富士フイルムホールディングス株式会社(4901)
開催日:2017年12月3日(日)
場 所:大和コンファレンスホール 東京都千代田区
説明者:執行役員 経営企画部 コーポレートコミュニケーション室長  吉澤 ちさと 氏

 

1. 会社概要および事業内容
・ 当社は1934年に創業し、2017年に創業83年を迎えました。2016年度の売上高は2兆3,222億円、営業利益は1,723億円でした。世界に288社の関連会社を持っており、グローバルに展開している企業です。連結従業員数は78,501人(2017年3月末現在)、時価総額は2兆3,807億円(2017年10月末終値)です。
・ 社名を聞いて写真の会社という印象を持たれる方も多いと思いますが、この15年ほどで当社は大きくその姿を変えています。主な事業領域は、イメージングソリューション、インフォメーションソリューション、ドキュメントソリューションとなります。各領域の売上が全体に占める割合は、イメージングソリューションが約15%、インフォメーションソリューションが約39%、ドキュメントソリューションが約46%です。
・ イメージングソリューションは、写真フィルム、「写ルンです」、デジタルカメラのほか、インスタントカメラ「チェキ」、写真をプリントする紙、カラーペーパーやプリント用の機器、テレビカメラ用のレンズなど、写真やカメラに関わる製品を提供しています。「チェキ」は、2016年度に世界で660万台を販売しました。2017年度は約15%増の750万台の販売を計画しています。スマートフォンで写真を撮る方が増え、デジタルカメラの市場は販売台数が減っていますが、当社は「Xシリーズ」のミラーレスデジタルカメラを中心に高級機種を展開しており好調です。
・ インフォメーションソリューションのコア事業は、ヘルスケアと高機能材料です。ヘルスケア分野では、薬、化粧品、サプリメントなど人の健康に関わるものや、内視鏡、超音波診断などの診断機器を展開しています。高機能材料分野では、液晶ディスプレイに欠かせない偏光板保護フィルム等のディスプレイ材料や、ノートパソコンやタブレットのタッチパネル用センサーフィルムなどの産業機材、半導体の製造プロセスに使われる電子材料、そのほかさまざまな化成品を含むファイケミカルなど各事業を展開しています。グラフィックシステム分野は、新聞などのオフセット印刷に必要な印刷材料やインクジェットデジタルプレスを展開しています。記録メディア分野では、バックアップに使用するコンピューター用磁気テープなどを提供しています。
・ ドキュメントソリューションは、当社グループの富士ゼロックス株式会社が行う事業です。なお、富士ゼロックスに関しましては、2017年度の上半期にニュージーランドの販売子会社における不適切会計問題でご心配をおかけして誠に申し分けございません。現在、ガバナンスの強化に取り組んでおり、信頼回復に努めておりますので、引き続きご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
  富士ゼロックス株式会社は1962年に富士写真フイルム株式会社(現・富士フイルムホールディングス)とアメリカのゼロックス・コーポレーションの合資会社として設立されました。以来、国内業界初の普通紙を用いた複写機を発売し、この分野の先駆者としてオフィス向けのトップポジションを維持しており、2001年に連結子会社化しています。最も大きな事業であるオフィスプロダクト&プリンター事業は、オフィス向けのコピー機やデジタル複合機、レーザープリンターなどを提供しています。プロダクションサービス事業では、印刷会社で使われる大型のデジタル印刷機を提供しています。ソリューション&サービス事業は、オフィスでの印刷に関わるコスト削減などのコンサルティングや印刷管理業務を請け負うサービスを提供しています。アメリカのゼロックス社と共にグローバル企業の全世界における出力管理に対するサポートを請け負っています。成長しているこの市場でも、当社はマーケットリーダーとなっています。

 

