株式会社三菱ケミカルホールディングス(4188)
開催日:2017年9月9日
場 所:大和コンファレンスホール(東京都千代田区)
説明者:取締役 代表執行役副社長 最高財務責任者 小酒井 健吉 氏

 

1. 会社概要
・ 当社は総合化学メーカーです。2016年度(2017年3月期)の連結売上高は3兆3,761億円で、化学メーカーとして売上規模は国内で1位、2016年「フォーチュン・グローバル500」では世界6位に位置づけられます。
・ 当社は2016年度からIFRS(国際会計基準)を適用しています。それに合わせて、経常的な営業損益を把握するため、非経常的要因による損益を除いた連結「コア営業利益」を導入・使用しています。2016年度は3,075億円でした。また、連結従業員数は69,291人、関係会社数は731社です(2017年3月31日現在)。
・ 当社は純粋持株会社です。当社の下に三菱ケミカル株式会社、田辺三菱製薬株式会社、株式会社生命科学インスティテュート、大陽日酸株式会社の4つの事業会社があります。
・ 三菱ケミカル株式会社は、三菱化学株式会社、三菱樹脂株式会社、三菱レイヨン株式会社を統合して2017年4月1日に発足しました。化学を主体にした会社で、当社の100%子会社です。2016年度の売上高は約2兆4,000億円です。
・ 田辺三菱製薬株式会社は医薬品製造販売会社です。上場企業ですが、当社が56.3%の出資比率を持つ連結子会社です。
・ 株式会社生命科学インスティテュートは、当社の100%子会社です。主に医薬品以外のヘルスケア分野で事業を展開しています。健康・医療ICT、創薬・製薬支援、次世代のヘルスケアの事業を推進しています。
・ 大陽日酸株式会社は上場会社ですが、当社が50.6%を出資する連結子会社です。産業ガスを主体にガス事業を展開しています。産業ガス事業メーカーとしては国内トップ企業で、世界でもベストテンに入ります。
・ 当社は、お客様に対して、材料だけではなくソリューションを提供するプロバイダーとしての位置づけを高めていきたいと考えています。当社はこれから、多岐にわたる技術やマーケットを有するというメリットを最大限に活かして成長することを目指します。

 

2.事業内容
・ 機能商品、素材、ヘルスケアの3分野で事業を展開しています。2016年度の売上高は、機能商品が1兆719億円、素材が1兆5,587億円、医薬品を中心としたヘルスケアは5,470億円です。
・ 機能商品の情電・ディスプレイ分野は、液晶等の分野で光学系フィルムを提供し、グローバルでも高いシェアを維持しています。高機能フィルム分野は、食品包装材、工業用・医療用のフィルムを提供しています。バリア性・耐候性・透湿性・易開封性等の技術を使って、あらゆる分野にフィルムを提供しています。環境・生活ソリューション分野は水処理等に関連するトータルなビジネスです。凝集材、イオン交換樹脂を使った精製、分離膜等、トータルでソリューションを提供しています。
・ 機能商品の高機能成形材料の分野は、昨今注目されている炭素繊維を扱っています。当社は特に自動車用の炭素繊維をターゲットにしています。プラスチックや炭素繊維で自動車の軽量化を進めます。アルミナ繊維は、自動車の排ガス処理のクッション材として評価されています。高機能エンジニアリングプラスチックは、当社傘下のクオドラント社で展開しており、この分野のトップリーダーです。
・ 機能商品の高機能ポリマー分野は、ポリカーボネートを扱っています。ポリカーボネートは耐衝撃性、透明性に優れた樹脂です。機能性樹脂のエラストマーは天然ゴムに代わる材料で、自動車用等、様々な産業分野で使用されています。また、高機能化学分野は、スペシャリティケミカルズを扱い、塗料やインク、化粧品基盤の材料として使用されています。当社は食品機能材の乳化剤で世界トップメーカーです。
・ 機能商品の新エネルギー分野では、電気自動車向けのリチウムイオンバッテリー向け材料を強化しています。特に電解液と負極材に注力しています。また、オプトエレクトロニクス関係の材料、OPV(有機薄膜太陽電池)等も開発を進めています。
・ 素材のMMA(メタクリル酸メチル)分野は、アクリル樹脂の原料を扱い、当社は世界で約40%のシェアを持つトップメーカーです。サウジアラビアに新設したプラントも当社独自の製造法で運転を開始します。
・ 素材の石化分野では、エチレンクラッカーの生産能力を減らして付加価値のあるスペシャリティ向けに展開します。これは基本的には日本国内の事業です。いかに国内で利益性・利益率をあげていくかに焦点を絞り、事業を進めています。
・ 素材の炭素分野は鉄鋼原料のコークスが中心です。コークスをつくるときに複製のタールが出てきます。原料タールは電極材になります。コークス単体でも安定した利益が得られますが、副産物に付加価値をつけて事業展開しています。産業ガス分野は、大陽日酸株式会社の事業領域です。
・ ヘルスケアの医療用医薬品は、田辺三菱製薬株式会社の事業領域で、約5,000億円の売上規模です。自己免疫疾患、糖尿病・腎疾患、中枢神経系、ワクチンの4つの分野で、ユニークな医薬品会社としての戦略を進めています。ワクチンは国内では大阪大学微生物病研究会と共同で開発をしています。自社で開発中の植物の葉からワクチンをつくれば、鶏卵よりも培養期間を半分以上短縮できます。短期間でワクチンをつくる技術を開発し、いま事業化を計画しています。また、ライフサイエンス分野ではIoTやビッグデータとつなげて、更に新たな医療ビジネスを興していこうと進めています。

