利益3,800億円、ROS(コア営業利益率)8%、最終利益(当期純利益)1,800億円、ROE(自己資本利益率)12%、Net D/Eレシオ0.8を掲げました。2015年度に立てた目標ですが、2017年度予想で達成している数値が多く、今後は、もう一段上の利益向上を目指していかなければならないと考えています。
・ 機能商品、素材、ヘルスケアに分けて細かいアクションプランを定めました。この2年間で実行できたものとして、グローバル拠点への積極的な投資と海外マーケティングの強化をはじめ、素材ではMMAや産業ガスの世界シェア維持・拡大、石化の生産最適化による基盤強化、ヘルスケアでは医療用医薬品のパイプライン強化や米国展開などがあります。
・グローバル拠点への積極的な投資と海外マーケティングの強化にはポリエステルフィルムの新ライン建設、炭素繊維事業の拡大、リージョナルヘッドクォーターの設立という3つの取り組みがあります。ポリエステルフィルムの新ライン建設では北米における高機能フィルム製品の増産を行いました。炭素繊維は東レが航空機向けに大きなシェアを持っていますが、当社は自動車向けを中心に据え、拠点買収や増設を行いました。
・ 今後は海外で大きな収益をあげていかなければなりません。そのために、米国、欧州、中国、アジア・パシフィックにリージョナルヘッドクォーター(地域統括会社)を設立し、地域ごとにしっかりとしたマーケティングと地域戦略策定に取り組んでいます。
・ 先ほど述べましたが、利益は2020年度の目標値に近づいています。そこで、今まで計画していた投資にプラスアルファすることで、さらに成長を促すことを考えています。投融資を軸に2,000億円増額します。計画の1.5兆円から機能商品を中心に1.7兆円としました。R&D投資は機能商品、ヘルスケアを中心に3年間で 250億円増額します。

 

