アグロ カネショウ株式会社(4955)

開催日:2017年9月10日(日)

場 所:大和コンファレンスホール 東京都千代田区

説明者:代表取締役社長 櫛引 博敬 氏

 

1. 会社概要

・  当社は1951(昭和26)年8月に設立した農薬の専業メーカーで、今年で設立66年を迎えました。自己資本比率は64.5%(2016年12月現在)という非常に強固な財務体質を築き上げています。これは、当社の取り扱う農薬は安全性を高く求められるもので、そのための試験・データ蓄積に資金を要する事業特性に起因するものです。

・  当社の経営理念は1989(平成元)年1月に制定しました。我々の責任は、当社の商品とサービスを利用される全てのお客様、とくに最終的な使用者である農家のためとしています。次に、当社の事業に携わる全ての社員のため、そして、事業を営む地域社会、ひいては社会全体に対するものであるとしています。それらが全て網羅され、会社として利益を上げて株主に還元していきたいという経営理念です。

・  本社は東京の赤坂にあります。工場は、茨城県結城市に茨城工場、新潟県直江津市に直江津工場を置いています。研究所は、埼玉県所沢市に化学研究所、茨城県結城市に生物研究所を置いています。また、先日発表しましたように、山口県防府市に工場用地を購入し、新たに山口工場を建設する予定です。当社の主力工場、福島工場は2017(平成29)年6月に閉鎖となりました。

・  全国15の拠点(支店6カ所、営業所9カ所)に70名のTCA(テクニカル&コマーシャル・アドバイザー)と呼ばれる営業担当者を配置し、農家への技術普及に努めています。

 

2. 原発事故被害について

・  当社の事業に関して説明しておかなければならないのが、6年前の2011年3月11日に起こった東日本大震災です。当時、当社の主力工場が福島県大熊町にあり、東京電力福島第一原子力発電所から南1キロメートルに位置していました。そのため、震災翌日から一切の立ち入りが禁止されました。未だに帰還困難区域になっており、操業を断念せざるを得ませんでした。幸いにも従業員とその家族の安全は確保されておりましたが、震災直後は生産機能を失い、同業他社等からの協力により何とか事業を継続することができました。ご協力を頂いた皆様に対して、心から感謝しております。今年に入り、福島工場は国の放射能汚染物質の中間貯蔵施設として利用されることが決まり、国に譲渡しました。

・  工場の代替地として、ドイツのバイエルクロップサイエンス社が茨城県結城市に有していた中央研究所が候補としてあがりました。もともと当社は生物研究所の設立を検討しており、その非常に広大な敷地に新しい工場を併設できるということで、関係各所の認可を得て、ここを購入することに決めました。そして、2013(平成25)年4月から工場が稼働を始め、震災2年目にして生産機能を回復することができました。

・  それまでは委託製造のみの体制でタイムリーに対応できませんでしたが、生産機能の回復により2013(平成25)年には業績も一挙にV字回復することができ、それ以降も順調な業績を継続しています。

・  今後のさらなる事業拡大に向けて、生産拠点の一極集中によるリスクの低減、製品の安定供給の実現のために、新工場の取得を検討してきました。この度、山口県防府市に最適な用地が見つかり、取得することを決定しました。新工場は敷地面積約15,000坪となります。ここで当社の主力剤、土壌消毒剤のバスアミド、ダニ剤のカネマイトや、開発中の新剤等を製造していく計画です。 山口工場は今後の主力工場になるとともに、西日本でのロジスティクスセンターの役目も兼ね備えます。茨城工場は東日本の生産拠点とし、所沢事業所と共に東のロジスティクスセンターとして利用していく予定です。

 

3. 農薬とは

  農薬については、環境汚染等で悪いイメージがありますが、十分な理解をいただくために、説明させていただきます。

・  まずは世界の農業事情についてです。国連予測では、2015年73億人であった世界人口は、35年後の2050年には94億人に急増するとされています。一方で、耕地面積は2000年の15.2億ヘクタールから2011年には13.9億ヘクタールに11年間で1億ヘクタール強減少しています。 また、病害虫・雑草害による成育不良で減収が続いています。日本でもゲリラ豪雨等が起こっていますが、世界を見ても異常気象による干ばつ等による作物の減収があります。さらに、現在は原油価格の下落により頓挫しているバイオ燃料についても、再燃すればトウモロコシや大豆などが食糧に回らなくなることによる食糧問題の可能性を含んでいます。こうした中、農薬は減収率を回復させる上で必要な資材であると考えています。