 

3.KAITEKI経営の実現
・ 当社は経営コンセプトとして「KAITEKI(カイテキ)」というキーワードを使っています。KAITEKIとは、“時を越え、世代を超え、人と社会、そして地球の心地よさが続く状態”です。KAITEKIな社会、KAITEKIな地球を実現するために、当社がソリューションプロバイダーとして役立つことをコンセプトに事業展開を進めています。
・  KAITEKIを実現するために、Sustainability[Green](環境・資源)、Health(健康)、Comfort(快適)の3つを明確なコンセプトとして企業活動の判断基準とすることを全社員で共有し、事業展開を推進しています。
・ ESG(Environment=環境,  Social=社会,  Governance=ガバナンス)の視点からも、3つの軸でKAITEKI経営を考えています。1つ目の軸は、サステナビリティ(Sustainability)の向上をめざす経営(Management of Sustainability)です。企業である以上、財務諸表・財務結果を大事にしていますが、それだけで今後安定的な成長が果たせるわけではなく、サステナビリティに対してどのように貢献するのかを、定量的に目標を定めてクリアしていきます。例えば、資源・エネルギーの効率的利用や疾病治療の貢献に対し定量的な目標を設定し、マネジメントの1つの柱として進めます。
・ KAITKI経営の2つ目の軸は、イノベーション創出を追求する経営(Management of Technology)です。当社はメーカーであるためイノベーション、テクノロジーを大事にしています。テクノロジーも定量化した目標をつくり進捗していきます。
・ 3つ目の軸は資本の効率化を重視する経営(Management of Economics)です。3つの軸を総合的に高めていくことが、KAITEKIを実現するツールだと思っています。当社は経営の軸を定量的に絶えずチェックしながら前進しています。

 