3.2020年度に向けた運営方針と成長戦略
・構造改革は今後も継続していきますが、今後は赤字事業だけでなく、収益性の低いものもチェックします。その管理方法をポートフォリオマネジメントと呼んでいます。次世代事業、成長事業、再構築事業、基盤事業という4つに分け、指標をチェックしながらPDCAサイクルを実行します。
・ 指標には成長性指標(売上高成長率)、収益性指標(ROS)、資本効率性指標(ROIC)があります。売上高成長率は4%以上、ROSは機能商品が8%以上、素材が5%以上、ヘルスケアが14%以上、ROICは機能商品で8%以上、素材で5%以上、ヘルスケアで8%以上を基準とし、これを下回っている場合、上げることができるかどうかチェックし、無理であれば撤退や売却、あるいはその分野に強い他社とジョイントベンチャーを組むことになります。こうしたポートフォリオの管理が高い収益性を維持するために大事な視点・方法だと考えています。
・ また、成長戦略は収益を上げながらも一定のポリシーに従うことを前提としています。グループ理念・ビジョンとメガトレンドによって、取り組むべき社会課題を設定します。
・ メガトレンドとしては気候変動の増大、水資源の汚染・不足、人口の増加と高齢化の進展、グローバル化と新興国の発展、地域経済圏の拡大、産業のデジタル化、モジュール化、ICT化、医療費の増加、再生医療・個別化医療の進展が挙げられます。
・ 取り組むべき社会課題には資源・エネルギーの効率的利用、清浄な水資源の確保、健康維持・疾病治療への貢献、気候変動への対応(CO2 削減)、食料・農業問題への対応、スマート社会への対応が挙げられます。
・ これらの社会課題を解決するマーケットに素材を提供することで、社会と共生しながら利益も上げることができます。このような考え方に基づき、自動車・航空機(モビリティー)、IT・エレクトロニクスディスプレー、メディカル・バイオ・フード、ヘルスケア(医薬品・ヘルスケアソリューション)、環境・エネルギー、パッケージング・ラベル・フィルムという6つのマーケットに素材を提供していきます。
・ 例えば、自動車に炭素繊維を用いることで軽量化され、エネルギーの効率化につながります。環境・エネルギーではリチウムイオンバッテリーがエネルギーの効率化とともに化石燃料の節約にもつながります。このように社会のニーズに合致することを考えながらフォーカスするマーケットを設定しています。
・ そのような中で特徴的な製品としては、まず炭素繊維は軽くて強い上に優れた耐食性や環境にやさしいという特徴があります。トヨタ自動車の新型プリウスPHVのバックドアの骨格部材のほか、レクサス新型ラグジュアリークーペLC500、LC500hのドアインナーやラゲッジインナー、プレミアムスポーツクーペ Audi A5のルーフにも採用されました。電気自動車では走行距離を伸ばすために軽量化が求められます。軽くて強い素材が、さらに伸びることは間違いありません。2020 年に売上高1,000 億円を目指します。
・ 次にフィルムですが、スマートフォン、液晶ディスプレー、有機ELテレビにはフィルムが何層にも入っています。前から見てきれいに見える機能、画面をタッチしたときにスムーズに動く機能などを持つフィルムが多くのメーカーに採用され、当社の大きな収益源になっています。今後は液晶から有機ELに替わっていきますが、有機ELに必要なフィルムも、かなり有しており、安定した収益が見込めます。
・ 医療・ライフサイエンス分野のエンジニアリングプラスチックも注目製品です。セラミックスの人工関節をエンジニアリングプラスチックに置き換えると潤滑性や耐久性に優れ、軽いというメリットもあり、欧米を中心に急速に売り上げを伸ばしています。さらに、エンジニアリングプラスチックと炭素繊維を複合化させることで、より軽く、より強い製品を開発しています。三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの3社統合のシナジー効果といえます。
・ 2020年の東京パラリンピックに向け、純国産のスポーツ義足製作の取り組みが行われ、炭素繊維が用いられています。まだビジネスにはなりませんが、こうした取り組みをしながら、当社の素材が、どの分野に生かせるかを探索していきます。
・ ヘルスケアでは国の施策で、これから毎年、薬価改定が行われるのではないかという話があり、国内の収益は、かなり圧迫されると予想されます。そこで海外に技術を導出してライセンス料を取得することや、当社自体の海外進出にチャレンジしていきます。
・ その一環として、ALS治療薬「ラジカヴァTM 」(日本製品名「ラジカットTM 」)や、傘下に入れたイスラエルのニューロダーム社のパーキンソン病治療薬「ND0612」を米国に上市し、2020年には米国での売上収益800億円を目指します。
・ また、再生医療製品の開発にも取り組んでいます。もともとヒトの生体内に存在しているMuse細胞を培養し、再度、体の中に戻し、特定の部位にどれだけ効果があるのかを研究しています。心筋梗塞に関しては、血管を通じてMuse細胞を点滴投与して心臓に送ると、傷害部位からシグナルが出て、Muse細胞が心筋や血管に分化して修復させる効果がラットでは確認されました。2017年度中には臨床試験を開始し、2020 年度に申請、2021年度の承認を目指しています。もちろん、他の疾患もMuse細胞で治療できるよう、チャレンジしていきたいと考えています。
・ 現在、産業基礎素材の分野で、非常に透明度の高いMMAというアクリル樹脂原料が収益に貢献しています。水族館の水槽や看板などに使われ、売上高約3,000億円で世界生産能力シェアの約40%を占めています。サウジアラビアでは2017年12月、プラントがスタートしました。将来は米国でもシェールガスを使ったプロジェクトを立ち上げたいと考えています。
・ 以上のように、ポートフォリオマネジメントを実施し、特徴ある素材を伸ばしていく取組みをする中で3社統合による協奏・成長、合理化で440億円の収益向上を実現しました。
・ 先に述べましたが、2017年のコア営業利益3,650億円から2020年度には3,800億円に伸ばす目標を立てましたが、さらに利益水準4,300億円を視野に入れ、いろいろな取り組みにチャレンジしたいと、詳細部分の検討を進めています。