・  現在、日本の有機農業が全耕地面積に占める割合は0.1%に過ぎません。無農薬あるいは有機栽培のみで食料を確保することは難しいと考えられます。

・  無農薬による減収率(出典:日本植物防疫協会)を見てみると、水稲では24%となっています。これは、農薬を使わないことで24%収量が減少することを意味していますが、最も顕著なリンゴでは減収率97%、レタスでも77%となっており、農薬を使わなければ売り物にならなくなります。

・  具体的な病害虫による被害として、大根では土の中にいるネグサレセンチュウという虫により根腐れし表面に斑点ができます。また、青虫による被害でキャベツが虫食いになる。ナシでは、実が小さい段階で蛾の幼虫が寄生し、実が大きくなった段階で大きな吸汁痕ができます。イチゴでは、表面が白くなる灰色カビ病などがあげられます。農薬を使わなければこうした売り物にならない結果になります。

・  農薬は安全性について疑問があるかと思いますが、農薬は高い安全性が確保できていなければ販売できない仕組みになっています。まず開発過程において、病害虫に効き目があるかの薬効試験、作物自体に与える害を検査する薬害試験を行い、その後に人畜・環境への安全性試験を実施します。これは、慢性・毒性、催奇形性、発ガン性など200項目に亘る試験で、これを通過したものだけが申請できます。申請窓口は農林水産省となり、厚生労働省、環境省、消費者庁などで試験結果が検査されます。その後、食品安全委員会を経て申請後2〜3年でようやく登録が許可されます。したがって、こうした申請を経て登録された農薬は、使用条件等を遵守すれば安全性に問題はないといえます。

・  世界の農薬市場の規模を推移で見ると、右肩上がりで伸びてきたものが、2015年に減少しました。これは、最大の市場であるブラジルをはじめとする中南米で良好な天候により病害虫の発生が少なかったことなどが要因です。2016年は、引き続きブラジルで病害虫の発生が少なかったことと、世界の穀物価格が低迷したことなどから、約2.5%減少しました。ただし、今後は病害虫発生による需要の回復が見込まれます。また、流通在庫が消化されたことにより、2016年後半から世界の農薬販売量が増えてきています。

・  日本では2016年に自然災害が多く発生したことなどから、農薬業界全体の出荷金額は前年比1.4%減と低迷しています。とくに水稲に向けての農薬出荷は、米の消費量が減ったことと、2018年に減反政策が終了する影響などから思わしくありません。補助金がもらえなくなる米作りをやめて、飼料用米の栽培に切り替える農家が増えています。当社が得意とする果樹、野菜・畑作に向けての出荷状況は比較的安定しています。

・  世界の農薬業界を見ますと、シンジェンタ(スイス)、バイエル(独)、BASF(独)、ダウ・ケミカル(米)、モンサント(米)、デュポン(米)の6社が市場シェア85%以上を占めています。ダウ・ケミカルとデュポンは経営統合し、2017年9月1日にダウ・デュポンを設立しました。2017年6月、農薬世界最大手のシンジェンタは、中国のケムチャイナによる買収が完了したことを発表しました。バイエルとモンサントの統合も今年中に正式に決まるといわれています。

 

4.  当社の強み

・  第1に、果樹・野菜向けに特化していることです。当社の連結売上高143億円(2016年12月期実績)のうち果樹・野菜向けが85%を占めています。我が国の農業において最も作付面積が多いのは水稲ですが、水稲は減反政策により作付面積は減っており、また全農組織の下、統制されていますので自由度が高くありません。反面、果樹・野菜は作付面積も10年超減っておらず、非常に安定した市場といえます。

・  第2の特長は農家密着型の経営です。通常の農薬の流れは、製造したものが会員店(代理店)、販売店、JA(農協)の窓口から農家に販売されます。一方、当社では農家と直接関係づくりを行っています。その第一がTCA(テクニカル&コマーシャル・アドバイザー)活動です。流通の関係者と一緒に農家に訪問し、農薬の使い方、栽培方法、市場での価格状況、他の地域の収穫状況など情報提供する一方で、抱えている問題などをお聞きし経営に結び付けています。また、農家の圃場を借りて実際に農薬の試験をさせていただく展示圃活動や農家の皆様にお集まりいただいて農薬の説明会を開催するなどの活動を続けています。