4.中期経営計画
・ 2016年度から2020年度まで5年間の中期経営計画「APTSIS 20(アプトシス20)」を実行しています。過去5年間で構造改革を行い、ダウンサイドリスク(事前の想定よりも下回るリスク)のある事業、シクリカルな事業(景気の変動によって業績が上下しやすい事業)からシフトし、安定した収益基盤ができました。2016年度からの中期経営計画は、いかに高い成長を実現するか、かつ、いかに利益率をあげ高収益につなげるか、さらにそれを支える財務基盤強化の3つを基本方針として進めています。
・ 2020年度にコア営業利益3,800億円、ROS(コア営業利益率)8%を数値目標にしています。また、最終利益(当期純利益)1,800億円、ROE(自己資本利益率)10%以上、Net D/E ratio 0.8を目標に掲げています。数値は時々の経営環境や景気の影響を受けます。当社の目指す中期経営計画は、ROS、ROE等の数値を永続的・安定的に維持できる構造にする点に主眼があります。
・ 約30の事業単位に分けて管理するポートフォリオ経営を行っています。次世代事業・成長事業・基盤事業・再構築事業の4つに分類・管理し、安定的かつ企業価値を高める経営をしています。約30の分野それぞれに命題を与えてチェックし、当社の進んでいく道を絶えず見ながら管理をしています。いま事業が成り立っていてもそれが5年後も保証されるわけではなく、企業にとって新陳代謝は重要です。そのためにはポートフォリオ管理が重要で、2年に1回、事業ごとにチェックをし、絶えず見直して付加価値を高めていく経営を行っています。
・ コーポレートガバナンス体制を強化しています。当社は監督と執行の明確な分離を促進しています。ホールディング側の監督責任を明確にし、一方で執行に対しては権限委譲をすることでスピードを速めています。
・ 中期経営計画では、「自動車・航空機(モビリティ)分野」「パッケージング・ラベル・フィルム分野」「IT・エレクトロニクスディスプレイ分野」「環境・エネルギー分野」「メディカル・フード・バイオ分野」の5つの市場にフォーカスして成長を高めていきます。
・ 2017年4月に3社を統合して三菱ケミカル株式会社が発足しました。統合により経営資源を最大限に使うことができます。事業ユニットも大きく括り直すことでシナジーを加速させ、効率化を図ることができます。中期経営計画では、3社統合により2020年度までに500億円の利益創出を目標にしています。
・ 中期経営計画の5年間で1兆7,000億円の投資を考えています。そのうち1兆2,000億円を成長投資に配分します。メインは機能商品分野の成長投資です。素材分野は海外で積極的に展開し、産業ガス事業に投資をしていきます。ヘルスケア事業では、これまで田辺三菱製薬株式会社は国内のマーケットを中心に展開してきました。FDA(アメリカ食品医薬品局)で新薬が承認され、事業買収も行ったので、今後は海外展開を図り、医薬品を成長投資のターゲットにしていきます。
・ 2011年度以降、構造的問題や円高の影響もあって当社の収益は低迷し、営業利益が1,000億円を割る時期もありました。しかし、当社はそこから構造改革を進めてきました。経済状況の追い風もありますが、2016年度には3,000億円を超え、利益を拡大しています。2020年度にはコア営業利益3,800億円を目指しています。当社は経営のビジネス構造を変えて安定的・持続的に成長していきたいと考えています。
・ 2010年度は2,265億円の営業利益がありましたが、半分を素材事業が占めていました。素材は市況によって大きく変動する側面があります。対して2016年度は、機能商品・素材・ヘルスケアの3事業が均等な割合になる形で収益を増加させています。機能商品やヘルスケア事業は高収益事業です。構造を転換してきたことがコア営業利益3,000億円超まで伸びた大きな要因の1つであると考えています。

 