2. 事業構造の変化について
・ カラーフィルムの世界総需要は2000年がピークで、その後、デジタルカメラの普及によって急速に減少しました。総需要はこの十数年間で100分の1に減少しました。当社の祖業は写真フィルムであり、大きな売上を占めていましたから、その売上が急速に減少していくことは当社にとって深刻な危機でした。当社はこの危機を乗り越えるために事業の構造を大きく転換し、写真フィルムに替わる収益の柱を育てました。長年にわたる当社のライバルであったアメリカのイーストマン・コダック社が2012年に経営破綻しましたが、当社は積極的に業態転換をすることでデジタル化の危機を乗り越えてきました。これが当社と他社の明暗を分けたポイントだと思います。
・ 当社は、技術を軸に次の事業の柱を育てていく意志を持ち、業態転換を進めてきました。写真フィルムには、最先端技術というイメージはないかもしれませんが、実は高度な化学技術と生産技術を結集させた化学の芸術品と呼ばれるような製品です。当社は写真フィルムの開発や生産を通じて、化学合成の技術、薄膜形成技術技術、精密加工技術、画像処理技術など、さまざまな高度な技術を蓄積してきました。写真フィルムの発色層は毛髪5分の1程度の厚みで、その厚さに20種類の層・100種類以上の化合物を適切な場所にコントロールしながら一度に塗布していく技術が求められます。このような難しい技術が必要であったために、これまでに世界で数社しか写真フィルムのビジネスを展開することができませんでした。この技術を生かして、当社は多角化を進め、新しい事業を育成してきました。
・ 転換に当たり、まず「技術の棚卸」を行い、当社が持つ技術資源を細かく確認しました。その上で徹底的に議論を重ね、市場に成長性があるか、当社の技術を生かせる市場なのか、継続的に競争力を持ち続けられるのかという観点から、新しい分野を選んできました。その結果として定めた成長分野に集中的に経営資源を投入して、新しいビジネスを起こしてきました。
・ 一例として、エイジングケアシリーズの「アスタリフト」をはじめとする、機能性化粧品の分野があります。2006年に化粧品市場に参入した当初は、「なぜ富士フイルムが化粧品をやるのか」という疑問の声が多く寄せられました。しかし、当社には化粧品に生かすことのできる3つの大きな技術がありましたので、強い自信を持ってこの分野に入っていきました。
  1つ目に、写真フィルムの主な原料は、肌と同じコラーゲンです。このコラーゲンを写真の中で原材料として使ってきましたので、コラーゲンに関する幅広い知識を有していました。2つ目に、写真の色あせと肌の老化は共通の原因である「酸化」によって起こりますが、当社は酸化を防ぐ抗酸化技術を研究しきました。3つ目に、化粧品の中の有効成分を小さくするナノテクノロジーを当社は持っていました。これは写真を高精細に表示する写真フィルムの開発で培われた技術です。これによって化粧品の成分を浸透させることができます。これらの蓄積した技術を生かして、新しい市場に進出して、化粧品はご好評を得ています。
・ さまざまな分野で培った技術をベースに事業展開を進めるとともに、必要に応じてM&Aなども行い、現在は3つのセグメント、15事業を展開しています。

 