・  当社の売上において54%を占めるのが土壌消毒剤です(2016年12月期実績)。土壌消毒剤は、大根を根腐れさせる線虫のような土壌中の虫や病原菌などを消毒するものです。国土の広いアメリカなどでは輪作といって、毎年作るものを変えていくスタイルです。それに対して、群馬のコンニャク、青森のニンニク、高知のショウガなど何年も何年も同じ作物を同じ土地で作り続けていくことが日本の農業の特徴の一つです。そうすると、その作物を好む病原菌や害虫が蔓延し連作障害を招きます。それに有効な対策として土壌消毒剤は、日本で農業を行う上で不可欠なものと考えています。

・  さらに、実際に農家が使用している土地の土を持ってきて、どのような肥料が不足しているか、あるいはどのような病害虫がいるのか分析し、必要な肥料や土壌消毒をアドバイスする土壌分析・診断事業を昨年から展開しています。結果によって当社の商品のみならず他社の商品の使用もお勧めしています。通常多額な費用がかかりますが、当社では実費で提供しております。

・  農林水産省が中央農業研究センターに委託したAIを活用した土壌・病害診断技術の開発プロジェクトに、当社は今年の8月から参画しています。このプロジェクトが実現すれば、今まで以上に生産者のメリットを重視した精度の高い診断、対策の提供ができると期待しています。

・  第3の強みは、研究開発や海外展開に常に挑戦していることです。研究開発では、常に前向きに新しいものを取り入れていこうということで、埼玉県所沢市の化学研究所で新しい物質の探索・合成などを行い、茨城県結城市の生物研究所でその農薬の効力・安全性を確認しています。そのうちの一つの害虫防除剤は、全ての実用試験を終え、今年3月に申請を行いました。申請後2〜3年を経て2020(平成32)年には上市される予定です。

・  海外展開では、ヨーロッパで登録を行うための拠点としてアグロカネショウ ヨーロッパ支店を1999年12月にドイツに開設しました。さらに、全世界に当社の土壌消毒剤を販売するために2003年にベルギーにカネショウ ソイル トリートメント(KST:当社60%子会社)を設立しました。2012年韓国のソウルにアグロカネショウ コリア(AKK)を設立し、韓国国内で農薬販売を開始しています。

・  当社の海外売上高比率は、2016年12月期26%でした。今後、海外売上を増やすために、ダニ剤のカネマイトの売れ行きが好調な米国などにも拠点も持ちたいと考えています。

 

5.  業績推移、長期事業計画および配当金の推移

・  2016(平成28年)年12月期の業績は、東京電力から原発事故の補償金の入金がありましたが、売上高の減少、研究開発費の増加を吸収しきれず減益となりました。 2017(平成29年)年12月期は、引き続き研究開発費が高水準となるため、経常利益は減益となる予想です。純利益は、福島工場を国に譲渡することが決まり、その補償金が入金するため増益となる予想です。

・  長期事業計画としては「Lead The Way 2025」をスローガンとして、2015(平成27)年に146億円であった売上高を10年後の2025(平成37)年に300億円に倍増する目標を掲げています。そのための施策としては、開発中の新規剤を確実に上市し、さらにそれに続く薬剤を上市していきます。また、「ペイオフ」のような買収剤の投入を目指します。世界では当社の薬剤の販売拡大余地は未だ大きく、面積の限られた国内にとらわれず、海外への展開を推進してまいります。

・  配当の推移では、2013(平成25)年に東日本大震災からの復興を記念して5円の特別配当を、2014(平成26)年に東証1部指定替えを記念して7円の記念配当を実施しました。また、普通配当については、2015(平成27年)年から従来の20円を22円に増配しています。さらに2016(平成28)年から中間配当を実施することとしました。今後の配当につきましては、業績動向や財務状況等を総合的に勘案して判断させていただきます。なお、前期末より株主優待制度を導入しました。毎年12月末に100株以上保有されている株主様に500円相当の全国共通おこめ券2枚を進呈することといたしました。さらに、今年度より100株以上を1年以上保有していただいた株主様には全国共通おこめ券4枚を進呈することといたしました。

 

6.  質疑応答

Q1.  米国がTPP不参加を表明し、米国抜きでのTPP交渉が行われています。日本の農業への影響についてどのようにお考えでしょうか。また、貴社への影響は考えられますか。

A1.  当社への大きな影響はないと思います。トランプ大統領は就任演説の中で米国はTPPに参加しないと表明しました。これを受け、安倍内閣は米国を除く11カ国でTPPを推進する方向へかじを切りました。TPP導入によって、日本の農業で一番大きな影響を受けるのは米だと思います。ただ、当社が特化している果樹・野菜、花関係については、日本人が新鮮な果物、野菜、花を求める限り、他国からの輸入についてそれほど心配する必要はないと思います。

以上

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