 

4.KAITEKI経営の深化と株主還元策
・ 当社は「THE KAITEKI COMPANY」というコーポレートブランドを掲げました。KAITEKIとは、“時を越え、世代を超え、人と社会、そして地球の心地よさが続く状態”です。私たちは製品・サービスを通じて社会的課題を解決します。
・ KAITEKI価値(企業価値)は3つの軸で構成されます。1つ目の軸は資本の効率化を重視する経営です。株式会社ですから、株主から預かった資金を使って収益をあげることです。2つ目の軸はイノベーション創出を追求する経営です。技術プラットフォームを磨き、革新的な製品やサービスを創出します。3つ目の軸はサステナビリティーの向上をめざす経営です。さまざまな環境・社会課題の解決に貢献しながら、どれだけ持続可能な成長ができるのかということを追求していかなければいけません。これら3つの軸を合わせたものを企業価値と考え、事業を進めていきます。
・ サステナビリティーの向上を目指す経営の具体例として、CO2 排出削減、省資源、再生可能材料への転換、水リスク対応などがあげられます。例えば、ライフサイクルアナリシスという手法を使い、製品が生まれたときから使われるまでのCO2削減に対する貢献度をトータルで考え、それぞれのカテゴリーで進捗率を見ています。
・ こうした取り組みを進めていく上では従業員の健康や充実度、組織の活性化も欠かせません。そこでKAITEKI 健康経営を進めています。経営のリーダーシップのもと、従業員の健康を支援し、働き方改革を実現するため、ICT/IoTを活用し取り組んでいます。生産性向上のためには従来の仕事だけではなく、より創造性が高い仕事を従業員が満足して行うことが大事です。どれだけ前向きに仕事ができるかということも考えながら進めていきます。
・ ESG(Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)の諸活動の進展によって第三者の当社への企業評価が向上しています。最も有名なダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インディシスではアジアメンバーでしたが、ワールドメンバーに組み入れられました。
・ 当社は収益のいかんに関わらず、安定的な配当を行ってきました。今後も基本的には安定的な配当を目指します。中期的な連結配当性向の目安は30% 。財務体質強化や成長戦略に取り組み、株価に反映される成長をしていきたいと考えています。

 

5.質疑応答
Q1.田辺三菱製薬がニューロダーム社を買収し、三菱ケミカルがCPC社に出資する動きがありましたが、今後のM&Aや事業提携に関する考え方をお聞かせください。
A1.機能商品とヘルスケアを中心に資金を投じていきたいと考えます。M&Aに関しては例えば当社と大きな化学会社が一緒になるという超大型合併を視野に入れた予算は組んでいません。海外で、収益性が高い機能商品に取り組むなら、スピード感とお客さまとの対話が重要です。スピード感のためには当社が持っていない技術を有する会社を買収することです。お客さまとの対話のためには販売チャンネル、マーケティングチャンネルを買うことです。そうしたところで重点的にM&Aを行っていきたいと考えています。そういう意味では1,000〜2,000億円規模ではなく、200〜300億円規模が中心になると考えています。ただ、超大型M&Aが絶対にないかというと、そのときの情勢によりますので断定はできません。

Q2.3社統合し三菱ケミカルが誕生しましたが、経営はどのように変化しましたか。
A2.技術シナジーという意味ではエンジニアリングプラスチックや炭素繊維など、いろいろな組み合わせの商品として生かされました。また、マーケットの広がりもあります。例えば三菱レイヨンは炭素繊維の航空機会社のチャンネルを持っていませんでしたが、クオドラントはエンジニアリングプラスチックの会社で、航空機メーカーや米国の自動車メーカーに強い足場を持っていました。一緒の事業部にすることでチャンネルが広がりました。さらに人事制度や給与体系の一本化を通じて、従業員が同じ目線で考えることができる体制となりました。今後も、こうした方向を強力に加速していきたいと考えています。

以上

 

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