3. 中期経営計画
・ 2017年8月に、中期経営計画「VISION2019」(2017年度〜2019年度)を発表しました。各事業がさらなる収益力の向上により安定的にキャッシュを創出し、主要事業での成長を加速し、売上・利益を拡大し、それらで得たキャッシュを、当社の未来の柱となる事業へ投資し、収益に貢献する事業に育てていくことで、事業ポートフォリオをより強固なものとし、戦略的飛躍へとつなげていきます。海外展開なども含め、営業利益目標を達成することに加え、株主還元強化によってROEの向上も目指します。M&Aも実施していきたいと思っています。
・ 中期経営計画について当社の成長事業であるヘルスケアを中心にご説明します。「VISION2019」において、ヘルスケア分野は、メディカルシステム、ライフサイエンス、バイオCDMOのさらなる成長と、医薬品、再生医療の黒字化によって売上高5,000億円、営業利益8%を達成していきます。化粧品、サプリメントを中心とする「予防」の分野、X線画像診断、内視鏡、超音波画像診断装置、医療IT等の「診断」の分野、再生医療、医薬品の「治療」の領域をカバーするトータル・ヘルスケア・カンパニーとして事業を進めていきます。
・ 医療ITネットワークとは、X線やCTなどの診断画像を管理するソフトウエアです。ネットワーク化することで、医師の診断や医師から患者さんへのご説明の際に役立てていただくシステムです。医療ITネットワークの分野で、当社は施設数ベースで国内シェア1位、金額ベースで世界シェア2位(当社調べ)となっています。当社は医療ITネットワーク「SYNAPSE」を核にX線画像診断装置、内視鏡、超音波画像診断装置、IVD(体外診断)の装置を展開しています。医療ITネットワークを通じた遠隔診断によって、例えば、離島などでも高度な診断を受けることが可能になります。これらの幅広い製品・サービスのラインアップを生かし、年率7%の売上成長を目指します。
・ 新薬開発の分野では、アルツハイマーやがんなど、まだ治療法が完全に提供されていない領域の医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)が高い領域をターゲットに、効率的な研究開発を推進して取り組んでいます。
・ バイオCDMO事業は、バイオ医薬品の開発受託・製造受託の事業です。バイオ医薬品とは、生物由来の物質(細胞、ウイルス、バクテリアなど)から作られる薬で、副作用が少なく、効果的だといわれています。しかし、製造がとても難しく、高い精度の品質安全基準を満たす必要があります。当社は高度なバイオテクノロジー技術や、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウを生かし、バイオ医薬品の製造を受託する事業を展開しています。高品質かつ効率よくバイオ医薬品を製造することができることから、近年多くの発注をいただいています。製造設備を増強し、年率10%以上の売上成長を目指します。
・ 再生医療は将来大きな市場になることが期待されています。再生医療とは体の外部で培養した組織や臓器を用いて、病気や事故などで損傷を受けた体の機能を回復させる医療です。再生医療には、体の機能を回復させる医療としての側面のほかに、創薬支援としての側面があります。医薬品の開発は、最初に動物実験をして効果を測定する段階があります。そのチェックをiPS細胞で行うことで、人間に対する受容性などを調べることができ、医薬品開発の効率を大きく上げることができます。こちらは既に市場が立ち上がり始めている分野です。
  再生医療では「細胞」「培地/サイトカイン」「足場」の3つの要素がないと、臓器や組織が育ちません。稲作に例えれば、細胞にあたる「種」があっても、サイトカインにあたる「良い肥料」と育つための「苗床」が無ければ、立派な稲は収穫できないことと同様です。「富士フイルムグループでは、iPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるセルラー・ダイナミクス・インターナショナル、国内で最初に再生医療製品を上市した株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングで「細胞」を作っています。富士フイルムには「足場材」であるリコンビナントペプチドがあります。2017年4月に連結子会社化した和光純薬工業株式会社には「培地」があります。当社は再生医療に必要な3の要素全てがそろう世界唯一の会社です。
・ VISION2019の業績目標として、最終年度の2019年度に売上高2兆6,000億円、営業利益率は過去最高となる2,300億円を達成します。当社株主帰属当期純利益は過去最高となる1,500億円を達成して、ROEを7.3%に向上させます。この目標にはM&Aなどは含めておらず、戦略的M&A投資などによって売上・利益の上乗せを図っていきたいと考えています。さらに、2020年度にはROE8.0%まで向上させたいと考えています。
・ 2019年までの3年間で、配当と自社株式の取得を合わせて総額3,000億円を株主の皆様に還元する計画です。配当性向25%以上という方針の下、3年間で自社株買い2,000億円、配当合計1,000億円を計画しています。配当は最終年度で10期連続増配となる1株当たり95円を予定しています。
  さらに成長をスピードアップさせるための戦略的投資とし、3年間で5,000億円規模のM&Aの投資の予算枠を確保しています。

 

4. 株主還元及および株主優待
・ 2016年度の年間配当金は対前年5円増配となる、1株当たり70円でした。2017年度の年間配当金は、8期連続増配となる対前年5円増配の1株当たり75円を予定しています。VISION2019の最終年度となる2019年度には、10期連続増配の1株当たり95円配当を目指します。
・ 当社は2012年4月から株主優待制度を導入しました。優待内容は化粧品、サプリメントなどのヘルスケア商品トライアルキットの進呈、また商品割引販売と、写真プリントサービスのフォトブックの割引クーポン券となっています。3年以上、500株以上の株主様には、ヘルスケア商品の本品や4,000円分のフォトブック作成クーポン券を進呈するなどの特典も設けています。
・ ・富士フイルムグループは、今後も、2014年1月に定めたコーポレートスローガン「Value from Innovation」の下、不断のイノベーションを通じて将来にわたって成長し続けていきます。そして、革新的で優れた価値を社会に提供し続けていきます。

 