5.成長を期待する事業
・ 成長を期待する事業の1つ目は炭素繊維です。自動車向けの炭素繊維のトップ企業として今後ますます成長できると思っています。これまで炭素繊維は特別な車に適用され、量産車には採用されませんでしたが、既に発表しているとおり、トヨタ自動車株式会社のプリウスに当社の炭素繊維が採用されました。
・ 量産車向けは、炭素繊維を使って加工する技術や、短時間でいかにコストダウンして大量生産できるかが問われています。当社はこの部分を評価されているので、これから他の自動車メーカーの採用も増えていくと考えています。最終的に2020年度には炭素繊維分野で1,000億円の売上を目指しています。
・ 2つ目は、当社の経営のキーワードであるサステナビリティ分野です。スズキ株式会社のハスラーのパネル部分に当社の植物由来のプラスチック「デュラビオ」が採用されました。ガラスとプラスチック両方の良い点を持ち合わせたプラスチックです。一般的にパネルは成形後に塗装をしますが、当社のプラスチックは樹脂に顔料を含浸することで塗装をせずにカラーリングできる特長があります。環境問題への対応に機能性を付加した新しいプラスチックは、多数の自動車メーカーに採用され、当社が自信を持ってお薦めする製品の1つです。
・ 3つ目はエレクトロニクスディスプレイ分野です。当社はテレビやスマートフォン向けに様々な機能のフィルムを提供しています。スマートフォン等の小さな部分ではOLED(有機EL)に変わっても、コストや技術面からみると大型テレビが必ずしも全てOLEDに変わるとは思っていません。また、スマートフォンもOLEDになり曲面が変わっていき、フィルム使用面積は増えています。液晶からOLEDに変わることで今までのフィルムが無用になるのではなく、様々な相互関係のなかでスマートフォンの新しい技術に対応するフィルムへの需要もあります。よって、OLEDに変わったところで、当社の光学用フィルムが大きな影響を受けるとは思っていませんし、OLEDに変わることで伸びる部分もあると考えています。
・ 4つ目はエンジニアリングプラスチック材料です。人工関節の材料として使用されるプラスチックが高い成長をしています。特に耐久性に優れ、金属ボルトで締めていた部分がプラスチックに変わるため、大きな需要があります。2020年度にはメディカル事業で1,000億円の売上高を目指しています。
・ 5つ目はヘルスケアの医薬品です。2017年7月、当社子会社の田辺三菱製薬株式会社がイスラエルのニューロダーム社を買収することを発表しました。同社はパーキンソン病の治療剤を扱っています。また、2017年5月には田辺三菱製薬株式会社の開発したALS治療薬がアメリカのFDAから承認されました。この2つを使って日本のマーケットから米国のマーケットに進出し、世界へ展開していきます。2020年度までに米国売上収益は800億円規模になると考えています。
・ 6つ目は再生医療のMuse(ミューズ)細胞です。Muse細胞を脊髄等から採って静脈注射すると、Muse細胞が炎症や壊れた細胞を再生するという機能があります。Muse細胞には癌化リスクが少ないと言われています。2017年度中に当社は心筋梗塞等から治験に入ります。将来的には大きく医療を変えていくと期待しています。
・ 7つ目は素材事業のアクリル樹脂原料です。当社はコスト競争力のある技術を強みに、世界にアクリル樹脂原料を供給しています。
・ 当社のKAITEKI経営は、ESGの取り組みとして外部機関から評価を得ています。日本政策投資銀行の環境格付ではAランク・特別表彰を獲得しました(2016年度)。グローバルなCSR格付け会社のロベコサム(RobecoSAM)からは、ブロンズ賞(Bronz Class)を受賞しています(同)。ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インディシス(Dow Jones Sustainability Indices)は、全世界約2,500社を対象に評価し、約320社をワールドメンバーのトップクラスに指定、当社もワールドメンバーの1社に指定されています(2017年度)。

 

6.株主還元策
・ 当社は株主還元を重要な経営方針として考えています。中期的な連結配当性向の目安を30%とし、かつ安定的な配当を実施します。
・ 2011年度は10円配当でしたが、2016年度は20円配当になり、配当金は5年間で2倍になりました。2017年度は24円の配当予想を発表しています。配当による株主還元は、当社の事業の進展とともに着実に行います。

 

7.質疑応答
Q1.中期経営計画がスタートしてまもなく1年半が経過します。足元の業績は好調ですが、石油化学の先行きも含めて中期経営計画の進捗についてお聞かせください。
A1.今、石油化学関連は絶好調で、かつてないような市況の良さを示しています。これは中国の環境規制の影響もあると思います。ただ、近い将来、シェールガスベースのオレフィンが米国で製造されます。2018年には石炭ベースのオレフィンが中国で稼動すると言われています。それらは、おそらく現在の需給環境を大きく変化させるのではないかとマクロ的には見ています。これに対して当社は、他社に先がけ、構造改革を行い、製品を汎用からスペシャリティへシフトすることで対応してきましたので、シェールガスや石炭ベースのオレフィンが出てきても大きな影響は受けないと考えています。また、機能商品分野では当社の想定通りの利益成長が実現できています。2011年度に比べて利益は2倍以上に成長しており、現在の中期経営計画の進捗と達成には自信を持っています。

Q2.傘下の事業会社について、4月より3社統合し三菱ケミカルが誕生しましたが、持株会社である三菱ケミカルホールディングスの経営はどのように変化しましたか。
A2.三菱ケミカル株式会社という大きな会社ができましたが、ホールディング全体として監督と執行を明確に分け、これによりスピードとシナジーを高めていきます。ポートフォリオ改革、ポートフォリオ経営を進化させることで、円滑にチェンジできていると思います。また、3社統合により事業ユニットの単位を大きくしました。事業間のシナジーが上がり、研究開発やマーケティングも重複している部分が解消し、大きなイノベーションを起こせるような体制、組織に変えています。これも今後、随時成果が現れてくると理解しています。

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