5. 質疑応答
Q1. インスタントカメラのチェキが人気と聞いていますが、現在も好調でしょうか。
A1. 現在も大変好調に推移しています。チェキは撮った瞬間にプリントが出てくるカメラです。主なユーザーは15〜35歳ぐらいですが、今の若い世代の方たちには、プリントがその場で得られることがかえって新鮮に感じられるようです。2016年度は660万台販売しまして、2017年度は750万台の予定です。2017年度上期は300万台の販売でしたが、この製品はクリスマス商戦のシーズンに販売ボリュームが高まりますので、750万台は達成できると考えています。最初にアジアで人気に火が付き、続いてアメリカ、ヨーロッパでも非常に売れています。

Q2. スマホに押されていたデジカメ事業の最近の状況と、今後の見通しについて説明してください。
A2. デジタルカメラの販売台数について、皆さんがスマートフォンで写真を撮るようになってから、エントリーモデルといわれる比較的リーズナブルなデジタルカメラの台数は、どんどん減ってきました。当社はスマートフォンが出てきたときに市場の動向を予測して、エントリーモデルのデジタルカメラは、一部の特徴あるものを除いて新たに開発することを控えるようにしました。そして、ミラーレスタイプのレンズ交換式高級機にシフトしてきました。
  現在もデジタルカメラの市場は厳しいのですが、その中で唯一伸びているのがミラーレス領域です。当社のミラーレスの製品は大変人気で、2017年度上半期は、昨年度に比べてデジタルカメラの売上が大幅に増えました。当社のデジタルカメラの特徴は色にあります。「あの鮮やかな青空」とか、「あのきれいな紅葉」など、頭の中でイメージした色である「記憶色」がそのまま再現されます。プリントにして美しいという、80年以上写真を扱ってきた会社の特徴を生かしたデジタルカメラを提供しています。2017年2月には、35mmフルサイズセンサーの約1.7倍の面積の中判センサーを搭載しながらフルサイズ一眼レフ並みの大きさ・重さ・価格の中判ミラーレスカメラを新たに市場に投入しました。標準的なレンズ1本付きで約100万円の製品ですが販売は好調です。

Q3. 富士ゼロックスの今後の展望について教えてください。
A3. 富士ゼロックスは1962年に当時の富士写真フイルム株式会社(現・富士フイルムホールディングス)とアメリカのゼロックス・コーポレーションが合弁会社としてスタートさせた会社です。最も成功したジョイントベンチャーといわれる会社で、複合機、コピー機のトップポジションをキープしてきました。大手企業や官公庁で多く使っていただいており、台数のシェアがトップクラス、プリントする紙のボリュームとしてもトップのシェアを持っている会社です。
  働き方改革の一貫で、無駄な残業をせずに効率的に時間を使うことがいわれていますが、当社はそれをサポートする新しいサービスも提供しています。例えば、名刺のデータベース化です。複合機、コピー機に付いているスキャナーに名刺を読み込ませることで、部署全体あるいは会社全体で情報を共有して自分たちのネットワークの資産にすることができます。そのほか、出張の際のタクシーなどの領収書をスキャナーに読み込ませることで、自動的に経理システムに入れるサービスも提供しています。
  働き方を効率化させるサービスを提供していくことを通じて、富士ゼロックスは今後もビジネスを拡大していく計画です。

Q4. 再生医療の株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングを黒字化させるなど、M&Aの目利きは素晴らしいと思います。今後の方向性について教えてください。
A4. 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは再生医療の先端的なベンチャー企業です。再生医療は2020年には世界で1兆円、2030年には30兆円の市場規模になるといわれています。当社がこの会社をグループに迎えたときは、創業以来、赤字の会社でした。当社は再生医療における同社の価値を認め、富士フイルムグループの中に迎え入れました。その後、当社から人材も派遣することで、黒字化させることができ、2017年度上半期も黒字でした。
  このほか、最近いくつかのベンチャー企業へも出資しています。全てを自社のグループの中に入れるわけではありませんが、再生医療がこれから伸びていく中でいろいろ特徴のある企業と提携することによって、さまざまな技術を自社の中に取り込んでいこうと考えています。当社は細胞を作っていく生産設備や規格に準拠した生産プロセスなどを持っていますので、ベンチャー企業から受託することも含めて、ネットワークを組んで再生医療の産業化に大きく貢献していきたいと思っています。
  再生医療のビジネスは、これから5年、10年たったときに、大きなビジネスに育っていくと思います。再生医療のトッププレーヤーとして大きな事業に育てていく自信がありますのでご期待いただきたいと思います。
以上

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